第20話 海水浴そして旅立ち
―― とある島・船着場 ――
テスト飛行を終え、飛空挺シルバーノアが無事空を飛んで着陸を出来た事に、ほっと胸を撫で下ろす。
今回初めて、海に着水したので、船内に海水が入ってきてないか、3人で分担して見回ったが浸水は認められなかった。
「じゃあ、今日は完成祝いだ。ご飯は何がいい?」
「じゃー。バーベキューで」 「私も同じく」
「あなた達。どれだけバーベキューが好きで、肉好きなんですか?分かりましたよ!タレがもう少ないから、醤油ベースでオリジナルで作るよ」
『こんなに頻繁にバーベキューをすれば、そりゃ無くなるわ!』
そう思いつつ、まだ夕食には時間があるので、先日思った海水浴が無性にしたくなる。
「折角、海に来たんだから泳がないか?」
そう提案すると、二人ともその提案を受け入れ、異世界で初めての海水浴を楽しむ事になる。
無論、自分の水着は持っていたのだが、フェルムとフィーナは持っていなかったので、フィーナにマジカルスパイダーの糸で、フェルムの水着を作って貰う。<尻尾の部分は、丸く穴を空けた>
フィーナの水着は、○○ウォーカーの夏の別冊号を持っていたので、その写真を参考に作ったのだが、白いビキニに着替えた姿を見たら、何故だか鼻血が吹き出したので、フィーナに治癒の魔法の一部である精神が安定する魔法を掛けてもらった。
『フィーナの全裸を見たら、確実に出血多量で死んでしまう自信がある』
何の根拠もないのだが、そう確信したのであった。
異世界の海は、地球と同じでやはり塩辛く、ここの海はとても澄んでいて、空を鏡の様に映し出すほど青く息を呑む。
「それじゃ、ちょっと潜ってくるよ」
「溺れないように気を付けてね」
なんだか、昔に言われた親の発言を思い出し、懐かしさを覚えながら素潜りをしてみると、海の中は、赤やピンクを中心とした珊瑚があり、色彩が綺麗な魚が群れを作り泳いでいた。
近づいてみても、魚は逃げ出さない所を見ると、どうやら人間には擦れていないらしく感動をする。
そんな中、ふとフェルムが、もの凄い勢いで泳いでいたので、潜ってよく見てみると、尻尾をスクリュー代わりにして、泳ぐ光景を見て目を疑い絶句した。
『嘘だろ!こんな泳ぎ方見たことないよー!恐らく地球だったら間違えなく、世界一位であろうよ。まぁ、反則で失格の可能性の方が高いが……』
暫く泳いだりして、楽しんでいると、大学のサークルで(剣道だが)合宿した以来、久しぶりに海水浴を満喫した。
「久しぶりで楽しいなぁ~」
そう思い、ビーチパラソルとビーチベッドを人数分創作して、スマホで目覚ましをセットして、仮眠をする準備をした。
二人も泳ぎ疲れたのか、タオルを目の辺りに掛け、浜辺で寝ていたので、起こしたのだが、フィーナは起きて移動をし、フェルムは起きなかったのでそのままそっとしておいた。
それから数時間経ち、目覚ましが鳴ったので、バーベキューの用意をし始めた。
そして、ここで、またも笑える事件が起こる。
フィーナは、先に起きてバーベキューの用意を手伝ってくれてたのだが、フェルムも起きてこちらに近づいてくると、タオルが変な方向にズレたのか、顔の左右非対称に、顔半分が日焼け、もう半分が日焼けしてないと言う、笑える姿で登場したのであった。
フェルムは、普段まじめでクールに見えるだけに、流石に笑いを堪えるのは困難だったので、俺とフィーナは暫く砂浜に転がり、のたうち回りながら、お腹が痛くなり、笑い疲れるまで、笑い尽くしたのであった。
「フェルムごめんよ。もう笑わないから許してくれ」「私も心の底から謝るから許して」
と俺たち二人は、息を切らせながら、フェルムに謝ると、フェルムは自分の不注意で、逆に迷惑をかけたと、逆に謝り許してくれた。
明日、反対側も焼いて対応すると言う事だったが、フィーナが冗談半分で治癒の魔法を掛けると、肌の色が少しづつ戻り、5回目の治癒魔法で元に戻った。
これにはかなり驚いたが、日焼けは時間が経過すると、元の色に戻る事を考えると、若干苦しいが納得した。
まさに結果オーライである。
こうして、少し落ちついたので、焼肉のタレのレシピを頭に浮かべ、材料を用意し始める。
「やった。タクトが作るタレ 楽しみ!」
「初めて作るから、味は保障出来ないよ!」
醤油をベースに、にんにく、りんごペースト、料理酒を混ぜ、火を掛けることで、アルコールを飛ばし、味見しながら調整していく」
「タクト、こっちは、準備出来たわよ」
「ああ、こっちも出来たよ」
焼肉のタレが出来たので、缶ビールと一緒に配り終えると(勿論、フィーナの分は開けて渡す)フィーナは、特別扱いされれる?と思い満面の笑みだ。
「じゃあ、シルバーノアの完成を祝して、乾杯!」
「乾杯!」
日焼けの影響なのか?一気にビールを飲み物を飲み干すと、すっかり乾杯も定着して、なんだか、ここは異世界では無いのではないか?と言う感覚さえ覚える。
「あ~、何かを達成した後のビールって最高だなぁ」
「ほんとにね。火照った体に染み込むようだわ!」
そんな日常会話を交わしながら、肉が焼けてきたので、オリジナルのタレを付けて食べてみると、意外にも美味しかった。
「タクトが作った、このタレも美味しいわねー」「はい美味しいです」
どうやら気に入ってもらえた様だ。
『っていうか、マジでうまい』
「いよいよ、明日出発するけど、準備は怠らないようにね」
「タクトは心配性ね。私には転移魔法もあるし、アイテムボックスもあるのよ。後からでもどうにでもなるわ」
「忘れてたよ、そのチート機能……まぁでも、日本には備えあって、憂いなしって言葉があるんだ。意味は、突然想定外の事が起こっても、準備をしていれば慌てずに対処出来ると言う事だよ。直ぐ対応しなくちゃならない時に、転移魔法とか使えない状況も、可能性としたらゼロじゃないからね」
「タクトの言いたい事、理解したわ。相変わらず、日本の言葉って奥が深いわね。よく肝に銘じておくわ」
「フィーナとフェルムに、質問があるんだけど、ワイバーンやドラゴンって、どれくらいの高さを飛行しているんだい?ここをはっきりさせれば、それより高く飛べば、安全な航行が出来るから、事前に確認の為に聞いておきたいんだ」
「それについては、私が説明しましょう。正確な高さは、今まで高度計が無かったので、分からないですが、一番高く飛ぶドラゴンで、雲の中までしか飛ばないと、聞いた事があります」
「あら、それなら理由ならあるわよ。ドラゴンをそんなに頻繁に見ないのは、臆病とかではなくて雲の中を好んで飛ぶからよ」
「そうか!ドラゴンには鱗があるから、雲から水分を補給しているのかも知れないな。これで問題は解決だ!シルバーノアは、雲の上を飛ぶ事にしよう」
ビールと焼肉を堪能し、食事を終えると、フィーナからいつものお誘いを受ける。
「じゃあタクト、温泉にいこうか?」
「今日は、私が片付けしておくので、ごゆっくりどうぞ」
フェルムは、気を使ってくれた様だが、俺としては、もうそろそろ勘弁してほしい。
「あら、フェルム分かってるわね」
「いや、あれだけシルバーノアの風呂で、揉めたんだ分かるだろ普通……」
「それじゃ、折角だから行きましょうか?」
「はいはい、お供しますよ」
「何か嫌そうね。それに返事は1回でいいわ」
「なに、フィーナの美貌にどうしたらいいのか困ってるんだって」
「あら、そう?そう言って貰えると嬉しいわ。それじゃもっと堪能しなさい」
そう、満面の笑みのフィーナに対し、問答無用で売られていく子牛の様に、連れられていくのであった。
温泉に入ると、日焼けした所がひりひりする。
フィーナは、先ほど作った水着をクリーンの魔法で綺麗にして、水着姿で温泉に入ってきた。
「タクトこれからは、この水着で温泉に入る事にするわね。その方がいいでしょ」
「どうせ、駄目と言っても聞かないんだろ?」
「そのとおりよ。よく分かったわね」
と、いつもと変わらぬ感じの、会話をしながら温泉を堪能をすると、温泉から上がり、フェルムも温泉から帰ってくると、屋敷のソファーでくつろいでいた。
「明日からインレスティア王国に向かうんだが、領主とかいるのかい?」
「はい。向かう先はザバル領と言って、確か名のとおりザバル男爵の領地になっています」
フェルムは地図を指し説明した。
「アイラは、ザバル領の、ゴル村と言う小さな村に預けています」
「その村は安全なのか?」
「それなりの、対価を支払ってきたので、安全だと思います。一応念のため、成功報酬を支払う約束もしましたので」
「そうか、それならいいんだ」
嫌な予感はするが、今は信じるしかない。
「そう言えば、今思い出したんだが、海に巨大なモンスターがいると、神様の手紙に書いてあったんだが、それはフェルムの仕業なのかい?」
「はい。この島に勇者とかくると厄介なので、リバイアサンと言うモンスターをテイムしてこの島を隔離しています」
『リバイアサンって竜族だよな?神獣だったってけか?、何れにしても誰かが来てバベルを見られたら面倒だ。当面は今のままの方が助かるな』
そう頭の中で結論を出すと、リバイアサンを、このままにしておいて欲しいとフェルムに頼む。すると、「はっ。仰せのままに」と快く?快諾してくれた。
それにしても、勇者とは、一体この世界ではどう言う役割を持ち、どんな人物か気になったが、ここで考えても、答えが出ないので、眠くなったので寝室に向かった。
布団に入ると、フィーナがまた爆弾発言をする。
「ねぇ、タクト、もうそろそろ一緒に寝てもいい?」
『――――――!ついに来たよ、恐れていた、ビッグイベント!』
「フィーナ俺は……」「何真剣になってるのよ。冗談よじょうだん」
フィーナは明らかに動揺していた俺を見て、引いてくれて正直助かった……
「でも、そのうち……」小さく声が聞こえたが、聞こえないふりをした。
「じゃ、おやすみ。タクト明日から旅が始まるね」
「そうだね。何日か分からないけど、ここで寝るのは、しばらく、おあずけだな」
「ねぇ、タクト。手ぐらい少しでいいから握ってよ」フィーナは妥協案?を出してきた。
「ああ、そのくらいならいいよ」
そう強がりで言ったが、動揺を隠せないと思い、顔を横に向け目を瞑った。
その晩、眠たかったはずなのに、どちらに興奮したか分からないが、寝付けないので、フィーナの事を真剣に考えた。
自分の事はともかくフィーナは、俺の事どう思ってるんだろう……最初は、からかって反応を見て楽しんでいるだけだと思っていた。
だけど最近なんか、エスカレートしてきた様な気がする。
フィーナは妖精であって、一度死んだ俺とは違う……この前も誓ったが、命に代えても守る。この前諦めたはずだ……ただのからかいに翻弄され、本当に好きになってしまったら、正直つらいし、その事が本当に怖い。
太陽と月は一緒になれない……近づけば近づくほど、お互い傷つき、辛い時が必ずやってくる……「ヤマアラシのジレンマか……」そんな言葉が思い浮かぶ……
結局、その後も色々考えてみたものの、これと言って何も答えをだせずに、もう一度寝ようと目を瞑る。
「チキン野郎で、優柔不断だよな……もっとちゃんとしなくちゃ」
そう言いながら、やっと眠る事が出来た。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
翌朝…………
ついに出発の朝がやってきた。
フィーナは、俺よりも早く起きて、昨日お願いしておいた、花を摘んできてくれてあった。
やはり出来た女性だ。妖精だけど……
「フィーナ、ありがとう」
「いいのよ。約束だもん」フィーナはご機嫌だった。
それから、花とアルコールを用意し「クリエイト」して香りを抽出していった。
フィーナが摘んできた花の中に、ハーゲ○ダッ○の蓋に書いてある、バニラ?ぽい花があった。
匂いをかいでみると、バニラのいい香りがしたので。抽出した液体を見てみると、バニラエッセンス?ぽい。
『今度これを使って、バニラアイスを作ってみよう』
そんなこんなで、炭酸ナトリウム+消石灰+各種花のエッセンスを合成していくと、石鹸が7種類と大量に出来たので、残りは香水として瓶に入れ、アイテムボックスに収納した。
「じゃあ、この島でやる事やったから、早速出発しようか、フェルムお待たせしたな」
「いえ、とんでもないです」
「じゃ出発だ」
こうして、タラップから、甲板に上り、艦橋へと入って配置に着く。
「タクト何も異常はないわ」
「こちらも異常なしです」
「それでは、フィーナは、プロテクション・シールドを、フェルムは索敵をつつ、ゆっくり10000mまで上昇」
「了解!」
こうして、シルバーノアは、ゆっくり上昇し雲をつき抜け、更に上昇をすると、この星も地球と同じで球体なのが良く分かる。
そんな事を思っていると「只今高度10000m 出力40パーセント 魔力は安定しているわ!」と、報告をされる。
「それでは、インレスティア王国、ザバル領に向けて発進!」
シルバーノアは、徐々に加速しながら島を離れていく。異世界に転移し、約2週間が過ぎ、三人の仲間と共に島から旅立った。
いつもお読みになっていただいて、ありがとうございます。




