#19祭りの夜
神武天皇即位紀元10年(紀元前650年)
俺が降臨してからちょうど10年が経った。それを記念して祭りを開催した。祭りの内容は特に
指定していない。しかも村人に伝えたのは長老であり、俺の命令ではないことにしてある。
自分で自分を祝おうというのは図々しいからな。
祭りは夜に開かれた。祭りを見物してみたが、その様子は中央に大きなキャンプファイヤーみたいな
ものの周りでよくわからない格好の女達が音楽に合わせ踊っている。盆踊りみたいなものか?
そして長老が俺にお酌をしてくれた。その酒は度数が低い果実酒だった。あまり実感が湧かないが
俺は今27歳。酒も普通に呑める。だが降臨時と見た目も変わらないので不老というのは本当なの
だろう。そして祭りの後、重大な話があるとして村人達を集めた。集まった村人の前に立ち、
こう言った。
「皆の者、よく聞け。私はこれから数日間、村を留守にし、向かう場所がある。場所と目的は今は
言わないでおく。私がいつ戻ってくるかは分からない。留守の間は長老の指示を聞くように」
「え?」
それを聞き、村人達がザワつく。この村に来て以来、ずっといた存在が数日間いなくなるんだ。
しかも目的や日数も聞かされぬまま。その事は長老にも言っていなかった。
「だが安心せよ。私たちには必ず神が宿っている。そのことを忘れるな!」
俺の名言(?)を聞き、ザワついていた村人達も静かになった。村人を集め演説したのは
久しぶりのことだからな。俺の言葉が胸に残ったんだろう。それでこれから何をするかというと、
ほかの村を発見、服従させる。なぜそれを言わなかったかというと単に俺の信頼度が下がるからだ。
これから他の村を服従させる、なんて言ったらダメだからな。言い方次第でどうにでもなりそうだが
元々陰キャな俺にはそんな力はない。
行くのは俺一人。下手に連れがいても邪魔なだけだからな。探索に必要な持ち物を持ち、
次の日の朝、出発する。まずは西方に行く。浜名湖以東は既に探索済なので浜名湖の向こうに行く。
現代の浜名湖は海と繋がっているがこの時代の浜名湖は海と繋がっていない。何故かというと
1498年の大地震で砂州が決壊し、海と繋がったのだ。浜名湖を船で渡るのは面倒なので
海岸沿いを歩く。浜名湖を越えるのに4日もかかった。でも早い方か?




