*046 万能と管理
*046 万能と管理
その後の王都での休暇はかなり有意義な時間だった。ある程度、見た物なら省略化できるようになったり、アイリと町をもう一度見て回ったり、魔法技術の事を少し見て参考にしたり、いかつい魔人に絡まれるなどしている内にあっという間に4日経った。
そして5日目の朝、坂本さんに準備ができたとの知らせが来たのでさっさと受け取って帰る予定だ。
「王都、すごい楽しかったです」
「ああ、今度はリーナとかダスティンとみんな誘って遊びにいくか」
多分、バイクができたんだから面倒くさそうだが車だってやろうと思えばできるだろう。エンジンとかの専門知識が必要な所は魔法で補えばいいし。
そう考えると銃も魔法でできるのか?魔力を流しただけで高速で物を飛ばすとかできれば......
「どうしました? そんな難しそうな顔をして」
「ああいや、ちょっと考え事してただけだ。問題ない」
「ああ、それならよかったです」
俺の顔を見て心配していたのか、ホッと安心している。うん、難しい事は帰って暇な時に考えよう。
「私、巧さんが今から王様に会うのが緊張していると思ってたのですけどその調子なら大丈夫そうですね」
「......」
あれ?そういえば王様から貰うんだっけ?そういえばこういう時は普通偉い人から貰うから......いや、まさか俺なんかにわざわざ......いや、あれだけの事件の褒美なのだから王様が直接渡す可能性の方が高いわけで......
(やばいやばいやばいやばい、偉い人から何か貰う時ってどんな態度すればいいんだ?)
地球でも何か表彰されるようなことなど一切やってなかった俺はそんな時の態度など知らない。いや待て、まだだ。今のうちにアイリに聞けばまだ間にあ......
「着きましたよ、巧さん。この部屋みたいです」
「えぇ!?」
考えながら歩いているといつの間にか言われていた場所についた。白い天井あたりまで高いでかい扉、他の部屋と違う雰囲気、そしてこの部屋の前にいるこの騎士、間違いなく偉い人がいる部屋についていた。
「あなたが巧殿か。中で国王がお待ちだ。早く入れ」
俺がアイリに助言を請う前に言われてしまった。ああ......
「巧さん、いってらっしゃい。私ここで待ってますから」
アイリも俺にそう言い、ササっと扉の横に移動した。おそらく邪魔にならないように待つのだろう。
(ええい、坂本さんがフォローしてくれるはずだ。何も心配するな、ただ失礼のないようにすればいいだけだ)
心の中でそう自分を鼓舞しつつ、俺は騎士の開けた扉をくぐり部屋に入った。
中は謁見の間?のような造りの部屋だ。壁や天井、柱とどれも高そうな装飾でこういうのに縁のない庶民の俺は恐縮してしまいその場で固まってしまった。
「君が加藤 巧君かな?」
名前を呼ばれ、我を取り戻した俺は部屋の奥を見る。
そこには俺が今まで見た中で一番高そうな王座のような椅子に座っている50代くらいのおじいさんとその横には腕組をして立っている鎧を着た男が立っていた。
俺はとりあえず名前を呼ばれたので慌てて返事をすることにした。
「あ、はい。おr、私が加藤巧でs、あります」
「はは、そんな固くならんでいい。そんな感じでは君が話ずらいだろう」
俺の表情や怪しい丁寧語を察したのか王様がよいよいと手を動かす。正直、かなり緊張して今すぐこの部屋を出たいレベルのやりずらさなのでお言葉に甘える。
「ありがとうございます。あなたがこの国の王様なのですか?」
「そうだよ。私がヨルム王国134第目国王ブルーノだ。よろしく」
「は、はい。よろしくお願いします」
王様の自己紹介を聞き、思わず頭を下げてしまった。凄い偉い!って感じのオーラがバンバン感じて思わずぺこぺこしてしまうんだよね。
「そう頭を下げなくてもいい、君は私の娘を救ってくれた恩人だ。そう気がまえなくていい。うちのリアを救ってくれてありがとう」
王さまが椅子から立ち上がり頭を下げながら礼を言う。
「いえ、そんな。俺は自分のできる事をしただけですから」
「はは、君は遠慮しがちなんだな。日本人というのはみんなそんな物なのかい?」
「多分みんな恐縮しちゃってこんな風になると思います」
こういう時に「ああ、大いに感謝してくれ」とか大口叩ける奴っているのか?いたら相当のバカだと思う。
「不思議な人種だな、日本人と言うものは。大抵が何か企んで喋る奴か、何も言えず固まってしまう者ばかりだというのに。さて、騎士団長から魔法関連の古代魔装を望んでいるというのを聞いたのだが本当かね?」
「はい、その通りです」
「君の要望の闇属性関連の強化、または魔素保有量を増やすという効果の古代魔装は現在宝物庫にもなくてな。望んだものは与えれそうにない」
王様が申し訳なさそうにそう告げる。まあない物を要求できないし仕方ないが......じゃあ、「この中から好きな物を選べ」なんて言われてるのだろうか。
「だが、実は最近手に入った物が君にぴったりだと思ってな。それを用意させてもらった。エル、持ってきてくれ」
「分かりました」
そう言われ、横にいた男が後ろからトレーのような物を持ってきて俺の前まで歩いてきた。
トレーの上にはダイヤモンドのようにキラキラ輝く透明な石がはめ込まれた指輪が置いてあった。
「それは『ユニバース』という古代魔装でな。付けた者は全属性の初級魔法を適性なしで使えるようになるという効果だ」
「全属性を適性なしで使える?」
あれ?どこかでそんな感じの効果を聞いた事があるぞ。あれは確か......
「君の倒した魔兵を操っていた男の持っていた物だ。効果もなかなかの物だし、君にそれを授けようと思うのだがどうだろうか」
「はい、これでいいです!」
俺は指輪を取り、自分の指に通す。輪の部分もなかなかカッコいいのですぐに気にいった。それに効果もリーナやマリンの使っていた魔法が使えるのだ。初級とはいえ、攻撃性の属性魔法を使えるのはかなり嬉しい。
「巧君、君に褒美とは別に渡したい物があるのだがいいだろうか」
「渡したい物ですか?」
俺がなんだろうと疑問に思っていると王様が懐から何かを取り出し俺の方に投げつけてきた。俺は慌てて手を伸ばしそれを掴む。
無事に落とさずに掴みとり、それを確認する。
それは黒いクレジットカード並の大きさのカード、『イシュトの秘宝』と呼ばれていた魔道具だった。これ1枚でチートクラスの魔法を使える強力な物なので当然俺は困惑した。
「あの、これって厳重に管理してるんじゃないんですか? 俺なんかに渡すものじゃない気が......」
「」