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異世界魔刀士と七変化の眷属   作者: 来夢
第2章 インレスティア王国編
23/203

第22話 初めての村

―― シルバーノア・艦橋 ――


シルバーノアの航行が軌道に乗ると、自動操縦に切り替える。


これは風の影響とかを受けた時の、自動補正のみの機能だが、プロテクション・シールドを纏ったシルバーノアの前には十分過ぎる機能だった。


そんな事から、適当に空いている席に腰掛けると、後ろから「ふふふ……」と笑い声が聞こえたので、振り返るとフィーナがテレビを見ながら薄笑いしていた。


『何か企んでいそうで、悪い予感がするんだが……』


何を見ているのか気になったので覗いてみると、以前ケーブルテレビで再放送していたので、暇潰しにと撮り溜めていた、古い時代劇を見ていた様で、なぜそれなのかは分からないがツボに嵌ったぽい。


見ているフィーナもそうだが、録画をしていた俺も、何だかジジくさい趣味だなとフィーナを見て自覚してしまう……


俺が近くにいるのを、フィーナは気が付くと、


「ねぇ、これは、タクトのいた時代と比べてどれ位前の話なの?」


「んー。約300年くらい前の話かな」


徳川吉宗辺りだと、江戸中期くらいなのでおおよそであるが、そう説明をしておいた。


「それにしても、この人強いわね」


なぜか、桃○郎侍を見ながら、目がキラキラさせていた。


「それは、殺陣(たて)と言って戦闘シーンを見せる演技だよ」


「へー、そーなんだ。じゃあ刀を使った、演劇も極めてみたら、面白いかもしれないわね」


「この髪の毛はいただけないけど……着物って言うの?これは素敵ね」


「あー、この時代の人は、兜を被るからムレ防止みたいな感じで……」


説明しようとすると、そこには興味がないみたいで、何かをアイテムボックスから取り出していた。


「じゃ、この着物作ってもいい?マジカルスパイダーの糸いっぱいあるし、島を離れる前に色々な花を採取したから、天然染料もあるし……ダメかな?」


アイテムボックスから取り出したのは、マジカルスパイダーの糸で、俺に糸を見せると、フィーナはそう頼んできた。


「別にいいけど……」


「やった!」


と言って、満面の笑みを浮かべながら、艦橋から出て行くと、俺はきっと、心の中でこの天使のような笑顔が見たいのであろうか、フィーナのおねだりは、全て応えている様な気がする。


それから、暫く経つと、フィーナは嬉しそうに、濃紺の浴衣ぽい着物と山吹色の帯を持ってきた。


「出来たよタクト着てみて」


出来上がったのは、どうやら俺の浴衣ぽい着物だった。


「俺のかよ――――――!」


フィーナの性格を理解しているので、諦めてファーストクラス用の部屋で着替え、艦橋へ戻ると、


「似合う似合う フェルムもそう思うでしょ」


とフェルムに同意を求めた。


「黒い髪、黒い瞳にとても似合ってると思います」


『やっぱり……そうきましたか』


フィーナも、フェルムが同意した事により、とても満足気で、次は、自分もだと張り切って着替えに行った。


しばらく経つと、フィーナは「じゃーん」と言って、もろJKの格好をして出てきたので驚愕をし、思わず「じょっ・じょしこーせー――――!」と思わず叫ぶ。


凄く似合っていたのだが、流石にこの世界では着物にしろ、制服にしろ、浮世離れしすぎている上に、何を参考にしたのか分からないが、膝上のミニスカートだったので、ロッドとは合わないと嘘を言って即座に却下した。


『こんな格好で、ずっといられたら、こっちの身体が持たないよ……』


「ちぇ、つまんないの。気に入ってたし……自信あったのに……今度絶対、ロッドと合うように改造するわ」


何かを決意した様だが、ふて腐れてまた着替えに行き、そらからまた暫くすると、


「じゃ、これはどう?これこそ本命よ」


と言い、フィーナはくノ一の格好をして出てきた。


なぜか、髪型もサイドポニーになっていて、服はツーピース構造で上は赤色、下は黒色のキュロットスカートだった。


「似合いすぎだろそれ……」


思わず、あろうことか、声に出してしまっていた。


『しまった!エサを撒いてしまった……』


つい、本音がでてしまったが時すでに遅く、フィーナはフェルムに同意をとり、満面の笑みを浮かべながら、


「わーい、やったー! 自信あったのよねこれ!タクトと()()()だしね!じゃ、私はこれで決定ね」


『サムライに、くノ一って、どこの時代だよ。あーでもこんなに嬉しそうにしていると、今更何を言っても無駄だよな……』


もう、フィーナの中で決められた事は、絶対曲げないのは分かっていたので、無抵抗のままそれを受け入れてしまった。


「それじゃ、後はフェルムの番ね」


そう言うとまた、フィーナは服を作りに、この場から離れていった。


―― 10分後 ――


暫く経つとフィーナは、今度はブーツまでも抱えて戻ってきた。


「フェルムは、そうねー、こんな感じのがいいんじゃない?反論は許さないわ!着てみて!」


黒を主体とした、艶消しのワイバーンのレザーを使った、マント、ズボン ブーツ 手袋 に白いYシャツを手渡す。


「はい ご命令とあらば」


と、素直に受け取ったのだが、フェルムに選択権は無い。


フェルムは、着替えて出て来た……


「やっぱり、似合うじゃない、ねーいい感じでしょ!」


「どこの、ダーク・ヒーローですか? 似合うけど……」


フィーナは、全員の新しいコスチュームを作り終えると、本気でこの格好を。普段着にするつもりの様だった。


しかも、今回初めての試みで、ブランクの魔石を服に練りこみ?空調機能と、プロテクション・シールドを付与するという、とんでもない実験をしてみる事になった。


結果は……思惑どおり成功で、ブランクの魔石がいかに素晴らしいのかを、改めて再確認した。


しかし、欠点というか、プロテクション・シールドは、魔力切れを起こすと効果が無くなるので、不意打には、十分に注意をしなければいけない事が実験をして分かった。


魔法を付与した後、改めて鏡で自分の姿を確認してみると、やはり浴衣にスニーカは不恰好であったので、現代風の草履作る事にした。


素材は、ワイバーンのレザーと、鼻緒はマジカルスパイダーにして、作って履いてみると、結構履き心地もよく、普通の草履の様に横ズレや、脱げないため快適であった。


フィーナも、俺が作っているところを見て、感化されたみたいで、スエード調の黒いブーツを作成した。


これで、服は完成と思っているとフィーナが「ロッドはやっぱり似合わないから、刀の方がいいかしら」と、真剣な顔をして言って悩んでいたので、新しく刀を創作する事にした。


フィーナが使うので、俺の使う刀より、一回り小さい刀が出来上がる。


「じゃ、タクトが名前付けてよ」


少し考えると、名前を思いつき、


「じゃあ子狐丸(こぎつねまる)にしてもいい?」


「なになに!かわいい名前じゃない!」


と、名前が決まると、笑顔になり喜んでいた。


(いわ)れは、狐の神様が手を貸して、作ったとされる神剣の名前だよ」


一応、スキルボードで性能を確認してみる……



――――――――――――――――――――――――――――――――――――



武器 右手 子狐丸  武器クラス 神器(全属性)


武器スキル

 エクステンション

   左手 なし




――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「スキル エクステンションは、どんな技か分からないから、今度試すとして、相変わらず無茶苦茶だわね」


「狙ってやってるわけじゃないし。エクステンションは、言葉どおりなら刀が伸びるよ」


こんな感じで、全て作り終えると、何とも異世界には合わないパーティになってしまった。


その後も……フィーナは到着する間、テレビに釘付けだったのは、言うまでもないが、終始怪しい笑顔だったのは、()()何かを企んでいるのは間違いない。


余談だが、流石に、着物姿とか動きにくいし、目立ち過ぎる。


それに、普段着としては機能的にも、ありえないので、フィーナに許可を無理やり取り、部屋着として使用するからと、何とか説得をすると渋々納得をして貰った。


そんなこんなしている間に、丸一日何事もなく、順調に進んで行くと目的地に到着した。



―――― インレスティア王国・ザバル領・上空 ――――


「凄いです!本当に一日で着いてしまいました」と、フェルムは感動していた。


『そりゃ、自分で飛んで、10日もかかれば、感動もするわな……』


「よし、高度を下げる前に、フィーナ隠蔽を頼む」


「了解よ」


「まだ、朝早いから大丈夫だと思うけど、一応念の為に、人里離れた所に着陸してから車で移動する事にしようか?」


「そうね、それがいいわ」


「車とは何か分からないので、お二方にお任せいたします」


「じゃ、着陸準備。フィーナ悪いけど隠蔽のスキルをお願い」


「任されたわ」


シルバーノアは、高度を下げ、着陸出来そうな草原に静かに降り始め、準備を整え草原に降り立った。


艦橋から出て、タラップを下りると、フェルムは転移魔法?でマジカル・スパイダーを転移させた様に見えた。


「おっ、フェルムいつのまに転移魔法が使えるようになったんだ?」


「違いますよ。これは、従属契約をしたモンスターを元の位置に戻しただけです」


「もう少し詳しく教えてほしいかな?」


それから。フェルムにテイムについて、説明を受ける。


テイムし従属させたモンスターは、一緒に連れ歩く事も可能ではあるが、モンスターは魔素をエサとしている為、従属後はテイムした場所に転移して戻す事が一般的であると説明をされた。


「このアイテムボックスは、生き物は収納出来ないから、その方法が一番いいわね」


「てっ事は、マジカル・スパイダーは迷宮に行ったのか?」


「ちょっと!タックとフィーって名前があるんだから、そう呼んで頂戴よ」


「ははは、名前の件はいいとして、迷宮に戻りましたよ。あそこなら魔素も豊富ですし、もし帰ってきたらまた呼び出したら直ぐに来ますからね」


「ちょっと!フェルムまで!もぅ」


フィーナは膨れっ面をして怒っていたので「ごめん。今度からちゃんと呼ぶようにするから、機嫌直してよ」と謝った。


「もぅ。ほら約束よ!」


どこで覚えたのか分からないが、指きりをして約束をすると、フィーナは、シルバーノアを、アイテムボックスに収納する。


「ちょっと待って、まさか、シルバーノアもアイテムボックスに入るわけ!」


「何を今更言ってんのよ。前に言ったじゃない?容量は無制限だって」


「確かにそれは知ってたけど、物理法則無視し過ぎじゃないのか?」


「神様が創ったのよ。物理とかそんな一般的な考えの、定規で測れるわけないでしょ?」


「は~。常識が通用しないのは分かっていたつもりだけど、自重と言う言葉は知っておいて欲しいよな」


そんな愚痴を溢しながら、道を探し始めた。


二手に別れて、辺りを確認すると、この草原は牧場の様で、草原を囲む様に一面に腰の辺りまでの柵が設けられていて、風が緩やかに吹くと、少し肌寒いが草のいい香りがして、なんだか画板を持ちスケッチに来たような、そんな錯覚に陥りそうだった。


『とても草の香りがいいな。涼しいし、都会では味わえない空気だよ』


そう、季節と風を楽しんでいると、先行して歩いているフェルムが手を振って俺を呼んでいる。


「フェルム、何か見つけたのか?」


フェルムの手の振る方へ行ってみると、馬車の(わだち)がある道があり、人気もないのでアイテムボックスから車を取り出した。


こうしている間にも、いつ人がやってくるか分からないので、急いで車に乗り込むと、車を隠蔽してから、プロテクション・シールドを掛ける。


「それじゃ、準備も整った事だし、行くとしようか?」


「そうね。フェルム道案内頼んでもいいかしら」


「勿論ですよ。お任せ下さい」


フェルムが、指を差す方向へ進路を向けて、ゆっくりと車を進め暫く道なりに車を進める事になる。


「無事に着いて良かったわね。それに、まだ明け方だから人の気配は無いわ」


「丁度いいタイミングだったよ」


「夜は盗賊が出る可能性もありますからね。普通の旅人はこんな朝早く移動しませんよ、それよりも、私はこの馬がいないのに、なぜこの乗り物は動くのかが気になりますがね」


「それは、また後から説明するよ」


村を目指して道を走っていると、草原から森へと変わり、窓を開けて耳を澄ますと、鳥の鳴き声や、虫の鳴き声がしていて、何故か初夏を感じさせる。


『そうか。時差だけ気にしていたけど、考えてみれば季節も違うだろうし、気候も違うんだろうな。後から聞いてみよ』


そんな事を思いながら、異世界の田舎道を楽しみながらドライブをして約20分、看板が少し前から立てられていてる。


看板には【ようこそ、ロッド村へ】と書いてあり矢印が書かれている。


矢印の方向に車を進めると、森を抜け、村らしき物が遠巻きに見えてきたので、道から外れた所で車を停車させた。


「フェルム、この辺でいいか?」


「はい……」


「フェルム、何時ぐらいに、村の中に入れるんだい?」


「そうですね。あと1時間くらいで、門兵がやってくると思います」


「じゃ、ここで小一時間ほど休憩してから、村に行こっか」


「そうだね」


フィーナとフェルムは同意したので、1時間程車で待つ事にした。


「それにしてもまさか、アイテムボックスに、シルバーノアが入るとは思わなかったよ。

フィーナが収納した瞬間、俺もフェルムも固まったからな。どんだけ凄いんだよ、アイテムボックス」


『神様も自重ないよな』


「生き物は、無理なんですよね?」


「ええ。前試したけど、生き物だけ弾き出されたわ」


フィーナは、いつの間にか試したみたいだ。流石である。


「それはそれで、色々な意味で凄いです。理屈は分かりませんが……」


「私のとタクトのは、神様特製だからじゃないかな」


「それより、時間があるから、車のことを説明しようか?」


「はい。是非お願いします」


「この車の動力源は電気で、シルバーノアのモーターの原理と同じで、磁石を利用してこんな感じで回転をさせているんだ……」


「なるほど……」


――― 以下省略 ―――


と車について話をしていると、あっと言う間に、1時間が経ち、辺りは明るくなり、朝6時になる。


「もうそろそろ、行きましょう。村の門が開きます」


「よし!行こう」

 

車を降りて、アイテムボックスに収納すると、俺たちは村に向かって歩きだしていて、村が見えてくると、壁は木材で出来ていて、いかにも村と感じられる印象だった。


門に向かって歩いて行くと、門兵に呼び止められ、


「あなた方は旅の者か?」


門兵はそう尋ねながら、こちらを見ると、フェルムは、ギルドカードを提示した。


「これは、どこかで見た顔だと思ったら、フェルム殿ではないですか?あまりにも、いつもと格好が違うので、気が付きませんでした。村長がお待ちです。こちらへどうぞ」


「こちらの方々は、私の仲間だ。一緒に連れて行くので通して頂きたい」


やはり、俺たちの格好が可笑しいのか、門兵は俺たちの格好を見て、きの毒そうな顔をして目線をそらした。


『ああ。恐らくこれはあまりにも薄着だし、笑わないようにしてるんだろうな』


門兵は「分かりました。それではどうぞ」と言い、何も揉める事もなく、すんなり村へ入ると、門兵に代わり、衛兵に村長の家に案内された。


村の中を見渡すと、日本の宿場町を連想させる、落ちついた感じで、屋根は片流れで統一されていて、木造の平屋が綺麗に並んでいた。


それから、村の中を歩いて行くと、やはり俺たちの格好が浮いているのか、村人はドアからこっそり覗いてはいるが、話しかけてくる人は皆無であった。


周りを見渡しながら、この世界の情報収集をしていると、この村では初めて見る、2階建ての切妻の屋根で出来ている、レンガ作りの小さな屋敷が見えてきた。


あとから聞いた話だが、村長の屋敷は国から支給された物で、執務室や来客用に部屋がいくつもあるので、基本的に村には宿はないらしい。


アイラさんがなぜ、村長の家で匿ってもらっていたのは、こう言う事情があったのかと後から知ったのであった。


こうして、観察をしながら歩いていると、村長の屋敷に辿り着く。


村長の屋敷の門をくぐると、屋敷の前で執事さんらしき人物が待っていて「フェルム殿、村長がお待ちです」と、予め来る事を知っていたかの様にすんなり執務室に通される。


「村長。フェルム殿とそのお連れ様を連れて参りました」


「ご苦労であった。通せ」


「はい。畏まりました」


執事さんが、執務室の扉を開けると、村長はフェルムの顔を見るなり、いきなり謝罪し始める。


「久しいの、フェルム殿」


村長がそう言うと、フェルムは村長に詰め寄り、


「アイラは、アイラはどこに……」


と言って、少し焦った口調で村長に問う。


「わしは、その事について、フェルム殿に謝らなくてはならない……実はつい先日、王子と勇者一行が、領主の館にアイラさんを連れて行ったのだ……」


「あれほどお願いしたのに、何故です、何故なんです!」


フェルムは客室にあった机を「バン!」と叩き怒りを机にぶるける。


「王子と勇者様は、アイラさんを治療すると言っていたので、それならと思い……」


「約束したではないですか!」


俺は立ち上がり、興奮したフェルムの肩を持ち落ち着かせる。


「フェルム、落ち着くんだ」


どうやら、悪い予感は当たった様であり、フェルムに落ち着けと言ったものの、これが逆の立場でフィーナだったら、果たして、落ち着いていられたのかは疑問である……


「では今は、領主様の館にいると言う事で宜しいのですね」


村長は、怒りをぶつけられ、青ざめた顔になっていて「はい」と一言返事をした。


「そう言うことなら……フェルム、急いで向かうぞ」


そう言うと、フィーナは地図をアイテムボックスから取り出し、領主の館のある場所を聞き印をつけた。


村長は地図に驚きの表情を見せていたが、質問なんか出来る雰囲気でもなく、その後は何もなく村長の屋敷を離れた。


村の門を出て、先ほど待機していた所で車を出して、隠蔽のスキルで車を覆うと、急いで領主の町にある館に向かう事となった。







いつも異世界魔刀士と七変化の眷属を読んで頂いて、ありがとうございます。

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