黒騎士
スキルの検証が終わったところで俺は森を出ることにした。
理由は二つある。一つ目は世界を見て回ること。二つ目は強くなることだ。
一つ目の理由としては、せっかく異世界に来たんだからいろんなものを見て回りたいから。
二つ目の理由は、俺が転生したのは魔物。いつ人や他の魔物に倒されるか分かったものではない。生きるためには強くなるしかない。そのためには戦ってレベルを上げるしかないのだが、この森の主だったキラーベアがランクDだったことから、この森の魔物では俺のレベルを上げ、進化まで持っていくには時間がかかり過ぎからだ。
以上の理由から俺は生まれた森を離れた。向かう方角は【虫の勘】スキルで西の方が良い気がしたから今はそちらに向かって歩んでいる。
〜2時間後〜
歩き続けた結果、ついに森を抜け街道にでた。しかし俺の目の前には異世界物の定番である馬車襲撃事件が起きている。
豪華な馬車を鬼と豚顔の魔物が十数匹で襲っている。まあまずは鑑定でもするか。
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名前:なし
種族:オーク
年齢:2
ランク:D
【スキル】
・繁殖・怪力・棍棒術
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名前:なし
種族:オーガ
年齢:3
ランク:Cー
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案の定オークとオーガだったがオーガの方は同格のせいでスキルまではわからなかった。
普通ならオーガと、オークが十数匹いる状況なら逃げの一手だが、俺は進化してからまだ全力で一度も戦えていない。ここらで自分の限界を知っておくのも良いだろう。
それに馬車を守っている騎士さん達もそろそろ限界っぽいしすけだちするか。
何て思っているが実際は戦いたいだけだ。この体になってから体の奥から闘争心が溢れてくるようになった。
そろそろ我慢も限界だからいっちょここらでストレス解消と行きますか。
せいぜい俺を楽しませてくれよ。害獣ども。
〜護衛の騎士さん視点〜
「陣形を乱すな!なんとしても馬車を守りきれ!」
部下達に激を飛ばしながら目の前のオークを斬りつける。
何とか馬車を守りきれているが、陣形を突破されるのも時間の問題だろう。
オークどもだけなら何とかなっただろうが、問題は先ほどからスキをみては嫌らしい攻撃をしてくるあのオーガだ。
始めはオークどもが三十匹程度で油断しなければ問題はなかった。オークを倒し二十匹ほどになって来た時に奴は現れた。
始めにオークが減り、油断してきていた新人のケインがやられた。
奴は森から飛び出しケインの顔を殴りつけた。殴られたケインは数メル吹き飛び木に叩きつけられて止まった。
遠目から見てもケインは原型を留めておらず、おそらく顔を殴られた時点で死んでいたことがうかがえる。
次にケインの近くにいたロルスが犠牲になった。
ロルスはケインが殺られた事に激昂し、オーガに斬りかかったがオーガはその一撃を素手で弾き、抜き手を放った。
抜き手はロルスの胸を穿ちロルスを絶命させた。
その後俺はオーガに一撃いれたが、【硬腕】のスキルではじかれてしまった。
オークを捌きながらオーガにも気をつけなければならない。
その上仲間が二人減ったために残りの騎士は俺を含めて8人。
オーガは俺が抑えているが、俺が殺られれば一気に今の状況は悪化し馬車のカイン様も殺されてしまう。
(クソ、このままじゃすり潰されるのも時間の問題だ。何か切っ掛けさえ有れば…この状況を打開できる何かが…)
その時だった。
ズドン!
「何だ…?」
突如森から何かが飛んできた。
土煙が少し晴れるとそこには黒騎士が立っていた。
「何者だ!?」
黒騎士は何も答えずこちらを見ている。そして土煙が完全に晴れた時に俺は気づいた。
「腕が四本だと…」
黒騎士には腕が四本あった。鎧に見えていたのは外骨格だったのだ。
黒騎士は俺から視線をはずしオーガを見た。
「ゴァ?」
突然現れた黒騎士に戸惑うオーガ。その時だった。
「ガァ!」
ガガギィン!
黒騎士の影から黒い剣が二本飛び出し、オーガに襲いかかったがオーガは【硬腕】で弾き返した。
「キキキキキ」
黒騎士はまるで面白いとでも言う様な声を出した。
黒騎士は四本ある腕に影の長剣を生み出した。
「ゴアアァァ!」
「ギチチチチィィィィ!」
黒騎士とオーガは咆哮をあげぶつかった。
黒騎士は四本ある腕を高速で回転させ、まるで暴風の様な斬撃をくりだす。オーガは【硬腕】で斬撃を防いでいるが、腕以外の場所から血を流し防戦一方である。
「ゴガアァァ!」
オーガが叫ぶとその体が一回り大きくなり、体色が真っ赤になった。
オーガの固有スキル【激怒】だ。理性を失う代わりに身体能力を大幅に強化するスキルだ。
それでもオーガが劣勢なのに変わりわない。黒騎士の周りに数多の影の剣が発生し、オーガを切り刻んでいく。
オーガが剣の嵐から抜け出せなくなった時、オーガの足元の影が突き上がった。
突き上がった影の槍はオーガを一直線に貫いた。まるで磔刑に処された罪人のように。
「キキキカカカカ!」
黒騎士は勝鬨をあげるように咆哮した。
それを見て俺は気づいてしまった。奴には勝てないと。
黒騎士は死んだ者には興味はないとばかりに、俺たちに視線を向けてくる。
「魔物よ。俺はお前には勝てないだろう。しかし必ず一矢報いてみせるぞ!」
俺は決死の覚悟で剣を握る。睨み合いが数秒続いた。
「ギチチチ」
パチパチパチ
黒騎士はまるで賞賛するように手を叩いた。
黒騎士は要は済んだとばかりに俺たちに背を向け、西へと去って行った。
「助かったのか?」
俺は呆然とそう呟いた。




