*023 事後と妖精
*023 事後と妖精
あの後、俺は魔法の連続使用による負担と魔素を使い果たした事による疲労感でまた倒れ、起きたのは2日後の昼過ぎだった。
あの後、北と東の方を調査していたリーナ達が俺らと同じで《エクスプロージョン》の音を聞いて現場に向い、到着したのは戦闘が終わって数分後だったらしい。
あの後、みんなで俺や倒れた人を運び、ローブの男も拘束して村に連れて行ったらしい。
「で、今村長が何人か連れてその男を王都に引渡しにいったわ。」
「まあ、確かにあいつレイン王国の関係者みたいだしそうなるのかー」
こうして吹雪の酒場でリーナに事後の事を聞いていた。魔兵に似た物を操っていたのとマリンの証言でレイン王国の敵兵士、いやあれは魔道士か?
まあレイン王国の者として王都で事情聴取や拷問なんかをして、巨兵の事を吐かせるらしい。まああれだけの事をしたのだから当然だろう。
「あの男、古代魔装を持っていたからかなりの実力者じゃないかって村長が言ってたわ。よく倒せたわね」
「まあ、あいつが挑発に乗る人間だったからね」
もしあの時、ナイフを弾かれればあんな事はできなかった。あんな風に煽った後に、あんな的外れの攻撃をしたもんだから油断して何もしなかったのだろう。
「それよりそいつの持っていた古代魔装ってどんな効果だったんだ?」
「指輪の形をしていて初級魔法だけだけど全属性の魔法が使えるようになるっていう古代魔装だって」
なるほど、だからあの男色んな属性魔法を使えたのか。あれはうざかったなー。あれのせいでマリンがいなければ死んでたし。
「まあ、しばらくは安静にする事ね。森もしばらく入れないし」
「え? そうなの?」
「魔獣が他のところから着々と移り住んできてかなり激しい縄張り争いがされているの。あの巨兵?
って奴のせいであの辺り一帯が木が焼けて無くなったせいで、魔獣の活動範囲が狭くなってどこが危ないかなんて分からなくなったし」
「あー、そうなってるのか」
燃えてる木はリーナが消火したが時間が経っていたせいでかなり燃えてしまったらしい。その上に今までと違う魔獣が住み着き始めたのだから、もはや別エリアとなったに違いない。
「魔獣が狩り尽くされてたのはやっぱりあの男が?」
「多分ね、魔石の代わりに埋め込まれていた球体のものを調べたら、闇属性の魔法《ドレイン》が付与されていたわ」
「《ドレイン》?」
「相手の魔素を奪う魔法。おそらくだけど魔獣を片っ端から倒してそこから魔素を取り込んだんじゃないかしら?」
確かにあれだけのものを動かすとするならかなりの魔力が必要だろう。あいつも半永久的にとか言ってたけど、おそらくその《ドレイン》を供給源にして動かそうと考えていたに違いないな。
最初の魔力は魔獣から、十分貯まったら今度は人間に、そして村や都市に攻め入るつもりだったのだろうか。
「それで......それについて巧に少し相談があるんだけど......」
とリーナが困った顔して聞いてきた。
「なんだ?」
「実はその球体を調べた時にこれが中から出てきたの」
リーナが布で厳重に包まれた物を取り出した。その布を解いていき、中から大きさ的にソフトボールより少し大きい位の緑色のきれいな玉がでてきた。
「なにこれ?」
「これは『魔封じの石』って言って普通は発動仕掛けの魔法を封印して、魔法を即時使用可能にする道具なんだけどね。けどこの石は他にもっと恐ろしい事ができるのよ。ねえ巧、マリンにも聞いたけどローブの男が妖精族について何か言って無かった?」
「妖精族?」
俺は少し記憶を巻き戻して思い出そうとする......妖精族ねえ......あ!
「そういえば言っていたな、妖精族の特性を利用してとかなんとか......」
「やっぱり…『魔封じの石』は魔力で構成されてる妖精族も封印する事にも使う事ができるの」
「妖精族を? ってまさかその石!」
「うん、占い屋のリサさんにお願いして確認したら......この石の中になにか生命体のような反応があるって......」
あの男、まさか妖精族の人を閉じ込めて兵器の部品にしていたのか......あの男殴り飛ばしてやりたいな、ってそんな事より!
「じゃあ早く解放させなきゃ......なんでやらないんだ?」
「そうしたいのはやまやまなんだけど......」
「何か問題があるのか?」
「この石を特には無属性の魔力が必要らしくて......私やマリンとか魔法使える人ってどうしても魔力を作る時に無意識で適性の魔力にしちゃうから無属性の魔力に転換できなくて」
なるほど、使い方次第で無属性魔法なんて便利な物をなんで使わないのだろうと思ってたけどそういう事なのか。って事は村長は適性を持ちながら無属性も使えるのか。やっぱりすごいなあの人。
「じゃあ俺が魔力を流せば解放できるのか?」
「多分、魔力を流し込んで妖精が活性化するはずだからそれで出てくるはずってリサさんは言ってたわ」
「よし、やってみるか」
俺はその緑色の石に触り無属性魔法を使うような感じに魔力を作っていく。それを右腕に集中していく。すると驚くことにその魔力が凄い勢いで吸われていくのだ。
うう......すでにかなり持っていってるぞ、この妖精。魔法で数えると2回分の魔力を吸ってもまだ吸うので途中で白金の魔力を流し始める。俺の魔素保有量だと1回で多少の疲労感、2回でしんどい疲労感、3回で倒れるという感じになる。
そのためすでに体が結構だるくなっていた。
「俺的に結構もっていっかれてるけどまだなのか......」
「まあ巧の魔素保有量は少ないしね。けどまさかここまで吸うとはねー」
「妖精族ってそんなに燃費の悪い種族なのか?」
俺は不思議に思って聞いてみる。
「妖精族は魔人って言われる人達の中でも特に魔法に長けた種族よ、私達のように肉体を持たないかわりに膨大な魔素保有量で体を作るわね。適性も最低でも2個は必ず持ってるって聞いたことあるわ。体を生成するから魔力を余分に吸収してるのかも」
『魔封じの石』が魔力の他に妖精も封印できるのはそういう事か。妖精族も体自体はただの魔力だから封じ込める事が出来るとかそういう事なのだろう。
「他の種族もそんな感じなのか?」
「いえ、妖精族だけよ。他の種族はちゃんと肉体を持っているわ。体が獣の特性をもつ獣人、魔法の先駆者とされるエルフ、色んな血を吸うことで魔素保有量が種族的に1番多い吸血鬼とか色んな種族があるけど」
なるほど、魔人って俺の世界で言う亜人と呼ばれる人達の事なのか。どんな感じなんだろう。やっぱり猫耳生やしてたり耳が尖ってたりするのかな?
俺が容姿について考えてると、急に今まで魔力をして吸っていた石が突然光り出した。
「うわ」
「きゃあ」
俺とリーナが驚いて目を閉じる。やがて光が収まったか確認するために目を恐る恐る開ける。
するとそこには白いワンピースを着た10歳くらいの黒髪の女の子がいた。