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7/11

7:当たり前の日常

悠太と別れてから私は職場近くの古いアパートに住むことにした。


職場には離婚したと言っただけだった。


もちろん、同僚と不倫したからという理由は言わずに。



職場とアパートを往復する日々。


不倫相手は、私との不倫なんてなかったように普通にふるまっている。



―『君は素敵な女性だ』

―『妻と別れて、君と一緒になる』

―『身体の相性もいいみたいだね』

―『愛してるよ』



私はこの言葉に舞い上がってしまった。

舞い上がった結果、大切な人を失った。



私をだまして、平然としている不倫相手。



今すぐぶちまけたい。という思いもある。



だが、そうしてしまったら



私も白い目で見られてしまう。



だから、そんなことする勇気はない。




*******




悠太と復縁したい。


その思いが大きくなる。


失って初めて悠太の大切さを身に染みる。



仕事が私より先に終わったとき、悠太はご飯を用意してくれていた。

私が仕事が早く終わったときはご飯を作った。

「美味しい」といいながら食べる悠太の顔が好き。

寝る前にそれぞれの職場の愚痴を言いながら晩酌した。

休日はたまにおでかけした。



当たり前で幸せな日常。

それを私は一時の快楽で手放した。




でも手放したならまた手を伸ばしてつかめばいいんだ。




私は悠太のいるところへ向かう。





*******




悠太はそこに住んでいた。


引っ越しもしていなかった。


私は思った。



―もしかして、私のことを待ってくれていたのかな。



引っ越ししないのは私のことを待っているから。

職場まで言わなかったのは、私に情があったから。



私はそんなとても妄想染みたことを思っていた。




インターフォンを押す。



ガチャと扉が開く。



悠太の顔が見えた瞬間、私は言う、



「ごめんなさい、私ともう一度やり直してください」



きっと許してくれる。



そんな愚かな期待を抱いて。




沈黙が流れる。




悠太はうーんと唸っている。


そしてなにかぶつぶつ言っている。


『1000万』とか『誠意』とか『メジャーリーガー』という単語が聞こえたけど・・・。



「あの・・・悠太?」



私は思わず不安になって声をかける。




「なんの用ですか?椎名さん」

「う、あのその」


離婚したから、旧性で呼ばれるのは仕方ないこと。

悠太はきちんとけじめをつけているだけ。


でも諦められない。



「どうか、もう一度やり直してください」



勇気を出して言う。



そして沈黙が流れる。



とても長い長い沈黙・・・



お願い、何か言って悠太。




「外に居られてもあれですし、一旦お入りください」



家に入れてくれた。



これできっと許してくれる。



私は愚かな期待を抱いて、家に入った。


プロ野球が開幕しましたね。

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