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*029 銃と試行

*029 銃と試行


 翌日、俺はアイリを連れて村の外の草原に来ていた。村の周囲は近くに子供たちが遊んでた川があるだけで後は何も無いただの広い草原だ。これから作れるか試すものはあまり見られると不審に思われそうなので来たのだが、これだけ広いとここで昼寝でもしたくなる。


「巧さん、お仕事サボって何をするんですか?」

「サボりじゃないから! 仕事がないだけだから!」


 アイリの言葉を慌てて否定する。いや、だってどれもこれも技術だったり魔力となにかと俺に無いものを要求する物ばかりなのだ。

 唯一できそうな運搬系の依頼は馬とか使えないから時間かかりすぎてダメだし......とりあえず俺が何をするかアイリに説明するか。


「できる仕事がないから、今から昨日教えてもらった魔法の練習でもしようと思ってさ」

「《クリエイト》ですか?」

「そうそう、それでどんな物作れるのかとか魔力がとの程度減るのかとか確認しとこうと思って」


 《クリエイト》は魔道具制作の他にも無機物ならなんでも作れる。それがどこら辺まで自由に作れるのか試してみたい。

 まあ純粋に適性魔法を使いたい、というのもあるが。


「なるほど、確かに魔法の経験を積むのも今後のためになりますからね。何を作るとか決めてるのですか?」

「ああ、銃を作れるのか試そうと思う」


 こういう世界で現代兵器が使うのは反則だろうが魔獣や魔兵なんて物を見た後じゃそんなこと言ってる暇などない。使えるものは使わないと、何があってからじゃ遅い。

 当然、銃なんて物はこの世界に存在せずアイリが凄い勢いでどんなものか説明を要求されて大変だった。あれって弾丸を飛ばす飛び道具って以外なんて説明すればいいのだろう?


「よし、じゃあやるか!」≪闇に転換 銃 クリエイト≫


 俺は魔力を転換し、作りたいものを指定して魔法を発動した。『即席魔法(インスタントマジック)』と同じように光が集まり形になっていく。


 数秒もすると光が収まり、目の前にイメージしてた黒光りの銃が出来上がっていた。


「お、成功した」

「なんですかこれ! 見たことない......これが銃ってものですか?」


 アイリが出来上がった銃を見てすごい興奮し初め......って銃を手に持たないで!危ないから!


「ダメだよアイリ、銃は危ないから。ほら、俺に渡してくれ」

「あ、ごめんなさい。つい......けど、これ見た目の割に案外軽いんですね」

「え、そんなわけ......」


 ないはず、と言おうとしたがアイリから銃を受け取ると予想に反して軽かった。あれ?こんな軽いもんなのか、銃って。


「けど見た目的には成功してるしなー」


 案外、こんな重さなのだろうか。実物なんて当然持ったことなどないので判断できない。とりあえず撃てるかどうか、試しに誰もいない事を確認して近くの岩を狙う。


「アイリ、でかい音出るかもしれないから耳ふさいでろよ」

「はい、分かりました」


 アイリが耳を手で覆い、耳を塞いだのを確認してから俺は銃の引き金を引いた。しかし、引き金は指を掛けて引こうとしたら固くて全く動かなかった。あれ?


 俺がめいいっぱい力を入れるが全く動く気配がない。どうゆうことだ?


「あの、巧さん。もう塞ぐのやめていいですか?」

「あ、そうだったな」


 俺は手の動きで手を離すようにジェスチャーを送り離させる。


「巧さん、もしかしてその銃というものは複雑な構造なのですか?」

「え?まあ確かに複雑だけど......」

「でしたら、《クリエイト》で一つ一つパーツを作って自分で組み立てないと作れませんよ」

「マジか......」


 《クリエイト》で作れるのは正確には自分のイメージした単純な無機物らしい。今のように銃のような複雑な物を作るのならアイリの言う通りにしなければいけない。

 今は銃という外見しかイメージしてなかったので中身が空っぽの物ができたのだろう。それなら軽いのにも納得だ。


「その銃のパーツがどんなものがあるかとか分かります?」

「いや、流石にそれは分からないな」


 よくドラマや映画で見たことはあるが、アレを分解した中身とかは見たことがない。もし見たことがあっても何がなんのパーツかなんて分からないだろうけど。


「じゃあ銃は無理かー」

「ですね、そのパーツが分からない事には作れないので諦めた方がいいと思います」


 うーん、異世界に現実のものを持ち込めたら結構便利だと思ったんだけどなー。他に何かこの世界にあったら便利な物......あ。


「自転車、いや魔法なんて物があるからバイクもどきもがつくれるのか?」


 あれも確かに色々なパーツで出来てるが、銃と違って毎日日常生活で見てたので構造はなんとなく分かる。漕ぐ部分なんか魔法で回転させる機構なんて作れれば、バイクみたいなのができるかもしれない。


「巧さん?」

「なあアイリ。俺の物作りを手伝ってくれ。上手く行けばお前が今まで見たことない乗り物が出来るぞ」

「ホントですか! やります! と言うよりやらせて下さい!」


 見たことないって当たりで凄い過剰に反応したアイリが手伝いに応じてくれた。ちょろい。

 

 よし、魔法の方も詳しい妖精族が手伝ってくれるし、いっちょやってみるか!




「出来たーーーーー」


 俺は腕を伸ばし、アイリは目の前のものにキラキラと目を光らせて叫ぶ。俺とアイリの目の前には作っては組み立ててを繰り返して完成したバイクもどきがあった。


 タイヤやフレームなどを作った後、アイリに魔力を流すと後輪が回転するという機構を作ってもらった。なんでも『即席魔法(インスタントマジック)』の理論の応用で魔石を《サイクロンスピン》という風属性の魔法を覚えさせた後、魔力を蓄える用の魔石を準備してそれと繋げて......と難しい話が始まったので後は理解出来なかったが。

 簡単にいえば蓄えた魔力を流し込むと後輪が回転、前に進みハンドル操作で左右に進む事ができるという物だ。

 欠点があるとすれば止める時、魔力を流すのをやめて魔法を停止させ、その上でタイヤをブレーキで止めるという一連の動きが長く、止まるまでに時間がかかる事らしい......


 まあそのへんも慣れれば問題ないだろう。これで元いた世界でいうバイクもどきの完成である。形的には電動自転車をごつくした感じだからかっこ悪いな。こりゃあ改良の余地がある。


「凄いですね! まさかこんな物ができるなんて。巧さんは何者なんですか?」

「別に普通の人間だよ。さて、走らせたいところだけど......」


 使ってみてなんとなくだが《クリエイト》は作る物の大きさとかで魔力消費量が変わるみたいに思えた。これを作るまでにかなりの回数の魔法を唱えたせいでとてもじゃないけどこれを十分に走らせるほどの魔力はないだろう。

 まだ試してないので分からないが燃費次第では一瞬で俺の残ってる魔素保有量が無くなるかもしれないし。


「ですね、じゃあまた明日。試してみましょう!」

「だな! そて、そろそろいい時間だし帰るか」


 既に空は赤く染まり夕暮れ時だと物語っていた。お昼ご飯を食べずに夢中で作ってたせいでかなりお腹が空いたし。今日のご飯はなんだろうなー。そう思いながらバイクを押して帰る。


 しばらく歩くと村の入口が見えてきたのだが何か騒がしい。馬車?のような物が見え、村の人が鎧姿の人と話している。


「何でしょう、あれ」

「なんだろうな、この時間帯だとみんなご飯食べに行くし......誰か来たのかな?」


 とりあえずそこを通らないことには村に入れないのでその人だかりに近ずく。


「......から、どんな罪をしたのか教えてよ、じゃなきゃ納得いかない」

「騎士団長からの命令だ、これ以上引き渡さないと言うのなら貴様らも一緒に捕らえるぞ」


 話していたのはリーナと鎧姿の若い20代くらいの女の人だ。話してる感じからあんまりいい感じの空気じゃないみたいだけど......


 俺が近ずく足音で気がついたのか、鎧姿の女の人がこっちの方を振り向いた。


「貴様は誰だ」

「え、えーと巧って言います。入れないのでそこ少しどいてもらっていいですか?」

「なに? 貴様がか?」


俺の名前を聞いてか、鎧姿の女の人の目が険しくなった。え?なんで?どういう事だ?


「巧、貴様を今から騎士団長命令で拘束、連行させてもらう。貴様に拒否権はない!」

「はあ!? どういう事だよ、意味分かんねえよ!」


 騎士団ってあれだろ。この村の若い人が志願したっていうこの国の軍事組織の。そんな所になんで俺が???


 俺が行動するより早く、近くにいた別の鎧姿の人達に両腕を拘束される。って......


「いたたたたっ、やめ、やめろ!」


 凄い勢いで締めてる!クソ痛てえ。俺が足をジタバタ動かすが全く抜ける気配がない。それどころが、動くだけで痛みが!


 拘束された俺に鎧姿の女の人が歩み寄り、俺の顔を覆い隠すように手を近ずけ、手を広げる。


《闇に転換 対象に深い眠りを スリープ》


 なんかの魔法を唱えたと認識する頃には急に強い眠気が襲ってきた。俺は足を動かすことすらつらくなり、目も開けてられなくなった。俺は目を閉じ、意識が遠くなっていくのを感じた......

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