第78話 調達をする
―― 日本・○○大学病院。ロビー ――
私とアイリーンは博士を送り届ける為に、地球へと転移をすると、アイリーンが時間停止魔法を使ったままであったので、未だに地球はモノトーンの世界のままであった。
「さぁ着いたぞ。お疲れじゃったな。ワシらはこれからタクトに頼まれた物を調達しに入ってくる。このまま時間を停止したままにしておくから、その間だけでも少し寝てはどうだ?」
博士さんは、昨日夜遅くまで、クリスティーヌさんの相手をしていた様だ。疲れた表情をしていて顔色が少し悪い。
「お気遣いありがとうございます。そうしたいのはやまやまなのですが、頼まれた物を調達しに行く前に、少しお時間を頂けませんか?」
「ん?どうしてじゃ?」
「いえね、クリスティーヌさんが、義手や義足に興味があるみたいなので、もし宜しければでいいのですが、複製をしてフィーナさんに持ち帰って貰えればと思いまして」
「そう言えば、タクトも体の不自由な元冒険者の村に行って帰ってきた時に、同じ事を言っていました。義手や義足があれば障害者でも仕事や普通に生活できるのにって……」
「そうか。タクトがそう望むのなら、手助けをするとしようか」
アイリーンはタクトの事がよっぽど気にいったようで、迷い無く答える。
『私は複製魔法は使えないから、少し妬けるな……』
そうと決まると、気休めかもしれないが、博士さんに治癒魔法を掛けてやると、少し顔色が良くなった。
「んっ!かなり楽になりましたよ。この地球でも魔法は使えれるのですね」
「ええ。魔力と神力は違いますからね」
「そうなんですね。納得しました」
博士さんは元気になったようなので、中央病棟の連絡通路から整形外科のある病棟へ移る事になった。
連絡通路を歩いていると、時間停止をしているので、日本の人々が中途半端な位置で止まっていたりして見ていると結構面白い。モノトーンの世界なだけあってまるで彫刻のようだ。
もし当たったりしたら、事故になりそうなので、その人達を避けながら移動をする。
その後、整形外科と書かれている病棟に移ると、博士さんはリハビリ室と書いてある扉を開け入っていった。
私達もリハビリ室へ入ると、患者さんと看護師さんなどが、全員が途中停止していた。幼い少女が手摺をもって歩く練習をしていたり、男性の看護師さんが、若い男性を車椅子から補助をして立たせようしていたり、結構な人がリハビリをしていて驚いた。
「患者さんが、若い子ばかりで驚きましたか?」
「顔に出ていましたか……もっと老人の方が多いと思ってのですが、若い方ばかりでビックリしましたよ」
「日本は車社会ですからね、交通事故も多いのですよ。便利な物が仇となっている典型的なパターンです。次に多いのは、仕事の作業中の事故ですか……運が悪いと拓人のように死んじゃいますからね」
博士さんの言うとおり、便利な物は時として凶器になり、仕事中の事故では死ぬ事だってあり得た。
だからこそ、タクトは作業を教える時、危険予知の実施や、リスクアセスメントやハインリッヒの法則などを必ず教えて、安全作業を徹底していたのだと、ここでやっとその重要性を理解した。
博士さんは、その後も色々と道具などの説明をしながら、歩いて行くとサンプルルームと書かれた部屋に入っていった。それに続いて部屋に入ると、義手、義足、特殊な作業用の補装具などの見本が、ひと目で分かるように陳列されていた。
「これは、各メーカーさんが、補装具とはどんなものかを患者さんに説明し易いように置いていった、サンプルばかりです。日常生活から仕事、スポーツにいたるまで、目的に合わせた物がありますので、これらを全部複製して下さい。きっと役に立ちますから」
博士さんがそう言うと、アイリーンは、それら全てを複製し、私はアイテムボックスへ収納した。
「サイズは人によってまちまちなので、拓人に調整して貰って下さい。使用方法については、お二人はリンクと言う魔法が使えれるようなので、今から思い浮かべますので、そこから知識を引き出して貰えると助かります」
そう言えば、博士さんに地球に来た時、既にリンクの魔法の事は話しをしていたので、説明をする必要は無いので助かる。
博士さんは、頭を差し出すと、アイリーンは神界に帰るので、私は博士さんの頭に手を置きリンクを繋げる。
すると、博士さんが受けた義肢と呼ばれる補装具の講習や、各メーカーさんとのカンファレンスの中身の内容が瞬時に頭の中に入ってきた。
「博士さん、ありがとう。とても参考になったわ。タクトにちゃんと教えるから任せておいて」
「クリスティーヌさんにも、忘れずに伝えておいて下さいね」
「勿論よ。そっちも任せておいて」
こうして、この病院での用事は全て済ませたので、ロビーへと戻り、今度はタクトに直接頼まれた物を調達しに行く事にする。
「それじゃ、ワシらはタクトに頼まれた物を調達してくる。後から、パソコンを持ってくるから、専門書のダウンロードの事は頼んだぞ」
「ちょっと待って下さい。連れないじゃないですか。僕も連れて行ってくださいよ」
「じゃが、パソコンに専門書をダウンロードしてくれと、タクトに頼まれておるのじゃが……」
「その役目は引き受けますから。それに、ダウンロードには、時間は掛かりますよ?膨大な量ですからね」
「時間が掛かって当然か……それでは、連れて行く代わりに、後日ワシがパソコンを引き取りに来る。専門書のダウンロードが終わったら連絡をくれるか?」
「勿論ですとも。最初からそのつもりでしたよ!」
「それでは仕方が無い。まずは、そうじゃな……米の産地から行こうか?お勧めはあるか?」
「それでは、新潟の魚○が有名ですよ。ちょっと待って下さい。地図を出しますから」
そう言うと、博士はスマホを取り出して、マップを出して調べ始めた。
『本当に面倒見がいいのだから。流石はタクトの親友なだけはあるわね』
「やっぱりな~。時間が止まってるからオフラインだよ。よし!北魚○は、ここらへんだな」
博士はスマホの画面と座標をアイリーンに見せ、大体の場所を指定した。
「よし。それじゃ行くとしようか」
アイリーンが転移魔法陣を出し、博士が指定した場所へ転移をすると、米の産地ある目的地に到着をする。
『半袖じゃ、少し肌寒いわね』
周りを確認してみると、そこは山に囲まれた地域であり、高地の為か時間が止まっていても寒く感じた。
国道○○号線と書いてある大きな道路の脇にある、チェーン脱着場へと転移をしたみたいだが、数歩その場を離れると一面そこは田んぼが広がっていた。
「うむ。風景はモノトーンじゃが見事じゃな。綺麗に苗が育っておる」
「これをどうやって持って帰るのですか?」
「そうじゃなー。苗だけ持って帰るのもあれだ、土地ごと複製するとするかな?」
「えっ!そんな事が可能なんですか?」
「無論だとも!何度も言うが、ワシは最高神であるぞ!見ておれ」
アイリーンはそう言うと、神々しく光り神力を溜める。神力が手に集中すると手を広げ「ほい!」と、いつもの事ながら簡単に詠唱を済ませる。すると、5町(500m×500m)程の田んぼが切り取られた様に空中に浮いた。
流石の私も博士さんも、これには驚愕して腰を抜かしたように尻餅をついた。
「おおすげぇ~。下から見ると、まるで空飛ぶ都市みたいですね!」
博士さんは尻餅をついたままそう表現をしたが、まさにそのとおりで、複製された田んぼは、元の田んぼがそのまま残っていて、空飛ぶ田んぼは、この角度からは見えないが、水、草までもが切り取られた様で、土ごと浮いている。
「どうじゃ、見事であろう?この魔法は、知的生命体が生まれた時に使用される魔法じゃ。この魔法があるからこそ、神の世界にある種や草木が各世界に行き渡るのじゃ」
「話には聞いた事はありましたが、まさかこんな感じだとは思いもしませんでした」
「そうじゃろう。ワシも最高神になったばかりのころ、初めて見たときは腰を抜かしたもんじゃ」
アイリーンは懐かしそうにそう言うと、切り取られた田んぼは、理屈の合わないアイテムボックスに、吸い込まれる様に収納された。
こんな感じで、次は北海道で夕○メロン、秋田県で比○地鶏と烏○鶏、三重県で○阪牛、福岡県であま○イチゴ、鹿児島で安○芋と黒豚など、全国各地を巡り、次々と品種改良された苗や物を設備ごと複製をして、アイテムボックスに収納していった。
「タクトに頼まれてない物まで、用意しちゃいましたが、宜しかったですか?」
「うむ。構わぬ。ワシがアノースに邪魔した時に、美味しい物が食べたいからのぅ」
「神様ならいつでも来て食べれるんじゃないですか?」
「地球観光には制約があって、そうもいかんのじゃよ。これがな」
そう、これは後から聞いて知った話だが、例え神様でも、制限無く地球に降臨する事は禁止されているみたいであった。もし許可が出たとしても24時間以内と定められているようだ。
これには、事情があるらしいのだが、教えてはくれなかったので諦めた。
「それにしても、そのアイテムボックスはどう言う仕組みなんですか?空間魔法では生き物は無理だと理解していますが?」
「そう言えばタクトには説明をしたのじゃが、フィーナには説明がまだだったな」
この後、アイリーンは、このアイテムボックスのがなぜ生き物を入れる事が可能なのか説明をしてくれた。理解はしたが、亜空間を自由に操れる最高神ならではのこの方法に驚いた。
「まさか、亜空間と繋げるなんて、凄い発想です」
「俺からも質問があるんですが、生き物を複製して生態などの影響は無いのですか?」
「うむ。大した影響は無い筈じゃ。確かに、複製された生き物が同じ世界にあるとなると、バタフライエフェクト効果やパラドックスが生まれ、下手をすればこの世界に影響を及ぼす可能性もある」
「それじゃ……」
「話を最後まで聞くのじゃ。高度な知能を持つ人間ならともかく、家畜や苗は環境の方が大事じゃからな。それに、何の為に時間を止めたままにしていると思う。それらを起こさせない為じゃ。異世界や亜空間に移しさえすれば、その法則は適用されん。だから安心をすると良い」
「なるほど、納得しました。小説を読んでいるせいで気になっていたのです」
「流石はタクトの親友じゃな。因みに生態系を壊さない為にアノースには存在しない害虫や、菌などは除去してある。こちらも心配はせぬで良いぞ」
「おみそれしました」
こうして、全国各地を回り終え、タクトの要望の品は揃ったので、博士を病院まで送る事となった。
「博士さんがいて助かりました。リンクである程度は知識があるものの、そこまで詳しくなかったので……」
「そう言ってもらえて良かったですよ。それに俺もいずれはアノースの住人ですから、アイリーン様と一緒で美味しい物を一杯食べたいですしね」
「うむ。食欲は大事じゃからな。それでは博士。世話になったな。ワシらはそろそろ移動せねばならぬ」
「これから、お二人はどうされるのですか?」
「盗んだ訳ではないが、これだけ一杯の物を日本から頂いたのだ、土産を含めて、それなりの消費をして帰るつもりじゃよ」
「そうですね。散々バーベキューとかでタクトの食料を消費していますから、折角なんで、色々な物を沢山持ち帰ります」
こんな日がくるかと思い、通販カタログを見て勉強をして良かったと思った。それにバーベキューばかりしているせいで、醤油や米など在庫は少なくなっていたので補充もしたい。
「お金はあるのですか?なんなら都合しますが?」
私は、アイテムボックスから刻印されている、1Kgの金のインゴッドを2本取り出し博士さんに見せた。
「この通り、金のインゴッドなら沢山ありますので、換金しますからご安心を」
博士さんは、気を使ってくれていたが、アノースに降臨する時に、お金に困るといけないと言う事で、神様から各異世界共通で価値のある、金のインゴッドを大量に頂いているので問題は無い。
「神様相手に、いらぬお節介でしたね。それではパソコンは俺が用意しますよ」
私は、博士さんに金のインゴッドをアイテムボックスから3本取り出すと、3ヶ月間の間に必要な物を買って貰うようにと手渡した。
「ん?あっ忘れてた!」
「おい!何かあったか?」
金のインゴッドを博士に渡してから、何気なくアイテムボックスに入っているリストが目に入ると、以前、神様が日本に降臨した時に換金したお金が大量に残っていて、アイテムボックスの中に仕舞い込んでいた事をすっかり忘れていた。
「お騒がせしてすいません。リストの一番下にあったので気が付かなかったのですが、大量の現金があったのを忘れていました」
「そ・そうか。結果オーライじゃないか。それじゃ、ショッピングにレッツ・ゴーじゃな!」
こんな事から、十分過ぎる程の現金があったので、アイリーンは時間停止魔法を解いたのであった。
「それじゃ、ワシらはショッピングに行ってくる。また帰りに連絡するよ」
「お二人さん。水臭いですよ。ここまで来たんですから、最後までお供します。今から早退届けを出して車を回してきますので、ここで待っていて下さい」
そう言って、博士さんは事務局と書かれた扉に入って行った。
「しかし、やつも律儀じゃのぅ。正直助かるが……」
「ええ。あれだけ面倒見がいいからこそ、クリスティーヌさんは惹かれたのでしょうね」
これは、本音であった……実際これは、話の内容が何度も聞こえたが、熱心に医療を指導したり説明していただけで、教え方も丁寧で、高圧的な態度や自慢なども一切耳にしなかった。
「うむ。最初は女たらしの軽薄なやつだと思っておったが、教えている最中は口説き文句の一つも聞こえてこなかったのぅ」
「それだけ、医療に対し真摯に向き合っているんでしょうね」
「まったく、そのとおりじゃの。やつは信頼における人物だと分かっただけでも、もうけものじゃよ」
こうして、暫くアイリーンと話をしていると、博士さんからスマホに連絡があったので、ロビーから外に出る。博士さんは正面玄関で車の後部座席の扉を開けて待っていてくれた。
「さぁ、お嬢様方、参りますとしますか」
「ふふふ……調子がいいけど、気が利くわね」
「うむ。まったくじゃ」
博士さんが用意してくれた車に乗り、車は目的地に向かって走り出すと、車は大通りへと出た。
「しかし本当に凄いわね。アノースじゃ考えれないぐらい人が一杯だわ。それに、大きな建物ばかりで見上げてたら肩がこりそうだわ」
「そうじゃのぅ。この国は人口密度が高いので、こうして高く大きな建物を沢山作って、大量の人間を収納しているのだよ」
「そうなんですね。これだけ大きければかなりの人数が入りそうですね」
外の風景を見ながら、車は走っていくと、まずは、近くにある博士お勧めのショッピングモールへと向った。
ショッピングモールへと辿り着き、立体駐車場に車を止めると。エスコートをするように博士さんは車の扉を開けてくれた。
「さぁ、着きましたよ。拓人やフィーナさんが欲しそうな物は大体ここで揃う筈です。ここである程度の物は揃えましょう」
私達は、博士さんに先導され、ショッピングモールへと入ると、タクトと博士さんが苦手としそうな、化粧品、下着、香水、洗面用具、市販薬などを、手当たり次第買いまくり、車に行ってはアイテムボックスに収納しまくった。
「さ・流石にやり過ぎじゃないですか?店員が少し引いてましたよ」
「あら。タクトが後から後悔するぐらいなら、手当たり次第買わなきゃ損だと言っていましたよ?」
「そりゃそうですけど、中○人でもここまでしませんって」
こうして、小物を全て買い揃えると、今度は、業○スーパーと書かれた店で、調味料やお酒など、先程と同じように爆買いする。
「フィーナ!楽しいのぅ。こりゃストレス発散になるわい!」
「ええ。なんだか本能というか、買えば買うほど満たされますね」
もはや博士さんは、何も言わず、ただレジの前で呆然と立ち尽くしていた。
その後も、農業専門の店で簡単な農具や、玄米を在庫がある限り買い占め、大型の電気店に行くと、家庭用の精米機や顕微鏡、店員の口車に乗せられてマッサージチェアまで購入してしまった。
「こんな所かな?」
「そうじゃの。流石にこれだけあれば、タクトも喜ぶじゃろう」
「そりゃそうでしょ。ざっと見ただけで、俺の年収ぐらい買いましたから……それにマッサージチェアどうするんですか?明日の午後に、私の住まいに運び込まれるんですが_」
「また、パソコンを取りにくる時に持ち帰るよ。それまで預かっててくれないか?礼は必ずしよう」
アイリーンがそう言うと、博士さんは諦めた表情になり、それを了承した。
車に乗り込み、発進をすると、博士さんがお腹が空いたと言うので、最後の〆に、タクトが日本にいた時に大好物だったと言う、うなぎを食べに行く事になった。
うなぎ屋と呼ばれる専門店の駐車場に着き、車の扉を開けると、なんとも香ばしい醤油の焦げた匂いがした。
「こ・これは、とても旨そうな匂いがするのぅ」
「ええ。昔し話にうなぎの匂いだけで、ごはんを食べると言う話が、あったぐらいですからね」
こうした話をしながら、うなぎ屋さんに入り、奥の座敷に通されると、お茶とおしぼりが提供され、アイリーンが折角だからと言うので一番高いメニューを頼んだ。
注文をして、暫らく経つと店員さんが、お盆に重箱と呼ばれる容器を乗せやってきた。
「お待たせしました。うな重2段重ねを、3人前お持ちしました」
重箱とお吸い物をそれぞれに机に並べられ「それではごゆっくりと、お召し上がり下さい」と店員さんは座敷から離れていった。
重箱を開けると、朱色の内塗りの重箱の中に、美味しそうに焼きあがったうなぎが出てきて、うなぎの匂いが、空かない筈のお腹を刺激する。
「二人ともお箸の使い方は分かりますか?なんならフォークかなにか頼みますけど?」
「私はタクトに教えてもらったから大丈夫よ」
「ワシもじゃ。隠れてこっそり日本に来た時に、箸の使い方は習得しておる」
「流石ですね。これは山椒と言う薬味です。お好みでどうぞ」
博士さんはそう言うと、割り箸を割って手渡してくれて、さり気ないこう言う優しさに、クリスティーヌさんは惚れたのではないかと確信をする。
『そう言えば、タクトも私の分の缶ビールは必ず開けてくれたっけ』
そう思い出しつつも、目の前にあるうなぎの誘惑には勝てず「いただきます」と言って、うなぎを口に運んだ。
「なにこれ?美味しい!」
私は、世の中にまだこんな美味しい物があったのかと思いながら、その後は無言で食べ続けた。
こうして、うなぎとお吸い物を全て平らげると「ごちそうさまでした」と言って重箱の蓋を閉めた。
「ああ美味しかった!この味が忘れなくなりそうです」
「最高じゃったのぅ。タクトが大好物なのが分かるのぅ」
「ええ。バーベキューが一番だと思っていましたが、甲乙つけ難いぐらい美味しかったです」
「でしょ。うなぎは高級魚ですからね。日本人でも1年に何回もは食べられないんですよ」
「そうか。うなぎも生きたまま、アノースに連れて行くか?」
「それはよした方がいいですよ。何せうなぎ職人になるには、串打ち3年、裂き8年、焼き一生と言われるくらい難しいという話ですからね」
「そうか。そりゃ残念じゃ。それじゃ、タクト達にお土産で弁当でも頼んでやってくれないか?」
「もう頼んでありますよ」
私もアイリーンと同じ事を思い、少し期待はしていたが、その様な理由があるなら仕方がない。
こうして、生きたままのうなぎを諦め、会計をして弁当を受け取ると、目的は全て達成されたので、この場所からアノースに帰る事にした。
「今日は、本当にありがとうございました。こんなにもスムーズに事が進んだのは、博士さんのお陰です。あっそうだ、余った現金は差し上げますので、役立てて下さい」
私はアイテムボックスから、現金の入ったかばんを取り出すと、車の後部座席に置いた。
博士さんは、かばんの中身を確認すると、驚きつつも呆れた顔をしていた。
「あの~。田舎に新築の家が買える程の現金を預かっても、3ヶ月で使い切れる自信が無いのですが……」
「私が持って帰っても、使い道がありませんから全て差し上げます。なんなら、寄付しちゃって下さい」
「それなら、何とか考えて、拓人の両親にでも渡せるようにします」
「それは良い考えじゃな。金では子供を失った悲しみは消えぬであろうが、無いよりマシじゃからのぅ」
「そうですね。タクトもきっと喜ぶでしょう」
それからアイリーンと博士さんは、一週間後、パソコンとマッサージチェアを取りにくると約束をして、博士の事やテイムのスキルの事について話をする為、アノースの神界へと転移をした。




