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影蟲  作者: 童慈
彷徨う虫
10/11

深淵の騎士

新しく仲間になった三匹を連れてまた西へと歩みを進めようとしたその時。


『主…ハラ…ヘッタ』


トウタよりしゃがれた声が頭に響く。


「キキガキ」

(今の声は君か?)


俺は声の主であろうサイスマンティスを見る。


『ソウ…オナカ…スイタ』


俺は影の中から適当な肉を取り出しサイスマンティスの前に置いた。


『!?…カンシャ!』


かなり腹が空いていたのか俺が肉から離れるとすごい勢いで肉を食い始めた。


『主よ、できれば我にも肉を頂けないだろうか?』

『僕も欲しい!』


「キィー」

(いいぞ。ほれ。)


『美味い。感謝します主よ。』

『美味しい〜。ありがとう主。』


三匹が肉を食っているのを見て、俺も腹が減っていたことに気づきその場に腰を下ろし、肉を食べることにした。


時間的な余裕ができたので三匹のステータスを確認してみるか。


ーーーーーーーーーーーーーー

名前:トウタ

種族:剣鎧百足

年齢:2

ランク:D+

レベル:1

HP:400/400

MP:200/200

筋力:D+

敏捷:D

知力:Dー

器用:Dー

物理防御力:C

魔法防御力:C

【スキル】

・剣鎧生成・転輪・突進・飢餓耐性・射出・虫の勘

【称号】

・蟲王の眷属・名持ち

ーーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーーーーー

名前:なし

種族:サイスマンティス

年齢:2

ランク:Dー

レベル:60

HP:200/200

MP:250/250

筋力:Dー

敏捷:Cー

知力:Dー

器用:D

物理防御力:E+

魔法防御力:E+

【スキル】

・鋭刃・忍び足・加速・飢餓耐性・虫の勘

【称号】

・蟲王の眷属

ーーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーーーーー

名前:なし

種族:ノイズクリケ

年齢:2

ランク:Dー

レベル:49

HP:150/150

MP:400/400

筋力:Dー

敏捷:D+

知力:D+

器用:D

物理防御:Dー

魔法防御:Dー

【スキル】

・怪音・騒音・快音・撃音・虫の勘

【称号】

・蟲王の眷属

ーーーーーーーーーーーーーー


[一定回数の鑑定を行ったことにより鑑定が詳細鑑定に進化しました。]


ーーーーーーーーーーーーーー

・詳細鑑定

ランク差、実力差に関係なく鑑定したもののステータスを知ることができる。

ーーーーーーーーーーーーーー


詳細鑑定は鑑定の純粋強化版のようだ。


さっきトウタに名前をつけたらネームドモンスターになったって聞こえた後に進化したのは何故だろうか?


調べてみるか?鑑定:ネームドモンスター。


ーーーーーーーーーーーーーー

・ネームドモンスター

名前を持つ魔物の総称。名前を持つ魔物は名無しの同種の魔物とは一線を画す程の力を持つ。名前をつけられた魔物はその時点でのレベルを無視し進化する。

ーーーーーーーーーーーーーー


なるほど。だから名前をつけた途端に進化したのか。


「キィキィキィ」

(サイスマンティス、ノイズクリケ君達も名前をつけた方がいいか。)


『ナマエ…ホシイ』

『欲しいです!』


「キィギ。ギギィ。」

(サイスマンティスはハルパー。ノイズクリケはパーンだ。)


ハルパーは有名なアダマスの鎌から。パーンはアポロンと音楽で競い合った牧神から。


[サイスマンティス、ノイズクリケの名前がハルパー、パーンに設定されました。進化を開始します。]


[進化が完了しました。サイスマンティスはハイドマンティスに、ノイズクリケはサウンドクリケに進化しました。]


『感謝。』

『ありがとう〜!』


「ギチチ。」

(どういたしまして。)


そうこうしている間に俺も含めて全員肉を食い終わったようだ。


(さて、そろそろ行くか。)


俺は下ろしていた腰を上げ西へと歩み始めた。











ー?sideー


重い体を引き摺り前へ進む。


この身を滅ぼせる者を求めて。


『侵せ、蝕め、穢せ、呪え、滅ぼせ。』


この身を蝕む穢れは全てを滅っせと囁く。


この誘惑に屈してしまえば、どれほどの無辜なる者達が犠牲になるか想像に難くない。


例えこの身は魔性に堕ちたとしても騎士の誇り、魂だけは堕ちぬ。


「こんな所にアンデットだと?」

「アンデットにしては武具が新しいですね。かなり最近発生したようです。」

「いつ発生したなどは関係ない。正しき輪廻に戻れず苦しむ魂を一刻も早くあるべき場所に返してやらねば。」


目の前に立ち塞がる四人の男女。


かなりの強者だ。彼等なら私を解放してくれるかもしれない。そう思った時だった。


「そうね。早く神々の元に返してあげるべきね。」


聞き捨てならない声が聞こえた。


神々だと。


それはいけない。その言葉だけは容認できない。


どれほど祈っても、どれほど願っても、どれほど叫んでも、どれほど縋っても、滅びゆく我が国を、我が主を、我が家族を、救わなかったあの神々の元に返すだと…


…巫山戯るな、巫山戯るな巫山戯るな巫山戯るな巫山戯るな巫山戯るなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナ


『『『「フザケルナ。」』』』


この身に宿った幾千幾万もの怨嗟が私の狂気に共鳴する。


「おい、急に様子が変わったぞ。」

「先程までが子供に思える程の圧ですね」

「あ…あれがアンデットだと。ありえぬ、ありえぬ!?」

「ガズ、急にどうしたの!?」

「あれはただのアンデットなどではない!アンデットが深淵の瘴気など発するものか!」

「深淵の瘴気だと!?てことは奴はアビスモンスターか!」


我が身に宿った全ての怨嗟が合唱する。


『『『我らを救わなかった人々を、国々を、神々を、世界を…』』』


『『『「滅ぼす」』』』


体から瘴気が溢れる。溢れた瘴気は周りに存在する全てを蝕む。


「やっこさん殺る気のようだ!覚悟を決めろテメェラ。こいつはココで仕留めるぞ!」




血の池の中で正気に戻る。周りに転がる先程まで人だった物。


嗚呼…またしても私は…無辜なる者を…善良な者達を…


誰でもいい…私を殺せる者は…私を滅っすことができる者は…


涯、主より頂いた聖剣は、今では血を啜る深淵の魔剣と化した。


命を奪い歓喜する私。そのことに悔恨を抱く私


果たして今の私の正気とは真に正気なのだろうか?


急がなければ。この魂がまだ人であるうちに。この悔恨を忘れぬうちに。


血に濡れた剣を引き摺り歩みを進める。


果たしてこの歩む先には私を滅す者はいるのか…いなければ私は…急がなくては。

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