*009 初戦闘と奮闘
*009 初戦闘と奮闘
俺はリーナに言われたとおり、剣を抜く。剣なんて初めて抜いて持ったが、あまり重さは感じない。おもちゃの剣のように感じるが、おそらく強化魔法で軽く感じるのだろう。
「リーナ!こいつらはどうすれば倒せるんだ」
「傷口を作りまくってそいつらの体液を流させるか、頭を刺せば倒せるわよ!」
「わかった!」
俺は突っ込んできた魔獣の飛び出してきた場所を見る。すると遅れてやってきたのだろうさきほどのよりは小さいアリ型の魔獣が2匹現れた。
俺は改めてその姿を確認する。見た目は俺のいた世界のアリが数百倍大きくなったような姿だった。すこし違うとすれば口の部分が大きい事だろうか?あれに噛まれたらひとたまりもないであろうというサイズだ。アリ型の魔獣を観察していると2匹とも少し身をかがめる。なんかまずい気がする!
アリは俺の予感通り、ジャンプして俺の方に襲いかかってきた。俺は予備動作を見ていたのと直感的になってたので、余裕をもって回避する。
ガチンっという鈍い音がした。この音だけでこいつらの口の威力が分かってしまう。正面からの攻撃は無理か。
俺はすぐに剣を構え、2匹のうち近い一匹のアリに斬りかかる。先ほどまでの移動速度と違って、旋回速度が遅いおかげで容易に斬る事が出来た。見た感じ、固い体かと思ったが強化されたおかげか豆腐を切るような感じで斬り込める。俺は連続で斬って斬って斬っていく。
ギシャアーーーーー
連続で斬られたせいか魔獣が甲高い金切り声のような鳴き声を発し、思わず攻撃をやめ耳を塞ぎながら後ろに下がって距離をとる。うるせえぇ、鼓膜破れるかと思った......
何かの攻撃かと思ったが、鳴き終るとそれ以降動かなくなる。あれ?倒したの。よくわからんがとりあえず一匹目!俺はすぐにもう一匹の方を見る。もう一匹はちょうど俺のほうに旋回を終え、口をガシガシと動かしている。さてどうしようか......あ、そうだ。
俺は剣をくるっと回し、刀身を下に向ける。魔獣はそんな俺の行動を見て、また口を動かしながら突進をしてきた。よし......
俺は右足を後ろに動かし剣を持ってる右腕を上げ、
「喰らえええええ!」
と叫びながら剣を頭めがけて投げつけた。こいつらは確かにかなりの速度で突進をしてくる。その分減速して回避などの行為はできないと思い頭に剣を投げたのだ。それにリーナの強化魔法である程度重かったはずの剣がおもちゃのように軽くなってたのでできると確信していた。
俺の予想通り、投げた剣を魔獣は回避せず(まあできなかっただろうが)に頭に深く刺さり、魔獣は地面に激突していった。2匹目もやったか。俺は動かなくなった魔獣に近寄り、刺さった剣を引き抜く。剣の刀身は緑色の体液でべっとりとついていた。きもちわりぃ......
リーナの方を見ようとすると、
キシャアーーーーー
また金切り声が聞こえ、発生源を見る。すると先ほどまでリーナの魔法で足止めしていた3匹の魔獣のうち、2匹がこちらに向けて突進してきた。1匹は動かなくなってるが、他の2匹は刺さっていた氷がなくなって傷などなかった。再生能力なんかももっているのか?
俺は無意識に先ほどと同じ動作をし、剣を投げつけた。剣は狙い通りに頭に刺さって倒れたがもう1匹は健在だ。
やべ、無意識でやったけどどうしよう......
俺は何か武器になるものはと探すが、そんなものは都合良く落ちてなどいなかった。しょうがなく突進してくる魔獣を横に跳んでかわす。
このアリ型の魔獣は、どうやら突進するか噛みつく以外の攻撃方法はないらしいので身体強化した状態の今なら簡単によけられる。
跳んで地面に着地するとブチっと嫌な音が聞こえた。見るとバックのベルトの片方が切れてしまっていた。強化されて軽く感じていてもバックの重量は変わっていないのでそのせいで切れたのだろう。
片方のベルトだけでは重すぎて背負えず、重力に従って地面にドスンと落ちてしまった。魔獣がいる前でバックを背負うなんてできないので後で回収しようと思った。
そう思った時、ピコンと思いついた。あれ?まてよ......これ使えるかも!俺はバックの切れてない方のベルトをつかみ待ちあげる。
そうしてると魔獣がこちらに旋回し終えまた突進してくる。俺はタイミングを見て腕を伸ばしながら体を回転する。
「うおおりゃーーーーー」
おれは回転をつけたバックを突進してきた魔獣の頭に叩きつける。バックの重さは100kgを超えているほどの質量なのだ。おまけにそれは石で固く尖ってたりしてもいるのだ。それを勢いをつけて叩きつけたのだ。
魔獣は吹っ飛び木に派手にぶつかる。そのまま動かなくなった。
「終ったみたいね、お疲れさん」
声のする方を見ると、リーナがそれなりに疲れたのか少し肩を上下に動かしながらこちらに歩いてきた。見るとさっきまで俺と戦っていた魔獣より一回り大きい魔獣がところどころつららが刺さっていたり、凍りつけになってたりしていた。凄いな魔法。
俺は戦闘が終わったと認識すると地面に倒れこむ。
「はあー。足の力抜けたー」
「あはは。仕方ないよ。魔獣の戦闘後だもん。それにしても凄いね」
「? なにがだ?」
リーナが笑いながら褒めてくる。
「だってアリ型の集団なんて初心者だったら間違えなくやられちゃうもん」
「なに!?」
そんなに強いのか、あいつら。てかそんなのいる所によく初心者を連れてきたな。
なんでもあのアリ型は普段はバラバラになって行動するため遭遇しても一匹だけらしい。最初に言ってたように戦闘が長引いたり、自分が殺されるとなるとさっきの金切り声のような鳴き声を発し周囲の仲間を呼ぶんだそうだ(廃鉱で聞いた音はたぶんされだったのだろう)
それさえなければ俺の思ったとおり、突進と噛む以外の攻撃手段がないので慣れれば簡単に倒せるらしい。それを聞くとかなり健闘したんじゃないかな、俺。と少し嬉しく思う。
「そういえばリーナの戦っていた出かいやつはなんだったの?」
「あれはアリ型の変異種ね。変異種は魔獣の中でもかなり強力なやつで中級魔法を使える人でもかなりてこずる相手よ」
「そうなのか。どうりで強そうなわけだ」
てかそんな奴に勝てるリーナっていったい......
「さて早く依頼終わらせに行きましょ。もたもたしてると魔法の効果切れて持てなくなるわよ」
「それは勘弁してほしいな、バック謝らないとなー」
俺は立ち上がってバックを持ち、剣を回収してリーナと一緒に村に帰った。