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クタナツ攻略開始

クタナツに来てまずやるべきこと、それは挨拶だ。この街にスラムなどの貧民街はない。それほど騎士団の取り締まりはキツいようだ。しかし闇ギルドや暗殺ギルドは存在している。表向きは完全に平民として溶け込んでおり素人には接触すらできないだろうがな。


今回僕達が挨拶をしておく組織は王都に親組織を持つ『魔蠍(まかつ)』。正確にはそこから暖簾分けを許された組織『魔蠍の針』だ。王都での勢力はウチの方が上だが、王国中に散らばった魔蠍のネットワークは侮れない。まあウチは暖簾分けすら許さず、王都の外に進出しない組織だから当然なのだが。




セグノさんから聞いておいた場所へ部下を一人だけ連れて赴く。ここだ。何の変哲もない平民宅。ここが闇ギルドのアジトだなんて誰も気付くまい。


「こんにちは。どなたかいらっしゃいますか?」


「はーい。どちら様ですか?」


現れたのは平凡そうな主婦。まったく……恐ろしい組織もあるものだ……


「王都の商会からやって来ましたシンバリーと申します。ここのことは『アンタレスとミラノ』から聞いております。」


「まあ! そうですか。どうぞお入りくださいな。」


案内された屋内は間取りも内装もやはり平民宅。中には中年と青年の男が二人いるのみだった。


「失礼する。手前王都の闇ギルド、ニコニコ商会直若(じきわか)の、金貸し稼業に裏稼業、傀儡(くぐつ)のセグノの禄を食む。姓はクロウラー、名はシンバリーと申す者。人呼んで鴉金のシンバリー。万端昵懇(ばんたんじっこん)に願います。」


「承った。手前当地の闇ギルド、魔蠍の針の草稼業、姓はルーツ、名はグラスと申す。」


ふう、これで終わりだ。他の組織と関わるのはこれが面倒なんだよな。しかし揉めるともっと面倒だからな。

それにしても『草」か。何十年にも渡ってその地に暮らして完全に溶け込む奴らだ。ご苦労なことだ。まあ、それだけに役に立つ奴らだし、敵に回すと厄介なんだよな。


「このクタナツで一仕事することになっている。うちのボスからの勅命なんでな。終わり次第出ていくだろう。」


「いいだろう。さすがは商会、その歳で見事な挨拶だった。くれぐれもクタナツの騎士や冒険者を敵に回さないことだ。」


「ああ、分かっている。では失礼する。」


ふう。これでいい。では早速仕事にかかるとするか。まずはこの街の娼館からだ。




「いいか? お前はこの店の三位を指名しろ。そして技術や話術を後で報告しろ。僕は二位を指名する。分かったな?」


「はい。任せてください。」


僕より歳上の部下だが、セグノさんの洗礼を生き残った男の一人だ。まずは情報を仕入れないとな。男を嵌めるには、女を使うのが一番だからな。使える女を見極めなくてはならない。


やって来たのは中堅ぐらいの娼館。今回の目的にはこれぐらいの規模でなくてはならない。名前は『菊花楼蘭』、値段は一人銀貨二枚か。この程度の店にしては少し高いか……まあいい。


部下の指名する三位の女はいたが、二位はいなかった。休みか。仕方なく四位の女を指名した。




時間にして一時間半。この女は外れだった。顔の美醜は大した問題ではない。しかし、テクニックも会話もダメだった。そして何より上を目指す気概もない。こんな女では計画に使えない。三位に期待するとしよう。


そして店を出て歩きながら報告を受ける。


「悪くはなかったんですが、今回の計画に使えるかは微妙です。テクニック的には良かったんですよ。しかし頭が悪いですね。あんなのを引き入れたら何から何まで喋ってしまいますね。あれでよく三位なんかなれたもんです。」


「いきなり当たりを引くとも思えんしな。計画の第一歩だ。慎重に選ぶとしよう。」


「はい。あ、次はあの店ですね。」


僕達はこうして昼から娼館を三軒ほど回ったのだが、お目当ての女は見つからなかった。明日は違う店に行くか、違う女を指名するか。どうしたものか。


こうして僕と部下のクタナツ一日目は終わった。ちなみに他の部下は情報収集を兼ねて商品の仕入れに回っている。万が一、騎士団に目を付けられたら危険だからな。きっちりと商人らしいことをしておかないとな。


さて、有益な情報は入手できただろうか?

挿絵(By みてみん)


クタナツの街並みです。

第一城壁の中が平民エリア、

第二城壁の中に下級貴族エリア、及び各種店舗があります。

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