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*025 押しつけと監視

*025 押し付けと監視


「はあ、できそうな依頼がねぇ......」


 俺は吹雪の机に突っ伏していた。いままでやってた依頼は森に行って採取や討伐だったのだがリーナが言うにはあの魔兵のせいで魔獣の縄張り争いが活発しており、現在森は殺伐としているらしい。当然、危険度が上がっており、しばらくは森は入れないのだ。


 そのせいもあって俺は今までやってたような依頼ができず前々から気になっていた村の中での依頼をやろうと聞いて回ったのだが......



「隣の村と物々交換に向かって欲しいかな」

「魔導書の翻訳のお手伝いをしてほしいかな」

「武器の製作の助手をしてくれ」

「子供に魔法を教えてほしいの」

「田んぼや畑で力仕事してほしい」......etc


 と上から順にここ以外の村なんて知らない、そもそもこの世界の文字が読めない、武器など作った事ない、魔法は無属性魔法数個しかしらない、一週間くらい前まで普通の高校生だった俺に力仕事をぶっ通しでやるなどできない、と色んな理由でできなかった。


「巧さん、元気出してください。もしかしたら他にも巧さんにできる依頼があるかもしれませんよ?」


 机の向かいに座るアイリが励ましてくれる。うーん、そもそも俺にできる仕事ってなんだろう?


 なぜかよく分からないのだがこの世界の人の身体能力は俺のいた世界の人と比べると平均的に見てもすごい高い気がするのだ。リーナやラウルみたいな何でも屋はもとより、ラモスさんやラーザさんも俺がけっこうぎりぎりで持ってた物をヒョイっと持ったりしてすごいびっくりした。

 やっぱり機械なんて便利な物が存在しない世界だからみんなこんなにたくましいのだろうか。


「巧さん、なにか得意な事とかあるんですか?」

「得意なことかー。あんまり思いつかないな」


 そもそも勉強や運動も得意不得意なくなあなあでやってたからなー。得意と言いきれる物がない。多少目がいいのと手先が器用なのでプラモデル作るのがまあまあ上手い程度だろうか。

 

 まあこの世界じゃ役に立たんが。


「なんか俺にできそうな依頼ないかなー」


 そう呟くと吹雪のバタ戸がバンと派手に音を立てて開いた。驚いて見るとハアハアと凄い息を切らしているリーナがいた。おいおい、どうした?


「いた! 巧、あなた今依頼受けてる?」


 リーナが俺を見つけるや否や、そんな事を聞いてきた。


「いや、受けてないけど......」

「ちょうどいい! 巧にお願いしたい依頼があるのよ!」


 リーナがドスドスと近ずいてくる。ちょ、近い。なんでそんな焦ってるんだ?


「お、落ち着いて。それってどんな依頼なんだ?」

「それはね、こど......」


 リーナが説明しかけた時、再びバタ戸がバンと開かれた。


「あー、やっぱりここにいたー」


 見ると小学校低学年くらいの男の子が入ってきていた。


「ひいぃ!」

「はやく川に遊びにいこーよー」


 男の子が脅えてるリーナを引っ張る。どういう状況?


「ちょっとガスト! やめて、引っ張らないで! 私依頼があるから行けないけどこの人が面倒見てくれるから!」


 リーナが慌てながら俺の方を指を指す。ちょ!俺何も聞いてない!


「おい、俺まだなにも......」

「誰にでもできる内容だから! じゃあ私はこれで、じゃあ!」


 リーナが男の子の手を離し、すごい速度で吹雪を出て行った。


「なんであんなに嫌がったんだ?」

「さあ、私にもわかりません」


 誰にでもできるんだったら自分でやればいいのにな。てかどんな依頼内容なんだ?


「あの、お兄ちゃんが連いてきてくれるの?」


 リーナにガストと呼ばれていた男の子が俺の裾を引っ張って聞いてくる。


「いや、俺まだ何も聞いてないんだけど......どこに行くの?」

「村の近くを流れている川にみんなで遊びに行くの」

「川?」

「うん、4週に一回くらいで大人に変わってリーナお姉ちゃんとかが連いてきてくれるんだけど......」


 あれ?本当に簡単じゃん、なんであんな嫌なんだ?


「巧さん、どうするんですか?」

「俺にも出来そうだし詳しく内容を聞いてからだけど、やってみようかな」


 そう言うとガストが凄く嬉しそうにして依頼主の所に案内してくれた。うーん、何か裏でもあるのだろうか?この依頼。




 ガストが連れてきたのは孤児院と呼ばれる見た目が修道院みたいな造りの建物だった。そこの管理者のレイシャさんというおばあさんがこの依頼の主だった。


 内容としては俺が最初この世界に来たときにいた川で水遊びをするのを見守るという事だった。その際、もしも魔獣が出てきたら退治するが魔獣は森から滅多に出てこないのであまり心配しなくていいとの事だった。

 要はもしもの時の用心棒ってところらしい。報酬は銀貨5枚とアルバイト並の価格だったがこれ以外に受けれる依頼を知らないので受ける事にした。


「えい!」「やったなー」「まてー」「どっちが長く潜れるか勝負だ!」


 そして現在、50人くらいの子供を連れて絶賛目の前の川で遊んでいる。みんな元気だなー。ちなみにアイリも遊びたがってたので水着を買うお金を渡して水着を買ってきてもらって子供たちと混じって遊んでいる。


「こうやって定期的に孤児院と村の子供たちをまとめて外で遊ばせないといけないんですよ」

「まあ、ずっと村ってのもつまらないでしょうし、こういう機会も必要でしょうね」


 俺とレイシャさんは木の木陰で腰を下しながらはしゃいでる子供達を見ながら話していた。


「にしてもなんでリーナはこの依頼やりたくなかったんだろう?」

「あの子はこうやってじっと見るなんて事ができないのよ、なにか作業をしながらとかじゃないと落ち着かなくて」

「あー、確かに」


 確かにリーナって常に忙しくしている感じがするな。じっとする事ができない性格なのだろう。うん、納得。


「まあ、あの子がそんな性格でいつもがんばってくれてるから村の生活もなんとか回ってるんだけど」

「はい、もっとがんばります......」


 俺はげんなりとしながら答えた。やっぱり文字とかこの世界の事をもっと知る必要があるな。うーん、大変そうだなー。

 俺ははしゃいで遊ぶ子供を見ながらそう思った。


 その後、夕方近くまでずっと子供達ははしゃぎながら遊んだ。身体能力高いな、と思っていたがもしかしたら体力的に子供に負けてるかもしれないと思ったのは秘密だ。鍛えよ。

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