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異世界魔刀士と七変化の眷属   作者: 来夢
第3章 王国の旅編
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第47話 再びザバル領へ

―― シルバーノア・食堂 ――


王都を出発して暫く経つと、シルバーノアは自動操縦となり、途中で別れるザバル男爵以外が全員が食堂へと集まった……


なぜなら、これから旅をするにあたり、新しく創作したVIPルームの部屋割りをするためである。


昨日、フィーナ、アンジェ、セリスの三人には説明をしたが、他のメンバーにはまだ紹介をしていなかったので、予備で作った6号室で、まだVIPルームの使い方を教えていない、王子と勇者達に説明をすると、半日でこれを作ったのかと驚かれ、その機能性と居住性に皆が感動をして顔が綻んでいた。


説明が終わると、食堂へ戻り今から部屋割りを始める。


「それでは今から、VIPルームの部屋の割り振りを決めたいんだか、皆はどの部屋がいいか希望はあるかい?」


「一番艦橋に近い1号室は、タクトと私ね」


「えっ!男女別の部屋割りじゃないんですか?」


「あれ、アンジェ。何か文句があるの?私はタクトの眷属だし、フェルムとアイラは婚約してるのよ。それを引き裂くのはどうかと思うんだけど」


「うーーー!」


アンジェとセリスはフィーナの方を恨めしそうに見ると、何を言っても覆らない事を知っているのか、二人揃ってガクリと肩を落とした。


「それでは、操縦の交代要員として、私とアイラは正面の2号室ですね」


フェルムの、この意見には、誰も反対する様子はなく、決定をする。次に、席を立って主張したのは、大方の予想通り、アンジェであった。


「それじゃ、私とセリスは、タクト様と一緒の部屋で構わないかしら」


最初は冗談だと思っていたが、顔が真剣だったので「いや、それはないだろ」と答えつつ、首を横に振ると、アンジェはもう一度肩を落とし、フィーナのいる方向を見た。


するとアンジェは、額に汗を滲ませ、青い顔をしていたので、ふとフィーナの顔を見ると、以前にも増して鬼の様な形相になっていて、俺でさえ背筋が凍った。


「もちろん、じょ……冗談ですよ!タクト様の隣の部屋の3号室でいいです……」


アンジェは焦った顔でそう言うと、皆が納得して決定をした。


因みに、この時のフィーナの顔を見てみると、満面の笑みを浮かべていた……フィーナの、この敵対心丸出しの顔を見ると、この先が思いやられると、頭を抱えたい気持ちで一杯だ。


「それでは、私と、アルム、シェールは、同じ部屋で4号室でいいよ」


王子は、妹の暴走で空気が悪くなったのを察知してか、慌てて取り繕う様にそう言った。妹思いの出来た兄である。


「じゃあ、必然と5号室は、私とラルーラは同じ部屋ね」


こうして、後の残りのメンバーは、あっさりと部屋が決まったので「よし。それでは荷物の移動しようか」と言うと、全員が立ち上がり部屋へ荷物の移動を始めた。


王子達の部屋は、3人部屋となったので、シングルベッドに創作し直してから、これから重宝するであろう自室へ自分の荷物を置きに行った。


それぞれが、自分の荷物を自分の部屋に持ち込むと、暫く寛いだ後に暇なのか、自然と再び食堂へと集まった。


王都で仕入れた、コーヒーや紅茶を、皆の希望を聞いて配っていると、王子が「タクト殿。少し話しがあるのだか、時間はあるかい」と聞くので、到着時間までならと答えた。


ここでは、話にくそうなので、空き部屋の6号室に移動をすると、王子と共にソファーに腰掛けた。


「それで、話とは一体何なんですか?」


「単刀直入に聞くけど、今回のザバル領へ行く目的はなんだ?ただ送っていくだけとは思えないのだが」


「そう言えば、カイル王子に話をするのを忘れていました。申し訳ないです。実はザバル男爵と秘密裏に話を進めていたのですが、今クロードの町で、車椅子を生産しているのはご存知ですよね」


「無論だとも」


「王子は、いらっしゃらなかったから存じ上げてないでしょうが、デニスの町で、魔道自転車と買い物カートというのを開発したので、これから、それらの製品の生産を始めてもらおうかと、考えているのですよ」


「なるほど、では、ガラス、馬車、トイレ、それにVIPルームにあるベッドやソファーなど、タクト殿が開発した物は、まだいっぱいあると思うのだが、そちらの生産はどう考えているんです?」


「それについてですが、いくらなんでも、ザバル男爵だけに全てを押し付けるのは、可愛そうじゃないかと思うんです」


「それもそうか」


「ええ。この事を切っ掛けに、ザバル男爵の領地だけが人口が増え、町が潤ったりすると、他の領地がだまってないのではありませんか?」


「そっ・それもそうだな。いわれのない誹謗中傷をされかねないな」


「出来るだけ、そういったリスクは避けたいと思うんですよ。それに工場が足りないし、働く人、住む家などインフラも考えたりすると、問題だらけなんです」


「確かにな。タクト殿はそこまで見通していたのだな。恐れいったよ」


「まぁ、想定ですから、実際はどうなるか分かりませんが、王子、何か良い提案はありませんか?」


「それでは、こうしたらどうだ?今からデニス公爵を始め、ザバル領の近くの領主に集まってもらい、話し合いをして、それぞれの製品の製造場所を分担すると言うのは」


「そうですね。それなら問題なさそうですね」


「それでは、今からザバル男爵を呼ぼうではないか。男爵の意見も聞きたい」


それから、ザバル男爵を6号室に招き入れ、王子と話をした内容を話すと、ザバル男爵は喜んで話に乗ることとなった。


こうして、話を少しだけ進め、ザバル男爵領に到着すると今回は、既に王国にシルバーノアをお披露目していたので、隠蔽をせずに屋敷へと向かった。


シルバーノアの話は、町の人々に、噂程度は広まっていたみたいであったが、始めて見る住民がほとんどを占め、多少の混乱はあったらしいが、そこらへんは、きっちりザバル男爵が手を回していたようだ。


町の様子を甲板から身を乗り出して双眼鏡を覗くと、シルバーノアに乗ったことのある、従者たちと兵士が事態の収束の当たってくれていた。


そんな事から、特に大きな混乱は避けられ、無事屋敷の裏の庭にシルバーノアは着陸をした。


シルバーノアの出入り口から、屋敷の庭に降りようと準備をしていると、屋敷全員の従者たちが並んでいて、従者達はがザバル男爵の帰りを心待ちしていたようだ。


『従者達は皆、ザバル男爵の帰りを待っていたんだな。これもザバル男爵の人柄がいいからだよな』


甲板から簡易タラップを使い、ひとまず、自分だけ降りて軽く従者達に挨拶をすると、


「タクト様。お待ちしておりました。色々と楽しみにしてますよ」


と、なんだか軽く期待と言うプレッシャーをかけられ、大人数用のタラップを掛けると、全員が次々と降り始めた。


「旦那様、お帰りなさいませ」


「皆の者、長い間、留守番してもらいすまなかった。留守の間、何も変わりはなかったか?」


「何をおっしゃるのですか?あ~そう言うことですね。恐らく旦那様は今まで馬車で2日掛けて王都に行っていらっしゃいましたが、今では飛空挺であっという間ですから、滞在日数から考えると長く留守にしていたと、感覚なさっているんでしょう」


「そ・それはそうだな。長く王都にいたからそう感じたのかもしれない」


ザバル男爵がそう答えると、従者達はうんうんと頷き、和やかなムードになっていた。


「おっ、そうじゃ、大事な文がある。急いで届けてくれぬか」


「分かりました。それでは早馬ではなく伝書鳩を使いましょう」


執事がそう答えると、王子が王族の証明をする封印が施されている、小さな紙を執事さんへ手渡した。


「それでは、至急頼む」


「畏まりました」


「王子。さっきの小さな手紙で内容が伝わるのですか?」


「ああ。タクト殿はまだ存じてないのだな。あれは王族用に開発されたスクロールで、密書などに使われる特殊なものだ。受取人が封印を開けると手紙が大きくなるのだよ」


「へー、それは便利ですね」


「確かに便利ではあるが、タクト殿は飛空挺があるから、伝書鳩なんか必要ないんじゃなかな」


「いや、こちらは飛び立つにしても準備とかもありますし、短距離なら鳩の方が速いですよ。鳩なら何ヵ所でも同時に飛ばせますし」


「まぁ、そういうことにしておこうか。ははは……」


こんな感じで話をしていると、セリスが申し訳なさそうな顔をしてやってきた。


「タクト様。お話中割り込んでごめんなさい。今話をしても大丈夫ですか?」


「ザバル男爵、宜しいでしょうか?」


「ワシなら構わんよ」


「従者の皆が、今日は宴を開きたいんですって」


「んっ。いいんじゃないかな?でも、何で俺に聞く必要があるんだ?君のお父さんに聞くのがズジじゃないのか?」


セリスは頼みにくそうに、シルバーノアで宴を開いてもいいかとお願いをされた。


これは、おそらく前回ザバル男爵との宴で、いつかシルバーノアで宿泊を……と、従者たちと約束をしていたのを覚えていたのであろうか、到着した時の≪みんな、色々と楽しみにしてますよ≫という言葉を思い出し納得をした。


「そうだな。前に約束もしたし許可をするよ。俺は今から鍛冶職人のところへ行かなきゃいけないから、厨房も材料も好きなだけ使っていいよ」


「ありがとうございます!皆!いいってさ!」


セリスが従者のほうに向かいそう大声で言うと、屋敷の全員が輪になって喜んでいたので、アイラ、ローラさん、ラルーラさんに厨房の使い方と、色々手伝ってもらえるようにお願いをする。


四人は快く引き受けてくれたので、一人で鍛冶職人が働く工場へ赴き、車椅子の最終検査をする事にした。


フィーナが付いてくると言ったのだが、やる事は検査だけだったので、今後の為にカーテンと網戸のサンプルを作って欲しいとお願いをする。


「ごめんよ。ガラスの製法を教えたら、カーテンや網戸は必ず必要となるから、サンプルが欲しいんだよ」


「もぅ。一緒に行きたかったのに~。まぁでもそう言うことなら仕方がないわね。それで、どんな感じのを作ったらいいの?」


一人暮らしをする時、ホームセンターで買い物をした時の記憶を引っ張り出し、フィーナはその記憶を読み取る。


『リンクって便利だよな』


そう考えながら目を閉じ、フィーナの手が離れたのを感じると、ゆっくりと目を開ける。


「だいたい分かったわ。おしゃれな物から、かわいい物までサンプルで数枚用意しておくわね」


「宜しく頼むよ」


フィーナ相手だと、リンクがあるので、教えたりしなくていいので随分と助かる。


それから、魔道自転車に乗り工場へ向かう道中、クロードの町並みを見てみると、王都ほどではないが、道や街路樹がしっかり整備されていて、行きかう人々も笑顔で時間に余裕が見られる。


『息苦しさを感じる環境よりも、こんな感じでゆとりのある生活もいいかもな』


日本では、学生などは友達と喋りながら楽しそうに歩いている姿はよく見る。


だが、仕事に追われたサラリーマンや、スマホをいじってている人、音楽を聴きながら歩いている人、ハンドフリーで独り言のように喋っりながら、歩いている人などの方が遥か多い。


これは、異世界に来たからこそそう思うのだろうが、都会では人や物が溢れかえり、物やお金に余裕があっても、時間や心に余裕が無のだろう。


そう思うと、便利であらゆる物が溢れかえる世界もいいのだが、少し不便でも、皆が笑顔であるならこんな日常も悪くないような気がした。


そんな事を思いながら自転車を走らせていると、行き交う人々は、物珍しそうな顔をしたりして、こっちをチラ見しているが、特に声を掛けられることもなく工場へと辿り着いた。


「ゴーン ゴーン…… 」


教会の鐘が鳴ったので、時計を見てみるともう11時になっていた。


「早くしないと、お昼ご飯食べ損ねちゃうよ」


「こんにちわー!」


一言挨拶をし、前回来た工場へ入ると、まだそれほど経っていないのに、100台ほどの車椅子が綺麗に並べられていて舌を巻く。


『あれから、そんな長い期間経ってないのに、よくもまぁ、こんなに作れたもんだな』


すると、若い鍛冶職人がこっちのの存在に気がついたようで、しゃがんで組立作業をしている職人の肩をポンポンと叩いた。


「師匠、この前お話した、タクト様がお見えになられましたよ」


若い職人に呼ばれ、師匠と呼ばれている、いかにも腕っ節が強そうな鍛冶職人は立ち上がってこっちを見た。


「あの方がそうですか」


「ええ。あの方がこの車椅子の作り方を教えてくれた、タクト様です」


若い職人がそう言うと、師匠と呼ばれる人物は、工場にいる鍛冶職人全員を引き連れて、こちらに向ってやってきた。


「お初にお目に掛かります。前回は、私用でこの町にいなかったもので、こうしてお会いできて光栄です」


「あのぅ。失礼ですが?」


「これは私としたことがつい興奮してしまい名乗るのを忘れていました。申し遅れましたが、私はこのクロードの町を始め、この近辺の町や村の鍛冶職人を纏めているレッカと申します。以後お見知りおき下さい」


レッカと名乗った鍛冶職人は、その風貌からはまったく想像できないほど丁寧に挨拶をしたので、流石は鍛冶職人みんなを束ねているだけのことは、あるのだなと少し驚いた。


「タクト様。師匠はこんな身形でも騎爵なんですよ」


「こら、本人がいる前でこんな身形はないでしょう」


「すいません。つい調子に乗っちゃいました」


それから、なぜ騎爵なのに鍛冶職人の真似みたいな事をしているのか聞いてみると、切っ掛けは、自分の持っていた剣が気に入らないので、それならばと自作してみようと作り始めたら、意外に上手く出来てしまい、ものづくりにはまったみたいだ。


それからは、趣味程度に自作をしているうちに弟子が出来たり、鍛冶職人を纏めたりと、色々と本人の意思とは関係なく大袈裟な事になってしまい、ついには陛下の耳に入ってしまったらしい。


最初は、騎爵なのに鍛冶職人の真似事をするなんてと、怒られると思ったようであったが、なぜか陛下にも実力を認められてしまい、王国の騎士や兵士の装備一式、最近では、カイル王子の装備一式なんかもレッカさんが作って献上したという話であった。


「そう言えば、カイル王子に初めてお会いした時、ミスリルの綺麗な鎧を見た記憶があります」


「確証はありませんが、その鎧はおそらく私が作った物だと思います。あの鎧の作成には随分と時間が掛かってしまいましたけど」


「じっくりとまでは、見ていませんけど、とても素晴らしい出来だと思いましたよ」


「そう言って貰えるとは光栄の極みです」


「あっ!そう言えば、あの空を飛ぶ船を作ったのもタクト様なんですか?」


若い鍛冶職人がそう質問をしてきたので、「そうだけど」と一言だけ答えた。


「こら、メルト!いきなり質問をするなんて失礼じゃないか。申し遅れましたが、これは、弟子のメルトです」


「まぁ、いいじゃないですか」


「もぅ師匠ったら、これはないでしょうに」


メルトと紹介された、若い鍛冶職人はレッカさんにそう言うと、レッカさんは頭を掻いて誤魔化していた。


「タクト様!不躾だとは承知の上でお願いがあるのですが、僕もまた飛空挺に乗ってみたいです。また機会があったら乗せて下さい」


『本当は今日でもいいんだけど、いきなりすぎるし、王族、勇者、男爵と一緒だと、俺は良くても他がな……』


「分かりました。また時期が来たら招待しますよ」


そう答えるとメルトは「はい!楽しみにしてます」と喜んでいた。



その後、レッカさんが、「忘れる前にまず職人を紹介をします」と言って、今ここにいる20名の鍛冶職人のメンバーの名前を順に紹介されたのだが、正直覚えれるわけが無い。


『名刺が欲しい』そう思うのだった。


「それでは、車椅子を見て頂いて宜しいですか?」


「勿論ですよ。その為に今日はこちらにお邪魔させて頂いたんですから。それにしても、こうしてみると圧巻ですね」


「ええ。苦労しましたが、やりがいというか、新しい物に目がないというか……とにかくがんばりました」


「これを見れば分かります。それでは検査をしますが、これまでで何か組立ていて、やりにくい作業とか部品に不都合などありましたか?」


「特にありませんでしたが、問題があるとするなら、やはり車輪にベアリングが、入りにくいことでしょうか」


俺の作った金型の嵌め合いの公差が厳しいらしく、シャフトに対し。ベアリングを真っ直ぐ入れないと、何度も入れ直しをせざる得ないので、その作業に時間が掛かると相談された。


「そうなると、グリスを作るしかないか」


【グリスとは、鉱油や動物性油や植物性油に消石灰(カルシウム石鹸)の懸濁液を混ぜて作られるものであり、早く簡単に言えば機械パーツ用の固形の油である】


「それと、金型のメンテナンス方法も教えて頂かないと、欠損をしたり、ザビが発生するのでは?」


「仰るとおりです」


金型のメンテナンスに必要な物は、金型が欠損した時のリペア財と、保守用の潤滑油が必要なのだが、この世界には石油由来の物がないので、バイオマス燃料から、プラスチックが出来るまでシリコン油を作るのは無理である。


『菜種油でいいかどうか分からないが、菜種油の存在は確認したから、それで代用するしか無いよな』」


無いものねだりをしても仕方がないので、リペア方法と菜種油での保守方法を鍛冶職人に伝えた。


それから、車椅子の最終検査を行い全て合格をすると、職人たちの顔が緊張した顔から、安堵した顔に変わり、そして笑顔に変わった。


「タクト様ありがとうございます。それで私たちは、これからも、この車椅子だけを生産し続ければ良いのですか?」


「それについてなんですけど、世の中は需要と供給で成り立っていますから、車椅子だけだと、いずれ飽和状態になるでしょう。そうなれば、鍛冶職人の皆さんの仕事が無くなる可能性があります。ですから、今後は色々と生産をしてもらう予定なんです」


「色々とは?」


そう問われると、鍛冶職人全員を外に連れ出し、アイテムボックスから、馬車、自転車、買い物カート、ベッド、ソファー、温水便座を取り出した。それらを並べると、それぞれの製品の目的や使用の仕方、従来品との比較を説明すると、職人達は全員仰天していた。


「タクト様!一体あなたは何者なんですか?車椅子の時もそうでしたが、とてもこの時代、いえ、この世界にはない発想と技術力で作られた物ばかりです」


それから、簡単ではあるが、大体の経緯を鍛冶職人に説明をすると、職人達は愕然としていた。


「まぁ、あんな空を飛ぶ船を作ったお方だから、普通じゃないとは思っていましたが、まさか異世界から来た神の使徒様だとは。どう反応したらいいのか分かりません」


「普通に接してくれればいいですって。まぁ、そういうことで、これからもっと、忙しくなるでしょうから、その時は宜しくお願いします」


「神の使徒様の頼みごとなので誰も逆らいはしませんよ。それを置いといたとしても、こんな素晴らしい製品を作れるとなると、知識や技術が身に付けらますから職人冥利に尽きます」


「ですね。腕が鳴ります」


「そう言ってもらえて助かります。では、この製品のうちから、どの製品を作ってもらうかは、領主会議で決めるそうなので、決まり次第また追って連絡をします」


「それまで我々は、車椅子を作ればいいですか?」


「そうですね。車椅子は既にこれだけあるので、組立に使う工具や、補材などの生産をお願いしてもいいですか?」


「勿論ですとも」


そう決まると、車椅子を作る工場は金型や完成品でいっぱいになってしまったので、工場の近くに、広い空き倉庫があると言うので、そちらに場所を移動をした。


「ここの倉庫はもう使わないのですか?」


「今のところは小麦などの出荷も終わったので、暫くは空いていますよ。それがどうかなされましたか?」


「いえ、一度工場にしてしまうと、元には戻せないんじゃないかと」


この後、レッカさんと話し合い、最悪ここに保管される筈である小麦を全て買い取ると提案をした。


レッカさんは「最悪の場合は、そうしてもらえると助かります」と答えたので、全員で倉庫を魔法で綺麗にしてから、素材を出し、簡易的な工場を創作した。


あっと言う間に、倉庫が工場に変わると、鍛冶職人たちは、驚きあまり口を開けたままであったが、これは神様から授かった特別なスキルだと説明をすると納得をしてくれた。


そんな感じで数時間を掛けて、シャフトに直接ネジ山を作ったりする、各サイズのダイスや、ニッパ、ペンチ類、ドライバー類、様々なサイズのボルトなど、これから使いそうな工具や補材の金型を作成し、使い方や、怪我などのリスクを説明をした。


ついでに、ゴムが手に入ったので、ゴムと炭素(カーボンブラックを混ぜ、ゴムの強度を高める作り方や、そのゴムを使い車椅子への取り付け方を教えると、鍛冶職人たちは逐一驚きながらも、それぞれメモを取りながら真剣に聞いていた。


「と言う事で、今日は時間が無いのでここまでとします」


「今日は忙しい中ありがとうございました」


「いえ、とんでもありません。皆さんがこれから作るものは、全世界の人々の生活を楽にする礎となりますので、がんばって技術や知識を身に付けて下さいね」


「はい。全力でがんばります」


こうして、鍛冶職人全員に感謝をされながら工場を後にした。



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