作戦会議 後編
「いや、聞き間違いじゃないよ。俺は早坂に司令塔を頼みたいんだ」
「え、なんで?」
僕の質問にイケメンは爽やかに笑いながら
「君はとても頭がいいし、どんな時でも冷静じゃないか。そういう面も含めて俺は君を司令塔に推したいんだ」
僕はそれを聞きながら
(は?え?いや、嫌だよ。そんな責任重大な役割。そもそも面倒臭い。たしかに頭だけならクラスで1番かもしれないけど異世界の知識はゼロなんだけど?)と色々なことが頭を巡ったがここで断るとさらに面倒なことになると思ったので
「わ、わかったよ。司令塔を引き受けるよ」
そんな感じで司令塔を引き受けることにした。僕が引き受けると返事を返した途端にイケメンは
「じゃあ、ここからは君が仕切ってくれないか?」と言ってきた
「は?いや、ちょっと待ってなんでここから僕が仕切るの?」
「だって君が司令塔なんだから君が仕切ったほうがいいだろ?」
「それはわかったけど、それならなんで最初に司令塔を決めなかったんだ?」
「あ、ごめん。そうだったね」
イケメンは珍しく自分の非を認めた。珍しいこともあるんだな
「じゃあ、まずみんなに聞きたいんだけど司令塔が僕になることに納得が行かない人は手を挙げて、別に怒ったりしないから」
そう聞いても誰も手を挙げなかった。
「じゃあ、僕が司令塔になるってことでいいんだね?」
みんなの顔を見ながらそう言うとみんな一斉に頷いた。
「OK。じゃあ、まずはじめに前線のことだが、前線は最初は3人でやってもらうが何体か倒したら少し後ろに下がって他の前線向きの人と交代してほしい。交代するといっても何かあったらのためにすぐに前線に復帰できる場所にはいてほしい。同じように支援組も同じ人ばっかりではなく違う人とも交代してくれ。なお、交代の指示は僕が出す。だから、僕は前線が常に見渡せる支援組のすぐ後ろにいたいと思うけどいいかな?」
僕は陣形の改善をしながら自分の位置について全員に確認を求めた。みんなは僕の位置について僕が言った理由で納得したのか反対意見は出なかった。僕はそれを確認すると
「魔法の撃つタイミングなどは基本的には全部僕が出す。ただし、僕が指示に追われているときに他のモンスターが違う方向から襲ってきたらそのときのその場の人間に任せる」
僕はそれを一人一人に伝わるように全員の目を見た。みんなはそれに頷いた。
「よし、じゃあ、今日はこの辺で解散していいよ」
そう言うとみんなはぞろぞろと食堂から出て行った。そんな中一ノ瀬は僕に絡んできた。
「大変な役割になったもんだな」
「まぁ、そうだけど僕はこのくらいでしか役に立つことが出来ないからな」
「まぁ、お前のことだ。それなりに上手くやるんだよ?」
「いや、今回の役割はそれなりにじゃダメだろ。それなりにやって誰かが死んだらシャレにならねぇ」
「あー、たしかにな。まぁ、なんとかなんだろ。俺達は全員がチート能力だからな」
「僕を除いてな」
「そうだな」
「おい、そこはなにかしら慰めるとかのフォローをしろよ」
「おいおい、珍しく動揺してんのか?」
「別に動揺なんてしてない。なぜそう思うんだ?」
「いつものお前ならスルーしているところをしなかったからな」
「お前人のことよく見てんな」
「そうか?まぁいいや。とりあえず頑張れよ晃樹」
「サンキュー」
そう言い返すと一ノ瀬が俺の後ろの方を見て、
「ところで彼氏と話さなくていいのか?」
そう言った。僕が後ろを見ると、顔を真っ赤にした花蓮がいた。
「べ、別に晃樹は彼氏なんかじゃないわよ!」
「別に僕は花蓮の彼氏なんかじゃないから」
2人揃ってそう言うと一ノ瀬は何故か笑いながら
「そうか、そうか、わかったよ」
そう言いながら一ノ瀬は部屋をあとにした。一ノ瀬が部屋を出たのを確認すると
「司令塔なんかして大丈夫なの?」
早速花蓮が僕が司令塔になったことに関して聞いてきた。
「うーん、大丈夫かどうかはわからないけど精一杯やるつもりだよ」
「精一杯やるつもりとかじゃなくて、なんで前線近くにわざわざ行くの!?」
「そりゃあ、前線が見えなきゃ僕だって指示の出しようがないし」
「そ、そうだけど!前線近くにいるのよ?死ぬ可能性がそれだけ高いってことなのよ!」
「そうかもしれないけど、指示が出せる位置にいないといけないし、それに昨日お願いした
だろ?僕のことを守ってくれって」
僕がそう言っても花蓮は何かを求めるような目をしていたがやがて諦めたのかため息をして
「はぁ〜、そうね。昨日私が守るって約束したものね」
僕は花蓮が納得してくれたのを見て、ほっと息を吐いた。
「ただし!もし私が違うことで手一杯だった時に自分がヤバイと思ったらすぐに前線近くから遠ざかること!わかった!」
「あ、はい」
花蓮の有無を言わせぬ命令に僕は思わず頷いてしまった。花蓮は僕の返事に満足したのか、すぐに踵を返して部屋から出ていった。僕は花蓮が出ていった後に自分が何について頷いてしまったのかを理解した。
「あれ?これ意外とまずい事になったんじゃね?」
僕は1人そう呟いた。
晃樹と花蓮がそんなことを話している時にある人族は誰にも気づかれる事なく王宮を抜け出し、近くにある森林の深くに入っていった。そして、ある程度進むと
「出てきなさい」
急にそう言い出した。誰もいないところに向かって
否,そこには確かに人がいた。しかし,クラスメイトがいくら目をこらしてもその者は見つけられなかっただろう。その人族ははそれを能力も無しに見つけ出した。それは男の実力が高いからか?否、単純にその人族はのスキルが成した技である。その人族はが見つけた者は浅黒い肌に赤い角を生やし、人を挑発するような眼をしていた。その者の名はカール・グリフォン。魔族であり、その魔族の中でも「疾風」の二つ名を冠した実力者である。
「相変わらず貴方様のそのスキルはぶっ壊れですね」
カールは見た目に反して敬語でその人族に話しかけた。カールは見た目の通り軽い男だが,自分が目の前の人族に少しでも無礼を働けば自分の首が飛ぶくらいのことはわかっていた。それほどまでに目の前の人族は破格の強さなのである。
「カール。貴方程度の隠蔽スキルで私のスキルから逃れられるわけないでしょう」
その人族は少し呆れを含めた口調で返した。
「そうっすね。それで今回はやはり例の勇者達のことですか?」
「流石カール。察がいいですね。その通りです。今回は勇者達を明後日行われる特別訓練で如何に減らすかです」
「なるほど、呼び出されたのが俺だけなのを見るとやっぱりこの任務は俺がやると言うことでいいんですか?」
「その通りです。改めて今回の任務を言いましょう。召喚された勇者達を貴方の力で減らす、出来ることなら殲滅してください。疑問点があるなら今質問しなさい」
「質問いいですか?」
「どうぞ」
「任務の内容はわかりましたけど、勇者達の主なステータスとかの詳細は無いんですか?」
「ありますよ。今から全員分のステータスを言っておくので暗記してくださいね」
「え?い、今ここでですか?」
「当然です。実は勇者達の特別訓練が明後日になりました。だから、こちらも早く準備しなければいけないのです」
「なるほどわかりました。ではお願いします」
「まずは1番ステータスの高い勇者から…」
しばらくするとその人族はカールに全員のステータスを教えきった。
「覚えきれました?」
「もちろんです。わざわざ手間を掛けてくださりありがとうございます」
「いえいえ、これも主様のためですから。ではくれぐれもお願いしますよ」
そう一言言い残すと姿が見えなくなった。1人残されたカールは呆れた表情しながら
「やれやれ相変わらずあの人のスキルはぶっ壊れだな」
そう独り言を言うとカールは作戦を行う場所に向かった。