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異世界魔刀士と七変化の眷属   作者: 来夢
第2章 インレスティア王国編
47/203

第44.5話 勇者VS魔刀士

―― 王都の上空 ――


デニス公爵領を出発して約1時間経つと、瞬く間に王都の上空に辿り着いた。


しばらく停泊していたので、試しに隠蔽をせずに王城の広場に着陸をしたが、王城も王都も特に混乱はなかったので安堵した。


仲間達と一緒に甲板に出てタラップを用意し、広場に降りると、王子と宰相たちがこちらに向って走ってきて、息を切らせながら出迎えてくれた。


王子は深呼吸すると、開口一番に「待ち焦がれたぞ!」と満面の笑みである。


「カイル王子。まだ1日半しか経っていませんよ?」


「お兄様!どんだけタクト様の事が好きなんですか?」


「馬鹿を言え!タクト殿を追いかけて行った、お前たちには言われたくない。私は、早くこの飛空挺で旅に出たいのだ」


そう言っていると、勇者達も顔を見せ挨拶をする。


「王子。ご心配をお掛けして、申し訳ありませんでした」


「アルム、何も出来なくてすまなかった。私にもっと力があれば……」


「いえ、タクトさんに助けてもらえたので、その辺は気にしないで下さい」


「そう言ってもらえて助かるよ。それよりも、父が話をしをしたがっているので、皆揃って会議室へと参られよ」


「カイル王子。そんなに急かさなくても、私は逃げやしませんよ」


そんな感じで談笑をしながら、会議室へと向かい、開かれた会議室に入ると、陛下や貴族達が既にテーブルについていた。


「国王陛下ならびに、お待ち頂いた皆様達。お待たせして申し訳ございません」


「皆様方、ご心配おかけして、心からお詫びいたします」


「何を謝る必要がある。それにタクト殿、お疲れだったな。それでは早速で申し訳ないが、状況を報告して欲しい」


陛下にそう指示をされたので、まずは、アルムさんが操られていた振りをしていた事。堕天使を捕らえた事。天使に堕天使を引き渡し、堕天使が邪神復活を目論んでいる事を簡潔に話しをした。


「なるほどのう。王室典範に書き記してあったのと、この世界の言い伝えは本当であったか。それにしても、邪神など復活されたら封じる手立てが必要となるな」


「ですが、残りの堕天使がどこに潜伏しているのか分からない以上、阻止しようにも今は何も出来ません」


「確かに言われてみればそうであるが、アルム、知っている範囲でよい。この王国に封印の祠は幾つの残っておる?」


「はい。私の知る限りでは、ティス村の付近と、北にあるロイス領の東の山麓にある、ラクロと言う村の付近を合わせると、二つでございます」


「そうか。分かった。そこの兵士、騎士長を呼べ」


「はっ!直ちに呼んで参ります」


陛下にそう指示をされた兵士は、お辞儀をして部屋を後にすると、数分後にゴルさんを連れて戻ってきた。


「騎士長ゴルディル=マスティー 参上いたしました」


「うむ、ゴルディルよ。ティス村以外にも、ロイス領のラクロ村の周辺に封印の祠があると言う話しだ。この先、堕天使が悪さをしないか監視出来るように小屋を建てまいれ」


「はっ!かしこまりました」


「数は各小屋に四名づつ配備させ、二四時間交代しながら監視させろ。兵士の任務期間は、二週間交代とする。堕天使を見つけても手出し無用じゃ、逃げてまいれ」


「陛下、それはなぜでしょうか?」


「堕天使は、殺しても死なないし倒せない。達騎士や兵士には荷が重かろう」


「なるほど、納得しました」


「それから、近くの村に迷惑を掛けないように、兵士に徹底をするように。それでは人選はおまえに任せるので準備を整えさせ、明朝出立せよ」


「はっ!」


ゴルさんは歯切れよく返事をして、理由は分からないが、こちらをチラ見すると足早に退出していった。


「まぁ、こんなとこかのぅ。それより忘れるとこじゃったが、デニスの様子はどうじゃったかな?」


「風邪でしたので、薬を出しておきました。また詳しい話はアンジェ王女から聞いて下さい」


「うむ。私用を無理やり頼んで、すまなかったの」


「いえ、勿体無いお言葉です」


「それはそうと話は変わるが、タクト殿は紋章を考えてはおらんのかな?」


「紋章ですか」


「左様、紋章じゃ。馬車、飛空挺、それに旗に、紋章のマークを入れると言うのはどうかと思ったんだよ。それなら一目でタクト殿と分かるんじゃないかと思ったんだよ」


「それは、良い考えですわ。これから、タクト様がお作りになる製品には、可能であれば、その紋章を入れると言う事でどうでしょうか?」


「アンジェ。それは素晴らしい提案だ。タクト殿は、製品を開発しても、なかなかお金や褒美を受け取ってくれぬ。製品の頭に名前を付けるのも嫌そうだから、知名度を上げる為に是非、提案を受け入れて欲しいのだが、いかがかな?」


紋章を作るのは賛成であるが、製品に紋章を付けるのは正直嫌だ。宣伝と言う意味では確かに効果はあるのだろうが、製品販売目的で売り出す訳でもないのに、製品全てに紋章など身に余ると言うか恥ずかしい。


『断ろう。でも理由は何にしよう』


「タクト何を迷っているのよ。あなたは島に戻れば、もう一国の主なんだから受け入れるべきよ」


断る理由を探していたが見つからず、その後も説得をされた結果、タクトの馬車、タクトのパン、自分の名前を入れられるのは、もっと嫌だったので、結局はその提案を受ける事にした。


「分かりました。それでは、今日中にサンプルを作り持ってくるので、合否の判断を宜しくお願いいたします」


「そうじゃな。折角考えたのに、他の者と似ていたりしてはいかんからのう。そうであるのなら全は急げだ。今宵は、この城の一室を貸すので、そこで一晩考えるとよかろう。それに、勇者諸君、お主達も王都に滞在中はこの城に泊まるとよい」


「ご高配、感謝します」


「それでは、私達もお言葉に甘えてそうさせていただきます」


俺とアルムさんがそう答えると、アンジェ王女とセリスは、ジャンプをして喜んでいた。正直な話し、何がそんなに嬉しいのか理解に苦しむ。


「それでは、今日の会合はここまでとする。支度が済むまで、この城でしばし待たれよ」


陛下はそう言うと、他に仕事が山済みになっている様で、貴族と共に退室して、執務室に戻って行った。


「そう言えば、アルムさん達は、これから先はどうするんですか?」


「ん~、どうしようかな。タクトさん達の日程は簡単には聞いているけど、一緒だと楽しいし勉強になるから、一緒に付いて行こうかな」


「そうこなくちゃ!アルムもたまには、いい事言うじゃない!」


「たまには、余計だよ」


ローラさんは、アルムさんの背中を叩きハイテンションだったが、アルムさんが居ない時とはキャラがまったく違う。恐らくこれが本当の彼女の姿なんであろう。


「ほらローラ。そんなにはしゃいでいると怪我をしますよ。それにタクトさん。一緒に旅を出来るなんて楽しみです。今後とも宜しくお願いしますね」


ラルーラさんが、そう言うと勇者一同は、驚いていた。


「うひゃー!あの超絶人見知りのラルーラが、酔っ払ってもいないのに、笑いながら喋ってるよ。こんなに短期間でこの状態に持っていくなんて、タクトさん、マジ凄いっス」


「私の事も、これから宜しく頼む」


「やばいよ、タクトさん。俺達も一月に一回位しか、シェールの声を聞いた事ないのに!もう聞けるなんて!」


『月に一回って!どんだけ、レアなんだよ!勇者達、個性ありすぎだよ』


勇者達と、そんな話をしていると、ゴルさんが部屋に入って来た。


「タクト殿。もし暇があったらで良いので、兵士に稽古をつけて欲しいのだが、お願い出来ぬだろうか?」


「そうですね。私も体を動かしたいので、別に構いませんよ」


「私も、ここに一人でいても、つまんないから行くわ」


部屋の準備が出来るまで、時間があったので、結局この会議室にいる全員で行く事になった。


ゴルさんに連れられて、兵士の鍛錬所に着くと、兵士達は一斉に鍛錬を止めてこちらに集まって来た。


「それでは、改めて紹介しよう。今日は、皆に稽古をつけてもらう事になった、講師のタクト殿だ。

皆は、もうすでに実力は知っていると思うが、分からない事があったら直ぐに質問する様に」


紹介をされたので、ゴルさんの隣に立ち挨拶をする。


「それでは、今日、皆さんを鍛錬する事になったタクトと申します。お手柔らかにお願いします」


「宜しくお願いします」


「じゃ、本当の皆さんの実力を見たいので、今から五人一組に分かれて、順番にかかって来て下さい。あっ!遠慮をすると実力が分からないので、本気で殺す気で来て下さいね」


そうワザと挑発をすると、兵士達はざわついた。


「おいおい、本気かよ。いくらなんでも、俺達を舐め過ぎじゃないのか?」


「まぁ、いいじゃないか。相手がそう言っているんだ。後から泣き言っても、許してやんねーよ」


そんな言葉を発しながら、兵士たちは、それぞれ五人一組に分かれて並んで行った。


準備が整ったので、鍛錬所の中心に書いてある開始線に立つと、お互いが礼をする。勿論兵士達は挑発をされたので、こちらを睨みつける。


「それでは、準備も整ったようだな。始め!!」


ゴルさんの合図をすると、最初の五人は陣形を取り剣や杖を構えた。


兵士を傷つけない様に、木刀を二本構えると、早速剣を振りかざしながら一人飛びかかって来たので、それを避け着地の瞬間を狙い面を放つ。


「いきなり相手の実力が分からないのに、そんな大技を仕掛けるな。着地を狙われたらお終いだぞ!次!」


二人目と三人目は、同時に剣を中段から剣を放って来たので、右横に飛び、一人になった所を面を放ち、三人目は何が起こったのか分からず、剣を振り切った状態だったので、すかさず面を放つ。


「おいおい、最初からそんな予想が出来る構えから剣を放てば、誰でも軌道が読めるじゃないか?それにお前!相手を見失ったからといって、剣を振り抜いたまま、止まっていたら直ぐ死ぬぞ!次!」


四人目は剣士、五人目は魔法使いだった……


魔法使いの女性兵士はファイヤーを詠唱し、遠距離攻撃を仕掛けてくる間に剣士は間合いを詰めてくるのが見えた。「ドン!」避けた、ファイヤーが地面に着弾すると同時に、剣士はこちらに向って斬りかかって来た。


ファイヤーの着弾した場所は、まだ煙が立ちこめていたので、その中に紛れると、剣士は俺を見失ったので後ろから面を放った。


魔法使いの女性兵士は、剣士が倒され事に動揺すると、慌てて魔法の準備をしようとするが、間合いを詰めて首元で木刀を寸止めする。


「おいそこの剣士、魔法使いに頼るのはいいが、現場にある物は、全て利用されると言う事をよく覚えておけ!それと魔法使いのお姉さん。味方を信用し過ぎですよ。魔法を放ったら、次の用意をしないと、避けられたら終わりですよ!」


こんな感じで、俺は全員を相手にアドバイス?をしながら。次々と倒して行った。

(女性には一応、優しく言っているつもり)



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




―― フィーナの視点 ――



タクトの戦っている姿を見ていたアルムさんは「ひょえー!タクトさん、マジ剣の鬼じゃないですか?しかも、全く容赦なしじゃないですか?」と驚いていた。


それを聞いていた私は「そう?タクトは、何もスキル使ってないし、魔法も使ってないのよ?ちゃんと手加減してるわよ」と、まだ全力ではないと説明を入れた。


それを聞いていた、アルムさんは、武者震いをしていた。


「こりゃ俺達が全員本気でも、ハンデ付きのタクトさんに、勝てないくない?」


「同感だわ、まるで隙がないもの、アドバイスも的確だしね!」


「それじゃ、タクトさんに手合わせ願うとするか?自分の弱点を、知っていた方が、今後の為になるしな」


「ええ。いい勉強になるわね」


ラルーラさんと、シェールさんも頷くと、アルムさんは真剣な顔つきになり、覚悟を決めた顔をしていた。


「それでは皆さん。僕たちも並んでくるので、何かあったら、骨は拾っておいて下さいね」


冗談交じりで、アルムさんはそう言うと、最終的には楽しそうに、列に並びに行った。


それを見た私は「そうねー。楽しそうだから、私も行こうかしら」と、本気でタクトと戦ってみたくなり、独り言の様にそう言った。


「えっ。フィーナ様もですか?」


「ダメかしら?実は私、タクトと本気で戦った事ないのよね。ちょっと興味もあるし、試しに行ってくるわね」


フェルムは、呆れた顔をしていたが、何かを諦めた表情をして「ご武運を」と、一言だけ言って、送り出してくれた。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



兵士を全員を倒すと、勇者達が列の最後尾に並んでいるのが見えた。


『おいおい、マジかよ!勇者達来ちゃったよ!』


「本気かよ?これマジで金取れるカードじゃないか……」


「国王陛下を、お呼びしろ!」


「勇者様達じゃありませんか!ここに並ばれていると言う事は、本気でやりあうつもりですか?」


ゴルさんは、勇者達を見ると驚いた様に言った。


「もちろん、本気ですよ。タクトさんの、適切なアドバイスを聞いてたら、僕達パーティも弱点を知りたくなっちゃって」


アルムさんの、近くまで歩いて行くと真剣な目をしていたので「そうか、本気か。じゃ、やるか?」と尋ねると、アルムさんは嬉しいのか顔が綻んだ。


「はい!タクトさん、胸を借りますね!」


「……気楽に言ってくれるね」


相手が勇者と言えど、スキルは使うが魔法は一切使わないと決めて、目を瞑ると精神を統一を行い、心を落ち着かせると、本気モードの二刀流の構えをした。


「おい、やばいぞ、タクトさん、本気になった。気を引き締めろ!」


アルムさんは、殺気を感じたのか警戒をする。


「それじゃ、作戦Bで行く。いくぞ」


「了解」


「それでは、両者構えて。始め!」


ゴルさんが開始の合図をすると、アルムさんは後方にジャンプをして間合から出る。


するとアルムさんの影から「アイス・ブラインド」と、まず後衛のローラさんが、氷の魔法で攻撃を開始した。


修練所の外周を走って魔法を回避していると、戦士のシェールさんが視界に見えたので、木刀でアイス・ブラインドを振り払い、シェールさんの間合いに入った。


シェールさんは、そのままアイスブラインドに混じりながら、攻撃してきたので、居合いでアイスブラインドを一掃すると、木刀と木剣を交差させながら、程よく力を抜き、体勢を崩したところを、そのまま回転して袈裟斬りした。


シェールさんは、何が起こったのか分からないようだが、負けたのを理解したようで、地面を叩いて悔しがる。


シェールさんが倒されたのを、ラルーラさんは見ると、木槍でこちらに目掛けて何度も突いてきが、迷宮で鍛えられた動体視力で、冷静にそれを捌いていると、今度はアルムさんが、応援にやってくる姿が見えた……


『まずいな……二人相手だと……なんとか槍の軌道は見えるから、あれをやるか』


ラルーラさんが、上段から槍を振り下ろして来たので、力負けしないように、瞬時に木刀をクロスさせ攻撃を防ぐと、そのまま片方の木刀を離して槍を掴んだ。


「そ・そんなのあり!!」


「ひょえー、嘘だろ!」


アルムさんは、すぐ近くまでやって来ていたが、その光景を見ると立ち止まり、再び距離をとる……


ラルーラさんは、木刀を振り払おうと力をいれたタイミングで、力に逆らわずにその方向に飛び、ラルーラさんの背後を取り、手刀で意識を刈り取った。


「タクトさんすげー!ほんと尊敬するよ」


アルムさんは、そう言いながらローラさんに指示を出し、再びアイス・ブラインドを放ってきた。


『威力はないが、数がやっかいだな。これじゃまるで弾幕だ!』


修練所の外周を走りながら、氷の刃を避けていると、アルムさんの姿が無いのに気が付く。


「――――――!後ろか?」


殺気を後ろに感じたので、咄嗟横飛びして、その場から離れると、次の瞬間、さっきまでいた場所に木剣が突き刺さり砂煙を上げていた。当たったと思うと背筋が凍る。


「流石に、今のを避けられるとは、思いませんでしたよ」


「あぶね~!!偶然だよ。運が良かった」


もう一度やられると厄介なので、数回バク転をしてローラさんの近くまで行くと、ローラさんを飛び越え、後ろに回ったところで手刀で意識を刈り取った。


「ひょえー!なんか、今の動きかっこよかったです。また教えて下さい」


最後はやはり、勇者のアルムさんと一騎打ちとなり対峙する。俺は、上段に構え、アルムさんは剣を中段後ろに構えた。


目を瞑り全神経を木刀に集中させる……


すると、アルムさんの気配が動たのを感じた。


「勝負!!」


目を開くと、アルムさんが木剣を上から下へと振る姿が見えたので、少ししゃがみ下から上へと、木刀を振りぬく。


「――――!マジか……」


アルムさんの放った木剣は、木刀ですっぱり切られ、半分が無くなっていた。


「タクトさん、降参です」


客席にいたギャラリーは、その光景を見て、口を開いたまま固まっていた。


審判をしていたゴルさんは唖然としていたが、いち早く正気に戻ると「勝者タクト殿!」と勝ち名乗りを上げると、客席から割れんばかりの拍手がなり響いた。



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