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拠点確保

部下からの報告の中に一つ、面白い情報があった。僕達が最初に訪れた店『菊花楼蘭』の楼主、ボードセンに関してだ。奴は賭博狂いらしい。そしてかなりの借金を抱えていると。賭場の借金は十日で詰めるのが慣習だ。それは公営賭博場だろうと例外ではない。その期限は後二日。それを過ぎると奴は店、もしかすると命すらも失うことになる。ふふ、これは使える。

クタナツでは闇ギルドが存在できない代わりに代官府に許可を得た業者が賭場を開いている。それは娼館も同様なのだが。当然ながら取り立てのキツさは闇ギルドと代わりはしない。契約魔法が存在する以上、誰も借金を踏み倒せないのだから。




そして二日目。昼前に私と部下は『菊花楼蘭』を訪れた。しかし今日は客としてではない。


「いらっしゃ〜い。あら、あなたも好きねぇ〜」


言葉遣いはなってないが、一見の客の顔でも覚えているとはな。見下げ果てたものでもないのか。


「楼主に会いたい。王都の商人が買い物に来たと伝えてくれ。」


「はぁ? 楼主? あんた物好きねぇ〜。待っててねぇ〜」


待つこと五分。こんな場末の楼主程度が僕を待たせるとはな。たぶついた肉を揺らして奴は出て来た。


「ワシに何の用だ? 王都から来たと言うからわざわざ会ってやるんだ。つまらん用だと許さんぞ。」


くくっ、こんなド田舎の三流娼館の楼主風情が何を意気がってるんだか。


「初めまして。私は王都のとある商会から参りましたシンバリーと申します。突然ですが、ボードセンさん。あなたの借金について良いお話を持って来ました。ここで話してもいいですかな?」


「ま、待て! こっちだ! こっちで話せ!」


つくづくバカな奴だ。昨日クタナツに到着したばかりのうちの部下でも集められる情報だ。今さら従業員に隠せるとでも思っているのか?


「では失礼して。」




遠くから来た客に茶を出す余裕もないのか。それじゃあ博打に勝てるはずもない。


「で、いい話とは何だ? 助けてくれるのか!?」


くっくっく。余裕がないにも程があるだろう。楽な仕事になりそうだ。


「ええ。いい話ですよ。聞くところに寄りますと、あなたの借金は金貨四百五十枚。この建物と全ての女を売っても足りませんね?」


「くっ、それがどうした!?」


一流店の女、それも一、二位を争うレベルなら一人売っただけで軽く金貨千枚は稼げるというのに。三流店はどこまで行っても三流店、これで中堅とはな。


「金貨五百枚出しましょう。それであなたを雇いたい。条件は私がクタナツを出るまで従ってもらうことです。ああ、無茶は言いませんよ。簡単ではありませんが、あなたの能力からして不可能なことを言うつもりはありません。どうです?」


「一体いつまでだ……?」


「長くて半年。短ければ一ヶ月もかからないでしょう。当然建物や女の所有権に口出しする気はありません。私が居なくなった後、借金を返しても金貨五十枚は残りますね。」


このド田舎では平民一人の食費は年間で金貨一枚あればギリギリ足りるらしいが、王都じゃ一晩の飲み代にもならない、ふっ。


「今すぐ現金で払ってくれるんだろうな……?」


「当然ですよ。」


目の前に大金貨を四枚、金貨を百枚積み上げてみせる。


「さあ? どうしますか?」


「乗った!」


まずは第一段階クリア。こんなクズのために金貨五百枚も使うとはな。まあいい、何倍にもして取り返してやるさ。


「ではこの書類にサインください。内容は私の指揮下に入ること。それと引き換えに報酬として金貨五百枚を支払うことが書いてあります。」


「あ、ああ。書くとも。」


よし、書いたな。


「ではこれにて契約成立だ。今日からしっかり働いてもらうからな。」


「ぐっ、ぐおおっ、今の魔力は、もしや?」


「契約魔法に決まっている。お前はもう逃げられないんだよ。死にたくなけりゃあ役に立て。」


「そ、そんな……」


「そう怖がるなよ。僕は嘘はつかない。お前の能力を超えるような命令など出しはしないさ。さて、早速だがこの店の女でここから逃げられないのは何人だ?」


「あ、ああ、上位五名だ。あの五人はワシが買った奴隷だからな。契約期間も三年ほど残っている。」


「十分だ。では一位と二位、そして五位の女を呼んでもらおう。面接をする。」


「あ、ああ。待っててくれ……」


部屋に僕と部下を残してボードセンは出て行った。


「さすがシンさんですね。見事なお手並みでした。それにポンと金貨五百枚くれてやるなんて男っぷりがハンパじゃない。」


「まあ回収の見込みもあるからな。あんなクズでも使い道がある間は使ってやらないとな。」



二分後、クズ楼主が戻ってきた。


「待たせたな……二位のニキータと五位のファイカだ。一位の女は接客中だから終わり次第来る。」


ちっ、二度手間になるじゃないか。クズが。


「お前たち、金と自由が欲しくないか?」


「欲しいに決まってるわ。ぼうやは羽振りがいいみたいだけど、身請けでもしてくれるのかい?」


「アタシもだね。身なりのいい服着てるわねぇ。期待させてどうするつもりさ?」


「僕の言う通りにすれば遅くとも半年以内にこの店から自由にしてやる。その上、その時に報酬として最低でも金貨百枚は渡せるだろう。お前達の仕事次第だがな。」


「やる! やるに決まってるわ!」

「アタシもよ! 絶対やるわ!」


「いいだろう。では早速試験だ。五位の奴はコイツにサービスしてやれ。本気でな。二位のお前は僕だ。心も体も溶かすつもりでサービスしろよ?」


「ふん、ぼうやにかい? いいわ、すぐイクんじゃないわよ?」


「アタシはそっちお兄さんね。へぇ、タイプだわ。」


さてと、お手並み拝見だな。使える女だといいのだが。




結論から言えば、二位の女ニキータはそこそこ使えそうだった。部下からの報告によると五位の女は使えないらしい。後は一位の女だけだ。こいつがダメなら二位の女を主軸に計画を進めねばならない。手駒が一つしかない状態は避けたいのだがな……

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