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異世界魔刀士と七変化の眷属   作者: 来夢
第2章 インレスティア王国編
42/203

第41話 勇者アルム

―― ザバル領 ティス村 ――


アルムさんを救出して、レクトリスを捕縛すると、フィーナに転移魔法の事を勇者達に話してもいいか尋ねてみる。


「仕方がないわね。勇者なら、神様が選んだ様なものだから許可をするわ」


「ありがとう。恩に着るよ」


フィーナに、転移魔法が直ぐ使える様に、魔法少女の姿に変身をして貰い、レクトリスの見張りを任せて勇者の元へ向かった。


勇者であるアルムさんの、近くまで歩いて行くと、アルムさんはこちらに気付いて声を掛けてくれた。


「ここまで仲間を面倒見て頂いて、ありがとうございます。申し遅れましたが、私は現代の勇者をさせてもらっているアルムと申します。以後宜しくお願いいたします」


アルムさんは自己紹介をすると、何やら手の甲を見せ、魔力を流すと、見た事もない紋章が浮かび上がった。


「こちらも、もうある程度ご存知かと思いますが、神の使徒であるタクトと申します。あちらに見えるのは、神様から授けて頂いた眷属のフィーナです。以後宜しくお願いいたします。と、堅い挨拶はここまでにして、その手の紋章は初めて見ますが何なんですか?」


「うっかりしてました。ローラから聞いたんですが、タクトさんは、この世界の事あまり知らないんでしたね。この紋章は神様から与えられた勇者の証です」


アルムさんは、再び紋章を浮かび上がらせ、誇らしげにそう言った。


「それは、知りませんでした。申し訳ない」


「いえいえ、とんでもないです」


『ファンタジーぽくなって来たよ!勇者の紋章とか、証明出来る物があるんだ……まだまだ、この世界は奥が深いや』


「先ほどは、実力を改めて拝見させて頂きました。僕も強いと自分では自信がありましたが、タクトさんは、別次元の様に強すぎます」


「勇者にそう言ってもらえて光栄です」


「以前に戦った時も、操られていたとは言え、スキル全快の僕が手も足も出なかったのも頷けます。また、いずれ手合わせ下さい」


「勿論、喜んでお相手しますよ」


アルムさんは、そう言うと嬉しそうな顔をしていた。


「それはそうと、話しは変わりますが、今後の事を話合いたいのですが、飛空挺に来て頂けませんか?」


「別に構いませんが、その飛空挺って一体何の事なんです?」


アルムさんは、飛空挺と急に言われても、何の事か分からないので、首を傾げているとローラさんがすかざず補足をする。


「空を飛ぶ船の事よ!中は広く凄く快適で、物凄く高速で飛ぶのよ。何せここまで王都から、たったの2時間でこれるし」


ローラさんは、少しテンションが高めで話しをする。


「ひょえー!それは凄いな。でっ何で空を飛ぶのに船なんだ?」


「それは、大人数を乗せるには最適だったからですよ。それにいざとなったら、海に着陸したり整備したり出来ますからね」


「うひゃー。それは、良く考えて作られているんですね。驚きました」


アルムさんの反応があまりにも、大袈裟だったので、つい苦笑いをすると、ラルーラさんが隣にやってきて、「ウザかったら、ちゃんと言ってやって下さいね」と小声でアドバイス?をくれた。


「仲間が心配して待っているので、ひとまず飛空挺に行きましょうか?村人は、飛空挺で待つ仲間のフェルムとアイラに任せると約束していますし」


「喜んでお邪魔させて頂きます」


「それで、ここだけの話なんですけど、アルムさん達は今から見せる物を、絶対に口外しないと約束出来ますか?」


「勿論です。神の使徒様ですから、神様に誓いますよ」


「それじゃ、こっちへ来てもらっていいですか?」


「了解です」


アルムさん達を連れて、レクトリスを監視している、フィーナの所へ戻った。


「フィーナ。絶対に口外しないと確約を取ったから、早速お願い出来るかい?」


「それはいいけど。こいつはどうする?」


フィーナは、魔力を調整して小さくなった籠を指差した。


「置いておくわけにはいかないしな。まぁ目隠しと、口は塞いであるから大丈夫そうだし、堕天使は食事もいらないから、シルバーノアの家畜層にでも入れとくか?」


「そうね。言うとおりにするわ」


フィーナは、そう言うと、転移魔法を詠唱すると転移魔法陣が顕現する。


「それでは、みんな手を繋いで、この転移魔法陣の中心に移動して下さい」


「は?転移魔法陣?初めて見ましたよ!それに、別人かと思いましたが、フィーナ様ですか?」


「ええそうよ!可愛いでしょ?」


そう、フィーナが聞くと、アルムさんではなく、ローラさんが「とても似合っていて可愛いですよ」と答えた。


『アルムさんの事を睨んでるから、ひょっとして、ひょっとするのかな?』


恐らく、ローラさんはアルムさんの事が好きで、アルムさんの口から可愛いと言って欲しくないのか、アルムさんの発言がいちいち大袈裟なので、その前に潰したかどちらかだと思った。


「それじゃ、魔法陣の中心に入ってくれる?」


フィーナそう言うと、全員が魔法陣の中心へと歩き出し、全員が中心に着くと魔法陣は光り、一瞬でシルバーノアに転移をした。


転移魔法で、シルバーノアの甲板に転移すると、艦橋でフェルムとアイラは待っていた様で、魔法陣が見えたのであろう、慌てて甲板に駆け寄ってきた。


「皆さん、ご無事でなによりです」


「フェルムもアイラも、留守番ありがとう」


「いえ。とんでもありません。それで村の方はどうですか?」


「村もそうだけど、村人も誰一人として傷つけず無事に開放したよ。まだ神威で気絶したままだけどね」


「ありがとうございます」


「それで二人に頼みがあるんだが、まだやる事があるから、今から村へ行って村人に治癒魔法を掛けてやって欲しいんだ?」


事前にフィーナに短刀村雨を貸してもいいか聞いてあり、許可が出ているのでフェルムに村雨を手渡した。


因みに使用制限については、パーティ登録をした時に、二人が使用出来る様に変更してあるので問題は無い。


「タクト様、ありがとうございます。村の事はお任せ下さい。このご恩は一生忘れません」


村の開放を、待ち望んでいたアイラは、嬉しそうにそう感謝をしてくれた。


「仲間なんだから、そんな感謝はいらないよ。アルムさんの紹介も用事が済んだらゆっくりとするから、それより早く行ってくるといい。俺たちも用事が終わったら行くからさぁ」


「はい。お待ちしております」


「じゃ、フィーナ。面倒だけど頼んでいいかい?」


「もちろんよ。アイラ、後から個人的に報告があるから聞いてよね!」


フィーナは、助けられた時の事を思い出したのか、笑顔でアイラにそう言っていた。


心当たりがありすぎるので、どう言う言い方で報告するのか、何だかとても嫌な予感がする。


「それじゃ、二人を送ってくるから、タクト達は先に話を始めていても構わないわ」


「了解だよ。まぁ急ぐ話でもないし、ゆっくりでもいいよ」


フィーナは頷くと、再び魔法陣を展開させて、フェルムとアイラを連れて消えて行った。


「それでは、アルムさん。セキュリティーカードを渡しますから食堂に行きましょうか」


フィーナ達を見送ると、アイテムボックスから、セキュリティーカードを取り出し、アルムさんに渡した。


甲板から艦橋に入ると、見た事もない計器類や自動ドアに、アルムさんは驚愕していた。


「ひょえー。なんですかこの船!タクトさんは、未来からやって来たんですか?」


「それについては、ローラさんには申し訳ないけど、アルムさんに、おいおい話をしておいてくれないかな?」


「タクトさん。その話、任されましたわ」


ローラさんは。説明をするのが面倒くさい事を察知したのか、喜んで引き受けてくれた。


ローラさんは、楽しそうにシルバーノアの中の説明をしながら歩いていて、表情がとても明るくなっていた。


「そう言えば、もうお昼ですし、サンドイッチあるから食べながら話をしましょうか?と、その前に、こいつ目障りだから、家畜層に放りこんでくるから待っいて下さい」


籠を汚物を見る様な目でみると、アルムさん達はそれが分かったのか、全員苦笑いをしていた。


「タクトさんは、本当に敵だと容赦ないって言うか、ゴミ扱いですね」


「当たり前じゃないですか?ゴミの方がまだマシですよ。フィーナをあんなに怖がらせたんだ。その責任は重いですよ」


思い出しただけで、無性に腹が立ち怒りがこみ上げてきたが、ここで怒っても仕方がないので冷静になる。


「その言葉は、本人に言ってあげて下さいよ。きっと喜びますよ」


ローラさんがそう言うと、皆は、うんうんと大きく頷いた。


「ん?そんな、大した事言ってないような気がしますが。こいつの為に時間を割くのは勿体無いので、さっさと放り込んで来ます。そこら辺の椅子に腰掛けて待っていて下さい」


そう言うと、アルムさん達を残して、一人で籠を家畜層へ向かった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――


―― フィーナの視点 ――


フェルムとアイラを送り届けると、直ぐにシルバーノアに帰って来た。


「当たり前じゃないですか?ゴミの方がまだマシですよ。フィーナをあんなに怖がらせたんだ。その責任は重いですよ」


タクトが、少し興奮した声で、私の事を話しているのが聞こえたので、少し悪い気がするが、陰で少し聞いてみようと思う。


こうでもしないと、なかなか、タクトは本音を言わないからだ。


「その言葉は、本人に言ってあげて下さいよ。きっと喜びますよ」


ローラさんは、女性なだけあって、私と同じ気持ちだと思い、その言葉に感謝をした。


「ん?そんな、大した事言ってないような気がしますが……」


私は、そのタクトの何気ない言葉に「は~」と溜息を吐いてしまった。


『タクトは私の事どう思っているんだろう。テレビでこの前見た、友達以上恋人未満なのかな?』


私は神界で、神様と二人きりの生活が長かったので、恋愛に関しては、まだまだ分からない事だらけである。


『人の考えは分からない物ね……テレビを見てそれなりに研究したけど奥が深いし……個人差もあるから余計難しいなぁ~』


「あ~どいつもこいつも、どうして、こう男は、朴念仁ばっかりなんでしょうかね?いつも女は苦労するよ。まったく……」


アルムさんは、思い当たる節があるのか、頭を掻いて誤魔化している。


「もういいわ。それと、ちゃんと二人にお礼を言うのよ。あの二人は私達の為に危険を冒してまでここまで来てくらたんだから」


『まぁ、こんなところよね。そろそろ出ていこうかな』


「ローラさん、ありがとう。ちゃんと聞こえていたわよ。ふふふ……」


私はローラさんが、代弁をしてくれたので御礼を言った。


「フィーナ様。遠巻きに聞こえていたのですね。フィーナ様も、もう少し直接的に言った方がいいですよ……」


「そうね……でも、私は私のペースがあるから、そのうちね」


私はやっとの思いで、自然に腕を組む所まで進展させたばかりで、さっきは、怖がる私に「俺のフィーナに……」と顔から火が出そうなくらい、嬉しい事を言ってくれた。


しかも恐怖で震える私を安心させる為に、優しく抱擁しながら、頭も撫でてくれると言うおまけつきだった。


今は、これ以上高望みはぜず、現状で満足する事にする。じゃないと、今までのタクトの草食っぷりを見る限りでは過剰反応してしまうからである。


こう物思いにふけ、幸せを感じていると、タクトはレクトリスを、家畜層に入れて来たのか戻ってきた。




―――――――――――――――――――――――――――――――――



目障りな籠を家畜層へ置きに行き、食堂へ戻ると、フィーナがローラさんが何やら話をしていた。


「フィーナ早かったね。ありがとう。まだ何もしてないから食事しながら話を始めようか?」


「そうね。お昼ごはんを食べてないから、お腹が空いたわね」


話をする前に、作り置きをしてあった、サンドイッチと飲み物を用意すると、フィーナに手伝ってもらい全員に配った。


「あの~タクトさん。食事の前にひとつお願いがあるのですが、アルムを相手にその口調はやめませんか?なんだか調子が狂います」


「ローラの言うとおり、もっと友達みたいに喋って欲しいです。丁寧な言葉を選ぶの慣れていないから、間違えて噛みそうになりますし」


「分かったよ。それじゃこれからは、お互い仲間と思って話をする事にしようか?」


「お願いします」


全員がその意見に納得なのか、うんうんと頷いている。


「それじゃ、食事の用意が出来たから頂くとしようか」


アルムさんは、サンドイッチをひと口食べると「ひょえー!こんなに、美味しい食べ物、初めて食べたよ」と、凄い勢いで食べ始めた。


「アルム。少しは遠慮しなさいよ。はしたないわよ」


「だって美味しいんだもん」


ローラさんに注意をされ、しょげながらペースを落とすアルムさんを見ていると、まるで、自分とフィーナの関係を見ている様で複雑な気分になる。


こうして、食事を終えると、いよいよ本題に入る事になる。


机に紙と鉛筆を用意し、メモを取る事にしようとすると、アルムさんは何か言おうとしたが、ローラさんが、キリッとアルムさんを睨んだので、何か言うのを諦めていた様子だった。


話を端折られなかったので、良かったと思ったが、先ほどと同じ心境になり、思わずもう一度苦笑いしてしまった。





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