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異世界魔刀士と七変化の眷属   作者: 来夢
第3章 王国の旅編
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第54話 再び王城へ

―― ラッフェル島 ――


列車の試運転が終わると、農業用水路に使う予定の溝にコンクリートを敷き、いつでも川と接続できるように水門を設置して今日の作業を終えた。


町から鉱山までは直線距離で結ぶと、きっちり測った訳ではないが50kmの距離がある。


前回来た時は車で2時間掛けて移動をしたが、舗装されていない畦道を車で走るよりも、出来てしまえば直線距離を走る列車の方が早くて快適だろう。そう予想する。


「助かったよ。皆のお陰で予定の4分の1も進んだよ」


「お礼なんていらないわよ」


「そうですよ。もうこの島はタクト様の島なのですから、従者の私が協力するのは当たり前です」


「そう言って貰えると助かるよ」


そんな話をすると、ラルーラさんと約束をした、バベルの案内をする事にした。


転移魔法でバベルの塔へやってくると、ラルーラさんは、いきなり目の前に現れたバベルの塔に圧倒されていた。俺も圧倒されたので気持ちは分かる。


「ラルーラさん?大丈夫ですか?」


固まっていたラルーラさんに声を掛けると我に返った。


「ごめんなさい。あまりにも立派な塔なので、驚いて声を失ってしまいました。それに神々しいというのは正にこの事ですね。思わず手を合わせそうになりました」


そう話をしていると、背後から背中を「コンコン」と誰かが突っつくので、後ろを振り返るとアイラが困惑している顔をしている。


「いまさら言いづらいんですけど、私も塔の中に入るのは初めてなんですよ」


アイラは、あまり自己主張しないので気が付かなかったが、バベルに来る事自体が、初めてである。その事を今の今まで忘れていた。


「ごめん。あまりにも自然に仲間に入ったから、もう案内したと思い込んでいたよ。フェルムもそれならそうと言ってくれたらいいのに」


「私も忘れていました。面目ない」


「もぅ、肝心な所を忘れるなんて駄目じゃないのよ。まぁ、そう言う私も忘れていたから同罪だけどね」


俺達三人は、アイラに頭を下げて謝ると「そっ・そんな謝る必要はありませんよ。ずっと言だせなかった私が悪いんですから」と、首と手を横に振りつつ謙遜をした。


そんな、うっかりミスがありつつ、二人の入門登録を済ませるとバベルの中へと入る。


塔の中に入ると、二人はフィーナの説明を逐一驚きながら聞いていてた。俺も驚いた口だが、まだそれほど時間が経っていないと言うのに妙に懐かしさを感じる。それだけ充実した毎日を送っているのであろう。


それから各フロアを順に説明をしていくと、最後に屋敷に辿り着いた。


「ここが最後、私達の住まいよ。みんな喉が渇いたでしょ。屋敷に入って飲み物でも飲みましょうか?」


「喋り過ぎて喉が渇いたんじゃないの?正直にいいたまえ」


「ば・バレたか。まぁ、そんな感じだから、冷たいお茶でも出すから早く屋敷の中にはいりましょ」


そんな軽めのトークをしながら屋敷に入るとリビングに直行した。


リビングに入りソファーに腰掛けると、早速フィーナが用意してくれたアイスティーを飲んで一息つく。


「二人ともどうだった?気に入ってくれた?」


「気に入るもなにも、どれも素晴らしいの一言です。永住したいです」


「私も同意見です。まだ全て見ていないですけど、この屋敷の中もVIPルームをさらに広くした感じで居住性が良さそうですね。あっ、それと、屋敷にあった絵画や彫刻も素晴らしかったです」


「確かに。センスが良く、嫌味がなくとてもいい感じでした」


この後も、少し興奮気味でラルーラさんとアイラが交互で感想を言い合っている姿を黙って聞いていた。今後の参考にするためだ。


それから暫くすると「ブーン ブーン」と、ズボンのポケットの中から振動を感じた。ポケットの中に入れていたスマホを見ると、セットしたアラームとバイブ連動して鳴っていたので停止をする。


「そろそろ、夕食の時間だから戻るとしようか?皆がんばってくれたから、褒美ってわけじゃないけどバーベキューにしよっか?」


「ほ・本当に。やったね!流石タクト分かってる~!」


「ええ。がんばった甲斐がありましたよ!」


口にこそ出さないが、アイラとラルーラさんも嬉しそうな顔をしていた。二人とも好物なようだ。


「じゃ、そろそろ帰って準備をしようか」


「それじゃ、バーベキューへ、レッツ・ゴー」


「それを言うなら、シルバーノアだろうが!」


そう突っ込みを入れつつ、転移魔法でシルバーノアの自室へと戻った。


シルバーノアに戻ると、自室から出て、各部屋の不在プレートを確認しながら、食堂にも立ち寄ったが、シルバーノアには誰もいなかった。置手紙もそのままである。


何だか騙したようで申し訳ない気持ちと、感謝の気持ちが複雑に絡み合い、お詫びの印として食事に誘う事にした。まぁ最初から誘うつもりであったが……


そう決めると、急いでアイラにザバル男爵の屋敷に行って、バーベキューの話をしてくるようにお願いをした。


急ぐ理由は、サバル男爵の屋敷で食事の用意がされている筈だからである。その場合はアイテムボックスに収納し明日の夕食にするつもりだ。


「分かりました。大至急行って参ります」


「お願いするよ。もし食事の用意が準備されているなら、責任をとると言っておいてくれないか」


「畏まりました」


アイラが呼びに行っている間に、急いでバーベキューの用意をしていると、全員がシルバーノアへと帰ってきた。


「もう寝不足は解消されたかね?」


俺はもう大丈夫だと答え、夕食の準備をしていたであろうザバル男爵に謝罪をした。


「謝るのはワシの方じゃ。リバーシに夢中で食事の事を従者に指示をするのを忘れておったのでな。最悪町に出て食事をとろうかと話をしておったところだ。誘ってくれて助かったよ」


ザバル男爵をはじめ、全員がリバージやトランプの勝負に夢中で、全員が食事の事をすっかり忘れていたと話をされた。


しかも、従者も従者で、誰からも指示が無かったので、俺が用意するものだと思っていたらしい。今までの経緯を考えると従者の判断は正しいと思う。


そんな事もあり、バーベキューを始める前に出発をする。シルバーノアを上昇させると、丁度夕暮れ時であったので空は茜色に染まり、甲板はオレンジ色に照らされていた。


甲板にいる皆は、オレンジ色に染まる町並みを見ながら感嘆の声を上げる。


おお!いつ(デニス公爵)眺めても素晴らしい!絶景じゃ!」


ええ。この前(シュミット男爵)の王都を上空から眺めた時も感動をしましたが、今回の夕日も最高ですね。お前たちはどうだ?」


夕日が綺麗で(ミリンダさん)すね!感動しました!」


本当ですね(リリーさん)。生きてて良かったです!」


ミリンダさんとリリーさんは始めて見る上空から見る町並みに感動していた。


かくして、シルバーノアが上昇を終えると、自動運転になり王都に向って飛び始めた。艦橋にいたメンバーも出てくるとバーベキューは開始された。


それから、お茶を片手に肉を食べながら談笑をしていると、王子が顔を真っ赤に染めやって来た。顔の赤さは夕日のせいではないのは確かである。


「今日は酒を飲まないのか?」


王子はそう聞いてきたのだが、これから陛下に会いにいくのに飲むはずがない。


「はっ?今から陛下に説明をしにいくのに、何を吞気に飲んでるんですか!」


そう言うと王子は見る見る顔が青くなる。王子もまたリバーシに夢中で、どうやら王都に行って説明をすることを忘れていたらしい。


『それでいいのかよ!王子!』


そう心で突っ込みを入れ、呆れたのは言うまでもない。


そんなハプニングもあり、2時間は瞬く間に過ぎていく。すると。いつの間にか甲板が月明かりで照らされ今日も星が綺麗に輝いている。


夜空を眺めそう感じていると「皆さん、王城がまもなく見えてきます」とフェルムが艦橋のドアから顔を出し報告があった。


「王子、そろそろ王都に到着しますが酔いは醒めましたか?」


「ああ。大量の水を飲んだらなんとかな。それにしても相変わらずのスピードだ……感動すら覚えるよ」


それから数分経つと、甲板から王城が見えてきたので艦橋に戻り着陸の準備をした。今回は夜なので、いらぬ混乱を防ぐ為、隠蔽をして王城に乗り付ける事となる。


バーベキューの片付けをしなければならないので、今回はフィーナに留守番をお願いすることにする。共用のアイテムボックス持っているのはフィーナだけだからだ。


「利用して申し訳ないけど、後の事を頼んでいいかな?」


「別に構わないわよ。内容と結果が分かっている会議はつまらないしね」


そう返事が返ってくると、王城に行く以外のメンバーにバーベキューの方付けをお願いをする。


「それでは、皆さん行ってきます。申し訳ないですけど、方付けの方は宜しくお願いします」


「いつもごちそうになってばかりですから、これぐらいの事をするのは当然です。後の事は任せておいて下さい」


ローラさんが胸を叩きそう言うと、皆も笑顔で頷いた。


それから、皆に見送られながら城門の付近へと降りると、こんなに早く帰ってくるとは兵士も思っていなかったようで、慌てて陛下の下へ報告に行こうとしたのだが、王子が兵士を呼び止めた。


「取次ぎは無用だ」とまぁ、身内というか城が住居なので当然ちゃ当然である。


城門から通路を歩いていると、デニス公爵が何か企んでいるようにほくそ笑んでいた。


「おじ様、また何かよからぬ事を考えているでしょ?悪い顔してるわよ」


「バレたか。今日はどうやって驚かせようか考えていたのじゃ。おおそうだ!久しぶりにあれにしよう!兄上はどんな顔をするのじゃろうか。楽しみじゃわい」


アンジェがそう問うと、悪びれも無く笑顔でそう答える。失礼だがまるで子供だ。


「もぅ……もう少し大人になって下さいよ」


「アンジェがそんなこと言うとは……少し寂しいのう……昔は≪今日はどんな悪戯するの?面白いから手伝う≫っと、悪戯に加担しては、喜んでいたのになぁ。まさかこんな日がこようとは思いもよらなかったよ」


『いつもって!毎回そんな事してたら流石に陛下だって分かるだろよ!それにしても、一体どんなイタズラ考えていたんだろうか?……まぁ、あの子供の親なのだから、きっとろくでも無い事だろうな』


そう思うと溜息が漏れる。


執務室に繋がる階段を上がると、偶然にも宰相であるロンメルさんが執務室から出てきた。


「これは、驚きました。皆さんお揃いで一体どうかされましたか?」


「兄上に、急用が出来たので至急会議室に来るように伝えてはくれないか?」


「分かりました。それでは皆さんは会議室でお待ちください」


ロンメルさんが執務室に戻ると会議室に向かう。


会議室に入り、席に腰掛けるとコーヒーが配られたので、飲みながら少し待っていると、陛下と王妃様がやってくると、全員が立ちあがり一礼をする。


「畏まった挨拶はよい。それにしてもまた随分と早い帰りであったな。ロンメルが申しておったが急用とは一体なんだ?」


「そうじゃな。ここはワシが説明しよう」


「はい。では宜しくお願いします」


そう返事をすると、デニス公爵は頷き、領主会議で話合われた内容と結果を説明し始めると、最終的には、今回ここに来た目的であった騎士や兵士の派兵を要請した。


「話しはよく分かった。そうじゃのう。条件がある」


「兄上、その条件とはなんじゃ?」


「おいおい。ここで兄上はやめてくれないか?皆の前では調子が狂う」


「それでは、兄上、そんな事より条件とは?」


『ダメだ!笑っちゃダメだ!ここで笑ったら、絶対に調子に乗るタイプだ』


「お主ワザとであろう?まぁよい……その条件とは、ワシも明日、その列車を作る工程を視察したい。タクト殿いかがかな?」


「私なら構いませんが、公務は宜しいのですか?」


「特に問題はない。先ほどの話を聞く限り、後々の事を考えて、騎士長のゴルディル、兵士長のセレム、ギルド長のライズを連れていこうと思うのだがどうだ?」


「はい。その方が宜しいかと思います」


『兵士長の名前はセレムさんって言うんだ。そう言えばちゃんと挨拶してなかったな。紋章も作った事だし、今後の事を考えて、名刺を作るのもありかもな』


「それでは、決まりだな。それは明日のいつ出発する予定かな?」


「明日朝6時に出発すれば間に合いますので、今日はシルバーノアをここに停泊させて下さい」


「よろしい。停泊は許可しよう。それでは、急ぎでライズに明日の朝5時半に王城へと来るように連絡を入れるとするか」


そう決まると、陛下は早速ロンメルさんに指示を出し、陛下がデニス公爵とカイル王子に「よし!今からリバーシの対決をするぞ」と挑むと、二人はその挑戦を受けたので、このまま王城で泊まる事になった。


一体どれだけ、リバーシが好きなんだろうか……


そう思いながら、全員が会議室をあとにする。


会議室を出て、城を出る方向へ向かおうとすると、王族の私室に向かう階段は、王城の出口と逆方向だったので「それでは王妃様、また明日の朝お会いしましょう」と別れの挨拶をすると、何か思いついたように話し始める。


「あの三人がここに残るなら、私が飛空挺にお邪魔するっていうのはダメでしょうか?」


王妃様はそう希望したので「そうですね。アンジェもセリスもいるので、私は構いませんよ」と、特に何も問題はないのでそれを了承する事にした。


「それでは、泊まりの用意をしてからシルバーノアに伺います」


王妃様は笑顔でそう答えると、扉の近くにいた衛兵に色々と指示を出してから、喜んで走っていった。


「お母様、よほど泊まりたかったのね」


「こりゃ従者達は大変だな……あっそう言えば、セキュリティーカード渡すの忘れていたよ!」


タクト殿、(ロイス子爵)もし宜しければ私が、王妃様にカードをお渡ししておきますので、王女と先に戻られてはどうですか?」


「どうするアンジェ?先に行く?それとも待つ?」


「そうね。ここはお任せして、先に行って準備しましょうか」


話がそう決まると、領主達にこの場をお任せして、シルバーノアへと戻る事となった。


帰りの道中で、始めてアンジェと二人っきりになったわけだが、どんな話をしていいのか迷う。


「アンジェ。今日はお母様と一緒の部屋がいいのかい?」


「もうこの年でそれはないわ。それにセリスの件もありますし」


取り敢えず無難にそう質問をすると、アンジェは苦笑いをしながらそう返事をする。苦笑いの理由は恐らく、セリスは幼い時に母を亡くしているので、自分だけが母親に甘えるのは申し訳ないと思ったのであろう?


「アンジェは優しいな。セリスの事が本当に好きなんだ」


「そりゃそうでですよ。本来なら王族と男爵の娘が一緒に住むなどありえないのですが、とある理由で一緒に住む事になってから、ずっと姉妹のように育ってきたのです。だからと言ってタクト様は譲りませんけどね」


「いや、譲るとか譲らないとか、俺はそんな大層なもんじゃないし、二人とも可愛いんだから、他にいい人いっぱいいるじゃないのか?」


「いくらタクト様でも、本人の目の前で他の男性を勧めるのはデリカシーがないんじゃありませんか?」


「あっ、ごめん。気に障ったのなら謝るよ」


「謝る必要はないですよ。こちらが一方的に言い寄っているのですから、兎に角です、タクト様の事が好きなんです」


「ありがとう。でも、少しボリュームを下げないと、もし誰かに聞かれたらどうするんだ?」


「皆も知っているからいいんですよ。でもこれだけは覚えておいて下さいね。私、例えフィーナ様がいても諦めませんし、側室でも構いませんから」


こう面と向かって好きって言われると、どう返事をしていいのか分からない。ここにフィーナがいなくて良かったと思う。


それから少し考えたが答えが出ないので、「ごめん。今は返事をする事が出来ない」と素直に謝った。自分の気持ちに整理がつけられないためである。


「分かっています。今はまだその時期ではない事も、返事が出来ない理由も……またいずれ返事をしてもらえる日を待っていますから」


アンジェは答えを貰えるとは思っていなかったようである。正直助かった。ここで答えを直ぐに出せと言うなら断るしかなかった。


こうして、もう何度目か分からない軽めの修羅場をくぐり抜け、シルバーノアへと戻った。


兵士長の名前をセレムに変更しました。

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