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異世界魔刀士と七変化の眷属   作者: 来夢
第3章 王国の旅編
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第72話 王都での戦い③

―― シルバーノア 艦橋 ――


≪フィーナの視点≫


アイリーンからの魔力の助力を得て、シルバーノアは王都を離れ上空10000mまで上昇をする。これには理由(わけ)があり、ワイバーンの飛行距離では上空10000mまで届かないからであった。


なぜそうしたか?と問われると、このシルバーノアの甲板には未だ敵が数人いて、魔法や武器などで扉を壊そうと、こちらに向かって攻撃を仕掛けているからである。まず、こちらを排除してからワイバーン戦に望みたい……そう言う思惑があった。


「くっそう!この結界はどうなってやがる!こっちの魔法がまったく効かね~」


「こっちもだ!さっきから扉を何度剣で斬っても全て弾かれる!」


「てめ~ら、愚痴を言ってる場合じゃね~!相手の魔力が切れて、結界が消えるまでの辛抱だ!構わず攻撃を続けろ!」


攻撃の合間にそんな言葉が聞こえて来たのだが、アイリーンは魔力ではなく上位互換である神力を充填したので、永遠にシールドプロテクションが破られる事は無い。


「攻撃が効かないのは分かっている筈なのに、あいつらいつまでやる気なのかしら。でもそろそろ邪魔だわね。排除してくるわ!」


私がそう言うと「どれ、ワシも付いていこうとするかのう」と、アイリーンも付いてくると言い出した。


『そう言えば……私の武器を一時的に貸しちゃったわよね……今ある武器は扇だけか……あっそう言えばタクトの武器があるじゃない!忘れていたよ』


「アイリーン。武器を用意するけど何がいい?」


「ん?ワシか?武器なんぞいらぬ。それにわざわざ出て行かなくても、ここで十分じゃ」


「そ…そうなんですか?それじゃ一体どうやって戦うと?」


「まぁ、見ておれ。文字通り赤子を捻るように処理してやろう」


何だか悪い予感がする……だが最高神の戦い方がどんなものなのかを、今後の参考にしたいので、無礼を承知でお手並みを拝見する事にする。


「分かりました。お手並みを拝見させて頂きます。ですが、やり過ぎには十分注意をして下さいね」


「うむ、分かっておる。見ておれよ……これが最高神の戦い方じゃ」


そう言うとアイリーンは目を閉じ、突如光り出すと神力を高める。


「ほれ!」


気の抜けるような、その言葉を唱える?と敵の一人は光に包まれ、なんと!赤ちゃんになってしまった。


「おい!突如光ったと思ったら、ペドラのやつ赤子に変わったぞ!」


仲間の男がそう言うと、赤ちゃんになった男はハイハイをし鎧から抜け出すと、仲間に何か訴えかけるように泣きながらすがり寄ってく。


「どうじゃ?面白いであろう?文字通り赤子にしてやったぞ?これなら人畜無害な人間になるであろう?記憶まで奪っておらぬから、余計に可笑しいがのう」


何も悪気も無く、笑いながらそう言うアイリーンのその言葉に、一部始終を見ていた私達は絶句した。


「ん?どうした?褒めてもいいぞ?」


「……やり過ぎではないですか?」


「そうか?殺すより無害にした方が、よほど人道的だと思うがのう?そうは思わぬか?」


「確かにそうですが、赤ちゃんとなると、誰が面倒を見るのでしょうか?」


「言われて見ればそうだな。それでは、元に戻すとしよう。ほれ!」


相変わらず、気の抜けた掛け声を発すると、再び赤ちゃんになった敵は元の姿へと戻る。


「お・おい一体何があった?」


ペドラと呼ばれていた男は、這いつくばった姿ですがり寄っていた男に問いかける。


「一体何があった!いきなりハイハイしか出来なくなって、言葉も喋れなくなったぞ!」


「お前の姿がいきなり赤子になって、びびったよ!これは夢の中なのか?」


「それよりお前、その格好!」


仲間のひとりがそう答えると、ペドラと呼ばれていた男は、自分が裸な事に気がつき慌てふためき、近くにあった自分のインナーウエアで即座に大事な部分を隠す。


「ははは……こりゃ、けっさくじゃのぅ!」


私には、アイリーンの笑いのツボが分からない……


「じゃ、次はあいつにしようか?」


アイリーンはそう言うと、再び神力を高め始め、神々しく光ると、今度は「スティール(強奪)」と唱える。


すると魔法攻撃をしていた敵は光り、その光はアイリーンへと戻ると手の平の上で消える。


「おい!今何があった!俺もペドラの様に光ったと思ったら魔法が突然使えなくなったぞ!」


「ひょっとして、魔法攻撃連発したから、新しくスキルでも習得したんじゃないのか?一度魔法を使ってみろ!」


「よし!分かった!」


光った男がそう答えると、魔法を詠唱をしながら何やら慌てている。


「アイリーン。今度は何を?」


「ん?言葉どおり、全てのスキルを強奪してやったわい。これであやつは、魔法どころかスキル全般を使えぬ。敵から奪ったスキルは、誰か代わりに付与が出来るから適任者がいるのなら言うと良いぞ」


あまりにも、使う神力の桁というか、思いつく事が神離れ?しているので、私はこの自重しない最高神にどうやって常識を教えたらいいのか考える……だが何も思いつかない……


「アイリーン様?これもやり過ぎでは無いですか?」


「まぁ良いではないか?どうせあの者達を排除して、魂を浄化しようとしていたのであろう?スキルを与えるのも神の仕事であるならば、剥奪するのも神の仕事じゃ」


「確かにそうですが……」


神達が決めた規則で、神や神の使徒を害する者や抗う者がいれば、干渉しても良いという決まりがあったのでこれ以上は言えない。


『けっこう緩い規則だし、異世界では禁止と言う決まりは無いからな……この規則は抜け道が多すぎるのが欠点なんだよな……』


神同士の会議でこういった規則は決められるのだが、神だけにモラルや倫理が外れている者などいないので、結構こういった規則の抜け道も多くて甘い。


「まぁ、そう言うな。地球では、神は人間に干渉してはならないと言う規則があるから、正直今楽しいのじゃよ」


「そう言えば忘れていました。地球ではそんな決まりがあると言う事を……まぁ、どうせ彼らは死を待つのみ。自重もへったくりも無いですね」


「うむ、分かってくれたか。それに命まで奪おうとはせぬ。遺恨を残さない為に、この世界の人間達に裁かせるのが一番じゃろうて……それに、今ここで神としての力を見せておけば、色々と後からやり易いのではないか?」


「と、言われますと?」


「ここで、これは神罰として思い知らせてやれば、あやつらが地上に戻った時に、皆にそう伝え、それがこの世界の民に伝わると思うのじゃ。間違っているか?」


「仰るとおりです。いたしかたありませんね……この甲板にいる敵はアイリーンにお任せします。どう料理してもらっても構いません」


説得する筈が逆に説得されてしまい、ミイラ取りがミイラになる。


『神に逆らうとどうなるか思い知らせるチャンスと言われれば、納得するしか無いか……』


こうして甲板にいる敵は、スキルと言うスキルを全てアイリーンに強奪され、途方にくれていた。


「じゃそろそろ、無力化もした事だし、行くとするかの。神の言葉を伝えにな」


アイリーンはサムズアップして、カッコよくそう言うと扉に向かう。


《ガチャガチャ》


「ん?何だこの扉?開かないぞ?反抗期か?」


『反抗期って!もっと適切な言葉があるでしょうよ!面白いから指摘しないけど……』


カッコよく出て行こうとして、開かぬ扉を何度も《ガチャガチャ》しながら、真剣な顔をしてそう言うアイリーンに笑いを堪えながら、セキュリティー・カードの説明をして手渡した。


「なるほどな……魔力パターンを利用したセキュリティーか……タクトもやるではないか?流石ワシが見初めた男よ」


少し頬を赤く染め、恥ずかしそうにしているアイリーンに、親近感を覚えた私は「ええ。本当に」と短い言葉で同調をすると一緒に甲板へと出る。


私とアイリーンが甲板に出ると、冒険者らしき敵グループはこちらを見て口笛を「ヒュー」と鳴らした。自分達の立場が分かっていないのが恐ろしい。


「誰か出てきたと思ったら、どちらも、すげ~美人だぞ!」


冒険者の一人がそう言うと周りの仲間達も相槌を打つ。


「よくもやってくれたわね!スキルを使えなくなったのは、神の使徒であるタクトに攻撃を仕掛けた罰よ!」


「うむ。正にそのとおりじゃ。お主達のスキルはワシが奪った。これは神に逆らった神罰じゃ。殺されないだけありがたいと思うがよい」


私とアイリーンはタイミングを合わせ、同時に神力を使い、神々しく光ると冒険者は色目から急激に目の色を変え跪く。


「ま・まさか本物の神様ですか!」


冒険者達は、ガタガタと震え「お許し下さい!まさか本物の神様だとは思いませんでした!」と言って突然祈り始めた。


『まぁ、そうなるわよね。人間相手に神力開放すれば……』


神が神力を解放すれば、神々しく黄金色に輝いて存在を示す事が可能である。神力の上下はあるが、強く光ればどんな悪人であっても跪き、手を合わせなければならないと思うのである。天使やタクトの様に神の使徒はこれに含まれない。


「まぁ。命まで奪わぬ。反省すると良い!」


こうして、無抵抗にひれ伏す冒険者達をフェルムとアイラに手伝ってもらい、敵を拘束し目隠しと喋れないように口にも布を縛る。少しトラウマだが、敵をレクトリスから奪った籠の中に入れ、そのまま家畜層の中に入れておいた。


「よし!これで片付いたから、次はワイバーン戦ね」


甲板は片付いたので、一旦シルバーノアを上空1000mまで降下させ、ワイバーンを湖に誘導する。


「下後方500mにワイバーン部隊を確認しました。数およそ20」


索敵をしていた、フェルムとアイラは尻尾を立てそう言ったので、作戦通り湖に向かい敵を迎え撃つ。


湖に到着すると、戦闘が苦手なアイラを艦橋に残し三人で甲板に出る。


「密集していては効率が悪いから、三方向に分かれましょうか?」


「うむ。それで良いが、ワシ一人で対処しなくて良いのか?」


確かにアイリーンの力なら造作もない事だろう。だが出来ればワイバーンをフェルムの従属にさせたい。


「スキルを強奪するのは一向に構いませんが、出来たらフェルムにワイバーンをテイムさせたいので、お手柔らかにお願いします」


「うむ。それではワシは、敵のやつらからスキルを奪うだけにしておこう」


「そうして頂けると助かります」


「フィーナ様。今現在ワイバーンは何者かによってテイムされています。おそらくあの数のワイバーンを従属させる事が出来るのは、魔人の中でも伯爵クラスかと……」


「そうね。それじゃ、その魔人を探して捕らえましょう?そうすればテイムを解かせてから、フェルムがテイムすればいいし」


「ええ。それなら可能です」


そう決まると、ワイバーンが接近してくるのが見えた。


ワイバーンは先程と変わらず口から炎、冒険者達はサンダーボールなど魔法攻撃を放ってくる。が、その度に、プロテクションシールドは神力に変わったせいか金色に光って魔法を無効化させる。


「フィーナ様、アイリーン様。魔人はワイバーン部隊の後方で飛んでいるやつです。見えますか?」


「勿論よ。倒すのは簡単だけど、捕らえるならどうやってこちらに呼び寄せるかが問題よね?」


「それでは、私が飛んで行き。やつを捕らえてきます。アイリーン様、もし良ければやつの攻撃魔法関連のスキルを奪って頂けませんか?」


「よし。分かった引き受けよう」


フェルムは隠蔽している翼を広げ、魔人の下へ飛んで行くと「貴様!!魔人なのにどうして悪い人間に加担する!魔人としての誇りは無いのか!」と、敵の魔人に問いかける。


「ふっ、魔人は忌み嫌われているのは知っておろう。今でも僻地に多くの仲間が追いやられているのだ。金を貰って復讐できるのだ、これ以上の好機があるわけないであろう」


「復讐なんてありえないだろう?共存を望む魔人も多くいる筈だ。おまえのその行動こそが、共存を望む仲間のがんばりを無駄にしている事になぜ気付かぬ」


「笑止な。おまえのような若造に何が分かる。これ以上は無駄な時間だ、取り敢えず死ね!」


そう魔人は怒りを込めて言うと魔力を手に溜めだした。その瞬間、アイリーンは「ほい!」と詠唱して魔人のスキルを強奪すると溜めた魔力は行き場を失い突然消失した。


「何が起こった!サンダーボール」


敵の魔人は、魔法を詠唱するが何も出ず狼狽えている。その瞬間「バーン」と音が鳴り、フェルムの雷神から放たれた雷撃で魔人は打ち落とされた。


気絶をして落ちて行く魔人を、フェルムは拘束しに急降下し始めると、魔人を受け止め甲板へ向って戻って来た。


その光景を呆然と見ていた冒険者に「おい!誰が攻撃をやめろと言った!直ぐに攻撃を開始せよ!」と敵側から聞こえてきた。


冒険者は素に戻ると、慌てて一斉に魔法攻撃を再開させた。


「まったくもって、懲りないわね!魔法が効かないって、もうそろそろ学習したら?馬鹿なの?」


ワイバーン欲しさに、こちらから攻撃をしないでワイバーンを目で追っていると、私の声が聞こえたのかワイバーン部隊は徐々にスピードを落とし甲板に降り始める。


ワイバーンは甲板へと降り立つと、敵全員がワイバーンから飛び降りてきて、私たちを包囲しこちらを睨む。


「おい小娘!痛い目にあいたく無かったら。抵抗せずに大人しくこの飛空挺を明け渡せ!」


「何言ってるのよ?あんた達の攻撃は一切効いてないのよ?寝言は寝てからいいなさいよ!それに、その顔どこかで見たと思ったら、ワーグとか言うおっさんじゃないの?アンジェ達に成敗されている頃だと思ってたけど、何であんたがここにいるのよ?」


「お・おおお・おっさんだと!それにおまえは!そうかあの時タクトの隣にいた女か!」


「顔だけじゃなくて、頭も悪いと思ってたけど、それくらいは覚えていたみたいね」


「何だと!この数を見てから喋ったらどうだ!ん?」


ワーグは、睨むのを急に止め、品定めをするようにこちらを見て、何やらにやにやし始めた。


「先程のエルフやお前も然る事ながら、そっちの女は更に美人だな。あんな死にぞこないのヤツなんか放っておいて、ワシの妾にならぬか?一生遊んで暮らさせてやるぞ」


「はぁ、あなたね!タクトが神の使徒と知っていてのこの所業なの?だとしたら神罰が下るわよ!」


「だから何だと言うのだ。やつは使徒であって神では無い!しかもそれも本当かどうか怪しいではないか?」


ワーグがそう言うと、私はの頭の中で「ブチッ」と何かが切れる音がした。だが、何か隣の方から恐ろしいまでの神力を感じたので見てみると、アイリーンが鬼の形相でワーグを睨んでいた。


「おい貴様!今の言葉、聞き捨てならんよのう。タクトは紛れも無く使徒であり、神にもなれる器なのだ。それを殺害しようと企て、この世界の神がわざわざ良かれと思ってタクトを遣わしたのに、疑いまでするとは。それに一生遊んで暮らせるだと?神の命は無限!自分の物差しで我ら神を測るな!」


アイリーンはそう言い、神力を全力で放つとアイリーンは全身眩いばかりに輝く。


「まっ、まさかおまえ!本物の神なのか!」


「ほぅ。人間風情がこの最高神であるワシをおまえだと?しかも神と呼び捨てか?貴様ほど神を愚弄するやつは神罰を下すしかあるまい!今更許しを乞うても許しはせぬ!地獄で後悔せよ!」


アイリーンはそう言うと「ほい!」と神力を放つと、ワーグは光りカエルへと姿を変えた。


『いくら神力の発動の言葉は何でもいいとはいえ、ほい!だけじゃ凄さが伝わり難いよ……』


ワーグが突如光り、カエルの姿になった光景を一部始終を見ていた冒険者は、瞬時にパニックになり、失禁する者もいれば、ひれ伏すもの、慌てて逃げようとする者に分かれた。


勿論、逃げようとする者に対しては、即座にフェルムが雷神で雷を落とし失神させた。


こうして、全ての敵を捕らえ、王都での戦いは終わったのである。




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