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異世界転移!~才能がなくとも活躍できることを証明してやろう~   作者: かずっち
第四章 騎士団長と魔導師長
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*031 誤解と理解者

*031 誤解と理解者


 突然、団長らしき男が怒り出したのでびっくりしてセシルの方を見る。彼女もなぜこの人が怒ったのか分からないようでおろおろしていた。


「セシル、私が言った頼みを一回言ってみてくれ」

「は、はい。「カーム村にいるはずの巧という少年を連れてきてほしい。持ち物でお前が見たことない物を持っているのなら絶対に連れてきてほしい」と......」

「そうだ、それがなんで連行という形になっているのだ!」

「ですが確認したところ、カーム村にそのような人物はいなく、実際に行ってみれば見たことない怪しい物をもって、その村にいたのです。なにか重罪人などでは......」

「俺がいつ、そんな事を言った! ったく、お前はすぐ固く考えるから......」


 セシルの言葉を聞いて、団長らしい男の人が深く椅子に腰をかけ、深いため息をした。


 えーと、つまりあれか?


 この人がセシルに連れてきてって頼んだら深く考えすぎて逮捕して連れてくるって感じに解釈してこうなったって事なのか?

 そうだとしたらとりあえず死刑!なんて事にはなさそうだから安心するが別の悩みが起きる。


 なんでこの人は俺を呼び出したんだ?


「もう良い、詳しく話さなかった私にも責任がある。もう下がって構わん」

「は、では失礼します......」


 男の人がそう指示すると落ち込んだ感じのセシルが部屋を出て行った。まあ上司に叱られたのだから仕方ないか。


「すまなかった、こちらの手違いで酷い目にあわせてしまって......」

「ああいえ、そこまで酷い事はされてないので大丈夫ですよ」


 実際、眠らされたのと恐喝されただけだし。あ、牢獄であったあの女の人が大丈夫って言ってたのはこういう事だったのか?セシルという女騎士はそこまで固い人なのか?


「それよりなんで俺なんかを呼び出したんですか?」


 最初から言っているが、犯罪などもちろんしていない。

 目立った事もした覚えがないしわざわざこんな所に呼ばれる理由が......理由が......あれ?最近目立った事してないか? 俺。


「実は君のいる村の村長に魔兵の事を聞いてね、そこで君が倒したと聞いてこうして呼び出したわけだ」


 やっぱりその件か。確かに最後にあれを壊したのは俺だけど......て事は。


「その時の詳しい状況を話せばいいんですか?」

「いや、それはいい」


 あれ? 違った。こういう時ってその場にいた人に詳しい事を聞くもんじゃないのか? そこら辺を聞いてみると村長と一緒に来たマリンが既に話したらしい。


「じゃあなんで俺を?」

「ああ、その前に......君の名前は、加藤巧、で間違いないんだな?」


 団長さんが真剣な顔をして俺に確認してきた。なんで俺の苗字を? とと思ったがそういえば村長には話していたな。そこから聞いたのだろう。


「はい、確かに俺の名前は加藤巧ですけど......」


 そう言うと団長さんの顔が凄く嬉しそうな顔をした。え? なんで???


「そうか、ついに......おっと自己紹介が遅れたな、私の名前は坂本(さかもと)(りょう)。君と同じ、日本人だ」


 え? え? え?


「ええぇぇーーーーー」


 俺は驚きのあまり、この世界に来てからまた一番大きな声で叫んでしまった。




 とりあえずその格好と何か食事でもしながら話そう、という事で汚れた服から貸してもらった高そうな服を着てソファに座る。すごい落ち着かない。身の丈に合わないってこの事なんだろうな。

 しばらくするとメイドさんがおいしそうな料理を持ってきた。てか、この世界にもメイドっているんだな。


「まずは君はお腹一杯食べてくれ。その顔色じゃ長い間何も食べてなかったろう」


 まあ確かに村にいた時もお昼抜きで作業して眠らされてここにいるからな。そのせいで顔色も悪くなったに違いない。


「はい、じゃあいただきます」


 近くにあったサンドイッチを手に取り食べる。さすがお城の料理!と言いたくなるほどおいしいのでどんどん手が進む。


「はは、そんなに慌てずとも構わないよ。ではまずは私の境遇から話そうとするかな」


 ズズズとメイドさんが一緒に持ってきたお茶を飲みながら坂本さんは話し始めた。


 坂本さんは大学の登山サークルに所属する普通の大学生だった。

 そのサークルは活発で国内の山だけでなくさらに険しい山を登るため海外の山にも登るらしい。その海外の山に挑む途中、運悪く吹雪が発生し、サークルメンバーとはぐれてしまった。

 近くの山小屋に避難し、吹雪が収まるのを待ってると突如地震が起きた。驚いて周囲を確認するために外に出るとそこは吹雪で視界が真っ白の山でなく見渡す限りの草原に、この世界にいたという。




 その話が終わる頃には出された料理を食べ、お腹一杯になっていた。ごちそうさまでした。さて、俺の方も話すか。

 俺はあの日起きた事をできるだけ思い出しながら坂本さんに話した。


「なるほど、君も大変だったんだな。それに、やはりあの地震が影響しているのか......」


 場所は違えど、どちらのパターンでも地震が共通として起きているのだ。これは偶然などではないだろう。俺も坂本さんと同じ考えだ。


「それにしても私ら以外にもこの世界に、しかも日本人がくるとは......やはり色々準備していてよかったな」

「準備?」

「私の知り合いにできるだけ「名乗った時に名前以外にも何か名乗る人間がいたら私に教えてほしい」と言ってあったのだ。今回だと君のいるリブレスさんが教えてくれた」


 そんな事をしていたのか、いつか来るかもしれない同じ境遇の人のために。それを聞いて初めて村長に会った時の反応にも納得がいった。俺が苗字込みで自己紹介した時に反応したのは該当する人間が現れたからだろう。ってあれ?


「さっき私ら、って言ってませんでしたか? もしかして......」

「ああ、私以外にももう1人一緒にいた人がいてね。ここにはいないがこの城で働いているよ。明日にでも紹介しよう」


 まじか、て事はこの世界には俺を含め、3人も日本人がいるのか。なんだろう、自分以外にも同じ境遇にあった人がいるって分かるとすごい安心感が出てきた。そんな事を思っていたら顔に出ていたのだろう。


「私も嬉しいよ。私の言う事を理解してくれる人が現れた事に」


 そう言うと坂本さんが立ち上がり手を差し伸べた。


「これからも同じ境遇者同士、仲良くしてくれるとありがたい」


 俺はその言葉を聞いて嬉しくなり差し伸べた手を両手で握った。


「俺もです! これからよろしくお願いします」


 俺は今日、こうしてこの世界で唯一といえる俺の理解者と出会った。


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