第39話 日程とケーキ
―― 王都・貴族専用宿・トロイ ――
ケーキを作り終えたあと…………
「ごめん。色々と準備をしていたら遅くなって!」
宿に戻り、仲間と合流をして、馬車に急いで乗り込む。
王城に向かう途中、馬車の中でフィーナは、どこに行っていたのかが気になったらしく、問い詰めてきた。
「謝るのはいいけど、こんな時間ギリギリまで、どこ行ってたのよ?」
「ネタバレするのは嫌なんだ……今のところ内緒だよ……」
「もう、意地悪しないで教えてよ~!」
「今は無理だって言ってるじゃない。でもきっと驚くから楽しみに待ってて欲しい」
「私に内緒だなんて、なんかやましい事してたんじゃないの?」
その後も散々問い詰められ、最後には女性と会っていたんじゃないかと疑う始末だった……
折角サプライズでケーキを用意したのに、この場でネタバレをする訳にもいかず、宿から王城までの15分何とか誤魔化しきる。
王城に到着すると、馬車から降り、王城に入る。今回はゴルさんでは無く、メイドさんに案内されて、会議室へと通された。
ここで、少しトイレに行きたいと申し出て、仲間には先に会議室に向って貰った。
仲間が会議室に入るのを確認すると、急いでメイドさんにケーキを渡し、合図をしたら出して貰うように頼んだ。勿論、報酬としてケーキを2ホール従者様に賄賂として渡す事を忘れない。
サプライズの準備も整ったので、開かれた扉から中の様子を窺うと、陛下といきなり目が合う。
「おっ、待ちわびたぞ。話があると聞いておるが、今日は、どんな話しを聞かせてくれるのだ?」
陛下は、何かを期待する顔をしていて、嬉しそうに優しく笑い、まるで、恋人と待ち合わせるかの様な態度だったので、少しだけだが引いてしまった。
用意されていた、椅子に腰掛け、昨晩、今後のプランを練り、作った資料に基づいて話をし始める。
「それでは皆さん。今後の日程を、昨日、私たちの仲間とローラさんの間で話しを詰めたので、ご報告します。それでは、お手元の資料の1頁目をご覧下さい」
そう言うと、皆は無言で資料を開く。
「まず明日、私達は飛空挺シルバーノアで、勇者アルムの救出と、堕天使を捕縛する作戦を決行いたします。参加者は安全面を考えて、仲間四人と勇者の仲間のみで出発します。今回の外遊に参加される、皆様方には、私たちが作戦を実行している間に、出発の準備して頂くようお願い致します」
そう説明をすると、外遊に参加するメンバーは頷いた。
「なお資料には、今回の作戦のメンバーの名簿と、外遊に向かう方々の名前が書いてありますので、変更等ご意見がございましたら、修正をいたしますので、私にまでお申しつけ下さい」
皆は、話に口を挟む事なく、熱心に名簿などを確認しているので、続けて話を始める事にした。
「それでは、次の頁を開いて下さい。今回の救出作戦が無事成功しましたら、そこに書いてある日程通りに、今回参加される方々をお迎えにあがります。旅に必要な物は各人それぞれ用意をして下さい」
まるで、修学旅行のしおりのようで、少し笑えたが、これも必要だと考えて、敢えてここまで詳細なスケジュールを立てた。
「今回、飛空挺で、数日間に渡り王国内の各領地を巡り、各領地の特産品を見ながら伝えれる技術や知識は伝えて行こうと考えていますので、各公爵の方々はご準備願います」
「質問ですが、この必要な技術にトイレやあの透明なガラスと言う物も含まれますか?」
「勿論含みますので、ご心配なさらなくても結構です」
王妃様は、よほどトイレとガラスが気になるらしく、そう答えるとにんまり笑った。
「話を戻しますが、各領地を周った後、ファムリス王国、ポリフィア王国へと向かい、要人をインレスティア王国へと招こうと考えています。同じ技術を教えるのに各国の領地を周り教えていては、時間が掛かってしまうからです」
「うむ。確かにその時間は無駄ではあるな……よし、そうであるなら、こちらも要人を受け入れ出来る様に準備をしようではないか」
「ご理解頂けて、助かります」
「そして、外遊を終えた後、私たちはラッフェル島に戻り、最終的には準備も含めまして帰国してから半年後に、各国の人々の第一陣を受け入れを開始したいと考えています」
「質問があるのですが、外遊が終わりましたら王国には戻らずに、直接ラッフェル島に向かうと言う認識でよろしいのでしょうか?」
「それについてですが、説明をいたしますと、外遊が終了しましたら、一度私たちは王国に戻ってまいります。理由といたしましては、住民と預けておいた家畜の引き取りです。私達だけ島に戻っても労働力も乏しく、私どもだけでは、島の開発は間に合わないでしょう」
「確かにそのとおりですな。いくらタクト殿とは言え、仲間達だけで国を作るのは無理でしょうからな」
「ええ。仰しゃられるとおりです」
実際は、フィーナの転移魔法を使ってマメに準備を整えれば、やってやれない事はないし、やるつもりである。
問題は全ての準備をこちらで整えてしまうと、教えなければならない技術や製造方法などを教えることが出来ず、最悪立国したとしても、自分で全て管理をしなければならなくなるのは、火を見るより明らかだ。
「元を正せば、今は仲間である、フェルムの責任で追い出した状態ですので、各国を巡った後に一度こちらに立ち寄って、私達と一緒に島へと戻って頂く予定にしたいと思います」
「全ての住民ですか?もう既に難民村から離れた者もいますが……」
「そうですね。もう既に王国内に生活基盤を築いていらっしゃる方や、こちらの王国に残る人々については、詫び料として、1家族に大金貨1枚プラス家族1人につき、金貨2枚を支払いたいと思います。宿など経営していた方については、放棄なされるのであれば、交渉次第ですが、光金貨5枚を上限にお支払いいたしたいと考えております」
「なるほど。それなら住民達も文句はあるまい。して、島に戻る住民についてはどう考えているのですか?」
「島に戻られる方については、全員に衣食住の保障と、職業の保障を最高で3年間しようと思います。
これら、全ての件については、後から揉めない様に、正式な契約をきちんと交わす事とします。そこで、お願いがあるのですが、今話した内容を時間が無いので、報酬と必要経費はお支払い致しますので、どなたかに交渉や段取りをお願いしたいんですが、お願い出来ないでしょうか?」
陛下は、腕を組みながら目を瞑っていた。そして考えを纏まったのか目を開いた。
「ロンメル、タクト殿には返しきれない恩がある。宰相として協力してやってはくれぬか?」
「分かりました。私が引き受けましょう」
「ロンメル宰相、ありがとうございます」
ロンメル宰相が、近くにいたので握手を求めると、この国ではそんな風習がないのにもかかわらず、ガッチリと握手を交わしたのであった。
『この男出来るな』
そう思いつつ、次の議題へと移す。
「それでは、引き続きお話をさせていただきますので、次の頁を開いて下さい。私達はまず島へと戻り、昨日の資料に書いてあったとおり、半年の間に町の拡張及び再構築をして区画整理を行います。そして、
半年間の準備期間が終わりましたら、まず学校を稼動させます」
「ここで言う、学校とはどんな人材を求めるのかな?」
「本来なら、算術など基礎教育を行ってから教育をしたいのですが、それでは時間が掛かってしまうので、各国から将来有望な人材や、研究者を出して頂き、科学、建設、魔道具、料理人、戦術の学ぶ為に、各50名ほどからスタートさせたいと考えています」
「これについては、王子に任せようと思うが、どうだやれるか?」
「謹んで、お受けします」
「それでは、引き続きお話をさせていただきますので次の頁を開いて下さい。本格的な学校を開設し、更に半年後に全てが整いましたら、一般の人々を受け入れを本格的にして正式に島を開放します。移動方法の飛空挺に関してですが、まず各国の王族専用の飛空挺を1機ずつ引渡し、それからは、民間用に各国に2機づつ引き渡しを行います」
「質問なんだが、飛空挺は誰でも操縦出来るのでしょうか?」
「はい。魔力がある物が、ブランクの魔石に充填すれば、操作は練習をすれば容易となっていますが、これは個人的な意見ですが、魔族の協力を仰ぎたいと思います。理由は索敵は魔族しか出来ませんから」
「なるほど。理解しました。因みに停泊といいますか、離着陸する場所など考えがあるならお聞かせ下さい」
「本来なら船なので、整備などを考えると、海や湖が好ましいと考えています。民間用にお渡しする2機は、今から約1年後就航予定とし、就航後は毎日往復を1便出来る様に設定をし、船内に宿泊などの施設は設けないので、中型ですが1便につき300人程度の大きさの飛空挺を作りたいと思いますので、離発着が出来る環境が整った場所から受け渡しする事になると思います」
「なるほど。幸いにしてこの王都の近くには湖がある。早速明日からでも着工出来る様に手配しよう」
「ありがとうございます。暫くお待ち頂ければ、私が設計し図面を作りますがいかがですか?」
「それは、有難い申し出だ。宜しく頼むよ」
「それでは、最後の提案として、労働力の強化でしょうか?どの国でもそうですが、貧困層が国の大きな負担となっていると聞いております」
「うむ。お恥ずかしい話だが、ロンメルもその対応で困っておる」
「そこで、私は将来有望になりえる、孤児達を無償で引き取り、怪我等で働けなくなった人物のみ、面接をして、私が将来立ち上げる国で引き取ろうと考えています。この計画には、子供は基本的には拒みませんが、酒などに溺れ、五体満足なのに子供をダシしにして、働かせている大人は含みません」
「確かに言いたい事は分かるが、簡単には子供を手放さないと思うぞ」
「はい。ごもっともな、ご指摘ありがとうございます。それについてですが、子供に意思を確認した上で、もし私たちと行きたいと言う意思表示があれば、その親にはやり方は汚いかもしれませんが、一人につき大金貨3枚を支払いたいと考えます。この金額は、子供が稼いで、平均10年ほどの稼ぎに匹敵すると考えての金額です」
「それなら、目先の金に目がくらんで、手放すかもしれないな」
「はい。どの国でも犯罪奴隷しか、奴隷制度は無いとカイル王子から聞いていますので、子供については私のいた世界と同じ、15歳まで義務教育として学校に通ってもらいます。その期間の衣食住は、私が責任を持って面倒を見るのでご安心下さい」
「タクト殿のいた世界は凄いな。国を挙げて教育をしているとは……見習いたい物じゃな……」
「病気で働けない者には治療を施し、身体の不自由な者は、今ザバル男爵領で生産を開始しました車椅子等で対応をします」
「それは初耳だな。ザバル男爵それは真か?」
「はい。報告書がまだ間に合っておらず、報告がまだ出来ていませんでした。申し訳ございません」
「そうか。タクト殿またその車椅子とやらを、いずれ見せてはくれぬか?」
「喜んでお見せします。話を元に戻しますが、お金が無くて治癒が受けれない民に関しては、私どもは治癒魔法が使えますのでご安心下さい。話は以上となりますが、その他ご質問はありますか?」
すると、突然ザワメキが沸き上がり、陛下が「皆のもの静粛に」と言うとみんな口を閉じた。
「素晴らしい提案をありがとう」
「いやいや。本当に素晴らしい。感服しましたよ。私も是非協力させて下さい」
「うむ。宜しい。タクト殿のこの意見も、後から皆と話し合いを行い、決議しようではないか」
陛下も、この提案に乗り気のようで胸を撫で下ろす。
「それでは、私の提案と今後の予定についてはこれで終わります。また決議で質問等ございましたら、即日回答いたしますので、宜しくお願いいたします」
全ての話しを終えると、一度会議は中断し、その場で決議の話合いが行われたが、特に問題は無かったので無事に会議は終了となった。
「それでは、皆様に私からプレゼントがあります。人間は疲れた時や、頭を使うと糖分が必要になるので、まだ試作段階ですが、甘い物を用意いたしましたのでご賞味下さい。それと、今回飲み物に使ってあります、ガラスのコップも、一人につき4個セットで用意させて頂きましたので、お帰りの際はお持ち帰り下さい。それではお願いします」
そう言うとメイドさんがケーキを運んできたので、俺は人数分のコップと、グレープスカッシュをアイテムボックスから取り出し、注ぐとアイラが皆に配った」
「お――!これは見た目も素晴らしい。タクト殿。これは何と言う食べ物なのじゃ」
「これは、ケーキと呼ばれる食べ物にございます。それとグラスに注いでいるのは、グレープスカッシュといい、グレープジュースを炭酸と呼ばれる物と割ったものです。それでは、全員に行き渡った様なので、順にご賞味していただいて結構です」
そう説明をすると、全員が一斉にケーキを口に運び、目を丸くして無言で完食する。
「これを隠していたのね……疑ってごめんなさい。リンクで見たことはあるけど、ケーキってすごく甘くて美味しいわ!」
「フルーツの酸味が絶妙に甘さを抑えて、なんとも言えぬ美味しさじゃ」
「このパンはなぜ、こんなに柔らかいのでしょうか?不思議です」
「皆さん、満足していただけたでしょうか?このケーキのレシピは、今からパン工房に教えに行くので、興味のある方は、一緒に来て頂いても構いません。後はこの王都でも売り出されるでしょうから、これからは、いつでも楽しめる様になりますよ」
そう言うと、国王陛下は料理長を即座に呼び、女性陣は全員ついて行く運びとなった。何ともスイーツの力は凄いと改めて認識したのであった。
余談ではあるが、密かにガラスのコップと、グレープスカッシュも、男性陣には好評だったのだが、女性のパワーには勝てないのか、何か言いたげではあったが、またの機会にその話は持ち越された。
ケーキを食べ終わると、大名行列かと勘違いをする大人数であったが、馬車数台でパン工房へと乗り付ける。
昨日と同じで、事前に料理長に連絡してもらっていたお陰で、パン工房に入ると、職人達が手薬煉を引いて待ち構えていた。
パン工房に入ると、王族や、そうそうたるメンバーがいたので、パン工房は一瞬で緊張した空気が流れる。
「本日童達はタクト様に、これから伝説となろう食べ物、ケーキの作り方を学びに来たのだ。皆も緊張せず必ず作り方を覚えて、必ずやこの王都、いやアノース全域に広げるのだ」
いつも、物静かな王妃が声を張り、そう言うとパン職人達は一斉に頭を下げた。
「皆の者、頭をあげよ。それではタクト様。宜しくお願いいたします」
「はい畏まりました。それでは、食材を並べていくので、各人メモを取っていただく様に、お願いします」
食材をアイテムボックスから取り出していると、さり気なく近くに寄ってきた、王女のアンジェが、小さな声で耳打ちしてきた。
「今まで長年一緒に暮らしてきたけど、あんな張り切っている、お母様見たの初めてよ。ふふふ。タクト様これからも宜しくね」
そう言うと、アンジェ王女は去っていった。
殺気を感じたので、フィーナを見てみると、鬼の形相をしていたので、フィーナに誤解だと説明し、その場を何とか凌ぐ。
新しく作った型に、スポンジケーキの素材を入れ、20個まとめて焼き上げていくと、甘くいい匂いが工房中に広がり、皆はその匂いだけで、うっとりしていた。
試しに一つケーキの完成品を作って見せると、二人一組で、思い思いに好きなフルーツ並べていった。
「それでは、皆さん、自分で完成させたケーキをご自由に試食して下さい」
先ほど食べた面々以外は、ケーキの柔らかさと美味しさに感動し、それぞれ感想を言い合っていた。
「ここで、一つだけ注意させて下さい。まず完成後のケーキの管理についてですが、作り終えたら、必ず冷えた保冷庫に保管して下さい。これは売る時も同じです。必ず氷の魔石を持って、買いにくる様にお客さまに説明して下さい」
説明が終わると、予め作っておいた、キャスター付きの小型のディスプレイの出来る、魔石冷蔵庫を取り出した。
「それでは、皆さんに、この魔石冷蔵庫を売るのではなく、貸し出しをするという形でお渡ししますので、お帰りの際は各人でお店に持ち帰る様にして下さい。なお、このディスプレイ冷蔵庫は、何れどこかの領地で作られるまでは無償でお貸しします」
「おー!!これは凄い!こんな保冷庫初めてみた!」
「これなら、中身が見えるので説明しやすいし、見た目も華やかに出来ますな」
「タクト様。どこかの領地で販売されるまで、貸し出しと仰られていましたが、この保冷庫自体の販売は考えていないのでしょうか?」
皆は、同じ事を聞きたかったのか、一斉にうんうんと頷く。
「今の所、値段を考えていませんが、値段が決まり次第、連絡差し上げますので、今日のところは、持ち帰って頂いてもいいでしょうか?」
「大体でもいいので、いくらを想定しておられるのでしょうか?」
「そうですね、金貨1枚でどうでしょうか?高いですか?」
「いえいえとんでもない!逆に安過ぎます」
「そうですよ、そんなに安いとデフレーションが起きて、他の保冷庫が売れなくなってしまいます。少なくとも、金貨3枚は取っていただかないと……」
「分かりましたそれでは皆さん、金貨3枚でお譲りしますので、いつでも結構なのでお支払い頂ければ、所有権を譲渡しますので、いつでもお申しつけ下さい。言い忘れる所でしたが、私がいない時は、ギルドで受け付けてもらう様にしますので、そちらをご活用下さい」
アンジェ王女とセリスは、先ほどロンメル宰相との握手を真似て、握手を求めて来たので、それに応えると、それからは一人づつ声を掛けられ、握手をしながら解散する運びとなった。
『どこぞの、アイドルの握手会かよ……』
そう思っていると、正面でそれを見ていたフィーナは、またもや、鬼の形相を浮かべていたのであった。
その後、お持ち帰り用の台車も用意していたので、男連中で台車に乗せ、皆は満足した表情で店に戻って行った。
こうして見送りをしていると、その間に、王族やそうそうたるメンバーは、スポンジケーキを焼いていて、ケーキを更に作っていた。
「あの~皆さん……くれぐれも、食べ過ぎには注意して下さいね。食べ過ぎると太りますので」
「そうなの?でも、タクトは太ってないじゃない?」
「いや、どんなに美味しくても、毎日食べる物ではないし、地球ではお祝いのある、特別な日しか食べないから……」
そんなこんなで、ケーキを大量に作り終えると、解散をして宿に戻った。
宿に戻ると、夕食の時間になっていたが、お腹がいっぱいだったので、夕食をキャンセルして、いつものお勤めを果たしに温泉に入りにいった。
湯船に浸かっていると、フィーナが突然、釘を刺すように「ねぇ。最近ガードが甘いわよ?」と注意をしてきた。
いきなり修羅場の予感がする。
「そ・そうかな?そんなの、あまり気にしていないから」
「もう少し気にしなさいよ!まったくもう……アンジェ王女とセリスのタクトを見る目は、他の人を見る目と違うんだから!」
「それは、ないんじゃないかな?だって、相手は王族と貴族だよ?俺にだって、身分の違いくらい分かるから……」
「本当にタクトは何も分かってないわね!あなたは、神の使徒だよ!これ以上の身分が、どこにあると言うのよ!」
「そうだったよな……そんな、自覚あんまりなかったから……ごめん」
「……分かったならいいわよ」
なんで、フィーナがこんなに怒っているのか分からないが、こんな所で、色恋沙汰が起これば、今後の旅に支障が起こり、ましてやそれが王女や貴族になれば、パワーバランスが、一方的に偏るのではないかと考えを煮詰た。
「ごめん。少し軽率だったよ」
「分かれば宜しい!罰として腕を組んで王都を歩きましょ」
「え――!」
「私とじゃ嫌なの?」
「いや嬉しいけど……いきなりだったから……」
「嫌じゃないなら行きましょ」
そんな事から、王都を夜風に当たりながら、しばらく散歩する事になった。
腕を組み歩いていると、風が吹くたびに、フィーナの美しく煌びやかな髪の毛から、石鹸の良い香りがした。
『やばいよ。嬉しいけど、こりゃ本当に罰ゲームじゃないか?心臓がなんかバクバクする……フィーナは妖精、フィーナは妖精』
と念仏の様に唱えながら、その場を何とか凌いだのであった。




