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美女と野獣の婚前旅行~婚約破棄は許しません。氷の令嬢は、逃げた参謀を追いかけます!~   作者: 凡仙狼のpeco


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貧民街を、守りますわ。


 流れる水が、徐々に貧民街を蝕んでいた。


 流れ落ちる轟音と共に、多少の水圧にすら耐えられない脆い建物から倒れ流され、保っているものもミシミシと音を立てている。


 しかし、ガストンたちが築いたバリケードは、持ち堪えていた。

 水は流れを変えて、大通りを流れ、より下流の誰も住まぬところへと流れていっている。


 それを。


「こちらの土台を魔術で補強しろ!」

「上に上がれる者はいるか! 東の方が水が高い! もう少し高度を出せ!」

「あの建物はこれ以上水位が上がると駄目になる! 周りに土を盛って壁に……」


 領主から派遣された魔術師団が、地面を隆起させたり、木を成長させたりする土の魔術を行使して、崩れないようにと奔走していた。


 その光景を見た小太りの男……ボンダは、仲間達と頷きあって、魔術師団に声をかける。


「なぁ! 俺たちにもなんか、手伝えることあるか!?」


 そう告げると、魔術師団を指揮していた男が鋭く振り向き、声を張る。


「いつ決壊するか分からん! 避難せよ!」


 ボンダが舌打ちするのに、ガストンが肩を抑えて言葉を引き継ぐ。


「百も承知だよ! 仲間や家族が後ろにいるんだ! 俺たちも出来ることをさせてくれ!!」

 

 魔術師団の団長らしき男は眉をひそめ、時間が惜しいと感じたのか、顎をしゃくる。


「バリケードの媒介となる木材や土が足りん! かき集めて来れるか!?」

「お安い御用だ! おい、行くぞ!」


 ボンダが人を半分引き連れて土嚢を作りに行き、ガストンは近くの、なるべく古い建物を手斧で壊して木材を集めるように指示を出す。


 その背後から。


 陸竜を駆る少女と、その横を並走する白い獣人が近づいてきた。


※※※


「団長殿!」


 ヴェルバが声を張り上げると、魔術師団長は大きく溜め息を吐く。


「……宰相殿。我々は今、瀬戸際なのだ! 探し人を見つけたのならすぐに……」

「今、領主殿の指揮は得られんだろう。宰相として、臨時の指揮系統を行使させてもらう。今動いている魔術師たちはそのまま貴殿が指揮を取れ。そして、一番支えるべき部分を教えてくれ」


 権力を行使するヴェルバの強引な言葉に、魔術師団長が拳を握りしめた。


「どいつもこいつも……今目の前の壁が崩れたら、水が流れ込む! 最重要だから私がここにいるのだ!」


 ベラが、その言葉を受けて〝見霊の瞳〟で目を凝らすと、団長が魔力で目の前の壁を強化しているのが見えた。

 

 周りに魔法陣が敷いてあり、ずっと発動し続けることによって、壁を支えているのだ。


 それを理解して、ベラはカーロからひらりと降りながら、ヴェルバに声をかける。


「ヴェルバ様。彼の魔法陣に、手を突いてください! そして、戦う時と同じように、戦意を高めていただけますか?」

「戦意だと?」

「はい。ヴェルバ様には精霊の加護があるのです。そのお力を借りて、わたくしが陣を強化いたします」


 土の精霊は、ベラが呼び掛ければ答えてくれる。

 一刻を争う状況であることを理解しているヴェルバは、それ以上質問することなく、巨大な体をかがめて手を団長の近くの地面についた。


「何を……」

「団長様は、そのまま魔術を維持してください。始めます」


 ベラはヴェルバの肩に両手を置くと、目を閉じて、精霊に呼びかける。


「〝土の精霊よ。ーーー山を成せ〟」


 小さくつぶやいた願いに、精霊達が答えてくれる。

 ベラを通し、ヴェルバを慕う精霊達の力を巻き込んで、魔法陣を通じて目の前のバリケードに力を注ぎ込む。


 すると。


 ゴゴゴゴゴ……と地鳴りのような音がした後に、地面に、ズ、と長くヒビが入り、そそり立つように隆起し始める。


「なっ……!」


 魔術師団長が目を見開く前で、バリケードを含む地面が、魔法陣の少し前あたりから崖のようにせり上がっていく。


 その高さ、十数メートル。

 範囲は、大通りに沿って視界が霞む程に長く。


 ーーーこれほどの範囲に影響を及ぼすのは、ベラ自身にも予想外だったけれど。


「……地形を変える程の魔術……だと……」


 この高さと地面が断裂するほどの厚さであれば、今以上に川が溢れたとしても、もうこちら側に水が流れ込むことはないだろう。


 土嚢を持ってこようとしていたボンダが、家を打ち壊そうとしていたガストンが、その他の貧民街の男たちが。

 そして、今まで懸命にバリケードを補強していた魔術師団の面々が。


 ぽかんとした顔で、その光景を見つめる。


「貴女は、一体何者だ……?」


 呆然と呟いた魔術師団長に、ベラは小さく微笑む。


「宰相ヴェルバの、妻でございます」


 そうして。

 小雨になってきた雨の中で、一気に魔力を消耗したことによって、意識が遠のいていく。


 自分の体が、力強い手に支えられて。


『……君は素晴らしいな、ベラ』


 そう褒める遠い声を聞きながら、ベラは暗闇に意識を落とした。

 

後は、ヴェルバとベラのエンディングを書いて、おまけを投稿して終わりです。


この作品は


『仮面舞闘士シンデレラ〜硝子の双剣使いと青髪王子の輪舞〜』


『【無敵メンタル】の商人は『お前の居場所ねぇからァアアア!!www』と追放した商会ギルドの腐敗を正すために、本気で冒険者ギルド設立を目指すようです。』


の二作に繋がっています。興味がおありの方はランキングタグからお飛び下さい。


また、楽しんでいただけましたら、ブックマークやいいね、↓の☆☆☆☆☆評価等いただけると、励みになります。


どうぞよろしくお願いいたします。


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[一言] ベラ…すげー。
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