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異世界魔刀士と七変化の眷属   作者: 来夢
第2章 インレスティア王国編
26/203

第25話 領主の館にて

―― ザバル男爵 屋敷 ――


再びフィーナに精神安定魔法を掛けてもらうと、ようやく落ち着きを取り戻した……


「フェルム。醜態を晒してしまってすまなかった。そちらのお嬢さんを改めて紹介してくれないかな?」


「いえ、醜態なんてとんでもないです。こちらがお話していた恋人のアイラです」


「ベッド上から失礼いたします。改めまして皆様々、初めてお目に掛かります。私の名はアイラと申します。お助けて頂いて何とお礼を申し上げたら良いのか……」


今はまだ、本調子ではなさそうではあるが、言葉は年齢の割にはしっかりしていて、礼儀正しくおしとやかな印象だ。


「気にする事はありませんよ。フェルムは、今となっては、掛け替えのない仲間ですから」


「そうよ、気にする事はないわ!じゃっ、こちらも紹介するね。まずこちらは、アイラさんの面倒をみて下さったご領主様のザバル男爵です」


「私はこのインレスティア王国のザバル男爵領主であるオレスティー・フォン・ザバル。爵位は聞いて通り男爵だ。これも何かの縁だ!以後宜しく頼む。」


ザバル男爵は、見た目は年齢50代前半で、身長170cm 黒い目で、白髪をオールバックにしていて、中肉中背で、とても優しい表情をするのだが、話を聞いている限りでは、頭は相当切れる御仁のようだ。


「それでは、改めまして。私は……」と、フィーナが言い掛けると、ノックをする音がして「入れ」とザバル男爵が言うと、メイドさんが扉を開け現れた。


「旦那様。ご昼食の準備が整いました。殿下もお待ちになられております」


「紹介の途中で、端折ってすまないが、王子を待たせるわけにはいかぬ。貴殿達の食事も用意させておるから、一緒に食事でもしながら、そこで改めて自己紹介してはくれぬか?」


「勿体無いお言葉、感謝いたします。それではお言葉に甘えて、食事を頂こうと思うが、三人ともそれでいいかい?」


「是非、お願いします。そう言えば、朝から何も食べていなかったもんね」


フィーナがそう言うと、どこからともなく腹の音が「ぐー」と鳴った。


「ははは……体は正直だ。それでは行くとしよう」


「アイラ、立てるか?」


「筋力が衰えているかもしれん。無理は禁物だそ!」


「私が、何とかします」


アイテムボックスから、ミスリル、クッション、木材を取り出すと、俺は「クリエイト(創作)」と唱えた。


手持ちに、ゴム単体はないので、タイヤの部分は、木でしか再現出来なかったが、その分スプリングでサスペンションを創作し乗り心地を改善させた。


こうして、簡易的な車椅子がものの2分弱で完成をすると、勿論、創作(クリエイト)初めて目にした、ザバル男爵とアイラさんは驚愕していた。


「時間が無いのにお待たせして申し訳ない。また後から、カイル王子を含めて、纏めてお話させて頂きますので、今の所はご勘弁を」


「そっ…そうじゃの……今はあえて聞くまい」


ザバル男爵は、少し狼狽(うろた)えながらも、今の状況を、理解してくれたようであった。


フェルムは、アイラさんの体を支えながら車椅子に乗せると、アイラさんは、感触を確かめていていて「なんだか、凄く座り心地がいいです。ありがとうございました」と嬉しそうだった。


食堂へ向かう道中、操作方法や使用方法をフェルムに実演しながら説明をする。


「以上だけど、質問があるなら、いつでも言って欲しい」


「私からは、今のところ何も無いです。ありがとうございました」


「しかし見事ですな!その車椅子と言うのは。私は初めて見ましたが、これがあれば、足の不自由な人々が我先(われさき)にと、欲するでしょうな」


「ええ、椅子がこのように自由に動かせるなんて考えもしなかったし、なんだか、とても楽で不思議な感じです」


即興で作ったにしては、乗り心地は悪くないようで、アイラさんは満足気だった。それに、ザバル男爵からの評価も高く、創作した甲斐があったと自己満足をした。


「さあ、到着いたしました。こちらへどうぞ」


食堂の扉が開かれると、王子と騎士長が手薬煉を引いて待っていた。


「おっ、やっと来たな。その乗り物は、何か分からないが、アイラさんが目覚めたところを見ると、治療は成功したみたいだな」


「王子。ご協力感謝いたします」


その場で、全員が頭を下げると「頭を上げてくれ。元はと言えば、私に原因があるのだから礼には及ばない。さぁ、立ち話もなんだ、早く入って腰掛けてくれないか」と言われ、頭を上げた。


メイドさんに促されて、席に案内をされると、通路側のテーブルにナイフとフォーク、それにフキンが置いてあったので、アイラさんの分の椅子を下げてもらい、車椅子ごとテーブルに入れると、俺たちも腰掛ける。


ザバル男爵は、全員が腰掛けるのを確認すると、手を「パンパン」と叩く。


すると、メイドさん達が、料理をカートに乗せて、料理や飲み物が運ばれ、順にテーブルに並べられて行った。


料理が揃うと、王子は「それでは、折角の食事が冷めては勿体無い。頂くとしようか」と言ったので、みんなは、無言で頷き食べ始めたのだが、その中でも俺達三人だけは「いただきます」と言い食べ始めると、周りはこちらを向いて不思議そうな顔をしていた。


食事が始まって、暫く経つと王子が思い出した様に口を開く。


「そう言えば、食事の途中だが、紹介が遅れたな。ゴルディル紹介を……」


騎士長は、席から立つと、軽く礼をし名乗り始めた。


「私は、インレスティア王国所属 騎士長の、ゴルディル=マスティーと申す。この私を倒したのだ、遠慮はいらぬ!ゴルと呼んでくれ!」


年齢は30代後半くらいで、黒い目で、黒灰色の短髪をしている。身長は俺と同じぐらいで180cm程度、騎士長だけあって体は鍛えられていた。


騎士長のゴルさんの自己紹介が終わり、ふと横を見ると、フィーナとフェルムは、いつも俺の作ったパンを食べているせいか、食事が進んでいない。


仕方が無いので、アイテムボックスから、パンを取り出す。


「私達の自己紹介をする前に、皆さんに、このパンを食べて頂きたいのですが、宜しいでしょうか」


「もちろん、パンについては別に構わないが、アイテムボックス持ちとは驚いたよ。私も持っているが、一般市民が持っているのを初めて見たよ」


「そうでしたね。私たちは、三人とも持っているので、忘れていましたが貴重品でしたね」


と、喋りながら、一人づつパンを手渡した。


全員にパンが行き渡ると、王子達は、恐る恐るパンを口に運ぶと、目を見開く。


「こっ!これは……なんて事だ!これほどまで美味しいパンを食べたのは生まれて初めてだ!」


王子は急に立ち上がると、絶叫に近い声を張り上げた。


フィーナと、フェルムの方を見ると、何故かドヤ顔でパンを口に入れて食べていた。


「このパンを説明する前に、まず、私たちの正体を含め、改めて自己紹介をさせて下さい」


王子は、パンを食べて興味を持ったのか「是非!こちらからお願いしたい」と言うと、何故だかフィーナが立ち上がる。


「それでは、改めて、私から紹介をさせて頂きます。こちらは、既にご存知のとおり、名前はタクトと申します」


フィーナがそう紹介したので、立ち上がり「タクトと申します。以後お見知りおきを」と胸に手をあて一礼し着席した。


「そして、私の名はフィーナと申します。以後お見知りおき下さい。本当は今、お話しすべきか迷いましたが、此方にいらっしゃる皆様方は王族や貴族の方々。なので、正直にお話します。実を言いますと、私たち二人は、神様からの特命を受けてこの世界の神界から降臨してまいりました」


「かっ、神様ですと!」


ザバル男爵はそう叫んで、王子たちは口をひらいたまま固まっている。


「はい。先ほど紹介いたしましたタクトは、神の使徒でもあり、このアノースの地に、このパンだけではなく、様々な知識や物を伝える為、地球という異世界か来た異世界人なのです」


「いやいや、そこの車椅子なるものや、このパンにしても、どれもこの世の物では無いと感じました。フィーナ様も神の使徒様なのでしょうか?」


「いえ。私は神様の側近として仕える妖精でありましたが、今はタクトの眷族で関係は夫婦です」


「いや、そこは違うでしょ!」


『まさか、この場で、同じ突込みを入れるとは、思わなかった……』


「ふふふ……二回目の冗談よ!」


フィーナは、そう楽しそうにそう言うと、今度は証明する様に「変身!」と詠唱をして妖精の姿に変わると、神々しく光を放って見せる。


「どうですか?これで証明にはならないですか?」


あまりにも静かになっていたので、周りを見渡すと、フェルム以外は驚愕のあまり、持っていたパンを落としたり、口が開いたまま固まっていた。


フィーナは、再び変身をして、女医の姿に戻っると、精神安定魔法を掛け回った。


そして……


「こ…これは驚いた。まさかとは思ったが……本当に神の使徒様とは……どうりで、勇者と騎士長が赤子扱いだったわけだ」


「それで、使徒様は、この世界に光臨されて、何をなされるおつもりなのでしょうか?まさか、知恵を授けるためだけとは考えにくいのですが。力はありますし、世界を正しい方向へ導くために、世界を束ねるなど、お考えでは?」


「誤解しないで下さい。そんな物には、私は興味もないですし面倒なだけで、メリットは感じられません」


王子は、その言葉に驚いたのか、興味を持って質問してくる。


「普通の人間なら、金や女や酒と色々欲望があって、当然じゃないのでしょうか?」


俺は「はぁ~」と、大きな溜息を吐き、無意識にフィーナを見ると目が合った。


「残念ながら、この世界には、お金をつぎ込んでまで欲しいものはありません。なぜなら自由に物を作る知識と技術があるからです。傲慢と言われればそれまでですけど、この世界より、遥かに優れた世界から私はやって来たのです」


「しかし、男なら美しい女性に取り囲まれたいと、誰でも思うものではないですか?」


「まぁ、私も男ですから、まったく女性に興味がないと言えば嘘になります。人には好みがありますから一概には言えませんが、フィーナより美しい女性がいるとは思いませんし、彼女さえ隣にいてくれれば女性は十分だと考えます」


つい、本音が勢いで出てしまったが、フィーナは感動したのか涙目になっていて、王子とザバル男爵は話の途中で、目を瞑りながら聞いていたが、話を終えると、納得した表情を浮かべていた。


「タクト殿……あなたは、この世界の人間ではないどころか、神の使徒なのだ。これからは、敬語ではなく対等に話してくれても良い」


「私もその方が助かります」


「それにしても、タクト様が他の女性はいらないという気持ちも分かりますなぁ、誰もが羨むほどフィーナ様は美しい。それにタクト殿は、それに見合う実力をお持ちだ」


「確かに、羨ましい限りだな」


皆がそう褒めると、フィーナは赤面して照れていた。


「それはそうと、このパンの作り方なんですが……」


ザバル男爵は、忘れないうちに、パンの製法を聞いておきたいと、言ってきたので、厨房に移ると小麦粉を用意してもらい、パンの作る工程を教える事にした。


アイテムボックスから、フィーナにお願いして、逆展開をして培養した、イースト菌を取り出し、実演で作り方をこの屋敷の料理人全員に説明していると、王子も気になった様子で、忙しい合間を割いてまで話を真剣に聞いていた。


説明が終わり、釜から出来たてのパンが現れた時は、拍手が巻き起こり、それを食すと感動して涙する者までいた。


「タクト殿!素晴らしいですぞ!私は、食べ物でこれほど感動したのは、いつ以来でしょうか!」


「こんな物で驚いていたら、あなた達ショック死しますよ」


フェルムが、そう言ってしまったので、まだ時期尚早だとは思ったが、いずれは公開する予定だったので思い切ってシルバーノア案内をする事にした。


「それでは、ついでなので、私達の秘密の場所へと、ご案内しましょう」


「そんな物どこに?」


「それでは、ご案内いたしますので、皆さんも付いて来てください」


町にあまりにも近いと、住民がパニックになるので、ザバル男爵に、広くて目立たない場所がないか尋ねてみると、この屋敷の裏手付近に、そこそこ大きな湖があると言う話しだったので、馬車で移動をし、その湖へと向かうという運びとなった。


ついでと言えば、言葉は悪いが、ザバル男爵にお願いをして、アイラさんがお世話になったので、執事さんやメイドさんなど、屋敷全員を連れ出す許可をもらった。


こうして、全員で屋敷を出て出発すると、門兵は馬車の数に驚き不思議な顔をしていたが、構わずに町から外へと出る。


その後、何もトラブルは無く、馬車で走る事20分、ザバル男爵の案内で、森に囲まれた湖の畔に辿り着いた。


この辺なら、街からも目視確認出来ないであろうと、フィーナに頼み、シルバーノアをアイテムボックスから取り出してもらった。


「―――――!ふ・ふ・船が空に浮いている……」


そこにいた全員が、腰をまた抜かし、口を鯉が餌を貰うようにパクパクしている者も多数おり、大半は人間的に壊れてしまっていた。


フィーナに精神安定魔法?を全員に掛けてもらうと、全員が徐々に落ち着きを取り戻す。



超簡単な(手抜き)人物照会 ※初期設定

見た目と特徴のみです。


アイラ(フェルムの許婚)魔族

年齢は16歳 身長 155cm 金髪セミロング 茶色い目 (しっかり者のイメージ)

特徴

しっかり者で礼儀正しい。女子力が高い。人の話に口を出さない。非戦闘員


オレスティー・フォン・ザバル男爵

年齢は50歳 身長 170cm 白髪をオールバック 黒い目(しっかり者のイメージ)

特徴

性格は優しく、娘思い。頭は相当切れる。


騎士長ゴルディル=マスティー

年齢は35歳 身長 180cm 黒灰色の髪(短髪) 黒い目(脳筋ぽいイメージ)

特徴

不器用。体格は鍛えられている。性格はさっぱりしている。



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