翡翠の鷲
「ギィィ!キガガ!」
(速いな!いいぞトウタ!)
『恐縮です。』
トウタ達を仲間にした後、再び西に歩き始めた時にトウタが『主の負担を軽減するのが我らの役目』と言い出し、背中に乗るように言ってきたので乗せてもらった。
俺の全速力よりは遅いが、かなりの速度で長時間走り続けることができるため西へ進む速度はかなり上がった。
その上トウタの黒光りする美しい外骨格を鑑賞することができるのだから素晴らしい。
今は森を抜け広大な草原を疾走している。吹き付ける風が心地良いが、森とは違い遮蔽物がなく隠れる場所もない。
「ゲァァァ!」
そのため時折空から、無粋者に目をつけられることもしばしば。
上を見れば翡翠色の鷲がいた。翡翠色の時点で普通ではないが、大きさも普通ではない。とりあえず【鑑定】
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名前:なし
種族:ゲイルエグル
年齢:3
ランク:Cー
レベル:15
HP:300/300
MP:500/500
筋力:Dー
敏捷:C
知力:D
器用:D
物理防御力:E+
魔法防御力:D
【スキル】
・風刃・風球・穿風・颶風・爪魔纏
【称号】
・なし
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・ゲイルエグル
翡翠色の体毛を持つ鷲型の魔物。風を操る事で多彩な攻撃を行う。四枚の翼に風を纏わせ飛行することでCーランクの中では随一の速度を誇る。
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・風刃、風球
魔力を消費し風の刃、球を射出する。
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・穿風
魔力を消費し貫通力の高い円錐型の風を発生させ、それを自由に操る。
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・颶風
魔力を消費し強力な風を発生させる。
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・爪魔纏
魔力を爪に纏わせることで攻撃力、防御力を上昇させる。
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体長は4メートル程、横幅は6メートル程ある。その上羽は4枚。
魔物だから、の一言ですむ話だがどう進化すればこんな風になるのやら。
『鳥の分際で我が主を見下ろすとは…殺す。パーン。』
『は〜い。くらえ〜。』
ギギギィィィィ!
パーンが羽を擦り合わせることで神経に影響を与える【怪音波】を放つ。
ガラスを爪で引っ掻いた音を数十倍大きくしたような音が響く。魔蟲種には効果のない音だか、魔蟲種以外には絶大な影響を与える。
「ケギャア!?」
【怪音波】の影響で空中で体勢を崩す巨鳥。
『堕ちろ。』
ドドドドド!
トウタが背中に無数に生えている剣鎧を【射出】する。
「ケアァァ!」
ゲイルエグルもさすがに剣鎧をくらうのはマズいと思ったらしく、【風球】を放ち剣鎧を撃ち落としていく。
『ヨソミ…ゲンキン』
進化時に手に入れた【隠密】で気配を消していたハルパーがゲイルエグルの背後に跳び上がり鎌を振り下ろした。
「ギィィアアァァ!?」
左の翼を二枚とも斬り落とされ、落下するゲイルエグル。その直下には影の剣を持った俺がいる。
「ゲアアァァァァ!」
死なば諸共とでもゆうのか、【颶風】を纏い、顔の前に【穿風】を展開し、残った翼を体に巻き付けその身を一本の槍のようにして俺のほうに突っ込んでくる。
「キィキキ」
(悪あがきだな)
俺は落下してくるゲイルエグルに向けて剣を振るった。
その瞬間、影の剣が伸び落下してくるゲイルエグルを両断した。
「ケアァァ…」
ズドン!
真っ二つになったゲイルエグルを影に収納する。
「「「「ギィィィィ!」」」」
全員で勝利の咆哮をあげる。
魔蟲種の特性なのか、はたまた魔物の習性かはわからないが、戦闘に勝利した後は雄たけびをあげたくなるんだよなぁ。
さて邪魔物も排除したし西に向かいますか。【虫の勘】のかんじから、もう少し先にレベル上げに最適な場所があるようだ。
「キィギギ」
(トウタ、出発進行。)
『行きます。』
三└(┐卍^o^)卍
「なんじゃありゃ。」
「ゲイルエグルが瞬殺でしたね…」
ゲイルエグルの討伐クエストを受けて魔の草原に向かっているとゲイルエグルが何かと戦闘をしているのを発見した。
初めはゲイルエグルが獲物を見つけて狩っているのだと思っていたのだが、結果的に狩られたのはゲイルエグルの方だった。
「Dーランクが最大の魔蟲が、4体とはいえCーランクのゲイルエグルを倒しちまうとわな。おまけにあの黒いのは魔法を使うとまできた。ホッパー、蟲人のお前はなんか分かったか。」
魔蟲種の言葉がわかる蟲人のホッパーの意見を聞いてみる。
「遠くてそこまで聞き取れなかったのだが、わかったことがある。」
「何がわかったんだ?」
いつも気難しい顔をしているホッパーがいつにも増して気難しい顔をしていた。
「魔蟲の王が生まれたかもしれん。」
「魔蟲の王だぁ?」
「ホッパーさん、魔蟲の王とはなんですか?」
冒険者になってまだ日が浅い魔術師のイルスがホッパーに質問した。
「イルス、魔蟲についてどれくらい知っている?」
「知能が低く、最大ランクがDーで厄介な能力を持っているとしか…」
「俺もそのぐらいの認識だな。だがなぁ、イルス。あいつら甘く見てると痛い目にあうぞ。実際俺は痛い目をみたしな。ガハハハ!」
あいつら、同ランクの魔物と比較してもステータスが高い上に、頭を完全に潰すまでなかなか死なねえんだよな。おまけに使うスキルは厄介な物ばかりだしな。
「その認識で間違いない。彼らがDーランクが最大なのは知能が低いため進化の条件を満たせないからだ。。正確には知能が低いのではなく本能が強いのだが、このさいそれはいいとしてだ、先ほど彼らは会話をしていた。」
「会話ぐらいどの生物でも同種ならできるんじゃねえか?」
「さっきも言ったが魔蟲は知能が低い。私たち蟲人が話かけても会話にならない程にな。しかしだ、あの4体は人と遜色ないレベルで会話を行なっていた。」
「それがなんで魔蟲の王に結びつくんだ?」
「我らの蟲人に伝わる昔話にこんな一節がある。『蟲の王顕現せし時、眷属たる蟲は人となる』とな。」
俺は訳がわからずイルスに視線を向けると、イルスもよくわからなかったらしく俺の方を見ていた。
そんな俺らの様子を見ていたホッパーが口を開いた。
「簡単に言うなら、魔蟲の王が生まれるとその配下の魔蟲の知能が人と同じレベルまで上がる。その上に、ランクの上限がなくなる。」
「あ〜、ゴブリンキングみたいなもんか。」
「魔蟲の王とゴブリンキングでは天と地程の差があるがな。」
「結局のところ同種の強化・進化を促す統率種の一種と言うことですか?」
「その通りだ。だがなイルス、ゴブリンキングと魔蟲の王とでは決定的な違いがある。」
「決定的な違いですか?」
「そうだ。ゴブリンキングはゴブリンと言う単一の種族の統率種だが、魔蟲の王は魔蟲と言う種全ての統率種なんだ。」
ホッパーの説明を聞いてもしっくりきていないイルスにホッパーが例えをあげる。
「イルス、アトラ・ナクアとフィルマメントフライは知っているか?」
「はい。『深淵潜み』と『神速の蒼』の異名を持つSランクの魔物ですよね。」
「『深淵潜み』や『神速の蒼』は過去に存在した魔蟲の王の眷属の生き残りと言われている。」
「てことは、魔蟲の王が生まれるとSランクの魔蟲がゴロゴロ湧いてくるってことか!?」
「可能性としてはあり得る。だが言い伝えによれば魔蟲の王はとても穏やかな性格で怒らせない限り安全だと、族長は言っていた。」
「その情報は信用できるのかぁ?」
「大丈夫だ。なんせ族長は500年前に当時の魔蟲種の王と会ったことがあるそうだ。」
ホッパーの言葉を聞き愕然とするイルス。普人族の平均寿命を考えればわからなくはないが。俺だって鬼人族だから200年ぐらい生きるからな。まあ蟲人は何の蟲人かで寿命が全く違うからな〜。
「とりあえず帰ってギルドに報告だな。」
「手を出さないように釘を刺しておかないとだな。」
「何故ですか?」
「族長が言っていたのだが、当時、魔蟲の王の怒りを買った国があったそうだ。その国は魔蟲の波に呑まれて滅んだそうだ。ロクな抵抗もできなかったらしい。」
「…洒落にならねぇな。まあ難しい事を考えるのはギルドの仕事だ。」
俺は踵を返し町へと足を進める。
「ロイズ。」
「んだ、ホッパー。」
「俺たちのクエストはあのゲイルエグルの討伐だが
あの黒いのが片付けてしまったから、クエスト失敗になるが大丈夫か?」
「何がだ?」
「お前のギルドの酒場のツケの支払いが今日だったはずだが?」
ホッパーの言葉を聞いて血の気がひいていく。
「ちなみにツケは金貨で2枚。払えなかったらギルド長と1ヶ月の模擬戦だそうだ。」
冗談じゃねえ、あの元Aランクの戦闘狂と1ヶ月の模擬戦だと?命がいくつあっても足りねえぞ。
「ホッパー。」
「断る。」
「まだ何も言ってねえだろが!」
「聞かずともわかる。イルス帰るぞ。」
「まってくれホッパー!俺はまだ死にたくない!」
「せいぜいギルド長との模擬戦をたの死んでこい。」
「嫌だあぁぁぁぁ!」




