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異世界転移!~才能がなくとも活躍できることを証明してやろう~   作者: かずっち
第二章 生きるって大変
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*021 魔兵とピンチ

*021 魔兵とピンチ


 その岩でできた人型の物は脚と腕、胴体が異様にでかい岩で、他の部位はそれに比べて小さい岩が集まって人の形を形成していた。胴体の人間にあたる胸のところに不気味に赤くひかる球体の物がめり込んでいる。


 なんなんだこれ、こんなのもこの世界にはあるのかよ......


 俺が驚いて固まっていると男が愉快そうに笑った。


「はははははっ、いつみてもこれを初めて見た者の顔はおもしろい」

「あれ、まさか魔兵なのか?」


 マリンも俺と同じようにそれを見て固まっていたが、あれが何か分かったのかボソっと呟いた。


「おいマリン、あれ何か分かるのか?」

「レイン王国なんかでよく使われる魔兵って人形に似ている感じがする。けどこの大きさはありえない。こんなの動かせるような魔石なんてどこにもないはずだ」


 この巨大なものは魔兵と言うものらしい。一瞬、こんな物が当たり前のようにあるかと思ったが、流石にないみたいだ。

 じゃあ魔石じゃないとしたらこいつの動力源は何なんだ?


「ほう?我が国の魔兵を知っているか。けどあんなのと一緒にしないでもらいたいな」


 ローブを着こんでいる男が感心したように言った後、少し怒気をはらんだ感じで言ってきた。


「魔兵は魔石を使って動く人形。魔力がなくなれば動かなくなる未完成品だ。けど僕の作った巨兵は違う。妖精族の特性を利用する事で魔素保有量を確保し、ある魔法をコアに取り込ませることで半永久的に戦う兵器になったのだ」


 ローブの男が自慢げに言い放った言葉に俺は恐怖を感じた。あんなものが村なんかで歩き回っただけでもとんでもない被害が出る。

 しかも半永久的に動き続けるのだ。ここで何とかしないと取り返しがつかない事になる。


 俺は腰の白金を抜き、マリンに指示を出す。


「マリン!あいつを壊すぞ、魔法を頼む。俺はあいつをなんとかする!」

「分かったわ!」


 マリンが巨兵の方に手をかざす。俺はローブの男に向けて走り出す。


「くらえ!」


《敵を斬り裂け エアカッター》

 

 俺はローブの男を斬りかかり、マリンは風の刃を生成して巨兵に向けて撃つ。しかし、ローブの男を斬りつけたと思ったら、まるでそこに最初からいなかったようにローブの男が消えていた。

 巨兵の方を見ても《エアカッター》で腕なり脚なりどこか斬れてると思ったらさきほど見た時と変わらずそこに立っていた。


「ははははっ、無理ですよ。誰もこの巨兵を倒すことなどできない」


見ると巨兵の肩にローブの男が立っていた。あいつ、いつの間に。


「巧、どうしよう、あいつの体。堅すぎるわ」


 マリンが焦った感じの声で俺に話しかけてきた。そういえばさっきの爆発、もしこの巨兵に使ったならこいつはあの爆発に耐えれる強度を持っていることになるのか。

 それならあの風で作った鋭い刃で斬れないのも納得できる。


「あの岩、ただの岩じゃないのか?」

「ええ、ただの岩ですよ?無属性魔法に《プロテクション》というものがありましてね。こいつには全身に使っているため鋼鉄より堅くなっているのですよ」


 俺のつぶやきに肩に乗ったローブの男が自慢げに解説してくれた。よくアニメや漫画とかなら負けキャラの行動なのだがまったく勝機が見えない。


「こちらからもやらせてもらいますかね」


 そう言ってローブの男がコンコンと巨兵の頭のような岩に手を当てる。すると巨兵のコアのような物が光った。そして巨兵は右腕を動かす。まずい!


「マリン!回避しろー」


 俺はマリンに向かって叫び、俺も後ろに走って距離をとる。巨兵はさきほどまで俺とマリンがいた所に腕を下ろし、潰しにかかってきた。この大きさのおかげで回避は間に合うが、当たれば重傷は確実だろう。そう思っているとローブの男が右腕を突き出す。


《火に転換 その右腕に宿れ フレイムウェポン》


 男が詠唱を終えると巨兵の右腕が勢いよく燃えだした。おいおい、冗談だろ......


「さあ巨兵、そいつらを焼き殺せ」


 男がそう言い放つと巨兵が俺とマリンを狙って腕を振り回す。


「マリン、当たらないように逃げつつ、魔法で攻撃してくれ」

「わ、わかったわ」


 俺とマリンは二手に分かれて走り出す。腕の速度が遅いおかげで回避はできるが腕が燃えてるせいでぎりぎりで回避すると凄い熱い。

 

 俺は走りながら牽制のつもりでナイフを投げるがそのたびに巨兵に弾かれる。マリンも何度も魔法を使ってるようだがまったくダメージになってないようだ。あれ?どうしよう、打てる手がない。何度もやっても結果が同じだ。


「さて、そろそろ君たちもこいつの魔力の生贄になってもらおう」


 と男が言うと巨兵が俺の方にむかって両腕で挟み込むように腕を振り回した。俺は後ろしか退路がなく、後ろに跳ぶ。するとローブの男の口元がニヤっと動いた、ように見えた気がした。


《土に変換 対処に絡め グランドバインド》


 すると跳んだ俺が地面に着地した瞬間、俺の脚が地面に沈んだ。


「なんだこれ!?」


 魔法ってこんな卑怯な事できるのか、俺が脚を引き抜こうとするがまったくうごかない。そうしていると巨兵が俺目がけて腕を伸ばしてきていた。殴るモーションだ、やばい回避できない!


「死ね、少年」


 上を見上げるとローブの男が殺せると確信したのかそんな事を叫んでいた。くそ、さっき斬りかかった時に消えたのがどんな魔法か分からなかったから温存しようと思ってたけど、この状況じゃ使わないと死ぬ!


 岩がどんどん近ずいてくる中、俺は黒いローブの男を見定めて叫ぶ。


《チェンジ》


 すると俺の視界が岩からよく全体を見渡せるような視界に変わった。


「うわあああああ」


 すると下の方から悲鳴が聞こえた。見ると先ほどの黒いローブが殴られてふっ飛ばされてるのが見えた。あれ?さっきと違って消えなかったな。《チェンジ》みたいな移動系の魔法だと思ったけど違うみたいだな。


「はははっ、みたか! 必殺身代わりの術。俺の最強魔法を見たかバーカ!」


 俺は巨兵の肩の上からローブの男に向けて笑いながら馬鹿にする。え、卑怯?先にやったのはあいつだし多少はね?


 吹っ飛ばされたローブの男は木にぶつかり吹っ飛ぶのは止まった。見るとかなりの怪我なのか動けなそうにしてた。よし、無力化!


「くそっ......《光に転換 わが身を癒せ ヒール》」


 と思っていたが何か魔法を使われ、ムクッと起き上った。ちょっと待て、あいつ何属性持っていやがるんだ?


 先ほどで完璧にキレたらしく、俺に向けて叫ぶ。


「貴様ァ、僕を本気に怒らせたな......」


 と睨みながら両腕を広げる。


 ≪光に転換 わが身を消せ ライトロスト≫


 ローブの男が先ほど俺が斬りかかったように消えた。姿を消す魔法だったのか。それはそれでやっかいだな。俺がキョロキョロと見渡すがどこにもいない。


 ≪闇に転換 対象を惑わせ スモッグ≫


 どこからかそんな詠唱が聞こえた。たちまち俺の周りに黒い煙が出来ていき、俺の視界が遮られる。まずい、何も見えねえ。

 なんかよくわからないけどここやばい気がする。そんな嫌な予感がしたので≪チェンジ≫でここを離れようとしたが......


(しまった、視界が悪くて認識できない)


 ≪チェンジ≫は自分が認識した場所と位置交換する魔法。こんな何も見えない状態では認識などできない。


 ≪風に転換 対象を射ぬけ エアブレット≫


 そう聞こえたと思った瞬間、俺の背中になにか塊(おそらく風だろうが)のような物が当たる。


「うわっ」


 俺はローブの男の魔法に当たったせいでバランスを崩して落ちてしまう。俺は大した受け身もできず地面に落ちた。やばい、くっそ痛い......


 ≪風に転換 我が身に宿れ フライ≫


 どこからか現れたローブの男が飛んでいき巨兵の肩に乗る。


「調子にのりおって......今度こそ殺してやる!」


 ローブの男がそう言うと巨兵が動き出した。その速度は遅いが確実に迫ってくる。まずい、痛すぎて≪チェンジ≫で回避する事もできない......


 俺はこの時、今まで生きた中で一番死の危機に直面した。

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