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*000 終わりと始まり

*000 終わりと始まり


  俺は日に日に肌寒く感じる夜をトボトボと歩いていた。すでに日が変わっており、今歩いてる歩道に人はいない。

 なぜ、こんな時間に出歩いてるかというと、俺は町から少し離れた所にある森に向けて歩いている。その奥にはとてもきれいに星の見える場所があり、嫌な事があったりした時によく行く秘密の場所だ。


 俺は少し痛む腕をさすりながら、なぜこんな思いをしなければいけないのだろうと考えた。




 俺、加藤巧という人間はまず勉強は得意不得意がなく、運動は多少はできるが部活をやっているような奴らには負けるくらい。どこにでもいる平均クラスの人間だった。そのためあまり高校の選択肢はなかったため近くの公立高校に進学した。


 高校に入って数週間ほどたった雨の日、帰宅路を歩いていると電柱の傍に段ボールが置いてあった。横を通りかかり、チラッと見ると弱った子猫が寝ていた。


 俺は慌てて傘を立てて猫に雨が当たらないようにした。このままだとまずいと思って雨宿りできそうな場所を探した。


 うちは親が既に亡くなっており、父方の親族である祖父の家に引き取られた。

父と祖父は仲が悪かったので祖父は引き取りたくなかったらしいが、親の保険金などでできた大金のためにしぶしぶ引き取ったようだが。

 そんな状態で子猫なんて連れて行けば確実に怒られ子猫を捨てられてしまう。なのでせめて雨宿りできそうな場所を探してあげようと思った。


 幸いなことに、近くに古い神社を見つけた。床下にでも連れて行けば雨風を防ぐことができるだろう。


 俺はすぐに子猫の所に向かうと段ボールの周りに3、4人ほどの制服姿の人が群がっていた。格好が同じ制服だから同じ高校なんだろうけど顔に見覚えがなかった。なにしてるんだろう?と思いつつ、急いで近ずくとその人達の話声が聞こえた。


「うわ! すげー、捨て猫がいる。 俺初めて拾ってくださいって書いてる猫見たぜ」

「まったくだ、実在したんだな」


 ぎゃははははと汚い笑い声が聞こえて足を止める。何やってんだこいつら。その時、子猫がか弱くニャア...と鳴いた。


 それを聞いたガタイのいい男が舌打ちをしながら。


「ったく鳴き声がうぜえなあ!」


 と言ってダンボールを蹴り飛ばした。子猫は道路に叩きつけられた。


「おい!」


 俺はすぐに子猫に駆け寄り抱きかかえる。雨で弱っていたのと、地面に叩きつけられた衝撃のせいか、すで息をしていなかった。


「おい、なんだお前!」


 振り返ると蹴り飛ばした男がこちらを睨みつけていた。


「なんでこんなことをした! そんなことすれば猫がどうなるか分からなかったのか!」

「うるせ、ムカついたからやったんだよ。 なんかいいてえことあんのか?」


 頭の悪い理由にさすがに切れた。


「そんなことでお前は猫を殺したんだぞ! わかってるのか!」

「うるさいぞお前! 殴られたいのか?」


 ガタイのいい男と数人が拳を構え、喧嘩の態勢をとった。俺も応戦できるように体勢を整えた。


 その後の展開は簡単だった。俺は喧嘩に強いわけではないため、人数差で俺のほうがかなり殴られた。こちらはガタイのいい男しか殴らなかったため多少の怪我を負わせれたが。


 俺が倒れると、殴られたところをさすりながら「おまえ、同じ高校だな。 覚えてろよ...」と言いながら、その場を去った。


 時間が経ってからよろよろと起き上った俺は、猫を神社で埋めてやって帰った。


 次の日、学校に行くと考える限りで最悪の状態になっていた。


 ガタイのいい男は3年で学校でヤンキー達のボスのような奴だったらしい。そいつに殴りかかった俺は当然、学校のヤンキーの的となった。


 それからの学校生活はひどいものだった。上履きや物を隠す、教科書やノートを破くなどありきたりなものから、金銭の要求(これは俺がおこずかいをもらえないので被害0だったが)、根も葉もない噂を流されたりと色々された。


 周りの生徒は巻き込まれないように俺から距離をとり、学校の先生も通っていた高校が自称進学校だったせいなのか、問題にしたくないのか何も言わなかった。

 先日、後学期が始まり、その勢いも激しくなる一方だ。

 

 もはや俺の居場所は学校でも、今住んでる家にも、どこにもなかった。


 そうして今日、いやもう昨日か。また絡まれた時に痛い思いをして、今に至る。森は暗いせいで道が見えなかったのと考え事をしながらあるいていたせいで何回かこけてしまったが、目的の場所についた。


 そこは数年前の土砂崩れが原因でできた崖だ。高低差と周りが森で暗いため綺麗に星が見える場所だ。ここは土砂崩れがどうなったか気になり、見に来た際に偶然に見つけた場所だ。

 俺は崖端に座り、空を見上げた。空は綺麗に星が光っており、ペガサスやアンドロメダなど秋におなじみの星座が並んでいた。


 こうやって神秘的な光景を見ていると自分の悩みが些細な物に思えてしまうから不思議だ。


 しばらくずっと眺めているとへくち!とくしゃみが出た。


「うう、寒い...... 流石に帰るか」


 そう呟き、帰ろうと立ち上がった時。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


 余震などの前触れなどなく突然地面が揺れ始めた。


「うわっ」


 俺は崖端にいたのと立ちあがった瞬間だったのが運のつきだった。俺はバランスが取れず崖の方に体を傾けてしまった。


「え?」


 俺はそのまま重力に引張られ、崖から転落した。それを自覚した俺は死を覚悟して目を閉じた。 

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