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9 冒険者ギルドに登録するよ

 集まってきた妖精たちから生まれたばかりのブルームフェアリーの育て方を聞いて、ゴブリンを倒したお礼にあの力がみなぎる妖精の秘薬をぶんどる……じゃなくて受け取って、私たちは妖精の森を後にした。

 もちろん、フルールも一緒にね。


 さぁ、あらためて三人で冒険者ギルドのあるアルミラの街を目指そう!




『アーラ、アーラ!!』

『おい、もみくちゃにするでないわ』


 フルールはアーラの背中の上で、ふわふわな羽毛を引っ張ってキャッキャと笑っている。

 アーラもさすがに生まれたばかりのかわいい妖精に怒る気にはなれないのか、困ったようにため息をついていた。


「えっと……花の蜜をあげればいいんだっけ」


 あの「ですぅ」とかうるさい妖精はとりあえずしばらくは花の蜜をあげればいいと言ってたっけ。

 あとは食べたそうなものを食べさせればいいって……けっこう適当なことしか言ってなかったなぁ。


 とりあえずその辺の蜜を蓄えてそうな花をちぎって、フルールに手渡してみる。

 フルールは自分と同じくらいの大きさの花をしげしげと眺めた後、器用にちゅうちゅうと蜜を啜り始めた。

 あー、やっぱりかわいい……。


「この子もそのうち喋るようになるのかな」

『他のブルームフェアリーはぺらぺら喋っておっただろう。そやつもいずれそうなるであろうな』

「うーん。『ですぅ』とかうるさくなったらやだなー」


 よしよし、と指先で頭を撫でると、フルールはにっこりと笑った。



 フルールを仲間に加えて、私たちは冒険者ギルドがあるというアルミラの街を目指している。

 私がグリフォンのアーラの背中に乗って、フルールは私の肩か頭の上か、たまにアーラの羽毛にくるまってすやすやと寝ている感じだね。

 この子は生まれたばかりでまだうまく飛べないみたい。

 一回空高く飛んでる時に私の肩からころんと落ちて、大慌てで地面に落ちる前に拾い上げったっけ……。

 紐でもつけときたいけど、それはちょっとかわいそうだよね……。


 なんてことを考えている間に、アルミラの街についてしまいました!

 おぉ、大きい街だ……!


「うわー、都会だー!!」

『そうでもないぞ。お主の感覚はおかしいのではないか』

「私の故郷から見たら都会なの!!」


 天使だった頃はほとんど天空城にいたし、堕天してからはずっと引きこもって魔術の研究に明け暮れてたんだよね。

 転生してからもあの田舎の町からはほとんど離れたことなかったしなぁ。

 こんな大きい街を見るのは久しぶりなんだよ!

 ちょっとドキドキしながら街の入り口の門をくぐり、そこから見える光景に思わず感嘆の声が漏れた。

 門の先には石畳の大きな通りが広がっており、その左右に大きな建物がずらっと並んでいる。

 行き交う人もいっぱいで、思わず圧倒されちゃうよ。


「あっ、そうだ。アーラ、マスコット形態よろしく」

『誰がマスコットだ誰が……』


 アーラはぶつぶつ言いながらも丸っこい小鳥の姿へと変わった。

 よし、これでそんなに不審がられない……はず!

 やっぱり大きなグリフォンが堂々と歩いてたら怖がられるかもしれないからね。


『とかいー?』

「うん、人がいっぱいいるところだよ」


 フルールはまだちゃんとした会話はできないけど、私たちの話す言葉を真似することが増えた。

 この分だとすぐにおしゃべりができるようになりそうだね。


「冒険者ギルドはどこかなー」


 右肩にアーラ、左肩にフルールを乗せて、冒険者ギルドを探しながら通りを歩く。

 いろんなお店があってわくわくするけど、今は手持ちのお金も少ないし我慢だね……。

 しばらく歩くと、やっとそれらしき建物が見えてきた。


「あっ、あそこが冒険者ギルドっぽい!」


 レンガ造りの大きな建物に、二本の剣が交差した紋章が描かれた看板でかでかと掲げてある。

 あれは、冒険者ギルドの紋章だ!

 ドキドキしながら建物の入り口の扉を開ける。そこには、思った通りの光景が広がっていた。


 おぉ、武装した人がいっぱいいる!

 剣を佩いた戦士っぽい人、厚い鎧に身を包み、大きな盾を持った人。あっ、魔術師っぽい人もいる!

 いいなぁ、あの杖とかアミュレットとか結構な力を秘めてそう。ローブからもうっすら魔力が漂ってきている。

 私も早くあんなふうに装備整えたいなぁ……。


(おい、早く登録に行かんのか)

(今行こうとしてたところだって!)

(とうろくー?)


 念話で会話しながら受付へと足を進める。

 ちなみに、フルールは生まれたばかりだというのにもう念話を習得しているのだ!

 すごくおりこうさんだね! ママは嬉しいぞ。


 ドキドキしながら受付に並び、しばらくして私の番が来た。


「おはようございます。こちらのギルドは初めてですか?」

「はい、冒険者の登録をお願いします」

「登録ですね。少々お待ちください」


 受付のお姉さんが慣れた仕草で書類を取り出し、手渡してくれる。

 よかったぁ。子供だからって断られるかもしれないって思ってたけど、やっぱり冒険者って誰でもウェルカムなんだね。


 名前、年齢、出身地……用紙に必要事項を記入していく。

 あらためて自分のプロフィールを見ると、すごい平凡な人間だなーって実感するね。

 魔力に焦がれて堕天して、魔族の中でのし上がって、ちょっと油断したところを大天使に討伐された前世とは大違いだ。

 でも、すぐに前みたいな魔力を取り戻し好きなだけ魔法を使ってやるんだから……!

 とりあえず必要事項を記入した用紙を渡すと、お姉さんはじっとその紙を確認し、やがてにっこりと笑って頷いた。


「はい、確認いたしました。では登録料をお願いします」


 やっぱお金かかっちゃうかー。

 でもそれを予想してちゃんと用意してきたのだ。


「では、こちらの水晶に触れてください」


 お金を払うと、お姉さんはそう言ってスイカくらいの大きさの透明な水晶玉を差し出してきた。

 そっと触れると、水晶玉の色が変わる。

 赤、青、緑、黄……水晶は様々な色を湛えたかと思うと、ぽわ、と大きな水晶から分離するように小さな玉が浮かび上がってくる。


「わっ……」

「これは珍しい。虹色、でしょうか……」


 宙に浮かんでいるのは、虹色に光る小さな玉だった。

 お姉さんはその玉を手に取ると、手のひら大のサイズの銀色のカードのようなものに埋め込んだ。


「<転写>」


 お姉さんがそう唱えると、さっき私が書いた用紙の文字が宙に浮かび、銀色のカードに吸い込まれていく。

 おぉ、今はこんなスキルがあるのか……。

 全然知らなかったからびっくりだよ。

 お姉さんはそのカードに細い鎖を取り付けると、ネックレスのような状態にして私に手渡してくれた。


「はい、これで登録完了です。ルチア・アルフィーネさん」


 どうやらこれが冒険者ギルドの登録証らしい。

 登録証を身に着け、ちょっと誇らしい気分になる。

 なんかこう、第一歩を踏み出した、って感じだね!


「私はこのギルドの受付のカロリーナと言います。よろしくお願いしますね、ルチアさん」


 そう言って、受付のお姉さんあらためカロリーナさんはにっこりと笑った。

 はぁ、親切そうな人でよかったぁ……。


 それから、カロリーナさんは冒険者ギルドの仕組みについていろいろと説明してくれた。

 冒険者ギルドにはおおまかにF~Sまでのランクがあり、冒険者になったばかりの私は一番下のFランクからのスタートになるみたい。

 依頼には、薬草や魔石や魔物の皮や肉などの素材を取ってくる「納品依頼」、危険な魔物を討伐する「討伐依頼」、他にも荷物の配達や護衛や警備の依頼なんてものあるらしいね。

 依頼をこなすと、だんだんと上のランクに上がっていくみたい。


「一定期間依頼を受けないとギルドの登録自体が抹消されますのでお気を付けください」

「はーい」


 まぁ、私はばしばし敵と戦うつもりだからたぶん問題ないだろうね。

 冒険者だけじゃなく依頼にもランクが振られており、身の丈に合わない依頼は受けることができないんだって。

 ギルドを通さなければどんな依頼でも受けられるけど、その場合はランクアップには考慮されないということだった。

 そっか、いきなり高ランクの依頼って受けられないんだね。

 ちょっと残念かも。


 後は、窃盗や殺人などの犯罪に手を染めたものは追放処分になる場合があるということ。

 そういう人は追放された後に盗賊ギルドや暗殺ギルドからスカウトが来るなんて話も聞いていたけど、さすがにカロリーナさんはそのあたりについて言及はしなかった。

 ……そんな予定ないから別にいいんだけどね。


「依頼はあちらの掲示板に貼ってあります。依頼以外にも、素材等の買取はあちらのカウンターで随時受け付けております。それでは、よい冒険者生活を!」


 よし、じゃあ早速依頼を受けてみますか!

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