#50とある地で(中編)
村長の家に向かい、これまでの事情を話したら、急に村長は血相を変えて、こう聞いてきた。
「日本皇国の者がここに来たというのは・・本当か?」
私の言った事を聞き返してきた。何かおかしなことを言っただろうか。
「はい、そうですが・・」
「それは・・不味いことになったぞ・・・」
村長は縮こまったような暗い声で呟く。日本皇国が一体何なんだ?
「日本皇国を知っているのですか?」
「ああ、もちろんだ。日本皇国はその地に降臨した神が治めている国らしい。わが村にはかなりの
脅威になるだろう」
神が治めている?そんなバカな。内心ではそう思ったが、村長の顔は至って真面目。
嘘ではないだろう。
「脅威・・・とはどういうことですか?」
「日本皇国は、ここと同じ島にある国らしいが・・噂によればその国力は大陸と並ぶ程らしい。
そんな国がこの村に攻めてきたら・・分かるよな?」
私はその言葉の意味をすぐに悟った。あの男たちのただならぬ雰囲気に薄々気付いていた。
同じ島の民とも思えなかった男たちに・・・
「村長、行きましょう。あの人たちの元へ」
「ああ、そうだったな」
思い出したかのように、座に座っていた村長は立ち上がり、葛城という男の元へ向かった。
二人とも、口では言わないが日本皇国への臣従の答えは決まっていた。
「私が、この村の村長だ。よくぞここまで参った。あなた方を歓迎する」
村長は葛城たちに向かい、不器用な作り笑顔で歓迎の意を表す。日本皇国を恐れているようだ。
「貴公が村長か。早速だが私たちの要件は・・・」
「いや、もう話は聞いている。言う必要はない」
「では、もう答えは用意できていると」
「それはもちろん。私たちは貴国への加入を喜んで受けるよ」
村長はまたもや作り笑顔をする。自分の村を奪われ、悔しいはずなのに。
結局、権力には逆らえないのだ。
「分かった。早速、我が国の天皇に伝える。その答えはきっと自分たちに得になるだろう」
そう言い残すと葛城たち日本皇国からの使者は帰っていった。これでよかったのだろうか?