カイラス
『この度は、境界領域警備隊の受け入れを許可されたそうですね。』
カイラス・ルベッタ副隊長は、苦虫を潰したような顔をしていた。
二十歳そこそこに見える青年だが、眼差しは厳しい。
『はい、よろしくお願いします。』
オリバーは、頭を下げた。
『ちなみに、昨年は拒否されていましたが…。
方針の変更をご説明いただけますか?』
『あの、ええとですね。手が回らないことがわかりまして…。』
『左様でございましたか。
隊員の選抜にあたり、ご希望はありますか?
私とリディアード閣下は内定していますが、
一般隊員はこれから選びますので。』
『…いやぁ、特には…』
『私は調査のためにこちらにしばらく滞在します。
何か思い付いたら、仰ってください。
ところで、そちらのお子様は?』
オリバーの後ろに隠れている子供をカイラスは無表情に見つめた。
『…アルスラン・オリヴィエラ・パンジェンシーです。私の長男です。』
『超いいこだぞー』
横からぬっと現れたのはちょび髭の料理長だった。
『リディアード閣下、ご無沙汰しています。』
『カイラちゃん、愛想ないのね。前にあったとき、超可愛かったのに。』
『………………あれは、あの場で怪しまれずに閣下に接触するための変装です。』
『ああ、お二人はお知り合いなんですか。』
オリバーの発言に、カイラスは少し驚いた顔をしてオリバーをみた。
『……オルハン様は、我々の経歴などはご存じですか?』
『いえ、全然。あと、オリバーと呼んで下さい。』
『……これは失礼いたしました。
私はこちらに転属する前は情報部におりまして
その頃にこちらのリディアード閣下の亡命をお手伝いしたのです。』
『亡命…。クーさん、何しちゃったんですか。』
『あはは。ちょっとなー』
『くー、くー‼』
『ん?坊っちゃん、どうした?
ああ、こりゃいけねぇ。
昼飯の時間じゃないか‼』
『プリン‼』
『プリンは後だ。まずは昼飯だ。』
カイラスは、苦虫を潰したような顔をした20歳そこそこの青年だった。
この頃は。