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異世界転移!~才能がなくとも活躍できることを証明してやろう~   作者: かずっち
第四章 騎士団長と魔導師長
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*044 発明と役割

*044 発明と役割


「うおっ! うまい、久しぶりに食べたなー」

「ふふ、それはよかったです」


 俺もリアも朝ごはんを食べていなかったので、どこか適当なところで済ませようとしていたのだが意外な物を見つけた。


「まさかこの世界にホットドックがあるなんて思わなかったなー」


 いいお店がないか露店が多く出ている通りを歩いていると、地球のファーストフード店で有名なホットドックを偶然見つけたのだ。思わず見入ってしまい、それに気づいたリアが「あれにしましょう」と提案して買ってきたのだ。


 本当は「お姫様がこんな栄養偏ったもの食べていいのか?」と思ったのだが、パリパリに焼いたソーセージの匂いと久しぶりに見たおいしそうな見た目に負けてしまった。


「その食べ物は亮様が考案なさった物なんですよ」

「あ、これって元からあったものじゃないのか」


 どうやら食べ物もこの世界に流行らせたらしい。


「他にはどんな物を作ったんだ?」

「そうですね......例えば私が一番驚いたこの『魔力灯』も亮様と恭子様が作ったものですね」


 リアが指を指した物は昨日、俺が驚いていた街灯のような物だった。やはりこれもだったか。


「王都の夜の事件発生率の高さを解決するためにと亮様が提案し、恭子様が作った物なのですけど夜でも昼間くらい明るく照らすのでとてもびっくりしてしまいました」

「ほんとあの人達何でもやるな......」


 『魔力灯』というのだからおそらく魔力を光に変えているのだろうか。けどそれなら......。


「そんな魔力どこから持ってきているんだ?」


 俺の作ったバイクみたいに魔力タンクのような物があるのだろうか。それだと無くなったら補充しないといけないからこの数は面倒そうだなー。


 そこらへんを聞くとそのあたりの仕組みは公開されていないらしい。まあそんなポンポン公開したらパクられるから仕方ないか。




 その後、市場やお店をリアに案内され色々見て回っていると結構な時間が経っていた。何かに夢中になっていると時間が経つのが早く感じられるよね。不思議だ。


「大体のお店はこれくらいですかね。巧、どうでしたか? 王都は」


 リアが城への帰り道、どうだったか俺の顔を見て聞いてくる。


「凄い活気があって、人が幸せそうに暮せてるいい街だと思ったよ」


 単純に人が多い、というのもあるだろうが露店のおっちゃんや買い物客、元気に走っている子供達と目に入る人はみんな楽しそうに過ごしていた。

 よくある貧困問題とか、路地裏の不良とか普通にあると思っていたのだが、そういうのもまったく見かけなかった。現代日本でも解決できてない問題も、この国だとまったくなのだ。


 騎士っぽい人が巡回してるあたり、騎士団長の坂本さんが上手く回しているんだろうな。ほんと、お疲れ様です。


「それならよかったです。私は何も人のお役に立ててませんが......」

「? そんな事ないだ、ってそういえば体が弱いって事になってるんだっけ」


 アイリに聞いた話だが、おそらく魔人とばれないようにという建前なのだろう。それなら確かに政治方面でリアができる事はないのか......


「お父様やお兄様、亮様に恭子さんとみなさんこの国のために頑張っているのに私は何もできないので......みなさん仕方ないと言ってくれるのですが」


 そりゃお姫様が魔人というのがバレればいくら魔人の差別が少ないといってもそれでも世間はうるさくなるだろうからな。

 あれ?て事はリアって今二ー......。


「今失礼な事考えていませんでしたか?」

「いえ、そのような事は」


 顔に出ていたのかリアがジーと睨んできた。それなんて魔法?


「お城では座学や習い事を習ってますのでこれでもなんでもできるんですよ?」


 ちゃんと勉強をしておりましたか。すいません。

 けどそれでも今後その勉強で身に付けた知識が生かせるかどうか......正直言ってこの先、城で何かできるかと言われると申し訳ないができる事はないだろうな。

 リアもそれに気が付いているのかどこか自嘲的な感じで呟いた。


「私はこのまま、この国の何の役にも立てずに終わるのでしょうかね......」


 リアが周りの人たちを見ながら目に見えて落ち込んでいた。


「うーん、そんな事ないと思うけどな」

「え?」


 俺は落ち込んでるリアに励ましたり褒めるでもなく率直に思った事を言う。


「だってリアの顔とかって一般人には公開されてないんだろ? なら独り立ちでもしてお店で働くなり経営とかの仕事をすればいいんじゃないか?」


 先ほど見て回ってた露店とかで尻尾の毛が見るからにふさふさしていた女の人が楽しそうに商売してたり、リアのような獣耳がある人が普通の人間と話していたりと魔人でもなんとか過ごしていけそうな環境だからおそらく安心して過ごしていけるんじゃないだろうか?


「私にあんな人達のように働けますかね」


 リアが不安そうな顔で見つめてくる。確かにいきなりお姫様だった人が働くなどあまり想像できないだろうな。


「あの人達だって始めた時は多分失敗しまくってたと思うよ。けど、それを経験に慣れていっていつの間にかできるようになっていくもんだよ」


 俺だってそうだ。最初は魔獣退治なんて普通の高校生だった俺に無理と思っていたが、実際にやってみればある程度の知識、経験があればなんとかなるものだ。それだけじゃなく、日本とは違う異世界にも色んな事を知って段々と慣れ始めてきてさえいる。


 俺が自信満々に言うとリアが真剣な顔になって周りの露店や行き交う人々を眺める。


「私にも......あんな風に、か......」

 

 いつの間にか真面目な雰囲気の空気になっており、慣れていないので凄く気まずく感じる。ええと、こういう時何言えばいいんだろう......友達いなかった弊害がこんな所で現れるとは......


「あとはー、あ、あれだ。女の子の夢なんて言われるお嫁さんなんてのも手だな」

「お嫁さん? 私がですか!?」


 俺の思いつきで言ったふざけた例を聞いてリアの顔が瞬間的に真っ赤になった。よし!


「ああ、女の子のなりたいものって何? って聞くとお嫁さん! って答える人だっているしそういう選択肢もありだ。ようは人生やりたいようにやれって事だよ、うん」


 俺は出まかせで思いついた事と伝えたい事を織り交ぜて片っぱしから言っていった。この慣れない空気を変えるのと「難しく焦らず考えるな」って事を伝えたかったのだが......はたしてうまくいったのだろうか俺には判断できなかった。


「自分のやりたいように、ですか......」

「そうそう、魔人は寿命も長いんだろ? 俺より時間もあるわけだしゆっくりと探せばいいよ」


 よし!言いたい事言えた!見たか、これでコミュ症なんて言わせないぞ!と心の中で自分を褒めておく。


 リアの顔をチラッと見ると先ほどまでの落ち込んだような顔の面影はなく、生き生きとした顔に戻っていた。

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