表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移!~才能がなくとも活躍できることを証明してやろう~   作者: かずっち
第四章 騎士団長と魔導師長
40/47

*040 リベンジと裏切り

*040 リベンジと裏切り


《闇に転換 白金 クリエイト》


 俺は手を広げ、自分が持つ唯一の適性の魔法を使う。数秒で形になり、俺の手に剣が握られる。白金をイメージしたからか、形や刀身などが似ておりこれなら使えそうだ。


「本当に大丈夫なのかい、巧君」


 ローラさんが心配そうに聞いてくる。


「大丈夫です、ちゃんと考えてますから。それより、ちゃんと頼んだ事をしてくださいよ?」


 俺はそう返し、逆にローラさんの心配をする。正直、俺より危険なのだから自分の身を案じて欲しい。


「それこそ大丈夫。伊達に副魔導師団長をやってないわよ」


 そういえばこの人そんな偉い人だったな。全然上からじゃなく親しげに話してきてたからあまり実感が湧かないから仕方ないといったら仕方ないと思っておく。


(アイリ、そっちのタイミングが重要だからな。よく見ておいてくれ)

(はい、わかりました。巧さん、がんばってください!)


 アイリの方はあまり心配をしてない感じで応援した。俺の指示した事と今からやる事を伝えた時はびっくりしてたが、すぐに賛成してくれた。


 俺は武器を構え、窓から中を見る。黒ずくめの男達はお姫様を罵倒でもしているのか何か言っては笑っているように動いている。お姫様の方は、まったく微動だにしていないようだが。


 やがて、なにを言っても反応がないのが気に食わなかったのか、今動いてなかったリーダー格の男の腕が上がり、拳を握る。それを見て他の男たちも構え始めた。そしてリーダー格の男がその拳を下ろそうとした素振りをして......


(今です!)

《チェンジ》


 俺の視界は遠くから見ていた光景から、目の前の拳を下ろしかけている黒ずくめの男に変わった。




 男たちはさぞ驚いたのだろう。なにせ殴ろうとしていた女から武器を構えた男にいきなり変わったのだ。少し硬直してしまうのも無理はない。そしてその隙を俺が見逃すわけがない。俺はガラガラの懐に勢いよく右手に持った剣を斬りつける。


「ぐぅ......」


 俺に斬られ、自己防衛本能か俺から距離を取るリーダー格の男。そして男が握っていた右手と反対の左手でカードのような物を取り出した。国家相手にこんな事をする奴らだ。プロだという事は見てすぐ分かっていたのでその行動の早さにあまり驚かなかった。そしてその行動も予想通りだ。


「ふっ」


 俺はあらかじめ《クリエイト》で作ったナイフを剣を握ってない左手で手元目かげて投げつける。アイリの見た事を聞くなら無属性並の短さで発動する魔法はあのカードを向けた方向に撃つ、というものだろう。当然、目の前の敵である俺に向けるだろう。

 俺の予想通り、男は俺にカードを向ける。しかし、俺のナイフがあたり破けるかと思ったが、


カキン


 金属同士がぶつかったような音が聞こえ、手元から落ちるだけにとどまった。


(ち、完全に封じ込めたかったのだけど......)


 内心、目論見がずれ少し焦った俺はすぐ後ろを振り向き、再び手に取ったナイフと剣を抜刀仕掛けてる黒ずくめの男3人中2人に投げつける。足、脇腹に剣とナイフが刺さり蹲るが、残った一人は剣を抜いて俺に接近する。


《プロテクション》


 俺は左腕を上げ、振り下ろされる剣を盾で受けるように左腕で受ける。


バンッ!


 「なに!?」


 目の前の男の顔が驚愕に変わる。無理もない、切り落としたと思っていた腕で剣を止められ、俺の右腕の拳が顔に近ずいているのだから。


 《プロテクション》は以前の魔兵騒動の際、ローブの男が使っていた魔法だ。効果としては使った者(物)の強度を上げるという魔法だ。これのせいであの時は魔兵にまったくダメージを与えれず苦戦を強いられたものだが。


《プロテクション》で強度が上がっているパンチは想像以上の凶器だったのか一撃で気絶していた。

だが......


(くそいてててぇぇぇ!)


 例え皮膚の強度が上がり剣でも斬れないようになっているとはいえ、剣をぶつけられた時の衝撃は変わらないのでバットで殴られたような痛みが広がった。流石に敵の前で痛がるなんてできないので顔は無表情だが内心泣き叫びたいくらいだ。


「やれ! 人質をやれ!」


 リーダー格の男が周りにいた人達に指示し、落ちているカードを回収しに行く。俺はその動きを察知し、近くに落ちたカードを踏みつける。


「貴様! 何者か知らんが人質がどうなってもいいのか!」


 リーダー格の男が初めて少し動揺を見せた。


「人質が? なんで?」

「貴様やそこにいる騎士が駆けつけてあいつらを止めねば皆が死ぬぞ」


 ちらっと見ると魔法や剣で殺しにかかろうとしている男達とその姿を見て怯える子供達が見えた。中には子供を抱きかかえ、自分の背中で守ろうとしている女の人も見えた。


 だが、その剣や魔法で出来た火球やら氷なんかが子供達に当たる瞬間、その動きが止まった。


「なに?」


 そう、あらかじめリーナには今日見せてもらった《シールド》を。ローラさんにも障壁か何か守るための魔法を俺が室内に現れたら張れと指示しておいたのだ。

 おかげですべての攻撃は人質には届かない。


「きさまああぁぁぁ」


 顔をリーダー格の男に戻すとかなり怒った感じに剣を握り俺に接近してくる。俺は最後に作ったナイフを取り出し、なんとか斬られないように防御する。


「お前、逃げなくていいのか?」

「なにぉぉぉ!」


 俺がそう言うと、さらに怒って力を入れたのか、剣がギリギリと押されていく。こいつ意外とバカ、なのかもしれない。だって。


 「死ね」


 聞いたことない声が聞こえ、グサっと俺の目の前にいた男の胸から剣が生えてきた。男が何が起きたのか分からず、後ろを振り向く。


「な、に......」


 そこには先ほどまで隅っこにいた騎士が剣で刺しており、その後ろでは他の黒ずくめの男が騎士によって捕獲、または殺されていた。


「お前らに攻撃を加えなかったのはお姫様と人質の命が危ないからだ。だが今はお前らにどちらもないだろ?」


 俺が親切心で教えてやるが何も返事がなかった。すでにその男は息をしていなかった。



----------------------------------------------------------------------------



 深夜。


 夜も賑やかなザナリアだが、日ずけが変わった後は静かになる。

 その誰もいない静かな夜、人気のない路地を駆ける影が1つ。


「くそ、すべてがうまくいってたのに!」


 それは速度を落とさぬまま、何かを吐き捨てるように呟いた。


「巧......まさかあんな奴が王国にいたなんて......」


 あんな素人っぽい奴が無属性魔法を使いこなし、あの状況で躊躇なく剣を振れるような奴だったなんて思わなかった。確かにあれなら騎士団長が気にかけるのも納得だ。


「とにかく、これだけでも教会にとどけ......」

「どこの教会に行くんだ、セシル?」


 呼びかけられ急いで剣を抜き、声の主を見る。今まで気配を消しながら最大警戒で周りを意識したのだ。話しかけられるはずがない。しかし、そんな私の考えは声の聞こえた上にいる男を見て納得する。


「騎士団長......」

「どうしてこんなところにいるんだ?早く城で仕事しろ、今頃みんなあの事件の事後処理で涙目だぞ」


 笑いながら騎士団長が下に降り、歩み寄る。だが、その目は笑っていない。敵を目の前にした時の殺気を込めている。


「ふん、どうせもうばれてるんだろ?」

「ああ、レイン王国イシュト教会第8席、それが君の役職だろ?」


 まさか自分の詳しい席次まで知られているとは思わなかったので、内心驚きと焦りが生まれる。もちろん表情に出さないが。


「まあ、今回は巧君がいたおかげで君たちに隠し玉を見せずに済んだのだから別にいいんだが」


 そう言い、騎士団長は腰に装備した剣のグリップを握る。


「さあ、君とあいつの持ってた2枚のカードをこちらに渡してもらおう」

「私がはいそうですか、と言って渡すと思うか?」

「いいや、思わないな。だからわざわざこれを持ってきたんだし。ただの確認さ」


 この話の間にも私は相手にばれないようにカードをすぐ取り出せるよう準備する。ここでこの男を潰さねば間違いなく死ぬ。


「ああ、別に抵抗してもいいよ。どうせたいした違いはないわけだし」


 余裕な顔をして、私にそう言う。


「なめやがって! 死ね」


 私は袖に隠していたカードを取り出し、騎士団長に向ける。この間1秒も満たない圧倒的な早さだ。それなのにまだ騎士団長は余裕そうな顔をしている。

ムカつく顔だ......風穴開けてやる!


《カノン》


 パ―ティー会場を恐怖に陥れた魔法を発動させる。光の光線が騎士団長の頭を撃ち抜く......


事はなかった。


「なに!?」

「ははは、だから無駄だと言っただろ。意味がない、と」


 騎士団長の言うとおり、まったく意味がなかった。なぜなら......


「魔法が使えない、だと......」


 私はすぐにカードをしまい、初級魔法や中級魔法を詠唱する。だがいくら使おうとしてもまったく発動の兆しすら見えない。原因は分かっている。というよりこの男しかいない。


「何をした!」

「今から消える君に教える必要はないな」


 そう言って騎士団長は私に指を指す。


「やれ」


 そう言った瞬間、騎士団長のとなりから黒い何かが現れ、私に襲いかかる。


「アァァァァァァァ!」


 黒い何かが私に触れた瞬間、今まで生きてきた中で一番の痛覚が体を襲う。その壮絶な痛みのせいで暗い路地に倒れこんでしまう。


「その痛さは君の罪の数だけ痛くなる。それが終わる頃には罪は償っているだろう」


 そう言いながら、倒れこんだ私の前に立つ。


「その時、君が生きているかわからないが」


 こうして国の歴史に残る大事件は日本人の手によってあっけなく一夜で解決した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ