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湯の華

作者: 八月朔日八朔

 旅行に行った時、旅館の温泉に入った。


 深夜だったからか脱衣所には誰もおらず、浴槽内も貸し切りだった。

 俺はゆったりと湯船に浸かっていた。


 暫くして──脱衣所から甲高い声が聞こえる。

 キャッキャッという感じの、実際にキャッキャッって言ってたわけではなかったが、要するに若い女性の声。

 それが脱衣所から。


 ──清掃の人、かな?


 清掃の人で若い女性というのはやや珍しくもあったが、男湯に清掃員の女性が入ってくる事は珍しい事ではないので、俺はあまり気にせず浮かんでいる湯の花と戯れていた。


 するとガラリと扉が開き、素っ裸の若い女性が一人、二人、三人……


 困惑と混乱、なぜこの女の子たちが、この若くて可愛くてスタイルも良い女の子たちが、おっぱいをほりだして、前も隠さず男湯に乱入してくるのか。実に素晴らしい光景ではあるが、しかしながらこれは一体……。

 そこで──俺は気が付いた。

 旅館の温泉というのは、男湯と女湯を日によって入れ替える。そのタイミングが何時かは旅館によって違うだろうが。


 前日、俺は、確かにこの浴槽に入っていた。

 という事は、もしかして、もしかしたら。


 温かい湯の中に、冷たい汗が背筋から流れ溶け込んだ。

 間違えているのは、あの女子大生と思しき女の子たちではなく、この俺──俺が、間違えている?

 前の日には男湯だった女湯に間違えて入ってしまっている、と。


 そういう事だろう。


 思い起こしてみるが、入ってきた時の暖簾の色が、赤か青か、どっちだったか記憶にない。

 ただ前日男湯がここで、その流れで……。


 向こうは俺には気付いていない。

 次に取るべき行動が何一つ思い浮かばなかった。


 その時不意に、なんとなく持ってきていた瑞宝重光章を思い浮かべた。

 自分のスリッパだとわかるように、勲章を挟んであるのだ。


 ──なんとかなるかも知れない。


 湯の華はゆったりと湯の中で揺蕩っていた。(了)

実は5chの某スレでレスとして書いたのが初出だったりします。

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