#69交易品
交易が始まってから、少しばかり経ち、サチ国には珍しい品々が輸入され、それが国王の
元にも来ていた。
家臣たちはそれらを国王へお披露目したのだ。それは主に、紙、布、ガラス細工、装飾品などだ。
しかしその中で、国王にとって一際目立つ物があった。
それは、弩と呼ばれているもの。何しろ、弓より優れた武器があるということは
衝撃的だったのだ。国王はそれを試し撃ちさせ、それを見てその武器の実力を思い知った。
早速、国王は弩を大量に輸入した。その代金は、貨幣のないサチ国に、特別に米での支払いが
許された。かなり高額だったが、国王は惜しまずに使った。
もちろん、国民の反対は受けたが。
「それほどに購入して、どうするのですか?国民は、皆反対していますが」
相変わらずの口調で、ミエは国王にその理由を尋ねた。ミエは国王とは違い、民主派なので
考えが一致しないことも多々あるのだ。
「今、サチ国は新時代への転換を必要としているのだ。そのために、この弩を使い、
他国を征服するのだ」
ミエは「ふうん・・」というような目で国王を見た。どうやらあまり興味はないようだ。
「で、それを部隊に配備し、実戦に使わせると」
「そういうことだ。きっとこれがあれば勝てるだろう」
「しかし、他国に兵を送っている間に、隙を見て日本皇国が攻めてくるかもしれません」
ミエはそう言った。確かに他国に兵を遣わせば、警備が手薄になる。そこまで考えていた。
しかし、国王は反論をしてきた。
「いや、それはない。日本皇国の法で、相手が攻撃するまで攻めることはできない、
というのがあるのだ」
国王は自慢げに言った。国王が言っていたのは、日本皇国憲法の平和に関する条項のこと。
国王は日本皇国の法も調べていたのだが、ミエの方が1枚上手だった。
「それは建前かと。実際のところは、日本皇国の王が絶対的権力ですから。もしくは、自作自演を
してくる可能性もあるかと」
「・・・・・」
これには国王も黙るしかなかった。ミエの言っていたことは間違いではなく、実際のところ、
憲法を無視して攻め込むことも可能なのだ。最悪、虚偽の事実を挙げて自分たちを正当化すれば
いいのだ。
「だが、我らサチ国は隣国のシナ国を征服しようと思う。兵の数も最小限に抑える。
異論は・・・ないな?」
「・・・はい、分かりました」
国王は、はっきりとそう言った。国王は弩を手に入れ、少し浮かれているのかもしれないが、
シナ国とはいつか戦う相手。彼女も反論はしなかった。