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異世界転移!~才能がなくとも活躍できることを証明してやろう~   作者: かずっち
第四章 騎士団長と魔導師長
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*037 カードと秘密

*037 カードと秘密


「おかしいですね。巧さん、このあたりにいるっていってたのに......」


 私は知り合いの魔人の人に挨拶しに行き、近況報告などをし終えた後、巧さんがダンスが始まる前までいた隅っこに来ていた。「隅っこでおとなしくしてる」としか聞いておらず、巧がダンスの雰囲気に負けて逃げた事を知らないアイリには分からなくても仕方ない。


「巧君はいないのかね?」

「ごめんなさい、パトリックおじさん。ここにいるって聞いてたんですけど......」

「まあずっとというわけにはいかないだろう。トイレなどで席を外してるだけかもしれんし」


 私が謝ると、その男は気にするな気にするなと手を振る。

 パトリック、この人の名前であり、親が研究で遊んでもらない私の遊び相手をしてくれたやさしい人だ。確か、虎の獣人で昔はイガリアの守備長という役職で活躍していた人で今は引退している。けど引退した今でも、鍛えられた筋肉は外見からでも分かり、強者と思える雰囲気をまとわせている。


「まあ巧君は、今ここに泊っているのだから会えるだろう」


 現段階で外はもう暗い。帰るにしても明日以降になるので今日も部屋を借りる予定になってる。もし、この会場で会えなくても部屋を訪れれば会える。

 

 時間が出来、暇になったので私はパトリックおじさんに先ほどから気になっていた事を聞く。


「それにしても......予想以上に魔人の方が多くてびっくりしました」


 イガリア出身の魔人はそのほとんどが森から出ない。理由としては、もし出ていって人間の国に行けばたちまち差別の対象になるからだ。

 ヨルム王国はそこまでじゃないが、レイン王国などは魔人を嫌う者が多い。そういった理由であまり2国と関わりを持たない。


 だが、アイリが挨拶に行った時、予想以上に魔人がこのパ―ティーに参加しており、楽しく人間の騎士達と話していたのだ。

 

「ああ、今の騎士団長が色々してくれた結果だよ」

「それってあの『魔剣』さんの事ですか?」


 私は直接会ったことはないが、とても強い魔人の人が王国の騎士団に入れたのはどこからか流れた噂話から聞いた事がある。

 

「ああ、それもあるが......一番はこの国のお姫様だな」

「この国のお姫様ですか?」


 私は奥でたくさんの人に囲まれてい話している青髪のお姫様を見る。


「綺麗な方ですけど、それだけで人は差別をやめるものなのですか?」


 この国のお姫様は綺麗とかあまり外に出ない体の弱い人などこれも噂で聞いた事がある。実際、初めて見かけた時も、すごい綺麗な髪!と触ったり、お話を聞きたい!となってしまったけど......

 けど美人というだけで解決するのならこんなに長い間問題にならないはずだ。


「ああ、そうか。アイリはあの人の正体を知らないのか」

「正体?」

「ああ、あの人は......」


《カノン》!!!!!


 パトリックおじさんが私の質問と答えてると、会場全体に響き渡る声が遮り、最後の方がうまく聞き取れなかった。

 

ピュキン


 その声が聞こえたと思うと、何かが凄い速度で移動したような風切り音が聞こえた。


「うぐ......あああああ」


 数秒遅れて痛々しい声が聞こえた。会場を見渡すと、黒ずくめの男が会場の真ん中で何かを掲げていいるのと、倒れた騎士姿の人がいた。


 他の客や騎士も何が起きたのか分かったのか、悲鳴が色んな所から聞こえ、たちまちパニックになる。


「静かにしろ!イシュト神を信じない愚かな愚民共!」


 黒ずくめの男が罵倒するとたちまち会場が静かになった。いや、騒げばどうなるか考えて、何も言えなくなったのか。


「我々の要求はただひとつ、先日、愚かにも我らの同胞から奪った物と貴様らのもっている『イシュトの秘宝』をすべて我らに返すことだ。さもなければここにいる女子供全員を今からイシュト神に変わり、我らが粛清を下そう」




 それから会場の到る所から黒ずくめの男が現れ、たちまち女子供と騎士達のように戦闘経験を持っている人と会場の端と端に分け始めた。


「貴様らが我々に魔法を唱えてこの人数を潰すのと、ここにいる奴らに『イシュトの秘宝』による高速魔法で何人殺せるか試してもいいなー」


 おそらくリーダーであろう男が騎士に向けてそう宣言する。つまり攻撃を加えればあの騎士を倒した聞いた事のない魔法で容赦なく殺すという事だ。

 ここにいるのは騎士の家族や知り合いなど彼らと関係のある人間ばかりだ。余計迂闊に行動できないだろう。


 今は人質と戦闘員を分けている最中だ。幸い、会場の端にいるため、最後になりそうだ。


「ちっ、面倒な事になったな......アイリ! 確かあのばあさんから《テレパシー》を教えてもらってたよな」


 パトリックおじさんが私にしか聞こえない声で聞いてきた。


「はい、使い方や効果を教えてもらいましたけど......」

「なら巧君に使え。いまならまだあいつらにばれない」


 確かに今なら人が壁になって小柄な私は見えないはずだ。けど、彼がここにいなかったというだけでもしかしたらこの会場にまだいるかもしれないのだ。だとしたら既に捕まっている可能性も......


「この状況を何とかするには外にいる奴に任せるしかない。だが、それはあいつらも知ってるはず、おそらくこの音が漏れないように細工をしているはずだ。もし、巧君が外にいるのなら騎士団本部にいる主力に応援を頼める。そしたら『魔剣』が来る。そうすればあの魔法をなんとかしてくれるはずだ」

「確かにそうですけど......」

「おそらく目的がすんだらできるだけここにいる人間や魔人を殺すだろう、例え可能性が低くてもやらないよりマシだ」


 こうしてる間にもどんどん目の前の人が黒ずくめの男に連れていく。もうすこしでアイリやパトリックおじさんの番になるだろう。


(お願い巧さん、繋がって......)


 私はそう必死に思いながらぎりぎりで魔法が発動できる音量で詠唱する。


《テレパシー》


----------------------------------------------


(という感じになっています)

(まじかよ......)


 こうなった経緯を説明を聞いてどこの映画ですか?と色々突っ込んでやりたがったが、実際にその状況を陥ってみるとかなりまずい状況と言う事が嫌と言うほど分かる。


 《テレパシー》は一度発動すればゆっーーーくりと魔力を喰いながらずっと話していられる魔法らしい。電話でいうかけっぱなし状態だ。そのため、中の黒ずくめの男達には気がついてないみたいだ。


「で、どうしようか」

「私に聞かれてもねー」


 現在、俺とローラさんは会場外のバルコニーにいる。俺がこっそり抜け出したのと、ローラさんがフラッと来たせいで黒ずくめの男たちがこちらに来る気配がない。なので一応今の所は安全なのだが......。


「騎士団本部っていってもここからじゃ行けないし」


 確かに期待通り外にはいるんだけど、現在はバルコニー。高さで言うと3,4階ほどの高さだろうか。なんの準備もなしに飛び降りるには危険すぎる。


「なんか空飛ぶ魔法でもないのか?」

「魔法はかなり詳しい方だけど、聞いた事がないわね」


 多分、フライとかだと思うんだけど多分風属性の魔法な気がするのでとてもじゃないが試す気になれない。


「今なんとかしないといけないのはあの魔法の無効化、人質の安全の2つだけど......」


どちらにしてもとても難しい。無属性魔法の様な魔法名だけで発動できる強力な魔法の使い手を相手にその魔法を使わせる前に倒す。うん、無理だ。

人質の方も周りを囲む黒服をなんとかしないといけない上にあの男の魔法からも守りきらないといけない。

それを今、どちらも一瞬でやらねばならないのだ。


「ローラさん、こう、魔法で楽に出来たりとか......」

「無理ね、できたらやってるよ。けど、数が多いのと微妙に距離を取ってバラバラにいるせいで私の魔法じゃ無力化出来ない」


まあ、そうだよな。流石にそこまで上手く出来るとは思っていなかった。だか、俺の場合はその魔法すら戦闘用じゃない闇と同じく攻撃に特化した魔法がない無属性だ。普通に考えれば無理だろう。


そう考えてながらこっそり中を確認すると1人の男の子が泣き出していた。無理もない、こんな状況に子供が耐えられるわけが無い。

黒ずくめの男が近寄り、その男の子を黙らせるためか蹴りを入れる。男の子は痛さでその場にうずくまっていた。


「あのやろう......」


ただじっと見ているだけしか出来ない事に無意識に手を握る。男の子がうざく思ったのかもう1度蹴りを入れようとしたタイミングで誰かが立ち上がった。


「!?あの女の子!」

「ちょ、リア姫!」 


立ちあがあったのはこの国のお姫様だ。なんと言っているか分からないが、恐らく雰囲気から何か抗議してるみたいだった。


すると男の手が動き、勢いよく彼女の頬を引っぱたいた。彼女はその勢いでその場に倒れた。その衝撃のせいか、頭に付けていたティアラがコロンと外れる。


「え?」


彼女の頭のティアラのあったであろう場所には小さめの耳が2つ、そこに存在した。


「魔人......?」

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