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お互い拗らせて拗らせた結果

作者: ニーナ

「リズアーヌ・ラン・ボルテ貴様との婚約を破棄させてもらう!!」

ザワザワと様子見をしていた令嬢、令息達が騒ぐ


(卒業式に、人目の着くところでわざわざ婚約破棄だなんて、悪趣味もいいところね。)

「理由を伺っても?」

「理由だと?そんなものは明白だ!

お前がエリーナにどれだけ極悪非道な振る舞いをしたと思っている!?

それだけではない!王宮の金を使い込んでいることもバレないとでも思ったのか!」

「お前だなんて…一国の王子とあろう者がおよしくださいませ、それに極悪非道な振る舞いとはなんのことでしょう?」

「まだシラを着るつもりか!

今のようにネチネチと嫌味を言ってエリーナを虐めたでは無いか!」

「今のように…といいますと、『一国の王子とあろう者がお前だなんておよし下さい』という発言のことでしょうか?」

「それ以外に何があるというのだ!」


シン…と会場が静まりかえる


「フフッ」

「何が可笑しい!」

殿下は顔を真っ赤にして憤慨する。


「殿下の仰っていることが支離滅裂過ぎて思わず苦笑が出てしまっただけですわ」

「なんだと!?」

「よろしいですか?

いま、私が行ったのは、嫌味ではなく、

れっきとした注意にございます。

注意をして、感謝されることはあれども、

まさか嫌味と捉えられるだなんて!

思ってもみませんでしたわ!!」

ねえ、皆さん?

と当たりを見渡す。

周囲は明らかに殿下に対して引いており、

私の言っていることがただしいことを証明してくれる。


「あと、エリーナさんに言ったことについてですが、廊下は走らない、男性とは密室では話をせず、できる限り2人きりにもならず、節度を持った付き合いをする。

お茶会ではお茶を持って歩かない、など

当たり前のマナーを教えて差しあげただけですが?」


「エリーナは庶民から貴族になったばかりの娘だ!それをさも出来て当然かのように周りにも聞こえる声で注意をするなど!エリーナを貶めようとした証拠ではないか!!」


「まあ、殿下、それはいつのお話をしていますの?

エリーナさんがこの学園に入ったのは3年も前です。3年も経てば、マナーを覚えるのは当たり前、寧ろ覚えていないことで、貴族に対する反感さえ透けて見えますわ」


「そんな!わたし、そんなつもりじゃ!!」


「あら、発言を許した覚えはなくってよ?」


殿下の後ろから突然しゃしゃり出てきたエリーナに冷たく言い放つ


「ッ!またそうやって、身分を盾にしていじめるじゃありませんか!どうして人間は皆平等だと分かってくれないんですか!?」


「あら、これのどこがいじめだと言うの?

高位のものに下位のものから話しかけるのは不敬罪が該当しますわ。何度教えても覚えて下さらないし、本当は投獄できるところを注意で済ませてさしあげているだけ、優しいと思いません?

それとも、投獄される方がお好みかしら?」


「ヒッ」

エリーナが後ずさるそのエリーナを庇うように

殿下が前に出る

「黙れ!」

「フフっ、やっぱり、貴女方の仰ることは支離滅裂だわ。

まだ気づいておられないのですか?

人間は皆平等だとほざいておきながら、誰が1番権力で物を言わせているか」

「何を…お前に決まっているだろう!」

「違いますわ。

本当に権力をかざして自分の好き勝手しているのは…殿下、貴方ご自身ですわ。」

「なんだと!?」


「私に対して身分にものを言わせてとおっしゃりましたが、殿下も身分を盾に、都合の悪いところは黙らせて自分の好きかってなさっているではありませんか」

「そんなことはしていない!」


「そうでしょうか?例えば…今日、殿下はエリーナさんと会場に入場されましたが、本来は婚約者である私が一緒に入場するはずでした。前々からずっと言い続けておりましたが、おふたりで学園外へお出かけになられたり、密室で密会も成さりましたよね?それは、立派な浮気ではないのですか?」

「今日エリーナと入場したのは、お前とは婚約破棄をせるよていだったからだ!」


「もしそうだったとしても、まだ婚約は継続されているのですから、婚約者と入場すべきでしょう?それに、殿下が仰ったように皆が見聞きできる場所で、大きな声で殿下は婚約破棄を宣言なされたではありませんか、普通なら密室で当事者同士話すことが先ではないでしょうか?

婚約解消を持ちかけて断られたならまだしも、急に婚約破棄だと大衆の前で宣言されましたよね?私の尊厳は大いに傷つきましたわ。

婚約者に対してあまりにも不誠実なのではありませんか?

調べさせたところによると、殿下はもうエリーナさんと体のご関係もあるとか、これを浮気と言わずしてなんと言いましょう」

ザワザワとした空気が戻り、殿下には冷たい視線が寄せられる。

殿下とエリーナは顔を真っ赤にさせて身体を震わせている。

「なっ!なにを!!」


「まあ、そういうわけで、私はこの婚約破棄に対しては別になんとも思っておりません。寧ろ嬉しいくらいですわ。」


「なに!?」


「ただ、私が侮辱を受けたと感じたので、言われのない侮辱は受けるべきでは無いと思い弁解させて頂きました。

ああ、あと殿下が仰っていた王宮の金銭の話の件ですが…」


「そうだ、それだ!これは大問題だぞ!リズアーヌ!!」


「人の話は最後までお聞きになってくださいまし、 殿下が一生懸命罪を捏造されておられましたが、殿下が本来婚約者である私に使うはずだったお金をつかってエリーナさんに贈り物をし続けたことの裏は取れております。

それだけでは飽き足らず、王宮のお金に手をつけたことも。」


「な、にをいって…」

「ああ、最後になりましたが王からの令状です。『シンニア第1王子、汝の侵したつみは深く、王族の顔に泥を塗る結果となったことを心よりかしく思う。よって、汝の王位継承権を破棄し、汝の身柄はこの度多大なる被害を受けた、リズアーヌ・ラン・ボルテ嬢に一任す。』との事です。」


周囲に令状に押された印が見えるように掲げる


「そ、んな」

シンニア王子は膝を地面につき、愕然と虚空を見つめている。

「シンニアさま!」

「エリーナ…

クッ!リズアーヌ!!貴様ァ!!!!!!!!父上に何をしたァ!」

エリーナに声をかけられて、怒りが込み上げたのか私に向かって剣を振り上げながら走ってくる。

が、私には届かない

「取り押さえなさい」

どこからともなく黒服の人間が殿()()()()()()を取り押さえる。

「殿下…ああ、もう違いましたね。シンニア。

貴方の身柄は私のものです。さあ、家に帰りましょうか、」

「誰が帰るものか!貴様に」バシン!


私の扇子がシンニアの頬をつさ打った。

あまりに突然のことに、周りもシンニア自身も反応できずポカンとしている


「あなたはもう貴族ではなく、ただのシンニアです。私には敬称をつけなさい?」

「あ”あ”あ”!!!!!!!!いた、いだいぃぃ!」バシン!

私の一言で痛みを思い出したのか、シンニアが叫び出す。うるさかったので、もう片方の頬も打つ。

今まで甘やかされて生きてきたシンニアにとって初めてと言っていい痛みであろうことは想像にかたくない。

なんせ、かれは剣の稽古すらまともにしてはいなかったのだから。

「誰が発言を許しましたか?」

「あ”あ”あ”あ”!」

『汝、我のいうことに従う事を命ずる。』

この国で最も強い、服従の魔法を使う。

この魔法は強力な分、多くの条件はあるが、1度かかってしまえば効果は絶大だ。

「いいですか?

自害は許しません、粗相も許しません、今は、発言も許しません、私についてきなさい。返事は?」


「は、い”」

泣きながら返事を零すシンニアに気を良くした私は静まり返った会場で1人、エリーナがシンニアを呼ぶ声を背後にそのまま立ち去る。

『私に逆らうからこういうことになるのよ?』


______________________


あの日からしばらく、社交界では私とシンニア()殿()()の噂でもちきりだ。

曰く、私がシンニアを陥れただとか、シンニアはもうしんでおり、私は次の獲物を探しているだとか…あながち嘘でもないのが面白いところだ。


「ねえ、シンニア?

あなたの主はだぁれ?」


「リズアーヌ、さまです。」

「ええ、そうよ、偉いわ。」

鎖に繋がれたシンニアの頭を撫でる


「貴方がいけないのよ?

馬鹿な振りをしてエリーナを利用し、私から逃げようとするから。私のものになれば、あのままの生活が出来たのに…

ねえ、どうして逃げようと思ったの?」

私の質問に顔を強ばらせるが、服従の魔法がかかっているため抵抗も虚しく、ポツリポツリと声を零す

「リズアーヌ様の、物になるのが怖かった。

その、ものを見る目が、どうしても耐えられなかった、」

「まあ、気づいていたのね

だって、あなたの目が綺麗だったんですもの。

欲しかったのよ。

知っていた?

人間の目って死んでしまったり、抉りとってしまうと少しだけ、色が変わってしまうのよ

だから、あなたを活かしてそばに置くしか無かった。だから婚約したのに、…

あなたが逃げるから、私はあなたの首に首輪をつけなければならなくなってしまったわ。

王の説得は大変だったわ、まあ、ほぼ脅迫したのだけれど。

おかげで、コレクションが手に入らなくなってしまったわ。元々あったコレクションはもう全部壊れてしまったし。」


知っていた。

リズアーヌが俺の事をものとしか見ていないことも、

おれが、リズアーヌに従うしかなくなることも。

おれの魔法は少しだけ未来が見えるから。

でも、それでも尚、リズアーヌを愛してしまった。

リズアーヌの俺の目を見る時の目が、一党好きだった。

リズアーヌが俺を愛することはなくても、俺以外の奴にそんな目を向けることが嫌だった。

だから、俺がこうなって、国中で噂になることで他の連中が近ずかないようにして、元々居たコレクションも幼い頃からこの屋敷に使用人を送り込み、少しずつ壊した。

だから、この箱庭で愛し合えるのは俺とリズアーヌだけ。それだけでいい。


『ねえ、本当は知っていたのよ。あなたが私を愛していることも、私がいつの間にか貴方を愛してしまったことも。でも、貴方があんな女と嘘でも愛を紡いだから、だから、あなたを捕まえるしかなくなってしまったわ。

結局、あなたの思いどうりになってしまったのかしら』


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