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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

INNOSENCEシリーズ

初めての遊園地デート

作者: 南條 樹

『おめでとうございます!』


そんな声を聞いてやっと気付いた。暑い中、親の代わりにとやってきた福引会場で、一等賞の遊園地ペアチケットを当てたのだった。

やった! 狙っていたペアチケットが当たった! 早速、葉月にメールしなきゃ。


私と葉月が付き合い出したのは、まだ最近の事。私が、葉月と葉月の従姉妹が、付き合っていると勘違いしたのが切っ掛けだった。

勘違いからとはいえ、葉月と恋人同士になれたのは嬉しい。

そんな事を思い出しつつメールを送ったら、葉月から電話が掛かってきた。


『もしもし?』

「もしもし 葉月、どうしたの?」

『いや、遊園地のペアチケットが当たったって本当なの?』

「うん、そうだけど。もしかして疑ってる?」

『そ、そんな事ないよ? 由希とデート出来るから嬉しいなって』

「……まぁ、いいや。私も葉月とデートしたいし。それじゃあ明後日とかどう?」

『いいよ』

「じゃあ、決まりだね! 当日は家まで迎えに行くよ」

『待ってる』




デート当日。


「葉月、おはよう」

「由希もおはよう。お母さん、行ってくるね」

『気を付けて、行ってらっしゃい』


葉月と手を繋ぎながらバス停まで向かっていた。遊園地はバスで行ける距離の所にある。

海沿いに建てられた遊園地は、夏は海水を取り入れたプールで遊べたりもする。近くにはショッピングモールもあるから、人が大勢集まりやすい。


「遊園地でデートって定番だけど憧れもあったんだよね」

「そうなの? 由希って見た目と違って結構乙女なのね」

「見た目と違うって、どういう意味よ」

「そのままの意味? あ! 着いたみたいよ」

「むぅ……」


バスを降りた私達は、目の前の光景に若干驚きつつつも、入場口を目指した。


「多いと思ったけど、ここまで多いとはね……」

「私達もチケット無かったら、この人達と同じ様に並ぶ事になってたのか……」

「そういう事だね。それよりも早く行こう。折角のデートなんでしょ?」

「うん!」


入場口で係の人にチケットを見せ園内に入っていく。何処のアトラクションを回るかは、入口に置いてあったパンフレットを見ながら悩んでいた。横から覗き込む様に見ていた由希が何かを見付けたらしい。


「葉月、これ楽しそうじゃない?」

「VRを使ったアトラクション……?」

「屋内みたいだし、ペアで遊べるっぽいよ?」

「う……ん、由希はそれが良いの?」

「葉月と二人きりになれて、尚且つ面白そうなのはコレかなと思って」

「……由希って、 私の事好き過ぎるよね」

「葉月は違うの?」

「……バカ。ほら、早く行くよ。早く中に入れたのだから、いっぱい遊ぶのでしょ」

「バカって……」


先に歩き出した葉月を追い掛け、後ろから抱き着く。


「由希、後ろから抱き着くなんて危ないでしょ」

「照れてる葉月は可愛いね」

「照れてない!」


じゃれ合いながらも目指すアトラクションがある施設に着くと、お客さんは疎らで直ぐに入れた。

係りの人から説明を受け、私達は専用ゴーグルを受け取ると、指定された部屋に入り椅子に座りゴーグルをかければスタートだ。


「うわぁー! マジでリアルと一緒だ」

「由希、ボサっとしてないで行くわよ」

「葉月はこの景色観ても何も思わないわけ?」

「……私が由希と同じ様にはしゃいでいたら、何時までも先に進めないじゃない。早く目標地点を見つけないとクリア出来ないよ」

「分かってるよ」


VRの世界とはいえ、何が起こるか分からない。だから葉月の手を握りながら行くのは普通だと思っていたら、何と葉月の方から腕を絡めてきた。


「珍しい事もあるもんだね」

「二人だけだもん、これ位良いでしょ。それから目標地点はあそこじゃない?」

「はいはい。確かにソレっぽいから、合ってると思う」


何も迷う事無く、目標物の前までやって来た。何かと戦うとかソレっぽい事は何も無い。もう少し期待していたのになぁ。取り敢えず目当ての鍵は、ここに書かれている問題を解くと貰えるらしい。

問題文を読もうとしたら、既に葉月が全問クリアさせていて、無事に鍵をゲットしていた。


「早くない?」

「由希が遅いだけ。それに、これは私の方が向いているでしょ」

「何か釈然としないのだけど」

「ほら、次へ進むゲートが開いたわよ」


葉月に促され、渋々次の目標地点へ向けて歩きだす。勿論、腕を組んだまま。

暫く歩くと、次の目標地点へと辿り着いた。やはり戦闘系とかトラップ系とか何も無い。若しして本当に何も無いとか?


「何か勘違いしている様だけど、トラップは未然に回避してるわよ」

「え? そんな事出来るの?」

「何の為に私が由希と腕組んでるのよ」

「スキンシップじゃないの?」

「それは勿論だけど、トラップに引っ掛からないようにしているだけよ」

「うぅ……それじゃ、私一人だとトラップに引っ掛かると言ってる様なものじゃない」

「まぁ、そうね」


葉月の言葉に少し凹みつつも、今は目の前のお題に取り掛かる事が先だ。幸い今度のお題は体力系。これは、葉月より私の方が向いているから早速スタート。

ものの数分でクリア。鍵を受け取って最終となるゲートを潜り抜ける。今度は私でも分かる様な仕掛けがあり、それらを葉月と協力しながら躱していった。

そして、最終目標地点の前まで辿り着いた。


「これで最後だね」

「うん」


書かれていたお題は、二人の愛を確かめる物だった。


「二人の愛を確かめる……葉月」

「な、何?」

「私は葉月の事が、誰よりも一番大切で大好きです。これからもずっと一緒に居て下さい」

「はい。 私は、何があっても由希とずっと一緒に居たいです」

「葉月、ありがとう」


そして見つめ合い、互いの唇同士がくっついた。

どうやら無事クリアだったみたいで、最後の鍵もゲットした。

ゲートを開け潜り抜けるとENDと書かれた文字が浮かび上がっていた。

私達はVRのゴーグルを外すと、改めてお互い見つめ合い、顔を寄せ何度もキスをした。




屋内施設を後にして、私達は次のアトラクションへ向かった。その後、色々なアトラクションに乗って遊んだり、お昼ご飯は屋台のメニューを二人で分け合ったり、そして今は観覧車の中で隣同士に座り街の景色を堪能していた。


「由希。今日は、ありがとう。とても楽しかった」

「そっか、なら良かった」

「由希はどうなの?」

「私も、勿論楽しかったよ。それに葉月の気持ちも改めて知れたし」

「それは私も同じ」


結局、VRのアトラクションで集めていた鍵は、ゲーム終了後に係員の人から一枚の封筒と引き換えに渡した。中に入っていたのは、何時の間にか撮られていた、私と葉月が腕を組んで歩いていた写真だった。

もう少しで観覧車は一番高い所に着く。私達は抱き合うと、誓う様にキスをした。



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