表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界魔刀士と七変化の眷属   作者: 来夢
第2章 インレスティア王国編
37/203

第36話 プレゼンテーション

―― 王城・会議室 ――


王子の策略も無事成功を収め、シルバーノアを案内し終えると会議をする事になった。


会議室へ通されると、全員が一礼をしてから腰掛る様に促されたので、椅子に腰掛ける。陛下は、テーブルに用意されていた水を飲み、一息つくと話し始める。


「今日は、本当に素晴らしい体験をさせてもらった。皆に代わり代表で礼を言わさせてもらう。ありがとう」


陛下は、深々と頭を下げると、周りにいた貴族や重鎮達も一斉に起立してこちらに向って頭を下げた。


「み・皆さん頭をお上げ下さい。私はただ、私の生まれ故郷にあった物を再現しただけに過ぎません」


まさか、陛下を始め、王族などの貴族達が、自分の様な若造なんかに、頭を下げるなど想像もしていなかったので、狼狽をしてしまった。


「そなたは、謙虚よのう。好感は持てるが、あまり謙虚が過ぎると嫌味に聞こえるので、注意された方がよい」


「はい、気をつけます」


この世界に来てから、自己評価が低いと良く言われる。


しかし、日本には日常的にあった便利な物を再現しただけで、何かを新しく発見して作ったり、開発して作った物ではなく、ましてや魔法ありきの魔道具ばかりであったので、胸を張って威張れるような事をしたつもりはない。


日本人ならではの、美徳、謙虚な姿勢であるとは、重々承知しているのだが、しかし、周りの反応と評価は、それを許してくれない。


「うむ。それでは今後の話なのだが、タクト殿は何を望む?」


そう問われると。再び立ち上がり、席を立ってプレゼンを行う事にした。


「それでは皆様、実は今回飛空挺をお披露目したのには訳があります」


「ほう、それは興味深い。話してみるが良い」


「はい。それでは、今日皆さんに、案内をした飛空挺ほど大な物にするつもりはありませんが、新しく飛空挺作り、この王国に献上いたしますので、辺境の島であるラッフェル島を譲渡して頂きたいと、考えています」


「ほう、先ほどの飛空挺をくれると申すか?それは願ったり叶ったりだ。それにしても、ラッフェル島を得て、どうされるおつもりか?」


陛下は目を細め、こちらの意図を見極めようとしている様だ。


「それにつきましては、資料をお配りしてから、順を追って説明いたしますので、手元に資料が行き渡るまで、少々お待ち下さい」


そう説明をすると、王子やザバル男爵に話した計画の内容を、分かり易く纏めた物を資料にし、複合プリンターでコピーしたのを、この会議室にいる全員に配る。


あたりまえの話ではあるが、いくらスキルアノース語があっても、パソコンで打った字は、そのままアノースの人々が分かる言語には、変換などされる筈はない。そこまでご都合がいい訳がない。


そんな事もあり、パソコンの外字エディタを使い、なんとかこの世界の文字を、パソコンで打ち込み出来るように登録しまくったが、今日の時点では間に合わず、諦めて手書きで書いたのだった。


資料に書いてある内容は、まず、バベルの写真を表紙にして、バベルの塔の概要と、将来を見越した、町の区画整理完了後の図、後は将来の展望についてを簡略した物を纏めて書いたものを資料とした。


資料を、みんなに配っていると、資料に目を通す前に、当たり前のはなしかもしれないが、全員が驚いていた。


「この絵の技術はいったいどうなっているんだ!」


「こんな白い紙見たのは初めてだ!」


「これを見てみろ、私の紙と貴殿の紙に書いてある、内容も字もまったく同じじゃないか?」


『この世界では、どれを取ってもオーバーテクノロジーなので仕方がないよな』


会議室はこんな感じでざわついていたので、「ゴホン」と咳払いをすると静かになったので、改めて仕切り直す。


「さて皆さん。そろそろ私たちの正体をお話するのでご静聴下さい」


「それでは、フィーナ。経緯の話はお任せするよ」


「分かったわ。それでは皆様。タクトに代わり、私が経緯をお話させていただきます」


フィーナは、今話せる現状を、いつもの様に茶化す事なく説明する。


そして経緯を説明し終えると、予想通り誰もが仰天していた。


「まさか、神の使徒様とは……これでようやく納得が出来ました」


宰相であるロンメルさんがそう言うと、陛下が口を開く。


「並外れた戦闘技術、花火、飛空挺、さらには料理までも、この世には、今まで存在すらしていなかった物が急に現れたのは、そう言う事だったんですな」


陛下は、全て?を納得したようで、それを受け入れたようだ。


「それで、神様は何をタクト様に託し、何を望まれているのでしょうか?」


「私自身も、全てを理解してはいないのですが、神様が望まれているのは、私の持つ知識や技術をこの世界の人々に伝え、この世界をより豊かにし、飢えも無く、争いのない世界を望むと言っておられました」


陛下は、少し頭の中を整理した上で、一拍おいて質問をする。


「と言う事は、使徒様が自ら陣頭をとり、世界を導いて行くと言う理解で、宜しいのでしょうか?」


陛下は、神の使徒と判明すると、いきなり口調が変わり丁寧な言葉で質問をしてきたのだが、いつもの様にその考えを否定する。


「私自身が自ら世界を導くなど考えた事もありませんし、望んではいません。あくまでも、この世界の人々に必要な知識や技術を教え、この世界の人々が、自発的に発展出来る様に促すのが、私の役目と考えているからです」


「それでは、あなた様のメリットが無いじゃありませんか?金や地位などは欲してはおられないのでしょうか?」


「私は、自由に物が創作出来るので、お金はさほど必要ではありませんし、地位は神の使徒と言うだけで充分です」


「確かにあれほどの物が作れるのなら、金は必要あるまい。それに、地位と言うなら仰られるとおり、神様の使徒と言うだけで充分ですな。それにしても、先ほど見た様な便利な物の数々を、我々に作る事は可能なのでしょうか?」


「はい。可能です。いや可能にしなければいけないのです。私自身、神の使徒とはいえ人の身、仮に何も作り方を教えずに、不幸にも死んでしまった場合、この世界はどうなるのでしょうか?」


「うむ。誰もあなたが作った物を再現出来ずに、失われた技術として消えてしまうでしょうな」


「そうです。私の故郷である地球という星では、飛空挺どころか、宇宙にさえ到達していました。それこそ何十年、何百年とかけて……人から人へと知識を繋げてです。ですから、私は自分で知る限の知識や技術をこの世界の人々に伝えて、私のいた世界に近づけれるようにするのが、神様に与えられた使命だと考えているのです」


そう意見を述べると、皆は立ち上がり拍手をしてくれた。


「流石は神の使徒様だ、実に素晴らしいお考えです。感動しました。是非この先の詳しい話をお聞かせ下さい」


陛下やこの会議室にいる貴族達は、こちらの話を全面的に認めてくれたみたいであった。


「ありがとうございます。それでは、お手元の資料の、一頁目をご覧ください」


こうして、資料に書いてある、バベルの塔の運用方法、複合レジャー施設の建設、町の区画整理をしながらの、拡張と活性化を説明し終えると、最後は頭の中に想像出来たのか、全員が何かを想像していたようだ。


「話は分かった。あなた様にラッフェル島は譲渡しよう」


「ありがとうございます。それとあなた様とかはやめて下さい、今までどおりでお願いします。なんだか調子が狂いますので……」


「了解した。それでは皆の者。今日の話はこれまでとするが反対意見などあったら、今ここで述べてほしい。どうじゃ?」


陛下がそう問うが、誰一人として、反対意見は無い様で、それぞれ物思いに()けていた。


「それでは、反対意見も無い様なので、本日はこれにて終わりとしよう」


俺達は、立ち上がり控え室に向かおうとすると、皆が拍手で送り出してくれた。


こうして、ラッフェル島は事実上、俺の所有地となったのであった。


その後、再び控え室に通されると、フィーナ達は、俺のプレゼンを高く評価したくれた。


「タクト、全て内容は知っていたけど、なんだか感動したわ」


「私も同意見です。大変内容も分かり易く、説得力もありました」


「今まで色々な人の、こういった説明を聞いてきましたが、ここまで容易に想像しながら、話を聞けたのは初めてです」


「そう言って貰えて良かったよ。これから、ますます大変になるけど宜しく頼むよ」


「了解よ!死ぬまで協力するわ」


「お任せ下さい」


「私は、この為に生まれて来たのですね」


『なにやら、物騒な意見や、大袈裟な意見もあるが、とりあえず、上手く行ったので良しておこう』


ソファーに腰掛け、寛いでいるとドアを「コンコン」と、ノックする音が聞こえた。


「はいどうぞ」


するとメイドさんが一礼をして「国王陛下が、お話をしたいそうなのですが、お通しても宜しいでしょうか?」と聞いてきた。


「別に構いませんよ」


そう答えると護衛も付けずに、陛下が一人でやってきた。


立ち上がり頭を下げようとすると「もう立たなくてもよい。もう謁見でもないんだ。普段どおりで良いぞ」と言いったので、失礼かと思ったのだが再び腰を下ろした。


「それで、お話と言うのは?」


「タクト殿達は、今後、どこに向かわれるつもりじゃ?」


「はい、勇者を救出した後、各主要な領地を巡り、獣王国、ポリフィアを同じように巡り、各地の状況を把握し、何が必要なのかを自分の目で見極めたいと考えています」


「それなら、話は早い。入ってまいれ」


陛下がそう言うと、カイル王子、アンジェ王女、セリス、勇者一行が部屋に入って来た。


「タクト殿。この者達を、その旅へ連れて行ってはくれぬか?カイルとアンジェは、他の国や領主にも顔は利くし、セリスは、皆の身の回りの世話役でもいいので、是非と言う事なので許可を出した。勇者一行は……」


陛下が言いかけると、ローラさんは一歩前に出て、陛下の言葉を遮るように制止した。


「お待ち下さい、陛下!ここは、私の口からお願いしたいので……」


「そうであった……では、そなたの口から申せ」


「ご配慮感謝いたします。タクトさん。どうか私たちと共に、勇者であり仲間であるアルムをお救い下さい」


ローラさん達は跪き、頭を下げた。


「さぁ、とっとと頭を上げて、跪くのをやめて下さい」


「しかし、こちらはお願いする身…… 」


「いいから……」


思わず手を差し伸べて、ローラさん、ラルーラさんシェールさんを立ち上がらせた。


「俺たちも、堕天使のレクトリスの動向が気になるから、逆にこっちが頼みたいくらいだ!手伝ってくれるかい?」


「タクトさん」


そう言うとローラさんとラルーラさんは、俺の手を取り「このご恩は忘れません」と涙を浮かべ微笑んだ。


「もう、タクトったら!誰にでも優しくする」


なぜかフィーナは怒っていたが、気にしない方向にした。


陛下は立ち上がり、部屋から退出しようとすると、すれ違い様に耳打ちする。


「あの娘二人も、説得をしたのだが、死んでも行くと聞かぬので、ワシも折れたのだ……気をつけられよ」


そう聞くとなぜだか、背筋がゾッとして、幸先不安になったのは言うまでもない。


陛下達が部屋を退出すると、ザバル男爵がやってきて「お待たせして申し訳ない。御者の準備が戸惑ってな。そろそろ宿へ送るとしようか」と言う話になったので、馬車が待つ城門へと向かう。


すると、王子、王女、セリス、勇者の仲間3人が、見送りに来てくれたのか、馬車の前で待っていた。


「それでは皆さん、私達はこれから宿へと戻りますので、今日はありがとうございました。それと急な話なんですが、ローラさんにお願いがあるのですが、作戦を練るため、宿までご同行願えないでしょうか?」


「私だけなら、構わないです。シェールとラルーラは、先に宿へ戻っていてくれませんか?」


「わかりました。ではシェール、先に宿に向かうとしましょうか?」


シェールは頷くと、二人は宿の方向へと歩いて行った。


「それでは、カイル王子、アンジェ王女、セリス。また日程が決まり次第連絡しますので、お待ち下さいね」


そう話をすると3人は「はい」と返事をした。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※  



皆が、控えの間やってくる5分前の事、王家の部屋では……修羅場を迎えていた。


「バーーン」


「セリスだけズルいです!もう転籍が決まっているなんて!それに、今回の旅にも付いて行くと言う話じゃない!」


アンジェ王女は、机を叩き、すごい剣幕で捲くし立てた。


「しかし、アンジェ、お前はこの国の姫じゃぞ。それにザバル男爵は、タクト殿に、相当惚れ込んでおって、話はついておるらしいじゃないか」


「それじゃお父様は、タクト様が気に入らないとでも、仰るのですか!」


「そうではない。分からぬか?」


「分かりません!先ほどの、タクト様の話を聞いていなかったのですか?神の使徒でありながら、勇者を赤子の様に扱い、あの知識や技術ですよ!これ以上何が不満と言うのですか!」


「分かった。考えておくとしよう」


「考えても無駄です!死んでも付いていくんだから!私は絶対に諦めませんからね」


アンジェはそう言い放つと、怒りながら部屋を後にした。


「まったく、困ったやつじゃ……」


「……仕方がないじゃありませんか?あなたが甘やかしたから、我がままで頑固になってしまって……」


王妃がそう言うと、陛下は大きく溜息を吐く。


「ワシの育て方が、間違っておったのかもしれないな……しかし、あそこまで、聞かぬとは予想外ではあったが……」


「あらあら、あなたとタクト様は、もう少し女心を理解した方が、宜しいのじゃないですか?」


王妃はそう言うと、再び陛下は頭をかかえ、何かに謝罪していた。


『フィーナ様すまぬ……ワシじゃ止められなかった……』


なぜか陛下はここにはいない、フィーナに謝罪したのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ