6:夫が不倫相手に殺されたので自殺しました
ここから妻視点です。
悠太が死んだ。
いや、殺された。
私の不倫相手だった男に。
私が不倫したから?
だとしたら実質私も殺したようなもの?
身勝手な理由で不倫して。
大切な人を手放して
手放したものを取り戻そうして
そして、大切な人が死んだ。
・・・私って、生きる意味あるのかな?
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「んでお前は自殺したってわけか」
目の前のなんとも形容し難い生き物が言う。
あれ?私は死んだはずでは・・・・
「あっ、お前は死んでいるから安心しろ。自殺は成功だよ。」
なんかノリが軽い・・・・気がする。
なんなんだろ、この生き物。
「不倫してそれで失ったものに縋った結果が自殺か。正直ウケるぞ。」
私はムッとした。
けど、事実だし何も言い返せない。
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「離婚だな、藍花」
「わかりました」
私はそういうしかなかった。
「全くどうして被害者面ができるのかねぇ・・・」
悠太がつぶやく。
多分今のは悠太の心のつぶやきだろう。
彼は心の中で思ったことを無自覚に口に出してしまうことがある。
「不倫した時点でこうなることは覚悟してただろ、腹くくれ」
私は職場の同僚と不倫した。
最初は仕事ができて頼りになる人だと思った。
そして一緒に食事にいった。
それを繰り返すにつれてそういう関係になった。
最初に問い詰められたときは、私は愚かにもシラを切った。
でも証拠を見せられた。
それは言い訳もできない位のものだった。
その証拠を前にして私は混乱した。
自分が悪いのに「悠太が寂しい思いをさせたから」と悠太のせいにした。
・・・そこから彼は容赦なかった。
彼の出す証拠に成す術がなかった。
親にも白い目で見られて。
お金も支払って。
なぜか彼は職場には伝えなかったけど・・・
彼の最後の情けだったのだろうか?
「金、時間、全てを無駄にしたなぁ・・・・」
彼の悲壮なな呟き。
私が不倫して離婚したから・・・。
彼は私との時間が『無駄』だと思ったのだろうか。
「子供いなくてよかったよ」
ショックだった。
「・・・ごめんなさい悠太。」
私はそれしか言えなかった。