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異世界転移!~才能がなくとも活躍できることを証明してやろう~   作者: かずっち
第四章 騎士団長と魔導師長
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*045 時間と省略化

*045 時間と省略化


「いやー、普通におもしろかったなー」


 俺はお城の廊下を歩きながら今日の出来事を思い出す。

 朝から可愛い女の子と散歩して、色んな事を話して、町を一緒に見て回って。しかもその女の子は地球じゃ現実には存在しない獣耳を兼ね揃えているときた。とてもじゃないがこんな経験、地球じゃまず体験できまい。


「俺、このために今まで生きてきたんだな......」


 若干ネタを交えて独り言を言うくらい超機嫌が良い。するとパタパタと誰かが走ってくる音が聞こえた。


「おにーさん、おにーさんちょっとおまち!」

「はい?」


 後ろを振り向き誰だろうと見るとまだ若い20代くらいのメイド服を着た女の人がハアハアと息を切らしながら走ってきた。


「やっと見つけた......玄関横にある黒いやつってあんたのだろう?」

「多分そうですけど......」

「あんな所に置かれると邪魔だから早くよせてくれないかい?」


 はい、無断駐車すいません。

 この後、サイドカーや見た目をごつくしたせいで重さが冗談抜きでやばい事になっているバイクを地下に持って行くのに魔法で身体強化をする羽目になった。重かった......




「まあエスカレーターなんてこの世界にないから仕方ないけど。おっつー」

「俺が一段一段ゆっくり降りているの気がついてたんだったら手伝ってくださいよ......」


 まさか急ブレーキなんて機能がないバイクで階段を降りるのは自殺行為なので持ちながらゆっくり

降り切った先にはゲラゲラと笑っている恭子さんが待っていた。


 この世界の事はまだ知らないことだってある。相談しにちょくちょく来るつもりだったがバイクで毎回こんな事をしないといけないのか、と思ってしまうと先ほどまでのご機嫌はなくなっていた。


「多分この後も王都に来るだろうから作れないもんですか? ロープとかでこう、持ち上げる方式とかで」


 多分バイクの回転機構を応用すればそれくらい作れそうな気がするが。


「それだと人はともかくそのバイクみたいな超重量乗せただけで切れそうだからだめじゃないかなー」

「ああ、そうか。日本のエレベーターとかで使ってるワイヤーを作れればいいんだけど《クリエイト》じゃ再現できないだろうし」


 あれは無機物かつ単体でしか作り出せない。エレベーターなんかで使われるようなワイヤーなんて明らかに複雑だろう。作り方だってわからないのだから再現しようにもない。


「まあ、何とか作れないか試してみよう」

「まじっすか!」


 俺は恭子さんの言葉で一気に元気になり、肩をがちっと両手で掴む。


「お願いします! あんなの毎回やりたくないんです」

「分かった分かった。次来る時までに作ってあげるから」


 ほんと、坂本さん夫婦に出会えて良かった。俺は拝んでその幸運に感謝する。


「そんな事しない。代わりに君のスマホを借りるんだからギブアンドテイクってやつさ」

「あ、そういえば......」


 なんで村まで戻ったのか忘れてた。俺は急いでスマホと貰ったソーラーバッテリーを恭子さんに渡す。


「へえ、私達が異世界に行った後でこんなに薄くなったんだね」


 俺のスマホを見て興味深く見つめる。


「恭子さん達がこの世界に来てから1年程度なんですよね。そんなに変ってます?」

「うん、私達のスマホなんてこれの倍くらいは幅があったよ」

「え?」


 ちょっと待って。あれの倍だと?

 俺のスマホは一応半年前に買った機種だから割と最新に近いモデルだ。あれの倍の幅のスマホとか今あるのか?


「恭子さんのスマホってまだあります?」

「あるよー。えーと、はいこれ」


 俺は念のため確認するためポケットの中から出てきた恭子さんのスマホを受け取る。それを見て俺は自分の予想通りだという事に気がつく。


「まじか......」


 俺の手に持っているスマホは画像でしか見た事のないスマホが出回った時あたりの古い機種だった。




「て事は、ここの1年は地球の10年ほどになるってわけかい?」

「まあ、そうなるんですかねー」


 確認すると恭子さんは2008年の春あたりにここに来たらしい。そして俺は2017年の秋だ。だいたい10年の違いがある。この世界の暦が違うってのもあるがよくある時間軸のずれというのもあるみたいだ。けど、まあ。


「別に戻りたいなんて思ってないからどーでもいいっちゃいいんですけどね」

「私もだな。山で遭難した後、10年も失踪なんて死んだと思われてるだろうし」


 そう、地球に戻るとかなら話は別だが考えた事もないくらいどーでもよかった。俺は既に両親は遠くに旅立ってるし、言ってて悲しくなるが心配するような人は俺の知る限りいない。坂本さん達も別にこの世界でうまくやっていけてるから特に帰りたいと思ってないらしい。


「ま、親には申し訳ないけど遠くで元気にやってるよって事で勘弁してもらおう」


 俺のスマホを弄りながら恭子さんが適当そうに呟く。この人絶対里帰りとかしないタイプの人間だな。

 俺のスマホの中は前にも見たようにネットがないと使えない物ばかりだが使える物だってある。俺的にいらなそうと言う事で見てなかった辞書アプリはダウンロードタイプでオフラインでも使えたし、他だと暇つぶし用に入れてたマンガアプリとか飯を作る時に使うレシピアプリとかも見れたので思った以上に使えるみたいだ。


「ふーん、なるほどなるほど......」


 恭子さんはスマホを置いて立ちあがり、両腕をかかしのように上げた。


《フロート》「いや、違うか」《フロート》


 何回も同じ英単語を呟き始めた。


「あの、恭子さん。いったいなにを......」


 してるんですか、と聞こうと思ったが言葉が出なかった。


「ほほう、やっと空を飛べたよー」


 恭子さんがいきなり重力に逆らうかのようにふわりと浮き始めたからだ......




 この世界の魔法はこちらの世界で言う英単語を発言する事で発動する。だが、俺と思ってたみたいにただ発言すれば発動するわけではないと言う。

 まず魔法の現象を発言するために必要な魔力を準備する。次に明確なイメージ、効果を思い浮かべる。そこまでやって発動のキーである魔法名を発言する事で具現する。リーナの『イマジネーション』のようだ。


「けど、今まで使ってきましたけどそこまで意識しなくても発動しましたよ?」

「それはすでに効果が分かってるからだろ。君の《チェンジ》なら位置交換する場所を明確に設定しているだろ? それが無意識でどういう現象になるか、どのような結果になるってイメージしてるんだよ」

「ああ、なるほど」


 確かに効果が分かっているなら無意識でどういう風になるかって考えてるかもしれない。そこら辺は詳しくないが一年も魔法に精通している恭子さんの言葉だ。おそらくその通りの仕組みなのだろう。


「ようはイメージが重要ってことだよ。イメージさえ掴めれば無属性だろうが上級魔法だろうが詠唱省略なんて簡単なんだよ」

「え? 詠唱省略ってそんな簡単なんですか?」

「うん、この世界の人は英語なんて分からないから上手くできないみたいだけど私と亮君はできたよ」


 今まで練習しないとできないとできないっていうから修業みたいな事が必要だと思ってたから意外だ。


「じゃあ、別に俺の《クリエイト》も詠唱なしで使えるんですか?」

「魔力を錬る工程は練習必要だけど作るものを言う工程は無くてもいけるはずだよ」

「よし、じゃあ試してみます」


 俺は右手をあげて、とりあえず白金をイメージして......


《闇に転換 クリエイト》


 手を向けた場所にいつものように光が集まっていき、剣ができた。おお、本当にできた。と思いながらその剣を持ち上げてみる。


「あれ?なんか色々雑だな......」


 パ―ティーの時に作った物は素材は違えど形ならほぼ同じ物ができたのだが、今できた剣は細部が若干違っていた。魔石のはめ込まれている場所は元から何もありませんでしたよ、と言いたげなまっ平らだし曲線が微妙に角ばっていたりと白金の粗悪品が出来てしまった。


「そこら辺は言わない時より強くイメージしないと所々ミスってできるらしいよ」


 なるほど、元々詠唱で補っていたイメージがなくなったんだからこんな粗悪品ができたのか。


「まあその辺りもイメージ練習すれば上手くいくよ」

「結局は練習か......」

「最初はみんな練習からだ。ほら、がんばったがんばった」

「まあ最初だし、そんな上手くいくわけないもんですね。よし、やったるで!」


 こうして、恭子さんは魔法の解明を。俺は省略化の練習をそれぞれで行った。

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