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異世界転移!~才能がなくとも活躍できることを証明してやろう~   作者: かずっち
第二章 生きるって大変
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*016 馬鹿と反省

*016 馬鹿と反省


 私が腕を動かせないでいると2体のクマ型がこちらを見ていた。


 油断した、クマ型は群れをなさない魔獣と本で読んでいたから一匹だけと思っていたが......

 

 考えられるとすればこの2匹が縄張り争いの最中だったとか近くにいた魔獣が魔法などの音で気がつききたのか、どちらにしても今はそんな事を考えてる暇はない。すぐに対策を立てなければ


「敵を吹きと、うっ......」


 魔法を唱えようとしたが腕の痛みが邪魔してうまく詠唱できない。いや、魔力を作る集中すらできない。


「魔法が......」


 私は絶望した。魔法が使えない状況なんて考えた事もなかった。私が絶望しているとクマ型の魔獣が2匹共、私の倒れている方に近寄ってくる。私の恐怖は増すばかりだ。


「あぁ......いやぁ......」


 私は理解してしまった。私なんて魔法が使えなければ何もできない。それを取り上げられればただの生意気な女だったと自覚してしまう。こんな私をお父さんが許すはずない。どんどん理解してしまう。


 やがて魔獣が私の前に立ち腕を上げる。


 私は目を閉じ、これで終わりと覚悟した。


「最後に、みんなに謝りたかった......」


 お父さん、セリーナ、そして先ほど傷つけてしまった巧にも......


「まにあえええーーーーーーー」


 そう考えた刹那、ちょうど考えていた男の声が聞こえた。




「いってえ、なにすんだよ、たくっ」


 俺は立ち上がり土を払う。幸いなのか初級魔法だったおかげで動けなくなるほどの痛みではなかった。


 俺はマリンが走って行った中央部を見る。あの時の顔、あの娘は焦っているように見えた。


 確かにマリンは実力がある。どんな理由があって森に入れないのかなんとなくわかる気がするが俺は知らない。そしてなんで中央部に行きたいのかも。だが女の子が危ない所に行ったことに変わりない。俺は追いかける事にした。


 村長には後で死ぬほど謝ろう。そう思い、俺は唯一使える無属性魔法を唱えた。


≪ワンアップ≫


 この魔法はリーナの使っていた魔法|≪アビリティプラス≫のように身体強化をする魔法だ。ただあの魔法は筋力や体力などすべて上げるがこの≪ワンアップ≫は自分の欲した力1つしか強化できない。


 ただこの場面であの速さで走って行ったマリンを追いかけるにはこれしかない。俺は走る速度をあげるため脚力を求めながら唱えた。すると足が急に軽くなった。魔法で脚力が強化されたからであろう。


 これなら十分追いつける。


「いっけえーーーーー」


 俺は脚を思いっきり動かし人間には出せないような速度で森を駆ける。


 走っていくと森の雰囲気が変わった。森は真中に行くにつれどんどん魔素が濃くなる。そのせいかさっきより暗く感じる。そう思っていると風の音と共に何かが吹き飛んだような音が聞こえた。


「マリンか!?」


 俺はさらに速度を上げる。そしてすぐにそれは見つけた。奥にマリンが腕を支えながら木の下に倒れこんでいる。

 そしてマリンに近寄る2匹の魔獣がいた。あれはクマだろうか。腕が太くかなりのパワーがありそうだ。そのクマがマリンに近ずくと腕を上げる。まずい!俺は無意識で叫んでいた。


「まにあえええーーーーーーー」


 その声に驚いたのか魔獣が2匹ともこちらを振り向き睨みつけてきた。こわ!目が怖すぎる。俺はすこし驚いたがすぐ冷静になって打てる手を打つ。まずはあいつらをなんとかする。


 おれはザーーーーーと地面に足を立ててブレーキをかける。そしてちゃんと止まってから魔獣のうち一匹を認識する。よし。


≪チェンジ≫


 俺が唱えると視界にマリンが写る。片方の魔獣と位置を交換したのだ。俺は突然隣に現れて驚いたのか動きが止まっている魔獣の隙を逃さなかった。俺は強化された脚力に物を言わせてキックをかました。魔獣は俺のキックをまともにくらって吹っ飛んだ。よし、一匹目無力化!


 すぐに起き上がって襲ってくるだろうがそんなの知らない。あとは逃げるだけだ。俺はマリンをお姫様だっこで持ち上げる。武器など持っていなかったせいか軽く感じる。


「なんで......どうしてここに」


 マリンが何か言った気がするが聞いてる余裕も答える余裕すらなかった。さきほど≪チェンジ≫で入れ替えた魔獣がこちらに走ってきたのだ。たださきほどまでいた位置を入れ替えただけで無力化できたわけではない。


「ちっ、もうかなりきついけど一回くらいなら......」


 すでに二回も魔法を使いかなり体に疲れが出ているが、ここは......押し通す!


 俺は片手だけでマリンを持ちあいた片手で白金のグリップを持つ。そして正面を見る。すでに魔獣が腕を振り上げこちらに走ってきていた。


 俺は木に背中が着くまで下がりぎりぎりまで狙う。俺のすぐ前まで来た魔獣が腕を下ろす瞬間俺は白金からありったけの魔力を取り出し3回目の魔法を唱える。


≪チェンジ≫


 すると俺の視界は先ほどまで走ってきていた道が見え、後ろからザッと何か切れる音が聞こえた。魔獣が腕を下ろす瞬間に位置交換したせいで魔獣は木に攻撃した形になったのだ。


 俺は成功したのを知るや強化した脚力でもと来た道を走りだす。




 外周部に戻り、さきほどまでしゃべっていた場所あたりまで走ったところで俺は走るのをやめた。単純に疲れがピークに達したのだ。脚力だけしかあがってないので体力は同じだ。

 おまけに1日3回ほどしか使えない魔素保有量なのに3回(1回は白金から取り出したが)も使ったのだ。いままでで一番疲れた......はあはあとだらしなく息を上げていると、


「どうして、追いかけてきたんだ?」


 マリンがさきほどと違ってよわよわしく聞いてきた。どうしてってこいつ......


「お前は、本当の、バカ、なのか」

「え?」

「女の子が、危ない所にい、ったんだぞ、すこしは、考えろよ」


 と息が上がった状態で少し怒った感じで言う。疲れたせいで自分だとそんなに怒れてない気がする。

 俺は息が整うのをまち、整ってからマリンに向かって俺の正直に思った事を言う。


「お前は確かに俺より強い。三回しか魔法が使えない俺なんかより、強力な魔法をぽんぽん撃てるんだ。けどそれだけじゃだめだ。村長が言ってたぞ。必要最低限の経験を積むべきだって。魔法だけしか鍛えてなかったお前を心配してたんじゃないのか」


 多分、この娘が森に行くのを禁止したのは村長が俺と同じような考えをもったからだろう。


「......そうだな、私は魔法しか知らなかった。それが使えなくなったら無力な女になる。魔法の才能に甘えた結果が、これだ」


 なんだ、分かっていたのか。なら話がはやい。


「それが分かるならまだやり直せるだろ。ちゃんと自分にないものを見つける。それを手に入れるために勉強や特訓したり。それでも手に入らないのなら持っている仲間の手を借りればいい。ま、これも村長の言っていた事だけどな」


 しばらくしてある程度回復したのでマリンをおぶって帰ろうとしたが腕の骨を折っているらしく動かすと痛いらしいのでまたお姫様だっこで帰る事になった。幸い、行きであらかた魔獣を倒したので安全だろう。


 ゆっくり歩いているとマリンが細々と俺の方を見て


「その、今日はごめんなさい、迷惑ばかりかけて」


 と素直に謝ってきた。本当なら確かにこれだけ迷惑をかけたんだから文句をばしばし言うところだがやめる事にする。


「いいよ、今日は買物の後、お前に付き合うって約束なんだ。これくらい形容範囲だ」


 そう答えるとマリンは目を閉じ息をたて始めた。今日は魔法を連発したのと魔獣に襲われ死にかけたのだ。無理もない。


 俺は起こさないよう注意しながら夕暮れ色の空を見ながら歩いて行った。

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