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7. 魔物も人間も逃げ回って討伐クエストが成り立たない

冒険者ギルドの設立を目指していたが、考えたら問題だらけだった。

魔物はいる。魔物討伐の需要はある。

だが、魔物討伐クエストが成り立つのか判らない。

そんな根本的問題がある事に気付いた。

とにかく、やってみなきゃ分かんないよ!

「調査の結果、冒険者ギルドの需要はありと判断した!」

「「「おおー!」」」

 

不安だが、こう言って自分を鼓舞しないと前に進めない。

降り返っちゃダメだ。

 

魔物が存在するのであれば、需要はある。

そう信じて突き進む。

疑問や問題は多いが、解決出来ないとは限らない。

知恵と勇気で1つ1つ潰して行けば、ゴールは目の前にあったりするものだ。

 

まずは問題に立ち向かう勇気だ! 

 

 

そこで午後から、町の外に出て、実際に魔物退治をしてみる事にした。

 

ロゼ達と一緒に徒歩で行く。

冒険者もきっと徒歩だろう。

移動がどれくらい大変なのか確認しておく意味もあった。

 

「・・・。」

 

門まで1時間近くかかったんだけど?

既に疲れた。

 

門を出て、人目につかない場所に移動してからは、ロゼに運んで貰った。

髪の毛の座席に座り、おんぶされた感じで担がれてのダッシュで移動。

クソっ速い。

 

「ロゼだけマスターを乗せられるなんて依怙贔屓ではないですか!?」

「アオイ様、考え直して頂きたいです。」

「ダンナ、あーしに乗りなよ。抱き付いてもいいよー。」

 

途中俺の奪い合いになった。

人間大好きなコイツ等は、人間に触れられる機会を何より悦ぶ。

ドン引きするレベルに悦ぶ。

気持ち悪いので、ガン無視した。

 

ロゼにしたのは、付き合いが長いから。

決してカワイイからとか、いい匂いがするからとか、そんな不純な理由ではない。

 

「アオ様は私にメロメロですぅ!下賤の者は触れるなですぅ!」

 

ロゼが調子に乗ってる。

 

ちなみにリアは魔法で空を飛んでいる。

それでもロゼ達のダッシュの速度にはついて来れないので、ローラがたまに髪の毛で引っ張っていた。

凧?

 

たまにパンツが見える。

 

 

 

 

誰も居ない平原に着いた。

よく晴れたいい天気だ。

 

では、魔物にエンカウントするまで適当にブラつくか。

 

 

(お好きなRPGのフィールド音楽を脳内再生させて下さい)

 

 

(お好きなRPGのフィールド音楽を脳内再生させて下さい)

 

 

(お好きなRPGのフィールド音楽を脳内再生させて下さい)

 

 

 

「エンカウントしねぇ!」

 

3時間以上、散歩していた。

町の周辺は農地だったので、農地が疎らになる地域まで行って、そこでぶらついていたにも関わらずだ。

木陰で昼寝してても襲って来ないぞ。

どんだけ安全地帯なの!?

 

 

一応アーゼに魔物レーダーを展開させて、半径500m以内を索敵させていた。

その範囲に、魔物がどれくらいいるか、確認させている。

 

すると、ヒットしたのは、1~3体程度。

少なっ!

 

しかも、近付くと逃げる。

何そのメタルスライム!?

 

魔物たるもの、人間見付けたら、何はともあれ襲いかかってこいよ!

 

全然襲われない。

エンカウント率が低過ぎる!

 

どうやら街や街道の近くは討伐が進み、魔物も警戒して寄って来ないようである。

 

まあそんなものか。

この辺りでガンガン魔物に襲われたら、安心して農業なんて出来ないよな。

次回は、もっと街道や町から離れた場所で魔物を探そう。

 

歩き疲れたので、今日は一度拠点に帰った。

 

 

 

 

「この館、風呂がない!」

 

ギルド本部に戻って、汗を流そうとして愕然とした。

何か足りないと思っていたら、風呂だ!

 

「貴族の癖に風呂も作らなかったのか。」

「主殿、この世界では身体を拭くのが一般的じゃぞ。主殿の世界が異常なのじゃ。」

 

リアから諭されたが、それは分かってる。

風呂を沸かす為に、汗を流して井戸から汲み上げて、汗を流す。

それは非効率だという考え方だ。

 

ポンプがないので、水道が発達していないのだ。

シャワーすらないからね。

 

だが、日本人に染み付いた綺麗好きの習慣は、簡単には諦められない。


「よし、風呂を作ろう。」

「やはりそうなったか・・。」

 

リアが呆れていたが、笑っているので内心は歓迎しているようである。

 

 

裏庭の井戸にポンプを設置する。

ギルギルに怒られない為に、この世界の技術力でも作れる簡素なモデルにした。

 

設計→物質変換→資材作成→組立→試運転→完成まで30分。

早っ!

 

風呂場は後日作るとして、井戸の横に水のシャワー場を作った。

汲み上げは人力。

自転車を漕げば、ジャバジャバ水が出る。

 

「うひゃあ、冷たい!でも気持ちいい!」

「追って埋設配管にして、屋内に導入し、お湯も出るようにします。」

 

『凄いことしてるんだけど、認めたくないわたしがいる・・。』

 

慣れろラミネール。

フィオレンティーナもラズベリネも、皆慣れていったぞ。

 

 

 

 

魔物退治チャレンジ2回目

 

街の近くに魔物は少ない事が判明した。

ならば、まずは魔物が多い場所を探すことにした。

 

「よし、総員索敵開始!」

 

アンドロイド5名へ命令。

グレイスフォード周辺に生息する魔物の調査をお願いした。

 


2時間後の報告会

 

「町の北側半径20km範囲の1時間当たりの遭遇率は、5%です。」

 

北側は街道があるので、魔物の討伐が進んでいる。

その為、エンカウント率は低いようだ。

 

「町の東側10%ですぅ。」

 

東側はアーク自治区への街道があるが、現在交易が減っている。

その為、魔物との遭遇率がやや高くなっているようだ。

 

「町の西側3%。」

 

西側は王都への街道があるので、最も往来が多く、安全性が高い。

3%ってほぼほぼ遭遇する事が無いな。

護衛任務って余裕じゃね?

 

「町の南側だけど、遭遇率25%だったよ?」

「南側だけダントツだな!」

 

なにゆえ!?

 

 

 

 

グレイスフォードの南側には「死の森」と呼ばれる未開の大森林が広がっている。

 

町の南側は開発が進めば進むほど、死の森に近付き、危険度が増す。

その為、町の南側は開発が進んでいない。

積極的に開拓を進めようともされていない。

 

また、死の森が突き当たりとなる為、農地をそれ以上先には広げられない。

南側に農地を広げるより、東西に広げて行った方が安全で効率的だからだ。

 

要するに、あまり用がない地域なのだ。

 

そんな南側にも、小さな農村は点在する。

流浪の民や、街の近くに農地を与えられなかった農民が、仕方なく移り住んだ村だ。

だが、街道は荒れ気味で、盗賊も出るので、往来が少なく、行商も敬遠されていた。

完全な過疎地だ。

 

 

そんな街の南側。

ここだけエンカウント率が高い原因が判明した。

 

弱い魔物は死の森には近付かない。

かと言って、街に近付くと討伐される。

その為、森と街の間をうろつくしかない。

 

これが原因だった。

 

 

 

 

「よし、南側を推奨狩場として紹介しよう。」

 

午後から町の南側へ行ってみた。

 

 

(お好きなRPGのフィールド音楽を脳内再生させて下さい)

 

 

30分程歩いていたら、魔物に遭遇。

 

おお、やっとエンカウント!

 

 

と思ったら逃げられた。

 

いや、向かって来いや!

 

 

以後もエンカウントはするものの、全て逃げられた。

全てのモンスターがメタルスライム並みの逃げ足の速さ!

 

これ、魔物狩って稼ぐの無理じゃね?

 

 

この世界の狩りは、基本的に罠が一般的だ。

正面から戦って、怪我するのは割に合わない。

 

怪我が即座に治る不思議な飲み薬や薬草などは無い。

回復魔法も、怪我の回復を早める程度の効果しかない。

だから正面切って戦うのはアホの所業。

 

そしてタチが悪い事に、魔物は勝てそうもなかったら即決で逃げる。

逃げ足が速いので、追いかける事も出来ない。

 

戦って怪我して、少しダメージは与えたが逃げられた。

 

正面から戦うと、そんな骨折り損になる可能性が高いのだ。

 

 

その為、魔物を狩る場合は、事前に罠を仕掛けたり、毒で動けなくしたり、弓矢で遠距離から仕留めたりと、直接対峙しないようにしている。

 

 

そんなのはロマンが無い!

 

 

冒険者の花形である、魔物退治がままならないのは由々しき事態だ。

これは早急に対策を練る必要があった。

 

 

 


その日の晩。

魔物討伐クエストの実現に向けた、対策会議が開かれた。

問題は2つ

①魔物が逃げる

②人間が正面切って戦う事を嫌がる

これらを解決しないと、クエストが成り立たない。

 

「魔物と戦えるようにケアが必要だ。」

 

まずは問題①の、魔物が逃げる問題。

このままでは稼ぎにならない。

 

「魔物が興奮する薬でも散布しましょうか?」

「農村が点在してるから、そんな事したら迷惑になるだろ。」

 

1.冒険者の為に魔物を活性化

2.農村が魔物に苦しみ始める

3.冒険者ギルドに農村からの依頼が舞い込む

4.冒険者を派遣する

 

こんなマッチポンプ、バレたら速攻でギルドが取り潰しである。

 

「魔物が好む餌をぶら下げておくのは?」

「それいいね!」

 

餌で釣る!それだ!

魔物は元動物なので、人間を餌だと認識していないから、簡単に逃げる。

餌と思えば向かってくるだろう。

 

「クエストを受注した冒険者に渡して、終わったら返して貰うようにしましょう。」

「危なくなったら、その餌を放り投げれば、魔物から逃げ易くなりますね。」

「採用!」

 

良いアイデアが提案された。

 

「だが、魔物が何を好むのか、調査が必要だな。」

「お任せ下さい。全種の魔物を捕まえて、効率的に呼び寄せる餌を開発します。」

「さすがアーゼだ。頼もしいな。」

 

こんな時、アンドロイドは本当に頼りになる。

困った時は、未来のロボに頼むのが一番だ!

 

『ねぇ、それ貴方達で魔物を全部討伐した方が早いんじゃない?』

 

「・・・誰か、夢とロマンの無いこと言う、あの霊族を吊るしておけ。」

「了解しました。」

 

『ギャー!やめて!何で何で!?私変な事言ったの!?』

 

 

「さて、無粋なツッコミをする邪魔者は排除した。会議を続けよう。」

 

ラミネールが天井から吊るされた。

「何で!?わたし霊族なのに!?」と、吊るされた事に驚き喚いているが無視だ。

 

 

「冒険者が直接戦いたくなるシステムを開発する必要があります。」

 

次に問題②の、人間が逃げる問題。

この世界、みんな逃げてばっかだな。

 

「そうだな、このままでは罠を仕掛けて待つだけのつまらん待ちプレイか、弓で遠距離攻撃するだけのチクチクプレイしか成り立たない。それは冒険者じゃなく狩人だ。」

 

そんな見せ場の無い戦闘なんて楽しくないだろう。

 

「問題は怪我をした場合のリスクが高過ぎる点ですね。」

 

割に合わない事は誰もしたくはない。

 

「ギルド病院を設立してはどうでしょうか?」

「怪我をして休業するリスクは拭えない。」

 

その間、稼げないのでは、人気が出ない。

 

「でも割安で治療する医務体制はあった方が良いかな。」

 

冒険者のケアの為、医療体制をギルドで用意するのは採用となった。

だが、やはり人間が近接戦闘を望む理由に乏しい。

 

 

近接戦闘か・・。

現世では銃が開発されて、白兵戦なんて誰もやりたがらない。

狩猟も猟銃だもんな・・。

誰だって一方的に攻撃できた方が良いんだ。

近接戦なんて、今日び流行らな・・・いや、待て。

 

現世でも肉弾近接戦を好んでやってる奴等がいるじゃないか!

 

彼等は肉弾近接戦で傷を負う事を忌避しているか?

・・NOだ。

彼等は何の為に戦ってる?

 

・・・答えが出た。

 

「そうだ、名誉だ!」

「名誉?」

 

「怪我をしてでも欲しい何かがあれば、怪我はリスクにはならない!」

 

要するに人間の闘争本能を刺激する何かを与える事が重要。

ボクサーや格闘家が戦うのは、自分が一番強い事を証明したいから。

 

その()()()()()()()()()()()のだ。

 

「冒険者ランクを設けて、高ランカーの冒険者には、名誉と優遇措置が与えられるようにしよう。」

 

要はエンターテイメント性を持たせればいい。

フレコミはこうだ。

「求む勇者!魔物を自らの肉体を駆使し屠る勇気ある者よ!目指せ世界最強!」

こんなアオリでどうだろうか?

 

 

以下のようにランクを設定した

 

Sランク:真勇者(魔物討伐数:10000+素材売却数:10000)

Aランク:戦神 (魔物討伐数:5000+素材売却数:5000)

Bランク:戦王 (魔物討伐数:2000+素材売却数:2000)

Cランク:戦将 (魔物討伐数:1000+素材売却数:1000)

Dランク:戦士 (魔物討伐数:500+素材売却数:500)

Eランク:冒険者(魔物討伐数:100+素材売却数:100)

 

ランクが上がれば有名になる。

有名になれば、チヤホヤもされるし、モテたりもするんじゃないか?

ランクごとの優遇措置や褒章も与えよう。

具体的なご褒美は、追って考える。

 

とにかく餌で釣るのは、魔物も人間も同じだ!

  

勇者が量産されたら、勇者同士の頂上決戦大会とか盛り上がりそうだ。

そう、冒険者ギルドは勇者プロデュースの総本山なのだ!

 

「出来れば開業前にデモンストレーションがしたいな」

「素人でも気軽に参加できるように、チュートリアル訓練もしましょう」

 

「魔物退治は狩場までの定期運航便をギルドから出そうか?」

「倒した魔物の素材を積んで戻れるのも利用者にとっては有難いですね」

 

こうして冒険者ギルド構想は、ノリノリで具体化していった。

 

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