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8:待ってくれている

ああ、ここが私のいるべき家なんだ。


でもここで舞い上がってはいけない。


きちんと『誠意」を見せないと。



「本当にごめんなさい」



私は玄関で土下座をする。



「気にしてない。ちゃんと離婚して、お金も俺にちゃんと払ったし、後腐れなく別れることできたし」



気にしてない。


それ以降に何か言っていたが、その言葉を聞いて許されたと思ってしまった。



私は顔を上げて言う。

「それであの、もしよかったら・・・・」

『復縁しませんか』

と言いたかったのに、思わず、言葉に詰まる。



悠太が許している表情をしていない。

というか、私を見ていない。



じゃあなんで私を許すような行動をするの?


どうして私を家に入れたの?


私は考え込む。






「やつとはまだ一緒に働いているのか?」


悠太が声をかけてきた。


『やつ』っていうのは不倫相手のことだろう。


「・・・うん、何事もなかったように平然としてる」



怒りがわいてくる。


私を甘い言葉で誘っておいて、結局は何も責任を取らない。


それどころか何事もなかったように働いている。



「悠太が私の職場に言わなかったおかげで職場では何事もないよ。

でもなんであいつも。あいつがいなければ・・・」



怒りが言葉に出てくる。


あいつがいなければ、きっと今も悠太と・・・。



「だよな。家族だけではなく、生きるためのお金を稼ぐ場所を提供してくれている『職場』もだましているなんてな。やつも反省しているのかなぁ。俺に『誠意』も見せてくれないし、そういうやつなんだろうな」



職場をだましている。



その言葉が重くのしかかる。



勤務時間中『やつ』にそそのかされて、行為に及んだこともある。


行為していた時間も給料として会社からお金を受けとっている。

仕事していると職場を騙しながら行為してお金をもらっている。



悠太が耳元でささやく。

「俺は職場をだまし続けるやつなんて『信用』できないな」



私は『信用』されてない。


『信用』できない人とは一緒に生活できない。


悠太はそう言いたいんだ。当たり前だよね。



「職場、誠意、信用・・・」



悠太は私が『信用』を取り戻すのを

ここで待ってくれているんだ。



「では、今日は一旦おかえりください」



悠太、絶対にまた戻ってくるからね。




*******




私は早速行動した。


職場に離婚の原因が同僚との不倫であることを正直に話した。


そして、勤務時間中にその相手と行為に及んだことを話した。


もしこれでクビになっても仕方がない。


それだけのことを私はしたんだ。



不倫相手が慌てた様子で私のところに来た。

「どうして今更」ということらしい。



私は「職場をこれ以上だますわけにはいきません」

と言ってやった。




不倫相手は辞めていった。


私はなぜか残ることができた。


正直に話したからだろうか?



女性の後輩たちからは

「ちょっと仕事できるからって手を出してきてウザい」

だの

「私も身体の関係があったけど、飽きたらすぐ捨てられた」

だのであまりよく思われてなかったらしい・・・。



そんなやつの言葉にだまされた私も本来なら反省しないといけない。


けれど後輩たちから救世主のような扱いをされて調子に乗っていた。


会社もクビにならなかった。


私に運気が来ていると思っていた。


このままきっと悠太とも元に戻れると思った。




・・・・だから反省するということを私はしなかったのだ。

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