第3話 初めての異世界
本編の開始です。
―― アノース・とある場所 ――
神界から転移魔法で転移すると、俺は気絶していたのか、ふと目覚めると俺は暗い森の中にいた。
上体を起こし、先ほどの神界での事を思い出し、新しい肉体を与えてもらい、異世界に転移すると言う話であったが、これはまだ夢の中なのかと思い、頬をわりと強くつまんでみる。
「いててて……お~痛!」
『俺ってバカ!夢だと思って強くつまみ過ぎた。それにしても、やけに暗いけど……ここはどこだ?』
少し涙目になりつつ、頬をさすりながら起き上がろうとすると、胸のポケットの中が、なにか光っているのに気がついた。
胸ポケットの中を見てみると、妖精のフィーナが神々しく発光していたが、状況を把握するために取り敢えず立ち上がろうと上半身を起こす。すると、フィーナも目覚めたようであった。
フィーナは「……おはよう、タクト」と言うと、小さくあくびをし体を伸ばす。
「おはよう……こんな真っ暗な所で、おはようはおかしいか?ところで、ここはどこなんだい?」
背中などに付いた砂を適当に掃い、立ち上がると状況把握するために、フィーナに質問をしてみる。
「現在地はアノースというタクトが住んでいた、地球とほぼ同じ様な環境の星で、私の知る限りでは、ここはとある島よ」
「そ…そうなの?異世界って言うから、どんな所か期待と不安だったけど、目覚めたらいきなり真っ暗な森だったから、少し動揺しちゃったよ」
「ふふふ……私は、この辺りが島のどこら辺か確認するから、少し待ってね」
「うん……分かったよ。暗いから気をつけて!」
フィーナは頷き、こちらを見て少し微笑むと、先ほどより強い光を纏い、魔法であろうか?ゆっくりと浮上して、頭を天に向けて、手を振りながら、徐々に加速し飛んで行った。
『いいなー!俺も飛んでみたいな……ひょっとしたら、魔法なら飛べるんじゃないかな?夢が広がるよ』
魔法のホウキ、魔法の絨毯、想像するだけで胸が躍る。
フィーナが、空に飛んで行ったのを見送り、改めて辺りを見渡すと、今立っている場所は、森のではあるが道らしく、雑草は生えているものの、馬車か何かが通ったような轍の跡がある。
月明かりだけでは、その程度しか確認出来なかったので、何か役に立つ持ち物を所持していないか、取り敢えずズボンのポケットの中に手を入れようとすると、服装が変わっていることに気が付く。
『あっ、そう言えば神界にいた時は、作業服だったけど、いつの間にか、普段着に変わってら……』
神様が、サービスをしてくれたのか、服装は黒の長袖のシャツ、白のTシャツ、カーキのカーゴパンツと仕事に行く前の姿になっていた。
「それにしても暑いな~。季節はいったい何時なんだろう?」
空気はそこまでジメジメとしていなかったが、暑かったのでシャツの袖をめくり、改めてポケットの中身の確認をしてみると、財布、腕時計、スマホがあったので電源を入れ確認してみた。
「正直スマホがあって、助かったよ……そう言えば神様が、所持品も再生しれくれるって、言ってたような気がするな……」
周りに誰もいないが、独り言でも喋る事によって気を落ち着かせ、神界であった出来事を少しでも、思い出してみる。
だが、神界での出来事は衝撃的であり、緊張をしていたせいか?記憶が曖昧な部分も多々あった。
自分の記憶の薄さを嘆きながらも、スマホの電源を入れてみると、幸いにしてスマホの電源が入ったので、画面を見てみると、やはりGPSも電波もここではまったく反応は無い。
「やっぱり駄目か……異世界に来てしまったんだもんな……まだこんな真っ暗な森じゃ、実感が湧かないや……」
しばらくの間、あれこれ考えていると、フィーナが戻ってきた。
「ただいま。んっ!どうしたの?冴えない顔をして……」
「冴えない顔か……いやね、街灯や、明かりのない所にいるのは久しぶりでね。それに本当に異世界に来たみたいだけど、なんだか、まだ実感が湧かなくて」
「ふふふ……それはそうでしょ。まだ来たばかりなのよ。それより、結構上空まで飛んで見て来たけど、この先に結構高い外壁のある町があったわ」
「本当?人はいたかい?」
「いいえ。残念だけど、明かりがついてない所を見ると、廃墟?あるいはみんな、おやすみの時間なのかな?私の主観だけど、人の気配はしなかったから、廃墟が濃厚ね」
廃墟とか、明るい材料では無いのに、フィーナは微笑みながらそう言うと、再び俺の肩に腰掛ける。
『そもそも、神様は、なんでこんな人気がない、こんな島、いやこんな森に転移をさせたんだろう?何か狙いでもあるのだろうか?』
異世界ということで、内心ではラノベとかの多少の知識があり、色々と期待していたのだが、この状況は予想外であり期待外れだったので、尚更不安になる。
「ん?どうしたの?浮かない顔をして……何か期待していたの?」
「そりゃね!初めての異世界に来たんだ、色々と期待もするさ」
「そうなのね……そう言えば町の突き当たりに、そんなに大きくないけど薄っすら光る不思議な塔があったわ。行ってみない?」
「塔だって?なんかファンタジーぽくなってきたな。よし行こうか!」
ここで立ち止まっても、状況が好転する訳でもなく、特に目的もないので、軽く頷くと、フィーナが指を差す方向へと向かって歩き出した。
「月明かりだけじゃ、危ないからライトをつけるよ」
フィーナは、言っている意味がよく理解出来ないのか、「んっ?何それ」と興味を示したので、説明をするより見せた方が手っ取り早いと思い、先ほどポケットの中に入れた、スマホを取り出し、ライトをつけ、行く先の道を照らす。
「ねえ、その光るやつは何?光の魔石?」
「光の魔石って何?これはスマートフォンといって、地球では遠くの人と話しをしたり、色々調べたり出来るとても便利で頼りになる物だよ」
「へー、凄いわね。また今度触らせてね」
フィーナは、ライトからスマホに興味移したたが、妖精には大きいうえに、はたして地球の言語や単語が分かるのかと、少し疑問に思ったのだが断る理由は無い。
「機会があったらまた教えるよ」
そう返事をすると、その答えに満足したのか、にっこり笑い、再び目線をライトの光が指す方向へと戻した。
ゆっくりと警戒しながら、月夜の中を慎重に歩いていると、周りが寂しいせいか、何か会話をしなきゃと思い……
「あのさ……フィーナって、妖精で神様の下に仕えていたんだよね」
「んっ、そうだけどそれがどうかしたの?」
「今更だけど、敬語じゃないと、失礼かなって思ってさ……」
「へ~、タクトって、そんなことをにするんだー」
「今更でごめん……でっ、この先の会話の事なんだけど、今みたいな感じじゃダメかな?この先、敬語だとなんていうか、距離を感じるし……実は苦手なんだ」
「私はあなたの眷属になったのよ。ご主人様がそうおっしゃるなら、私はそれに従いますわ」
「意地悪だよな……さっきまでは、あんなに友達みたい喋っていたのに」
「冗談よ、じゃ友達みたいな関係でいいわ。改めてよろしくねご主人様!」
「タクトと呼べ」「きゃー」
こんな感じで他愛のない会話をしながら、道を進んでいると、森のしげみから、[カサカサ]っと葉擦れの音が鳴り、こっちに向かって何かが進んでくる。
「――――――!モンスターかもしれないわ、気をつけて!」
フィーナが指を差す方向にライトを向けると、簡素な槍で森の草を掻き分け、こちらの方向へ進んでくる、ゲームではお馴染みのキャラである、背丈は2mほどある、オークの様なモンスターが現れた。
初めて見るモンスターに驚いていると、オークは此方の存在に気がついて持っていた槍を構えた。
「あれはオーク!」
フィーナは驚いた口調でそう言うと、慌てた俺は、焦って体中を手で触り、武器を探してみたものの、無論、武器なんてある筈がない……
「オークだって!そのまんまかよ!これはやばいんじゃないの?武器とかないと流石に無理じゃない?」
「グォーーーーー!」
焦る俺を見て、オークは、雄たけびを上げながら威嚇し、そのまま槍を突き出して突進してきた。
「タクト!横に逃げて!」
「ああ、分かってる!!」
まだ距離があったので、スマホのライトをオークの目に向けると、一瞬たじろいだのだが、こんな月の明かりしないのにもかかわらず、ありえないことに目を閉じたまま、こちらの方向へ一直線に突き進んできので、横に1回転して避ける。
『猪突猛進って、言葉どおりで助かったよ!それにしても、どうするよ、この状況……』
直ぐ立ち上がり、オークが突進していた方向を確認すると、勢いがつき過ぎて、手に持っていた槍はそのまま森の木に突き刺さっていて、必死に槍を抜こうとしていた。
「今がチャンスだ。何か攻撃方法はないのか?武器ぽいものでも何でもいい!」
フィーナはいつのまにか、森の木の上に退避していて「そ…そこの木に触れながら、剣をイメージしてクリエイトと唱えて!」と叫ぶ。
「わかった!やってみる!」
藁にも縋る思いで木に手を触れると、刀をイメージしながら「クリエイト!」と叫んだ。
すると木は、一瞬全体的に光り、収束すると目を疑ったが、あまり木に変化は無かったが、手にはしっかりと、木刀が握られていた。
「なんだこれ!すげー!」
じっくりと驚いている余裕が無い事を思いだし、木刀を強く握り締めると、中段の構えをしてオークの方を見た。
「その武器で大丈夫?」
「やってみないと、分からないけど、さっきの攻撃を見る限りでは、威力はありそうだけど、そこまで素早い攻撃じゃなかった。ならば急所をつけば何とかなると思う」
オークは、やっと槍が抜けると振り向いて、再び槍を前に突き出し、足で闘牛の牛の様に土を掻き、タイミングを見計らっている。
「よしこい!」
するとオークは、先ほどと同じ様に突進してきたので、軌道を読み「くらえ!」と、咄嗟に出た言葉と同時に、木刀を中段からそのまま突きを、オークの首元を狙い放つと、見事に突きがカウンターとなり、オークの喉に当たりを貫通した。
あまりにも、その突きの威力が凄まじかったので、思わず木刀を手から離しオークから距離を取る。
「どうだ!中々いい手ごたえだったが」
オークを見ると、オークは苦しそうに木刀を抜こうとしていたが、しばらく悶えていると、光の粒となり、光が一箇所に集まると消えていった。
オークが消えるのを不思議に思い、よく自分の体を見ると、なぜだか分からないが、一瞬だが薄っすら発光して消えていった。
『この発光の原因はなんだ……ひょっとして、レベルアップでもしたのか?ゲームの世界では、ファンファーレが鳴ったりするものだが、もしそうだとしても、確認する方法は……』
体の発光は気になったが、今はそれどころでは無いので、辺りをよく確認して、オークなどのモンスターが、まだ潜んでいないかを辺りを警戒をする。
すると、フィーナは上空から、戻ってきて「今、上空から確認したけど、この付近にはもうモンスターはいないわね」と、教えてくれた。
「ありがとう。助かったよ」
「魔法のこと……本当はここに来て、一番最初に教えなきゃいけなかったのに……ごめんなさい」
それからフィーナは、こうなる事を予測出来たはずなのに、教えるを忘れたと、反省をしていた。
「そんなに、しょげなくても、オークは無事倒せた事だし、結果オーライと言う事でいいんじゃない?」
そう言いながら、先ほど手放した木刀か落ちていたので拾い、ベルトに強引に挟み込み、なんとか固定をすると、フィーナはにっこり笑って、再び俺の肩の上にちょこんと座る。
「タクトって優しいのね!」
なんとか、元気を取り戻してくれて、ほっとする。
「それより、どう考えても不思議なんだけど、どう言う原理でこの木刀は出来たんだい?」
言われるまま、ただ単に木に触れただけであり、イメージをしただけで、木が木刀に変化した謎を、頭の中で色々と考えてみてはしたが、まったく理解出来なかった。
「さっきタクトが使ったクリエイトは、スキルと呼ばれるものよ。魔力を使うから大きく分類すると魔法だけど、また詳しい話は歩きながら教えるわ」
「そっか、分かったよ」
「それより、あれを見て」
フィーナが指を差す方向を、スマホのライトで照らしてみると、何かアイテムらしき物が落ちていた。
近くに寄り、アイテムを見てみると、それはなんと、肉の大きな塊であった。
「それにしても、これはどう言う事なんだ?さっきのオークが光の粒に変化したと思ったら、今度は肉の塊って……それに、このまま持って帰るのには量が多すぎるよ……」
フィーナは、思い出したように、手のひらを「ポン」と叩き、俺の腰の辺りを見て指を差した。
「その腰にある袋は、神様特製のアイテムボックスよ、今のうちに戦利品を収納しておくとしましょうよ」
「そうなのか?転移する前に、神様が何かくれたようだったが、これの事だったんだな」
「ふふふ……思い出したみたいね。それじゃ肉の塊に触れながら、収納と念じてみて」
言われるがままに、腰にある袋に手をやり、肉の塊に触れて「収納」と念じると、肉の塊はアイテムボックスに吸い込まれていった。
「すっげー!ドラ○もんの四次元ポケットみたいだ!!」
そう驚いていると、フィーナは唇に人差し指をあてながら、首を少し傾けて、
「ドラ○もんってなに?良く分からないけど、この袋は空間魔法を使った魔道具のひとつね」
と、不思議そうな顔をしてそう言った。
『まぁ、面倒だから、四次元ポケットと、理解する様にしよう』
そう、無理やり理解をして、異世界の最初の戦闘は、何とか怪我もなく無事に終える事が出来た。
異世界魔刀士と七変化の眷属を読んで頂いて、ありがとうございます。
第1章~2章までは、このアノースと言う世界観を、読んでくださっている、皆さんに知って貰う為に、うんちくや説明回が多くなっています。
もちろん、フィクションであり、矛盾も多々あるかもしれません……
少々文面が長くて読み難いですが、ご理解宜しくお願いします。