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異世界魔刀士と七変化の眷属   作者: 来夢
第2章 インレスティア王国編
36/203

第35話 王子の策略とお披露目会

―― 王都・貴族専用宿・トロイ ――


翌朝…………


昨日は、謁見など色々あって、精神的にも疲れていたのか、いつもなら5時には起きるのに、今日は目覚めると、7時を過ぎていて遅めの起床となった。


宿のレストランで、フィーナと一緒に、2人掛けの席で朝食を注文すると、作り方を伝授したパンが出て来て、フィーナもご満悦の表情だった。


「おはようございます。昨日は本当にありがとうございました。おかげさまでこうして今日の朝食から、教えて頂いたパンをこうしてお出しできる事が出来ました。それに昨日の晩に打ちあがった火の花も、タクト様のお力だと、もうこの町ではその話題で持ちきりですよ」


「そう言って頂けると、教えた甲斐がありました。それと昨日の晩の火の花は正式には、花火と言うんですげど、あれは私の力ではなく、ここにいるフィーナが考えた魔法なんです」


「何を言っているのよ。あれは二人の共同開発だから、タクトも誇っていいのよ」


そんな話しをしていると、隣の席に座る親子が、パンを食べて興奮気味に話す声が耳に入る。


「お母さんあんなに硬かったパンが、こんなに柔らかくて美味しいよ」


「そうね。お母さんも、こんなに美味しいパンは始めて食べるわ」


会話を聞いてみると、親子の楽しそうな会話が耳に入る。


「見て下さい、あのお客様達の笑顔を。パンひとつで、あんなにも笑顔をもたらす事が出来るなんて、やはりタクト殿は、神の化身ですな」


周りのテーブルを見て見ると、他の客も、パンを美味しそうに食べていておかわりを求めている。


それを見て、パンの製造方法を教えただけで、皆がこんなに幸せな顔になるのだと、本当に教えて良かったと心から思う。


「まぁ、神の化身は、言い過ぎです。けれど、皆さんが、美味しそうに食べてくれて良かったですよ」


「もうそろそろ神を名乗っていいんじゃない?本当の神様でも、皆をあんな笑顔にするなんて無理なんだから」


相変わらず神認定をしようとするが意図が全く分からない。ここで反論しても無意味なので、この話題から離れるようにしたかった。


すると、約束していた予定の9時より30分早く、王子とザバル男爵が、宿へと迎えにきた。


「これは、王子殿下と男爵様、おはようございます」


料理長は、二人の顔を見ると深々と頭を下げて「それでは、私は失礼を」と言い、厨房の方へ戻っていった。


「お二方、おはようございます。昨日言った約束より早くて申し訳ない。事前に打ち合わせをしておきたかったので、来てしまったのだが、都合はいかがかな?」


「おはようございます。たった今、朝食を食べ終えたので別に構いませんよ」


そう答えると、4人掛けのテーブル席に移動して、二人は、ウェイトレスさんに飲み物を注文をした。


「それで事前に打ち合わせとは、どんな内容なのでしょうか?」


「どうせお披露目をするなら、直接飛空挺で王城に乗り付けてはどうかと思ってな。その方が、インパクトがあるだろう?」


「確かに、インパクトはありますが、本当に宜しいのでしょうか?国民がパニックになるんじゃ?」


「もう既に衛兵達には、王都全体に空を飛行する船が下りてきても大丈夫だと、言い回る様に指示してあります。父上も、飛空挺で乗り付けられたら驚くでしょう」


「まあ、カイル王子がそこまでお考えになっているのでしたら、私が反対する理由はありません」


「そうね。タクトの技術や知識を知らしめる為なら、手段としては最適かも知れないわね」


「それでは、準備が整い次第、外にタクトの馬車を待たせているので、一緒に参りましょう」


そう決まると、レストランから部屋へと戻る前に、フェルムとアイラに声を掛け、準備を始める。


準備が整うと、ロビーで待っていた王子とザバル男爵と一緒に、全員が揃って馬車に乗り込むと、シルバーノアへ出発した。


その道中で、馬車の名前が、タクトの馬車に変わっている事を追求をする。


「カイル王子まで、タクトの馬車とか言う名前に賛同しなくても、良かったのではないのですか?」


「まぁ、良いではないか。歴史に名前が残る上に、昨日男爵から、<これからタクト殿が作られたり、考案した物に関してはお金ではなく、タクトと名を入れる様に決まった>と、聞きいる」


「そうよタクト。もう決まったんだから往生際が悪いわよ!」


皆が、その意見に同意するので、代替案が出来るまで、渋々了承させられてしまった。


「それはそうと、今日の昼食ですが、代金はお支払いいたしますので、用意しては頂く訳には参りませんか?」


「それは、いい考えね!私もそれがいいと思うわ!」


「では、タクトのハンバーグと、タクトのパンは、どうであろうか?あれなら間違えない!」


「賛成ですな!私も、今それを提案しようと考えていましたよ」


王子とザバル男爵は、目を輝かしそう言った。


『馬車といい、この件といい、両方とも俺の名が入ってるよ。どうにかして欲しいよ、まったく……』


「分かりました。代金はもうザバル男爵から、色々頂いているので結構ですよ」


「いけませんな。それはそれ、これはこれです。また何か、ご希望があれば用意いたしますので、何なりとお申し付け下さい。それにしても欲がないですな」


「まったくだ。これでは、この先頼みにくいよ……」


「そこは、遠慮はいらないですよ。それでは、何か思いついたら、その時にでもお願いします」


ザバル男爵には、色々とお世話になっているので、それぐらいの事ぐらい、良いと思っていたのだが、押し切られてしまった。


「さぁ、もうそろそろ、目的地に到着しますよ」


御者のフェルムがそう告げると、皆は降りる準備をする。


シルバーノアに到着をしたので、隠蔽を解除するとフェルムに馬を任せタラップを掛けた。


タラップを上ると王子に「シルバーノアに王国旗を掲げて貰う訳にはいかないだろうか?」と提案をされた。


理由を聞いてみると、突如、飛空挺が現れたとしても、王国旗が掲げられていれば、少なくとも敵ではないと認識出来るという事であった。


なるほど、と納得したので、即座に対応し、王国旗を簡易的に作ったポールに掲げると、剣と盾をモチーフとした緑色の王国旗が、風で音を立ててパタパタと音をたててはためいてるのを確認した。


『シールドプロテクションが解除されているから、風の影響があるんだな』


「忙しいのに迅速な対応をしてくれてすまない。しかし、やはりタクト殿は人外だな、言ったらすぐ対応出来る者などこの世界にはおらぬ」


時間が押してきたので、軽く頷くだけに留めておいた。


アイラに昼食を作るのを手伝ってもらうと、昼食もなんとか間に合い、全ての準備が整ったので、シルバーノアを発進させる。


「フィーナ異常はないか?」


「計器、船体、魔石に異常無しよ。いつでも行けるわ」


「アイラ索敵に異常はないか?」


「この付近に飛行型モンスターの存在は確認出来ません」


「カイル王子。全て異常はありません。出発しても宜しいでしょうか?」


「では頼む!」


「それではフィーナ。隠蔽を解いたまま上空500mまで上昇し、ゆっくり王城に向かう」


「了解!」


そう言うと、シルバーノアはゆっくりと王城に向かい出した。



――――――――――――――――――――――――――――


出発をしてから暫く経った頃、王都では……


「―――――!何よあれ!船が空を飛んでこっちに向かって来ているわ!」


国民のひとりが叫ぶ様にそう言うと、周りにいた全員が一斉に空を見上げる。


「な・なんだ!!戦争をするなんて聞いてないぞ!!」


その騒ぎに気付いた、家の中にいた者は外にでて、2階、3階に住む者は何事かがあったのかと窓を開け身を乗り出す。


「……どこかの国か、魔人が攻めてきたのか」


すると、国民がパニックになる前に、馬に乗った騎兵が、国民に向かって大きな声で叫ぶ。


「国民の者、静まれ!あの飛空挺は、カイル王子が仕掛けた、最先端の技術を使った空を飛ぶ船だ。嘘だと思うならよくあの船を見ろ。我が国の国旗が掲げられているではないか。それがその証拠だ!」


騎兵がそう言うと、国民は安堵の表情を浮かべ、騒ぎを起こす者はいなくなったが、全長100m以上もある巨大な船が空を飛ぶ姿に呆気にとられていた。




――――――――――――――――――――――――――――



元々、シルバーノアが停泊していた場所が、王都に近い場所であったので、シルバーノアが上昇すれば王都から見えるようである。


双眼鏡を取り出し、甲板の先端に移動して様子を窺いにいくと、声など全く聞こえないのだが、王都の民は騒然となっていた。


これは、どう言う事だと思っていると、騎兵が国民に説明を始めていて、混乱はすぐ沈静化されていく姿が確認出来て安堵をする。


その後も様子を見ていると、今度は、国民はその光景をひと目見ようとする者や、心配な顔をして見守る者など、家には戻らず、王都の道一面が空を見上げる国民で溢れ返っていた。


そんな光景を目の当たりにしながら、シルバーノアはゆっくりと王城へ向い、瞬く間に王城の上空に到達をしたので、慌てて艦橋に戻った。


「カイル王子、王城上空に到着しました」


「それでは、左手に見える広場に着陸して頂きたい」


「了解しました。フィーナ頼む!」


「了解よ!」


シルバーノアは、ゆっくりと、存在をアピールする様に着陸を開始し始め、今度は、王子と一緒に甲板へと様子を見に行く事となった。


艦橋(ブリッジ)から甲板に出ると、事前連絡を受けていた兵士さえ、シルバーノアの圧倒的な存在感と迫力に腰を抜かす者が多数見えた。


王族達の私室は、最上階にあるので、国王陛下の私室のバルコニーの高さに、甲板の高さを合わせるようにシルバーノアを降下させ一旦停止をする様に指示を出した。


すると案の定、陛下たち王族は慌てのバルコニーに飛び出してきて、少しパニックになっている。


「こ・これはいったい……何事か?」


陛下達は、いったい何が起こっているのか、理解が追いついていない様子だった。


「父上、ご安心下さい。これはタクト殿が開発した、飛空挺と呼ばれる、空を飛ぶ船ですよ」


甲板から、カイル王子が手を振りながらそう答えると、陛下達は安堵の表情に浮かべた。


そんな中、一番最初に正気に戻ったのはアンジェ王女だ。


アンジェ王女はバルコニーから身を乗り出し、さながら、ロミオとジュリエットの舞台のワンシーンの様な感じだ。恋人同士でもなく、木の上じゃないのが残念だが……


「おい、アンジェ、落ちるから危ないぞ!」


「お兄様だけ、ズルいです。私も是非搭乗させて下さい」


アンジェ王女はジャンプをしたり、手を伸ばしたりして、兄である王子に向って、そう叫んだ。


『恋人同士なら絵になるけど、兄弟だもんな……ロマンスもへったくりも無いよ……』


そう、思っているとザバル男爵の娘であるセリスまでもが、バルコニーから身を乗り出して叫びだす。


「えっ!アンジェだけ、ズルいです。私も一緒にお願いします」


なんだか、昨日のダンスと重複する様な会話の内容だったが、セリスも便乗しだした。


すると、同乗していたザバル男爵が、ひょっこりやって来た。


「セリス。ワシからタクト殿に頼んでみてやろう」


「あっ!お父様!絶対の絶対ですよ!」


セリスは手を叩き喜んでいるが、こちらもロマンスの欠片も無い。


すると、陛下も、正気に戻ったようであり、興味津々な顔をして王子に大声で問いかける。


「私を差し置いてそんな約束をするなどけしからん。タクト殿!皆で、乗せて頂くわけにはいかぬか?」


「もちろん、そのつもりでしたよ。いつでも歓迎いたします」


そう答えると、バルコニーにいる皆は歓喜しながら、手を叩いて喜んでいた。


「なっ!こちらの思惑どおりだ」


カイル王子まで、どこで覚えたのか、サムズアップをして満足気だった。


こうして、王子の策略は成功を収め、王城の広場へと正式に着陸をさせた。


先ほど、国王陛下にみんなを乗せると言ったものの、セキュリティーと食事の関係で、誰でもかんでも乗せるのは問題があるので、カイル王子と話し合った結果、今回は、王族、宰相、各大臣、有力な貴族、勇者一行、護衛の騎士や兵士、約50人を乗せる事が決まった。


ちなみにザバル男爵の娘セリスは、本来なら除外される筈だったのだが、ザバル男爵が約束した以上、乗せない訳にはいかなった。


アンジェ王女とセリスは古くからの親友であり、ザバル男爵の奥さんが亡くなった後、とある理由で何年も一緒に姉妹のように、一緒に王城で暮らしているという話もあり、そちらも考慮した結果である。


そんな感じで搭乗者が決まると、搭乗する者は広場に集まって貰う事となり、搭乗する者の確認作業はカイル王子はお任せした。


「それでは、皆さん、確認を終えられた方から順に、こちらのタラップから飛空挺に搭乗して下さい」


そう説明をすると、大人数用の出入り口から、3階層目の安全な通路を通って甲板へと集合して貰う。


「ようこそ、我が飛空挺シルバーノアへ。それでは、皆さんを上空へご案内しますので、今から景色をご堪能下さい。プロテクション・シールドと言う結界が張ってあるので、万が一の危険もございませんのでご安心下さい」


そう説明をすると「おー!そんな結界が簡単に張れるのか」と、驚きの声が聞こえて来た。


出発の準備があるので、この場をカイル王子に任せ艦橋(ブリッジ)に戻ると、事前に打ち合わせた通り作戦?を実行する。


「フィーナ。ゆっくりと上空3000mまで上昇、高度を維持したまま待機」


「了解よ!」


シルバーノアはゆっくりと上昇する。


地上から上空へ離れるにつれ、みんなは、手摺にへばりつき景色を眺める。


「お~!なんと言う素晴らしい眺めだ!この目で、こんな光景を目にするとは!」


「これが、王都を上から見た光景か!!」


一斉にみんなが、言葉を発したので、言葉が混じって聞き取りにくかった上に、誰が何を言っているのかまでは、確認出来なかったが、王族たちにも好感触であった。


陛下達が集り、景色を見ていたので、直に感想を聞いてみる。


「陛下、いかがでしょうか?ご堪能いただけたでしょうか?」


「いやはや、もう驚き過ぎて、空いた口が塞がらない」


「それはそれは、感動しましたわ!貴重な体験をさせて頂いて、ありがとうございます」


ここまで沈黙を保っていた王妃も感激をしていた。


そんな話をしていると、瞬く間に上空3000mに到達した様なので、次は予定通り船内を案内する事にする。


「それでは、皆さんを、これから船内にご案内いたします。こちらのカードが必要となりますので、順にお受け取り下さい」


そう説明をしてからカードを取り出すと、仲間達に手渡してカードを配って貰い、行き渡ると、セキュリティーについて、簡単に説明を行ってから船内を案内し始める。案内は、仲間に手伝ってもらったのでスムーズに進んで行った。


案内を終えると「今日まで生きてきたが、これほど驚き、感動した事はない」と、陛下が代表で感想をくれた。


王妃様や女性陣は、予想通りトイレに感動していて「謝礼は幾らでも用意させますので。このトイレを我が城へ是非!」と熱望された。


こうして、王族や貴族がこぞってこちらに向ってやってきて、色々と希望や要望を言われたので、つい苦し紛れに「分かりました。出来る事からやりますから、お待ち下さい」と、無責任な返事をしてしまった。


しかし実際に、これら皆が欲しがる製品は、この地の素材で創作した物ばかりなので、王国を出る前に製造方法を確立し、この世界の人々でも作る事が出来る様にするのが、自分に与えられた使命であると自負している。こんな考えがあったからこそ、先ほどの無責任な発言に繋がった訳である。


そうしてる間に時計を見てみると、昼食の時間となったので、今回は人数も多く、後片付けをし易いように、フィーナの好物であるハンバーガー、ポテトフライ、レモンスカッシュなど、日本では当たり前の3点セットで用意した。


それぞれに、食事が行き渡ると「それでは、皆さん、遠慮なく食べ始めて頂いて結構です。まだ少しなら、おかわりもございますので、ごゆっくりご堪能下さい」と言うと、皆は一斉に食べ始める。


ごく一部ではあるが、食べた事のある者は笑みがこぼれ、初めて食べる者に関しては、反応は凄まじく大好評であった。


食事も終わり、一息つけると勘ぐっていたが、食事が終わっても質問攻めに合い、この場で、作り方まで説明するは当然無理なので、調理長にレシピを教え、王城の厨房から各領地へ料理を広めると言う事で、ようやく納得してもらえた。


こうして、披露目会?と食事を披露し終えると、興奮が冷めぬまま、王城へと戻る事となった。




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