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ナスカの贈り物
『ごめん、ごめんな。アスラン』
真っ白な長い髪、翼のような形の耳という異形の姿でありながら
琥珀色の瞳の男、ナスカは美しかった。
風、水、土、火の四種の精霊の長であるところのナスカは
目を閉じて動かない甥を、柔らかなブランケットの上にそっと寝かせた。
いそいそと、太めの犬がブランケットにのり、アスランにぴったりと身を寄せた。
『ありがとうな、らっしー』
『いつか、アスランの全ての傷が癒えて、生きていく力がたまったら、』
犬はまっすぐな瞳でナスカを見上げた。
『そうしたら、今度こそ幸せに飛んでいける』
『わふん』
『らっしーがそばにいるなら絶対だ。』
『わふん』
『この子が幸せになれますように。』
ナスカは、ただただ、シンプルに祈り願った。
風に、空に、光に。
大地に、炎に、水に。
人に、世界に、ありとあらゆるものに。
風が、アスランとらっしーを包み込み、
その姿が見えなくなってから
ナスカは泣いた。