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異世界転移!~才能がなくとも活躍できることを証明してやろう~   作者: かずっち
第四章 騎士団長と魔導師長
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*036 空間と念話

*036 空間と念話


「もう無理だ! 早く終われよ、ちくしょう」


 最初の方はまだよかった。たまに話しかけてくる人に「坂本さんと同じ出身で......」と話して、適当に話を合わせるだけだったからまだ良かった。だが......


「なんでダンスなんてやりはじめるんですかねーーー」


 ある程度時間が経つとどこからか音楽が流れ始め、みんながダンスを始めた。会場がたちまち舞踏会のような感じになり、その上品な雰囲気に負けてしまったのだ。

 それに加えて、ダンスをしている男女ペアは付き合ってるのか結婚してるのかは知らんがどこを見ても皆楽しそうにしてるのだ。なにあのリア充空間、俺絶対溶け込めないよ。


 という事で、負け組の俺は会場の窓の奥はバルコニーになっていたので誰にもバレないようにコソコソと避難し、現在に至る。

会場が降り上がってるおかげか俺以外は誰にもいない。てか、会場入りしてからずっとここにいればよかったんじゃ......

 まあいいや。外の景色でも見て終わるまでまっていよう。


 俺は手すりに腕を載せ、下の方を見てみる。


 この城は都市の中心にあるのか周り一面に建物が見える。でかい通りのようになっているところではたくさんの人が行き来していた。って。


「あれ?意外だな。結構明るい」


 カーム村だと夜は部屋から漏れる光とランタンのような小さく光る物置いてるだけが夜の明かりなのでかなり暗い。

だが、今見てるこの街は俺の予想以上に明るい。東京とかの大都会の街並みに比べたら全然だが、この位置から人がちゃんと見えるくらいには明るい。

 よく見ると到る所に街灯のような物が立っており、煌煌と光っていた。あれは元々この世界にあったものなのだろうか?それとも恭子さんの発明品だろうか?


「あれ? 巧君じゃない。こんな寂しい所に一人で。何してるの?」


 声をかけられ、声のした方に振り向く。そこには......


「えーと、副魔導師長、さん?」


 そこには牢獄で会った若い女の人がこれまた綺麗な白いドレス姿で手を振っていた。確か、セシルに呼ばれていたから間違ってないはずだ。


 ちなみにここに連れてきたセシルに関しては誤解とはいえ、あの態度はあまり好きになれない。今日、お城の廊下ですれ違った時に凄い睨まれたし。尊敬してる団長に怒られたのはどんまいとしか言うしかないが、謝るとかしないのかね。俺無罪なのにあんな態度はちょっと腹立つ。


「あれ? 名前教えてなかったっけ? 私はローラ、よろしくね」

「俺は巧です。こちらこそよろしくお願いします」


 お互い、自己紹介をするとローラさんが隣に来て、頬杖をついた。よく見ると頬が少し赤くなっている、ような気がする。


「あの、何かあったんですか?」

「ん? いやね、最近亮さんが忙しくて構ってくれなかったからダンス相手をやってくれてうれしくてね!」


 話していくうち、だんだんとテンションが上がってるのか声が大きくなってる。っておい、ちょっと待て。


「今、亮さんって......」

「ああ、騎士団長兼私の夫だよ。あの人、最近雑務がい」

「俺もう人しんじられねーーーーー」


 え?なに?あの坂本さんが?恭子さんと結婚してるんじゃないの?まさかの愛人?あんな立派そうな人が?この世界で努力して凄そうな役職をこなしてるあの人が?

 俺が頭を抱えてぶつぶつと「え?まさかそんな、いやいや......」と言ってる姿を見たローラがきょとんとした顔になった。


「今、なんか私、変な事いった?」

「いや、いやいやいや。だってあんな仕事できますって感じの坂本さんが二股ですよ?恭子さんが知ったら、ってあの人引きこもってるから気がつかないじゃんか!」


 俺がローラさんに言いながら、自分でつっこんでると俺が何が言いたいのか分かったのかあーと言いながらポンと手を叩いた。


「そっか、巧君も日本って国から来たんだっけ?じゃあ知らないか」

「え?知らないっって何が?」

「この世界は一夫多妻制で、何人と結婚していてもおかしくないんだよ?」


 なんでも、この世界は魔獣なんていう危険災害クラスの化け物がそこらにいるせいで毎年被害者が多くでる。そこで国は一夫多妻制度を採用し、少しでも人口を増やそうと試みてるらしい。


 ここは地球と違って異世界。そういう制度なんかもそりゃあ違うよね。けど知らなかったとはいえ、坂本さんを最低二股野郎と思ってしまったのは申し訳ない。心の中で謝っておく。すいません......


「て事は......他にもいたり?」

「いや、恭子ちゃんが本妻で私が第二夫人だよ」


 よく見るハーレム展開、という風になってはいないらしい。

 いや、別にいいと思うよ?ちゃんと愛して、養っていけるなら俺は別に反対ではない。少し、少しだけ......リア充め、○ねばいいのに。○ぜろ。


「どうしたの? 凄い黒い顔してたけど」

「ああいや、まだこの世界について分からない事が多いなって」


 顔に出てたのか、ローラさんに慌てて返事をする。けど、言い訳ってわけでなく、本当に思ってた事だ。村長や坂本さんの話を聞いてそれなりに理解したつもりだが、まだまだのようだ。本格的に本でも買って勉強しようかな。


「ははは、亮さんも恭子さんも最初は苦労してたみたいだよ」

「まあ、元いた世界と全く違うんだから誰でも苦労しますよ」


 ほんと、リーナや村長、ダスティンみたいな親切な人ばかりでなんとかなったが、これが誰にも頼れない状況だったらどうなってた事か......俺の場合、確実に餓死してたな。


 あ、そうだ。ちょうど目の前に本人達の次くらいに知ってるであろうローラさんにどんな経緯で今の役職を得たのか聞いてみよう。


「えーと、大きな事で言うなら亮さんは王暗殺計画の阻止、大型魔獣の討伐、大物賞金首を逮捕とかで騎士団長に出世して、恭子さんは色んな魔法の解明、そして様々な魔道具の開発や量産で魔導師団長になってた、って感じですかねー」


 恭子さんの方は、アイリから聞いてたけど坂本さんの方は初耳だ。それにこれが1年半前の話なのだ。大きな事でそんな一本アニメや漫画にできそうな話がごろごろ出てくるんだから、他にもやったに違いない。あの人の日々濃すぎやしないか?




「さて、パ―ティーに戻るとするよ」


 ローラさんと坂本さんと恭子さんについて話(後半から惚気話気味になってたが)を聞いていると、いつの間にかダンスが終わったのか、先ほどまで聞こえていた音楽が止まっていた。かなり長い間話していたのかもしれない。


「すいません、パ―ティー中に」

「いいよいいよ、話せて私も楽しかったし」

「俺もですよ、坂本さん夫婦の事よく知れましたし」


 本当によく分かった。この人の身内補正も入っているだろうが、あの人達の凄さがよく分かった。

 一瞬、本当に異世界補正とか入ってないか?と思いたくなった......俺にもそんな風にできる力ありませんかねー。

 

(...くみさん、巧さん!)


 そんな事を悲しく思っていると、どこからか声が聞こえた。今の、アイリの声に聞こえたんだけど。

 きょろきょろと周りを見るがここには俺と、ローラさんしかいない。あれ?


「どうしたんだい?急にきょろきょろしだして」

「ああ、いや。今女の子の声が聞こえませんでしたか?」

「いや、何も聞こえなかったけど......」


 けど、確かに名前を呼ばれたような気がしたんだけど。ついに幻聴が聞こえるほど疲れたのだろうか。


(聞こえたなら私の事を思い浮かべながら≪テレパシー≫と唱えてください)


 またアイリの声がきこえ......いや、これ頭に直接聞こえるっていうか、耳から聞こえてる感じがしない。

 とりあえず言われた通りにアイリの顔を思い出しながら。


≪テレパシー≫


と唱えてみた。が、この魔法の効果を知らないので発動したのかいまいち分からない。


(今の無属性魔法か?テレパシーって事は、相手の心に伝えるとかか?)

(!?良かった、繋がった!)

(え?今のアイリの声。今の伝わったのか?)


 どうやら俺の考えていた意味と同じ効果のようだ。顔をイメージしながらって言ってたし、どうやら伝える相手を思い浮かべながら唱えるとその相手に話しかける事ができるようになるみたいだ。俺が魔法を発動するまで伝わってない事から相手も《テレパシー》を使わないと一方的に伝わるようになるみたいだ。


(巧さん、今どこにいますか!)

(会場の外のバルコニーにいるけど......)

(じゃあ中から見えないようにそっと中を見てください!)

(中を?)


 俺は言われたとおり窓の脇の方に歩みより、そーと顔を動かして中を見る。


 そこには剣などの武装をした黒服の男達が会場の人を一か所に集めている最中だった。どこからどうみても先ほどまでの楽しいパ―ティーの様子には見えなかった。


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