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異世界魔刀士と七変化の眷属   作者: 来夢
第2章 インレスティア王国編
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第34話 月下の舞と花火

―― 王城・大広間 ――


宴も中盤に差し掛かり、様々なイベントが始まっていた。


大道芸や、色々な楽器を使った演奏など、俺は興味もなかったので、目立たないように、食事や軽めのお酒を、たしなんでいると、ローラさんとラルーラさんがやってきた。


「タクト様。お一人で何をされているのですか?」


「そのタクト様は、やめて欲しいかな。何せ慣れてないくて」


「分かりました。それではタクトさんと呼ばさせて頂きますね」


「それでいいよ。そう言えば質問に答えてなかったな。正直人ごみが苦手でね、こうして逃げているのさ」


「ははは。それはそれは。それではお近づきに一緒に飲みませんか?」


「構わないよ」


「それにしても、ローラさんも、ラルーラさんも美人ですね。恋人とかいないのですか?」


「あら、お上手ですね。見てのとおり腕っ節が自慢の私たちですから、大概の男性から引かれているのですよ。ラルーラは極度の人見知りだしね」


「何か勿体無いですね。折角の美貌の持ち主なのに」


「そんなに、褒めるのなら、タクトさんがお嫁に貰ってくれませんか?」


「へっ?またまたご冗談を……自分で言うのも何ですが、あまりお勧め出来ませんよ」


こんな感じで少し喋っていると、突然フィーナが何かを見つけたのか、強引に誘うので、仕方が無く行く事にした。


「話の途中でごめん。少し行ってくるよ」


「お気になさらなくても結構ですよ」


「楽しい会話ありがとう」


二人と別れ、外の庭園に出ると、外は月明かりで辺りは意外にも明るかった。


もう直ぐ夏が始まるとは思えないくらい、心地の良い夜風を感じながら、どこかに向かい歩いて行くと、到着した場所は演舞が開催されていて、既に騎士と兵士の演舞が始まっていた。


俺達は、しばらく何も言わずに、それを見ていると確かにそれらしい動きと、魔法などを使い、派手には見える。


だが、エクスプロージョンの威力を知っている、俺には物足りなく感じてしまい、なぜフィーナが強引に誘ったのかも分からず、所詮は子供騙しと感じてしまった。


最後まで見て拍手が沸き起こると、それを見てフィーナは我慢できなかったのか「大した事ないわね!見るに値しないわ」と言って会場から立ち去ろうとした。


「おい!そこの女!お客人とはいえその言い草、聞き捨てならん!ならば貴様が手本を見せてみよ」


演舞をしていた兵士長らしき男が、フィーナを呼び止めると、気のせいかフィーナの口角が少し上がったように見えた。


これには、俺達の実力を知る、騎士長のゴルさんも、手を頭に当てて「あーあ。やっちゃったよ」と頭を抱えていた。


ゴルさんは、諦めた様子で「フィーナ様。お手柔らかに」と言うと、フィーナは悪い顔をしている。


『まただよ……これじゃ、フィーナの思うつぼじゃないか!』


「いいわ本当の演舞を見せてあげるわ。でも、この格好じゃ無理だから着替えさせて!」


「いいだろう。逃げも隠れもしないし、させないよ」


兵士長がそう言うと「タクト。準備するから行きましょ」と俺の手を掴んで、歩き出した。


「うそ~。俺もなの?」と驚くと「当たり前じゃないのよ。私達はパートナーでしょ」とフィーナは嬉しそうに、俺は悲しそうに、控えの間に着替えに行った。


控えの間に着くと、スーツを脱ぎながら「フィーナ、なんであんな事言ったんだい?」と問いただした。


「あら、簡単な話じゃない。あんなの子供のチャンバラよ!見るに値しないわ。それに、私達を売るチャンスじゃない?チャンスは自分で掴む物よ!」


なんだか、それらしい事を言っている様だが、単に暴れたいだけじゃないかと思ったが、言ったら言ったで、面倒くさい事になるので、敢えて言わない事にした。


「タクト、この前、温泉の後練習した。花火を最後に打ち上げましょうよ」


「本当にやるのかい?」


「演出にもってこいじゃない?」


「分かったよ。あれはフィーナの努力の結晶だからな」


以前、フィーナがリンクで俺の記憶を覗いた時に、花火をみたらしく、どうしても再現してほしいと言う事で、打ち上げてみたところ、確かに音は鳴ったのだが、そんな都合よく花火のようにはならなかった。


それでも、フィーナは中々諦めることが出来ず、幾度も花火の爆発させるタイミングや、色を変えるなど、そんな所まで出来るのかと感心するほど術式を解析して、失敗を重ね、最後にはとうとう、魔法で花火を再現出来るところまでこぎつけた。


結局最終的に出来上がったのは、アイスブラインンドのように、大きさの違う幾つもの火の玉を同時に打ち上げ、火の魔法の色を変えて同時に打ち上げると言う方法になったが、十分実用レベルに達していた。


念のため、火の魔石にも書き込んだので、後から魔力量の多いフェルムとアイラにも渡し手伝ってもらうことになり、その後も、花火を打ち上げるタイミングを話し合い、やはり最後に打ち上げるのが一番だと決まった。


控え室に戻ると、いつもの着物の格好に着替え、フィーナは、チャイナドレス姿に変身すると、なぜだか、行く前より人が集まっている会場に戻った。


人に披露する為に、わざわざ練習したわけではないので、少し緊張したが、「私は、準備が出来ているわ……タクトのいいタイミングで始めちゃって!」と言って、手を伸ばし、扇子を要求した。


「仕方がない。腹を括って始めるとするか!フィーナこれを」


そう言うと、フィーナに扇子を俺は手渡した。


この世界に、マイクやスピーカなど、もちろん無かったので、俺は出来る限りの大声で説明を始める。


「それでは、まず、私の剣舞を披露してから、フィーナの扇舞を披露し、最後に、剣舞と扇舞の戦闘を模した、舞を披露しますので、宜しくお願いします」


そう大声で説明すると、割れんばかりの拍手が響いた……


さっき絡んできた、兵士長らしき人物も、舞台袖で不適に笑っていた。


深呼吸をして、呼吸を整えると、この前練習した剣舞の型を披露し始めた。


剣舞の型の一部である、居合いや縮地などのスキルを使うと、一瞬で終わってしまうので、技の切れと間合いを意識して、刀で文字通り、美を追求し舞う。


練習の成果があってなのか、ノーミスで演舞が終了すると、拍手が鳴る前に、フィーナにスイッチした。


フィーナは、俺の剣舞を見真似し、それに習って扇子を広げ、ゆっくりと蝶の様に舞い、鋭く、美しさを追求し、技を決めていく。


フィーナも、ノーミスで演舞が終了すると、最後に結構練習した殺陣(たて)もどきを、演舞様に調整したものを披露し、これもノーミスで演舞を終えた。


こうして全ての演舞を終えると、観客の方へ向きお辞儀をすると、いつのまにか、一番前を陣取っていた、王族も立と上がり、惜しみない拍手を送ってくれた。


「お二方とも、今宵は、良いものを見せてもらった。まさに、その洗礼された無駄のない動きは、芸術といっても過言ではない。久しぶりに鳥肌が立ったよ」


国王陛下が、そう褒めると、もう一回と、アンコールが響いたので、仕方なく、もう一度、速度を若干速めて披露したのであった。


演舞が終わると、舞台袖にいた兵士長も、負けだと納得したのか、文字通り脱帽し、拍手をしてくれていた。


舞台を降りると、周りを貴族達に囲まれたが、カイル王子と勇者一行に助けられ、何とかその場を離脱した。


小走りで、控えの間に移動すると「それにしても、お見事でした。私も鳥肌が立ちましたよ」王子がそう言って褒めると、いつからいたのか、分からないが、アンジェ王女とザバル男爵の娘のセリスも、一緒にいて同意する様に頷いていた。


「私達が操られていたとはいえ、指一本触れる事が、出来なかったのも頷けるわ」


勇者一行もみんな頷いている。


「皆さんに、そう言ってもらえると、なんだか照れます」


頭を掻きながら照れていると、フィーナにとっては予期していない、ハプニング?が発生した。


「タクト様!今から、ダンスが始まるので、私と一緒に踊って頂けませんか?」


「えっ!アンジェだけズルイです。その次でいいので、私もお願いします」


「いや~まいったな……」


と恐る恐る、頭を掻いていた手を止め、フィーナの方を見ると、鬼の様な形相をしていた。


王族や貴族の頼みなので、断る事も出来ない上に、断る理由も思いつかなかったので、フィーナには申し訳ないが、つい了承してしまった。


「それでは。着替えてから会場に参りますので、会場でお待ち下さい」


「絶対ですよ。会場で、お待ちしていますからね」


アンジェ王女はそう釘を刺すと、セリスと一緒に笑顔で一礼をして、部屋を退出していった。


それを見ていた、カイル王子、ザバル男爵、フェルムは苦笑いしていた。


「これでは、先が思いやられますな……」「フィーナ様……お気の毒です」などと、言われて、不吉な予感しかしない俺であった……


その後、カイル王子にサプライズとして花火を上げることを告げると、カイル王子は二つ返事でそれを受けてくれ、段取りを書いた紙を渡した。


着替えるので、皆がその場から離れると、当然のように、フィーナからの説教が始る。


「もう、タクトったら、なんで受けちゃうのよ!そりゃ、私が蒔いた種って言う事ぐらいは、私にも分かるけど」


「なんだかごめん……王族の頼みだから断れないし、断るにしても理由がなかったんだよ」


フィーナに、手を合わせて謝った。


「仕方がないわね。最後にダンスがあるなんて、私のリサーチ不足だったし、じゃ三番目でいいから私とも踊ってくれる?」


「もちろん、そうするつもりだったよ。フィーナを、無視する訳ないじやないか?それに、最後の方が思い出に残るだろ?あの二人は本番の為の練習相手だと思ったら。そんなに腹を立てなくても、いいんじゃない?」


そう宥めると、「そう?それもそうね」と言い嬉しそうに納得をしていた。


『ようやく納得してくれたよ。でも本当にフィーナと、踊れるなんて幸せかも知れないよな』


こうして、着替えて会場へと向かった。


会場へと向かうと、既にダンスは始まっていて、社交ダンスのワルツに似た曲が演奏されていた。


辺りを見渡すと、俺を見つけた、アンジェ王女が近くに歩いて来た。


もちろん、社交ダンスなんて踊った事はなく、知識があるとするのであれば、テレビのバラエティー番組で、見ていた程度だった。


俺は歩いてきた、アンジェ王女に「お待たせいたしました。では、早速お願いいたします」と手を差し伸べた。


アンジェ王女は、お辞儀をして、手を取ると「こちらこそ、宜しくお願いします」と、にっこり微笑んだ。


次の曲へと、移るタイミングでホールに入ると、人間離れした身体能力と動体視力で、なんとかミスをカバーし、アンジェ王女とセリスと連続で踊ったが、大きなミスはなく、なんとか、その場を乗り切った……


最後に、フィーナに代わると、フィーナはとても嬉しそうしていた。


一礼をして、フィーナの手を取り、ホールに入ると、互いの腰に手を回し、密着した状態でダンスを踊る。


ダンスが終わると、フィーナは満足した様子だったので、なんだかほっとし、ミスせずダンスが無事終わったと、胸を撫で下ろす。


こうして、興奮も冷めやまぬまま?ダンスが終わると、いよいよ花火を打ち上げる時間となった。


「ここで、皆さんに今日のお客様である、タクト様とフィーナ様からサプライズがあります。皆さん、外に出て夜空を眺めてお待ち下さい」


事前に打ち合わせていたとおり、カイル王子がそう言うと、会場にいた全員が何事かと、不思議な顔をして夜空を見上げる。


すると、会場である王城の光の魔石が一斉に消え、周りがざわついた。


「よし、準備が整ったみたいだな。いくぞ」


「ファイヤーブラインド」


俺たち4人はそう唱えると一斉に火の玉が夜空にあがり、魔法版の花火が打ちあがる。


「パーン・パーン・パーン・パーン」


4つの花火が同時に上がり、音は城に反響をし、花火の光で城が幻想的に映し出される。


「よし成功だ、次々行くぞ」


火薬を使用していないため、煙が出ないのでスターマインのように次々と上げていき、5分間連続で打ち上げると、最後は秘密兵器のエクスプロージョン・ブラインドを俺とフィーナで放つ。


「エクスプロージョン・ブラインド」


そう言って放った魔法は、一際大きい青色の火の玉となり打ちあがって行く。


「ドカーン・ドカーン」


王城から跳ね返る音圧がここまでくると、カイル王子に渡した段取り通り終了し、王城の光の魔石が、一斉についた。


「お疲れだな。なんとか、成功したよ」


「私も客観的に見たかったな」


「またバベルで打ち上げてあげるよ」


「約束よ!」


そんな話をしながら、月下のもと王城に歩いていくと、最初にこの世界に来た日の事を思い出す。


王城に到着すると、初めて見る花火に感動した人々が、涙を流しながら拍手をして迎えてくれた。


国王陛下も感動したようで「あんなに美しい火の光を見たのは、初めてじゃ。感動をありがとう」と厚く手を握られ感謝された。


こうして、全員に感謝され続け、興奮も冷めぬまま宴も終わり、帰りに城門まで見送りに、カイル王子とザバル男爵がやって来た。


「タクト殿、先ほどの花火は素晴らしかった。感動したよ。それで、話は変わるけど早速で悪いんだが、明日の朝、飛空挺のお披露目をしたいのだが都合はどうだろうか?」


「私は構いませんが……」


「それでは、明日9時頃に迎えに行くので、宜しく頼む」


王子も悪い顔をしている所を見ると、なにか考えがあるらしい。


「それでは、また明日楽しみにしているぞ」


「今宵はありがとうございました。おやすみなさいませ」


「こちらも、良いものを見せてもらった、礼を言う」


お互い挨拶を交わすと、宿に戻っていった……


それから、転移魔法で温泉へ行き、一緒に入るという、いつもの、お勤めをこなしてから、宿に戻り就寝したのであった……


こうして、長く濃密な一日が、無事に終わったのであった。




いつも、お読みいただいてありがとうございます。


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