準備 中編
まさか3構成になるとは思いませんでした…
「五勇教ですか?過去に世界を救った5人の勇者を神として信仰する教派がどうかしたんですか?」
トールがあまりにも深刻そうな顔をしてそれを呟いたので僕はその理由が気になって聞いてみた。
「あー、実はな五勇教とシェアト教は今現在も対立していてな、5年前にも宗教戦争が起きたんだ」
なるほどそれならトールが深刻そうな顔をするのも頷けるな。
「まぁ今はそんなことはどうでもいい。それで五勇教の騎士達の中にとんでもなく強い奴らが5人いたんだ」
「ほう、5人もですか」
「あぁ、そのうちの2人とは俺自身も5年前の宗教戦争で戦ったことがある。まず、1人目は『剣神』の二つ名を持つ奴だ。二つ名の通り剣の扱いがおかしい。何人で斬りかかっても誰1人とも奴の剣にすら触れられなかった」
「ならどうやって生き残ったんですか?」
僕の質問にトールは何故か目を逸らした。
「そ、それがな、そいつに殺す価値もないとか言われて殺されなかったんだ」
「……」
「さ、さぁ、もう1人だが、もう1人は『黒龍』という二つ名を持つ奴だ」
「なんか、二つ名聞くだけでヤバそうな奴ですね」
「実際にヤバかった。どういうスキルかはわからんが身体を一部や全身を龍化させるんだ。おかげで味方は何も出来ず一瞬で肉塊と化したぞ」
「そ、それはヤバイですね。それでそいつからはどうやって生き残ったんですか?」
「あー、えーとな?奴が龍化を始めた瞬間にこれヤバイと思って逃げたんだ…」
(なるほどなるほどつまりは仲間を見捨てたということか)
「まぁ,そういうことだ。そして、それと同等の奴らがあと3人いるということだ」
「なるほどわかりました。ありがとうございます。それじゃそろそろみんなを起こしてあげてくれませんか?」
トールはきょとんとした顔をした。
「何言ってるんだ?」
「いやだからトールさんの後ろに倒れているみんなを起こしてあげてください」
トールはきょとんとした顔のまま後ろを振り返って
「あ、悪りぃ、てっきり忘れてた」
(いや忘れてたじゃねぇよ。あんた教育係でしょ)
「全員起きろ!!」
トールは地響きがしたのではと錯覚するほど大きな声でそう叫んだ。
結果としてクラスメイトは全員起きた。だが、またすぐに倒れた。何故なら
「全員起きたな?じゃあ,もう1戦いくぞ!今度は本気でかかってこい!」
トールがまた模擬戦を始めたからである。
僕はその模擬戦でクラスメイトが3分も持たずに戦闘不能になったのを見届けてからその場所を後にした。
僕がその次に向かったのは王宮の中にある巨大な図書館である。何故図書館に来たかというとホルアド迷宮で出ると言われている魔物の特徴を知っておこうと思ったからである。
僕は魔物が載っている本を取って、空いていた椅子に座り魔物の特徴を覚え始めた。しばらく、覚えていると唐突に
「よっ、晃樹。頑張ってるな!」
トールと模擬戦をしているはずの一ノ瀬が声を掛けてきた。
「なんでお前がこのいるんだ?お前はトールさんの模擬戦でぶっ倒されているはずだろ」
一ノ瀬は何故か目を逸らした。
「何故だ?」
「あ、えーと、あはは」
「笑って誤魔化すな。なんでここいるんだ?」
「じ、実はな、トールさんにボコボコにやられまくってるうちに命の危険を感じたので気配遮断を使って逃げてきた」
「…」
「……」
「…‥‥」
「なんか言ってくれよ!」
「いやなんか言えと言われても言うことがあるとしたらトールさんに突き出していいか?ぐらいだし」
「そ、それはやめてくれ
「そ、それはやめてくれ俺がトールさんにさらにボコされるから」
「ぷっ」
一ノ瀬の反応に僕は思わず笑ってしまった。
「おいマジで言わないでくれよ?」
「わかったわかった」
「それで何を見てるんだ?」
一ノ瀬はそう言いながら僕の見ている本を覗いてきた。
「ふーん、魔物の本か、なんでそんなものを見てるんだ?」
「いやだって一応僕は司令塔だし、魔物の弱点とかは把握しておいた方がいいだろ」
「まぁ、確かにな、でもそれって訓練の前日にやることじゃなくね?」
「いや、前日でも平気だし前日でも覚えられるだろ」
「いや無理だから、ていうかそんなことできるのお前だけだから」
「そんなもんなのか。まぁいいや」
「いいやよくないな」
「「ッ!?」」
僕と一ノ瀬は声のした後ろに振り向いた。そこには
「ここで何やってるんだ?一ノ瀬」
綺麗な綺麗な笑顔をしたトールがいた。
「ひっ!な、なんでここに脳筋が!?」
(あ、こいつ終わったな)
「誰が脳が筋肉でできてるって?」
「あ、いえ、なんでもありません!」
「そーかそーか、とりあえず訓練場に戻ろうな?」
「い、いや今は時間的に昼休憩の時間じゃないですか?」
「いやいやお前は訓練を抜け出して魔物の本を見ているほど明日の訓練のことを考えてるんだろ?なら俺も張り切ってお前に訓練をしてやらないとな!」
「え、いや、あはは」
「よし!そうと決まれば訓練場に行くぞ!」
そう言ってトールは一ノ瀬の首根っこを掴み、引きずって図書館を後にした。
「た、助け」
途中一ノ瀬が僕に助けを求めてきたが、この状況で逆らえそうもなかったので一ノ瀬に手を振るだけにしておいた。
「ちょ、た、助けてくれよぉ〜」
そう言いながら一ノ瀬は強制的に訓練場に戻って行った。残された僕は昼食を取りに食堂に行くことにした。食堂は何故か1人しかいなかった。
「…」
「…なんで?」
「な、何がなんでよ!べ、別にいても何も問題ないでしょう!」
そう何故か食堂には花蓮しかいなかった。
「いや、別に問題はないがなんで1人なんだ?もしかして、実は友達いなかったのか?」
「な、そんなわけないでしょう!友達くらいいるわよ!」
「そ、そうか。じゃあなんで1人なんだ?」
「い、いやそれは…」
何故こうなったかは少し遡ることになる。
「ふーなんていうかもう模擬戦やっても意味なくない?」
そう言って話しかけてきたのは私は親友の真鍋遥だ。
「そうね。でも経験は積んでおいて損にいと思うわ」
「そうね。愛しの彼にもいいかっこを見せれるように模擬戦はやっておいて損はないわね」
「そうね…て!べ、別に私は晃樹のことなんかなんとも思ってないわよ!」
「愛しの彼が早坂君だとは一言も言ってないわよ?」
「ッ!?」
「図星ね」
「わ、私も晃樹を早坂晃樹だと言った覚えはないわよ!」
「いや、早坂君以外に晃樹を名前の人はこの異世界にはいないわよ」
「…
「図星ね」
「も、もうわかったわよ!」
「ふふふ相変わらず花蓮は反応が面白いわね」
「私の反応を見るために私をからかわないでよ!」
「ごめんごめん。お、噂をすれば愛しの彼よ」
遥の視線を追うといつもは違う訓練場にいるはずの晃樹がいた。
「あーあそんなにすぐに頬を真っ赤に染めちゃうほど好きなのになんであいつは気づかないのかな」
晃樹は何故かクラスメイトでおそらく1番イケメンであろう。えーと、もうイケメンでいいや、と話をしていた。しばらくするとイケメン君は頷き
「もう1戦お願いできますか?」
騎士達は全員私達を絶望の表情で見上げた
(そんな顔で私達を見ないで…)
「いきなり愛しの早坂君にいいかっこ見せるチャンスが到来したじゃない」
「ッ!?」
私は思わず晃樹の方を見てしまった。
結果として私は騎士の人を瞬殺してしまった。まぁ、イケメン達よりは遅かったが
しかし、晃樹は私のことは見ていなかった…
ていうか、私が倒して晃樹を見る頃には晃樹は訓練場を去り始めていた。
「もう!」
「はぁ〜、なんで早坂君は気づけないのかねぇ」
遥は呆れながら私にそう声をかけてきた。
「ふん」
「あ、そうだ。あとで一緒に食堂行きましょう」
「いいわよ」
そうして私達は昼まで訓練をし、食堂に向かった。
「私ちょっとトイレに行ってくるわね」
遥がそう言ってトイレに行ったしばらく後に
「…」
「…なんで?」
何故か晃樹が食堂に来た。私しか食堂にいないときに
忙しい。書く時間をなかなか確保できない。
次で準備期間は終了です。そのあとはいよいよ特別訓練に入ります!何構成になるかはわかりませんが楽しんでくれたら幸いです。