*027 不思議と再診断
*027 不思議と再診断
あの後、アイリに頼んで彼女が寝静まった後(ずっと本を読んでたので深夜2時ほどになったが)に例の3冊を読んだ。
タイトルと出だしが見たことある感じだと思ったのでまさかとは思ったが......読んでみると内容が違ったり、登場人物がこの世界の魔法を使ってたりしてたのだ。あれ?
「うーん、たまたまタイトルと話の構成が似てたのか?」
だとしてもアイリがおもしろそうと手に取った3冊がどれも俺のいた世界の本に似てるってありえるのか?偶然にしてはできすぎてるし......
俺は作者がどんな人か気になり、本の表紙を見る。
「あれ、作者名ってどこだ?」
背表紙にはタイトルしか書いておらず表紙や本の中をペラペラめくるがそれらしき名前が見つからない。この世界だと作者の名前を書かないのか?
そう思ってアイリに進められた本を見るがどれもどこかしらに作者名が書かれていた。どういう事だ?
あーでもない、こーでもないと悩んでたら寝る気になれずこの世界に来て初めての徹夜をしてしまっていた。
「そりゃあ巧、それは騎士伝シリーズの本じゃないかい?」
さんざん悩んだ末、知ってる人に聞けばいいんじゃん、と気がついた俺はさっそくルミエルさんに本を見せて聞いていた。
「騎士伝? ていうと騎士団の事ですか?」
「ああ、騎士団で流行った話をまとめて本にしたって物でねー。今王都なんかじゃ、かなり人気らしいよ」
なるほど、だから作者はいないのか。やはり本当に偶然なのだろうか?うーん、なんか納得いかないなー。
別に物語が似てるとかならまだ分かるのだ。ただ、タイトル、絵の構造、名セリフ、話の構成などいろいろと似すぎているのだ。異世界だからといってここまで発想が同じとは思えないんだど......
「それはそうと巧、リサが呼んでたよ」
「リサさんが?」
「昨日の夜、アイリちゃんの事を話したらすごい喰いついてきてね。明日来てって伝言を頼まれちゃって」
それ俺じゃなくてアイリだけでいい気が......まあお互い初対面だし仕方ないか。
「わかりました、アイリが起きたら行ってみますね」
「ああ、頼むよ」
その後、アイリが起きて朝ごはんを食べたりした後に道具屋に向かった。
「なんで呼ばれたのでしょう?」
「さあ? 多分妖精族だからとかじゃないかと思うんだけど」
普通の人と違う点といえばそれしかないし......それだとしてもなぜかは分からないが。
お店の中に入るとせっせといろんな道具を出して忙しそうにしてるリセさんがいた。
「リセさん、こんにちはー」
「あ、巧さん。とそこにいるのがアイリちゃんね。もう少しそこで待ってて、これの起動だけしておきたいから」
チラっとこっちを見たリセさんが忙しそうにしながらそう言った。なら待つとしようか。
俺は近くにあった椅子を自分の近くまで持って来て座る。アイリは床に無造作に置かれた道具なんかを興味津々に見てる。
「これは、『追加書』それにこれは『魔法消去』!すごい、こんな物まであるなんて」
アイリが一見何も変哲のない本を手に取ったり、よく分からん文字がびっしりと隙間なく書かれた札を見たりしてる。
「そんなに興奮するような物なのか?」
「はい、こういう消耗品の魔道具って今すごい少ないんですよ。私も久しぶりに見ました。それにこれかなり強力な物なんですよ」
「リセさん! そんな貴重そうな物をぞんざいに扱うなよ!」
本当に大丈夫だろうか、この人。
「おまたせして申し訳ありません。こちらから呼び出しといて」
「いや、それはいいんですけど......」
前来た時も色々占いなんかに使うのであろう道具がかなりあったが、今は机や床にすごい色んな物が置かれている。
いったい何をしていたんだ?
「何か探し物でもしてたんですか?」
「いえ、今日使う道具を出してまして」
「これ全部ですか?」
「はい、けどこれでもかなり少ない道具の数なんですよ?」
「まじか......」
これでもまだ少ない方なのか、見た感じ30個くらいよく分からない物があるのだが。
「でね、実は妖精族のアイリちゃんに頼みたい事があって」
「私、ですか?」
「そう、実は今ね、王都から『即席魔法』って魔道具を製作するよう依頼が来てるんだけどその量が多くて......私の保有量じゃ納期まで間に合いそうにないから手伝ってほしいんだ」
「なるほど、それなら私でよければお手伝いしますよ」
リセさんの頼みをアイリは快く承諾した。この世界にも納期に追われるってあるんだな。
「で、『即席魔法』ってなに?」
当然の如く、何それ?状態なのでアイリに説明を求める。
「名前の通り、詠唱や魔力を使わず速攻で魔法を使える魔道具です。小さい魔石にここにある道具とかを使って魔法を読み込ませて砕けば即発動できるようにできるのですよ」
「それって適性とかなくても使えるのか?」
「使えますよ。ただ、初級魔法の威力が弱くなったやつなので主力武器にはあまりお勧めできないですけど」
ぐ、ばれてたか。魔法が使えるなら使ってみたいけど、威力が低い上に使い捨てってところだからな。
やっぱ無属性魔法だけで我慢するしかないか。便利なんだけど、属性のある魔法みたいに派手じゃないのがねー。
「じゃあさっそく作業しよっか。アイリちゃんは何の適性があるの?」
「火と闇以外ですね。闇の適性がないので、ここの道具をお借りしますね」
「おけー、じゃあ初めに《アクアカッター》からお願いしていい?」
「分かりました」
アイリがいくつかの道具を手元に持ってきて作業を始める。これ俺いると邪魔かなー。
そう思って椅子を持って外に出て終わるまで待つことにした。
しかし俺が椅子を持って外にでようとしたらアイリに止められた。
「巧さんは手伝わないんですか?」
「え? だって俺魔素保有量も魔法適性もないからなにもできないぞ?」
「え? 確かに魔素は若干少ないみたいですけど適性なら闇属性をお持ちじゃないんですか?」
「え?」
「え?」
俺とアイリの顔がきょとんとした顔になる。確かに俺はここで診断してもらった時、そこの壁にかかってる鏡でちいさい無色なもやもやが出て、適性なし、魔素保有量も少ないと診断されたのだが......
その診断をやった本人のリセさんも首をかしげていた。
「アイリちゃん、巧さんはこの村に来てからそこの『魔鏡』で見たけど、オーラは無色だったわよ?」
「そうなんですか? けど巧さんの漏れてる魔素が奇麗な紫色に光ってるように見えるのですけど......」
「アイリってそんなとこまで見れるのか?」
「はい、妖精族は魔力や魔素には敏感なので。それにしても無色だったのですか。うーん気になりますね。少し調べてもよろしいでしょうか?」
「ああ、まあいいけど」
俺が許可するとアイリが俺の手を握り目を瞑る。
《アナライズ》
何かの魔法を発動したのだろうが、俺や周りには何も起こらない。何の魔法だ?
それから数秒で目を開けたアイリが手を離し不思議そうに言った。
「おかしいですね、巧さんの魔素保有量まだ3分の1程度しか溜まってませんね。けどここ数日魔法なんて使ってなかったし......私がいない間に使いました?」
「いや、使った覚えはないけど......」
確かに魔法は便利なので移動の際、《チェンジ》を使いたいと思った時はあるが俺の場合、普通に歩くよりはるかに疲労するので使ってない。魔素が減るなんてありえないはずなんだが。
「え? どういう事なの?」
「分かりません。適性は魔法で調べたら確かに闇属性の適性があるんですけど。『魔鏡』で写らなかったのはわかりません。なんででしょう? うーん」
どうやらさっきの魔法《アナライズ》はその人の適性や保有量を調べる事ができる魔法らしい。
けどなんで適性があるのだろう。それに魔素もつかってないのにMAXじゃないのも気になる。
なんかここ数日でどんどん謎が増えてきたな。気になるなーーーーー。